秘書室の13人

アビス

エピソード1(脚本)

秘書室の13人

アビス

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〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「おはようございます!」
柴崎アカネ「社長秘書室に配属になりました 柴崎アカネです!」
柴崎アカネ「よろしくお願──」
柴崎アカネ「・・・」
柴崎アカネ(あれ? 誰もこっち見ない)
柴崎アカネ(声、小っさかったかな)
柴崎アカネ「おはよ──」
飛田キユ「聞こえてるわよ」
柴崎アカネ「あ、よかった! おはようございます!」
飛田キユ「ふー」
飛田キユ「私は飛田 2度は言わないから」
柴崎アカネ「はい! よろしくお願いします!」
柴崎アカネ「早く仕事を覚え──」
飛田キユ「覚えなくていい」
柴崎アカネ「え?」
柴崎アカネ「それって──」
飛田キユ「あなたの仕事はひとつ」
飛田キユ「アッチ」
柴崎アカネ「アッチ?」
柴崎アカネ「壁しかありませんけど」
飛田キユ「アソコで立ってることが仕事 2度は言わないから」
柴崎アカネ「すみません よく意味が──」
飛田キユ「2度は言わないって言ったでしょ ほら早く!」
柴崎アカネ(何この人 とりあえず言われた通りにしておこ)
飛田キユ「柴崎」
柴崎アカネ「はい!」
飛田キユ「向き、違う」
柴崎アカネ「はい?」
飛田キユ「『壁の方』を向いて立ってるのよ 早く!」
柴崎アカネ(えぇぇー!? なにそれ、どんな仕事よ!)
飛田キユ「社長がお見えになる 皆さん、準備!」
  飛田の号令で秘書室の全員が整列した
四葉真一「おはよう」
  秘書室の全員が綺麗に同じ角度で頭を下げる
(後ろ向きって言われたけど そのままでいいわけないよね 振り向いちゃお)
柴崎アカネ(あれが社長)
柴崎アカネ(テレビのインタビューでは何度も見たことあるけど 直接会うのは初めてだ)
柴崎アカネ(あ、頭! 下げなきゃ!)
四葉真一「早速朝の定例ミーティングを行う いつものメンバーは 隣の会議室に、おや──」
四葉真一「壁際の彼女は?」
柴崎アカネ「今日から配属になった柴崎です!」
四葉真一「そうか──キミが よろしく頼む」
四葉真一「それじゃ いつものメンバーは向こうに」
柴崎アカネ(はー緊張したー)
飛田キユ「柴崎、向き」
柴崎アカネ「は、はいぃ!」
飛田キユ「それじゃあとはよろしく」
柴崎アカネ(なんだなんだなんだー、ここ!)
柴崎アカネ(やばいところとは聞いてたけど 想像以上っていうか)
柴崎アカネ(これは)
柴崎アカネ「楽しくなってきた──!」

〇超高層ビル
  四葉商事
  様々な分野でトップレベルの売上を誇る
  国内有数の大企業
  四葉商事を取り仕切っているのが
  ──四葉真一
  モデル並みの体型に端正な顔立ち
  学生時代はいくつものスポーツ大会で優勝
  まさに完璧な男
  多忙を極める彼には13人の秘書がいる
  秘書たちは彼の代理として
  四葉商事の中枢に携わる
  ──秘書は四葉の骨格
  これは
  そんな秘書室に配属された
  一人の女の物語──

〇オフィスのフロア
部長「柴崎にこんな辞令が出てな──」
柴崎アカネ「秘書室──」
部長「嫌か?」
柴崎アカネ「いえ、そういうわけじゃ でも」
柴崎アカネ「なんで私が──」
部長「さぁな そういうのは俺のところまで回ってこねーんだ」
柴崎アカネ「部長 上の方から嫌われてますもんねー」
部長「うるせぇよ 結果さえ出してりゃ別にいいんだよ」
部長「辞令ってのは普通逆らえない」
部長「だが 秘書室の場合だけは本人の意思で断れる 俺たち管理職の間での噂だ」
柴崎アカネ「そうなんですか? なんでまた」
部長「知らねぇよ 俺も初めて見たしな 秘書室行きの辞令」
柴崎アカネ「あはは、それじゃ私 レアですね」
部長「笑ってんじゃねーよ まー今回は断った方がいい」
部長「お前にはまだ企画部に居てもらいたいってのもあるが」
部長「いい噂聞かねーしな、秘書室 給料は良いらしいが 仕事する上で大事なのは金だけじゃねーからな」
部長「ってことで断る方向でいいな?」
柴崎アカネ「やります」
部長「分かった、それじゃ早く仕事に── はぁ!?」
柴崎アカネ「私、やります」
部長「ったく」
部長「俺が言ってたこと聞いてたか?」
柴崎アカネ「聞いてました でも」
柴崎アカネ「自分に来た話は断らないことにしてるんです 楽しそうだし!」
部長「お前なぁ──」
柴崎アカネ「前話したじゃないですか 私おばあちゃん子で」
部長「両親が共働きでおばあちゃんに育てられたって 前、飲みに行った時に言ってたな」
柴崎アカネ「そのおばあちゃんが言ってたんです」

