読切(脚本)
〇オフィスビル前の道
〇オフィスビル前の道
チンピラ「おらっ! さっさと金を運び込むんだよ!」
チンピラ「うっす」
マイ「こんばんはー」
チンピラ「女?」
チンピラ「なんだお前は!」
チンピラ「とっとと消えろ! 殺されてえのか!」
マイ「あー、わるいけどそれ私のセリフなんだわ」
チンピラ「も、燃えた!」
チンピラ「こいつ、何もんだ!」
マイ「えい♪」
チンピラ「あちぃ!」
チンピラ「に、逃げろ!」
マイ「にひひっ」
〇シックなバー
マイ「いやー、今日も大量大量♪」
タケちゃん「アンタまたぁ?」
タケちゃん「そんな事ばっかりしてると、そのうち痛い目見るわよ」
マイ「別に良いよ」
マイ「私の人生なんか、刹那主義くらいで ちょうどいいのさ」
タケちゃん「またそんな事言って」
タケちゃん「あんまり悪さしてると、本当に取り返しのつかない事になるわよ」
マイ「悪党が、悪党から盗んでるだけだもん」
マイ「誰の迷惑にもならないよ」
タケちゃん「そっちの方が、よっぽどタチが悪いじゃないの」
タケちゃん「そういう相手は、色々と執念深いのよ」
マイ「お礼参り上等」
マイ「殺せるなら、殺してほしいくらいさ」
タケちゃん「アンタねぇ・・・」
マイ「タケちゃんが心配してくれてうれしいよ」
マイ「けど、私みたいなのはこのくらいで ちょうどいいんだ」
マイ「その辺でのたれ死ぬくらいがね」
タケちゃん「・・・」
〇渋谷の雑踏
〇渋谷のスクランブル交差点
マイ「・・・」
マイ(この中の誰とも私は違う)
〇手術室
研究員「非検体1175に投薬を開始する」
医師「暴れるな! 麻酔を!」
マイ「嫌ッ!」
〇魔法陣のある研究室
マイ「うっ、ううっ・・・」
マイ「ああっ!」
研究員「数値、安定しています!」
医師「ハハッ、実験は成功だ」
〇渋谷のスクランブル交差点
マイ「むぅ・・・」
マイ「タケちゃんのせいで、嫌な事 思い出しちゃったじゃん」
〇大企業のオフィスビル
〇渋谷のスクランブル交差点
マイ(企業連のビルか・・・)
〇大企業のオフィスビル
(この国の経済を牛耳り、行政にまで影響力を持つ実質的な支配組織)
(法律も警察も企業連の味方)
(だから連中は、商売のためなら暗い研究も平気でする)
(この街で人がいなくなるのは 珍しい事じゃない)
(企業連が人間をモルモットにしていても、 誰にも止められない)
(胸くそわるい話さ)
〇渋谷のスクランブル交差点
マイ「――ん?」
マイ(兵隊? なんだアイツら?)
〇入り組んだ路地裏
兵士「待てっ!」
ミサキ「放してっ!」
兵士「うわっ!」
警官「おいっ! そこで何してるんだ!」
ミサキ「ひっ!」
警官「気絶している!」
警官「あ、おいっ! キミ!」
マイ(あの子、追われてる?)
〇ビルの裏通り
兵士「おいっ! 抵抗をするな!」
兵士「押さえつけろ!」
ミサキ「嫌ッ!」
マイ(誘拐か?)
マイ(ま、私には関係ないか)
マイ「・・・」
マイ「──チッ」
マイ「おい、ロリコンども! その子を放しな!」
マイ「即発砲かよ!」
兵士「目撃者は生かしておくな!」
マイ「チッ──」
マイ「後悔しなっ!」
兵士「なっ! こいつ非検体か!」
兵士「ぐああああっ!」
兵士「げふっ!」
ミサキ「あっ、ああっ―――」
マイ「アンタに何かするつもりはないよ」
マイ「そいつらも別に死んでないし」
マイ「どこへなり、好きに行きな」
ミサキ「まって!」
マイ「あっ?」
ミサキ「そのっ・・・」
ミサキ「行くとこ、無い」
マイ「まじか・・・」
マイ「はぁ、ったく」
マイ「来なよ」
ミサキ「あ・・・う、うん!」
〇シックなバー
タケちゃん「で、連れてきちゃったってわけ」
マイ「しょーがねーじゃん!」
マイ「こんなガキ一人、夜の街においていけないだろ」
タケちゃん「ふふっ、良いのよ」
タケちゃん「マイちゃんにも優しい心が残っていて、 私うれしいの」
マイ「お前、私を何だと思ってんだ」
タケちゃん「自称悪党でしょ」
マイ「やめろ! 自称って付くと急にダサい!」
マイ「立派に悪党でしょ!」
タケちゃん「そういうところよ」
マイ「ぐっ──」
ミサキ「もぐもぐ」
タケちゃん「ミサキちゃんどう? おいしい?」
ミサキ「うん! ありがとうオジサン!」
タケちゃん「ガーン!」
マイ「ぷーくすくす」
タケちゃん「おい、そこ笑うな!」
マイ「タケちゃん、素に戻ってる」
タケちゃん「あらやだぁ♪」
ミサキ「ごちそうさまでした」
タケちゃん「はい、どうも」
