MF

紅石

読切(脚本)

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紅石

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〇チョコレート
クズ「やぁはじめまして!」
クズ「おっ、タップしてくれたってことは 読み続けてくれるんだね」
クズ「それともとりあえず数タップしてみて、 つまらなそうならやめるって感じ?」
クズ「いいよいいよ気にしないで 読むも読まないもきみの自由だからね」
クズ「じゃあ改めて僕の名前は・・・って」
クズ「ちょっと何この名前、ひどいなぁ! この『クズ』って、仮でつけたやつでしょ」
クズ「まぁいいか、実際クズだし」
クズ「あ、もしかしてこういうノリ苦手?」
クズ「じゃあ次のシーンへ飛んじゃっていいよ やり方分かるかな?」
クズ「右上に横三本線があるでしょ? そこに『次のシーンへ』ってあるから それをタップすればいいよ」
クズ「次のシーンへいってらっしゃ~い」

〇動物
クズ「まぁページを飛ばしたところで 話は全然進んでないんだけどね!」
クズ「そんなことより見て見て 背景変えてみたんだけど、どう? 可愛いでしょー」
クズ「ああ待って待って 次のページへ行こうとしないで」
クズ「本題に入るからさ 実はきみに紹介したい人がいて」
クズ「可愛いでしょー? 彼女はね」
クズ「今死にました」
クズ「なぜ死んだかって?」
クズ「きみがタップしたからだよ」

〇黒
クズ「撃たれたとか刺されたとか 誰にとか僕がとか そんな話じゃなくて」
クズ「きみがこの話を開かなければ 読み進めようとタップしなければ あの娘は死ななかった」
クズ「きみが読んだおかげでこの物語は存在し 存在したから物語は進みあの娘は死んだ」
クズ「違う?」

〇果物
クズ「なーんちゃって!」
クズ「あはっ、冗談だよ びっくりした?」
クズ「存在だとか何とか言ったけど そんなの作者が書いた時点で 存在してるんだから」
クズ「きみがあれこれ思う必要なんてないんだよ」
クズ「きみはあくまで読み手 出来上がった物語に介入はできない 当たり前の話でしょ?」
クズ「安心した?それは良かった」
クズ「じゃあそろそろこの物語も── ん?結局あの娘はなぜ死んだかって?」
クズ「やだなぁ。僕が殺したっていうのかい? ・・・証拠がある?」

〇黒
クズ「撃たれたとか刺されたとか     ・・ 誰にとか僕がとか そんな話じゃなくて」

〇食器
クズ「ああ、本当だ 僕が、って言ってるね」
クズ「すごいなぁきみ 推理小説とか好きなタイプ? それとも台詞を深読みするタイプ?」
クズ「じゃあ僕が名前の通りクズだってことも 覚えてるんだろうなぁ」
クズ「そうでーす 僕はクズで殺人犯でーす」
クズ「このあともたくさんの人を殺しまーす」
クズ「ああ、安心して この物語ではその続きは書かないから」
クズ「非公開の物語 でも作者が書いた時点で、 その物語は存在してる」
クズ「きみがタップすることはない 観賞も干渉もできない物語さ」
クズ「僕がどれだけ外道で人でなしの殺人鬼でも きみにできることなんて何もないんだよ」
クズ「それじゃあ、さようなら! ただの読者のきみ!」

〇図形
クズ「あはっ!騙されてくれた?」
クズ「趣味が悪い? やだなぁ僕の名前知ってるでしょ」
クズ「このあと何かあるとか期待してる? ないよ ただきみの反応が見たかっただけー」
クズ「こんな物語 2回目を読むなんてしないだろうし、 もう二度と会うこともないかな」
クズ「そうだなぁ、きみがタップノベルメーカー を登録しているのなら、 嫌でもまた会うかもしれないね」
クズ「それじゃあ今度こそお別れだ! またどこか、誰かの物語で!」

コメント

  • 普通の小説なら「あなたがページをめくったから」というところを「タップしたから」と言われると、作中の出来事に読者が加担したニュアンスの意味合いが少し異なって新鮮に感じました。TapNovelならではの読者巻き込み型メタフィクションのバリエーションがもっと増えても面白そうだという発見がありました。

  • 軽いノリのつもりで読みはじめたら、その軽さゆえに言ってることが衝撃的でなんだかサイコパス的でいや〜なきもちになりました。読み手にとって、ひと味ちがった印象に残る作品という意味で、大成功なのではないでしょうか。同作者さんの他の作品を読んでみたいと興味をかきたてられました。

  • なんかクズは言いたいことだけ言って行ってしまいましたが、またいつか急に出現しそうですね。介入はできないけど、読むのは私だから声のトーンを自在に変えたりしますよ!

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