〇実家の居間
祖母「まーた友達と喧嘩かい?」
アカネ「うん」
祖母「仲直りしてきな」
アカネ「でも、私から謝るのは嫌」
祖母「謝るか謝らないか 迷ってんだろ?」
祖母「そんな時は やる方を選ぶんだよ」
アカネ「どうして?」
祖母「そっちの方が楽しいからさ」
祖母「やってみたら楽しくなるもんさ 初めは辛くても最後は楽しいことが待ってる」
アカネ「もし楽しくならなかったらどうするの?」
祖母「その時はね──」

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「楽しくなるまでやるんだよ」
柴崎アカネ「って」
柴崎アカネ「だからやります!」
部長「ったく」
部長「だけどな柴崎」
部長「辛かったらいつでも戻ってこい」
部長「席は空けとく」
柴崎アカネ「そんなこと言って また私をこき使うつもりでしょー?」
柴崎アカネ「この前のプロジェクトだって 部長ほとんど私に丸投げして寝てただけじゃないですか」
部長「バレたか」
柴崎アカネ「あはは」

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ(ってことで来たけど)
柴崎アカネ(大変そうだな)
柴崎アカネ(他の秘書さん達 私に話しかけようともしないし)
柴崎アカネ(ま、今は楽しくなる途中! がんばれ私!)
  そして昼休み
布田ユウコ「お疲れ様」
柴崎アカネ「お、お疲れ様です!」
布田ユウコ「ちょっといい? ここじゃアレだからアッチで」

〇オフィスの廊下
布田ユウコ「いきなりあんなの驚いたよね」
柴崎アカネ「え、えぇ そうですね」
布田ユウコ「私、新人研修で一緒だったの覚えてる?」
柴崎アカネ「え──? あぁー!布っち!」
布田ユウコ「久しぶり アカネ」
柴崎アカネ「布っちも秘書室にいたんだ」
柴崎アカネ「それで 話って?」
布田ユウコ「アカネには話しておきたくて」
布田ユウコ「秘書室のルール──」

〇ステンドグラス
布田ユウコ「秘書室には絶対的な序列があるの」
布田ユウコ「私たちのトップ 1番上に立つのが」
布田ユウコ「烏山さん」
布田ユウコ「この中で秘書と言ったら彼女の事を指すわ」
柴崎アカネ「みんな秘書なのに?」
布田ユウコ「うん 外ではみんな秘書でも この中では違う」
布田ユウコ「本物の秘書は彼女だけ 常に社長と行動を共にしてる」
布田ユウコ「次に 朝、社長とミーティングに行った人達がいたでしょ?」
柴崎アカネ「社長を入れて5人だったかな」
布田ユウコ「社長と烏山さんに続いた3人は副秘書 副さんて呼ばれる3番から5番の人達」
布田ユウコ「この3人は 四葉の基幹事業である3部門の統括でもある」
布田ユウコ「次に 6番から10番が雑用さん」
布田ユウコ「この5人は副さんの手伝いが仕事」
布田ユウコ「そして11と12番がお茶さん」
布田ユウコ「社長に用のある人達にお茶を出すから──」
柴崎アカネ「だからお茶さん、か」
布田ユウコ「うん」
柴崎アカネ「ちなみに飛田さんは?」
布田ユウコ「彼女は6番」
布田ユウコ「実務部門のトップ 秘書室の統括も任されてる」
柴崎アカネ「それであんなにキツかったのか」
柴崎アカネ「ちなみに布っちは何番なの?」
布田ユウコ「私は12番」
柴崎アカネ「そりゃ大変だ」
布田ユウコ「うん 11番の子なんてしばらく休んでるし」
柴崎アカネ「そうだ! それなら私は──」
柴崎アカネ「13番はなんて呼ばれてるの?」
布田ユウコ「13番は──」
布田ユウコ「壁さん」
柴崎アカネ「壁?」
布田ユウコ「壁に向かってずっと立ってる」
布田ユウコ「だから壁さん」
柴崎アカネ「なにそれ──」
柴崎アカネ「序列があるのも なんであんな指示出されたかも分かったけど」
柴崎アカネ「そもそも13人目要らなくない? 12人でいいじゃん!」
布田ユウコ「それがね 社長のジンクスで、身の回りに13人の部下を置きたいって所からなの」
柴崎アカネ「はー」
布田ユウコ「前の13番の子も その前の子も 最後は心を壊して──」
布田ユウコ「だから早く逃げた方がと思って」
柴崎アカネ「──布っち」
柴崎アカネ「私にそんなこと教えていいの?」
布田ユウコ「本当は良くない でも──」
布田ユウコ「アカネが心配でつい」
布田ユウコ「悪い事は言わない 早く──」
柴崎アカネ「楽しそう!」
布田ユウコ「え!?」
柴崎アカネ「キッついし理不尽だけど これはきっと楽しくなる途中!」
柴崎アカネ「それに──」
柴崎アカネ「行けばいいのよ 上に 私たちで」
布田ユウコ「上? 私たち!?」
柴崎アカネ「うん」
柴崎アカネ「私たちで上に──」

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「とは言ったものの」
柴崎アカネ「毎日壁に向かって──」

〇オフィスのフロア

〇オフィスのフロア
柴崎アカネ「定時 帰ろ──」

〇オフィスの廊下
柴崎アカネ「はー」
部長「よ」
柴崎アカネ「部長──」
部長「秘書室はどうだ ──って」
部長「相当やられてんな」
部長「ちょっと付き合え──」

〇立ち飲み屋
柴崎アカネ「女の子誘うのにこんなムードのない場所じゃダメですよ?」
部長「いいんだよ、柴崎なんだから」
部長「それで どんな感じだ」
柴崎アカネ「実は──」
部長「そらキツいな」
柴崎アカネ「私、挫けそうで──」
部長「おう 挫けて帰ってこい そんでまた前みたいにビシッとした企画立ち上げてくれ」
柴崎アカネ「あの時 市場調査から同業他社のリサーチまで」
柴崎アカネ「全部私ひとりでやったんですからね」
部長「あの時は助かった おかげでよく眠れた」
柴崎アカネ「私がどれだけ苦労したか」
部長「お前のリサーチのおかげで 今やあの企画はウチの看板だ」
柴崎アカネ「そうですよ どんな企画もまずリサーチを──」
柴崎アカネ(リサーチ?)
部長「どうした?」
柴崎アカネ「部長!!私、帰ります!!」
部長「どうし──」
柴崎アカネ「思いついたんです! 私のやるべき事! それじゃ!」
部長「ったく」
部長「こうと決めたら走り出す」
部長「それがアイツのいい所なんだが」

〇オフィスのフロア
  それから毎日壁に向かった
  他の秘書たちが私を嘲る声ももう慣れた
  昼は壁に──
  夜は”やるべき事”をやる
  そして3週間が過ぎ
  ようやく見つけた──!!

〇オフィスの廊下
柴崎アカネ「今いい?」
布田ユウコ「いいけど それより、酷い顔 大丈夫?」
柴崎アカネ「この所ずっと寝不足で」
柴崎アカネ「それより、やっと見つけたんだ!」
布田ユウコ「見つけた? 何を?」
柴崎アカネ「私たちが上に行く方法よ」
布田ユウコ「そんなの無理なんじゃ」
柴崎アカネ「そうでもないの」
柴崎アカネ「ついに見つけた」
柴崎アカネ「アイツ」
柴崎アカネ「秘書室の統括であり」
柴崎アカネ「6番──」
柴崎アカネ「飛田キユの秘密──」
柴崎アカネ「まずは 彼女を堕とす────!」

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 逆境にもまけない柴崎さんの性格が好きです!応援したくなる主人公🙌 なんだかんだで応援してくれる部長さんも良いですね!面白かったです、続きが気になります。

  • 壁にいて耳で情報収集したのかな。愛と憎しみとの関連はまだ見えてきませんが、この女の園での苛められっぷりとそれと戦う主人公は応援したいです。

  • 壁さんはキツいですね……振り返ることすら許されない😱秘書室マウントこっわ……
    ですが、この状況を悲観せずに乗り切り上に行こうとするヒロインのガッツがキラキラしてて好きです!ヒロインは糸口を見つけたようですね。とても面白かったです!
    続きも読ませていただきますね☺️

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