タケちゃん「綺麗に食べてくれて私も嬉しいわ」
ミサキ「お姉さん、さっきは助けてくれて ありがとう」
マイ「別に気にしなくて良いよ」
マイ「個人的に連中が嫌いなだけだから」
ミサキ「お姉さんも能力者だから?」
マイ「どういう意味?」
ミサキ「こういう事」
タケちゃん「こ、コップの水が蒸発した!」
マイ「お前も研究所から逃げてきたのか!」
タケちゃん「そんなこと、あり得ないわ」
タケちゃん「超能力研究所はもう無い」
タケちゃん「マイちゃんを連れ出したときに、完膚なきまでに破壊してきたもの」
ミサキ「この人、研究所の人なの?」
マイ「元ね」
マイ「今はただのオカマ」
タケちゃん「なんか引っかかるわね」
タケちゃん「確かに、私は企業連の職員だったわ」
タケちゃん「でもそれは昔の話」
タケちゃん「子供を使った実験には賛同できなくて、」
タケちゃん「彼女を連れて逃げたのよ」
ミサキ「そうなんだ・・・」
ミサキ「でも、研究は続いてるよ」
ミサキ「私がその証拠」
ミサキ「アイツらは、もっとひどい物まで作ってる」
マイ「まあ、なんだっていいよ」
マイ「連中が今も活動してようが、 もう私とは無関係だ」
マイ「お前も外に出られたなら忘れな」
ミサキ「うん・・・」
〇シックなバー
タケちゃん「どう思う?」
マイ「企業連の連中は未だに、子供をさらって 兵器の実験台にしてるんだ」
マイ「あの頃と何も変わってない」
タケちゃん「・・・まだあんな実験が続いてるなんて」
マイ「タケちゃんには感謝してるよ」
マイ「私を連れだしてくれてさ」
マイ「そうじゃなかったら、今頃良くて戦場 悪くて破棄されてた」
タケちゃん「そう思うなら、もう少し命を大事になさい」
マイ「無理だよ」
マイ「人外に人間らしい暮らしなんか できるもんか」
タケちゃん「そんなの、気持ち次第よ」
マイ「・・・」
マイ「タケちゃん、明日ミサキを逃がし屋の所に連れて行って」
タケちゃん「分かったわ」
ミサキ「すぅすぅ・・・」
マイ「お前は、私みたいになるなよ」
タケちゃん「な、なによーっ!」
〇シックなバー
マイ「問答無用で撃ってきやがった!」
マイ「タケちゃん、無事か?」
「・・・」
マイ「ああっ、くそ!」
ミサキ「お姉ちゃん!?」
マイ「ミサキ、ここにいなよ!」
マイ「ぜったい出るなよ!」
兵士「ぐっ! 非検体か!」
マイ「私をそんな風に呼ぶなぁ!」
「ぐあっ!」
サイボーグ「どけっ、お前たちでは無理だ」
サイボーグ「変身!」
マイ「・・・よぉ、同類」
サイボーグ「同類? 違うな」
サイボーグ「俺は正式採用された生体兵器だ」
サイボーグ「人間止まりのお前とは違う」
マイ「ハッ、企業の犬が」
マイ「そんな姿にされても連中に 義理立てすんのか」
サイボーグ「野良犬よりは良かろう」
マイ「てめぇ!」
サイボーグ「所詮こんなものか」
マイ「ぐっ!」
マイ「うわあああっ!」
〇ビルの裏
マイ「く、くそっ!」
〇シックなバー
サイボーグ「終わったか」
サイボーグ「子供を回収しろ」
兵士「はっ!」
ミサキ「い、嫌っ!」
兵士「ぐああっ!」
サイボーグ「フンッ!」
ミサキ「あっ――!」
サイボーグ「連れていけ」
〇ビルの裏
マイ「ぐっ・・・ミサキ!」
〇シックなバー
マイ「はぁ、はぁ・・・」
マイ「タケちゃん!」
マイ「どうした! 撃たれたの?」
タケちゃん「ははっ、ざまあ無いわね」
タケちゃん「昔の身内に撃たれるなんて、やっぱり因果かしらね」
タケちゃん「人間、罪は贖えないって事かしら」
マイ「喋っちゃダメ!」
マイ「今、救急車呼ぶから」
マイ「絶対に死ぬな!」
タケちゃん「ふふっ、ありがとう」
タケちゃん「マイちゃん、聴いて」
タケちゃん「あの怪人の事、私知ってるわ」
タケちゃん「あの生体兵器はロイド博士の研究」
タケちゃん「研究所にいたころ、私が関わっていた 超能力兵士と競っていたの」
タケちゃん「企業連はいくつものプランを同時に進めていた」
タケちゃん「とにかく、危険よ」
マイ「安心しなよ」
マイ「私は死なないよ」
タケちゃん「でも、気を付けて・・・」
マイ「ね、ねぇ!」
マイ「タケちゃん? タケちゃん!!」
マイ「嘘だ! 死んじゃヤダ!」
タケちゃん「傷に響くわ・・・少し静かにして」
マイ「はぁ・・・良かった」
タケちゃん「無茶しないでね・・・」
〇大企業のオフィスビル
〇魔法陣のある研究室
サイボーグ「ロイド博士、どうしてこの子供に 執着するのです?」
ロイド博士「この子は特別な存在だ」
ロイド博士「かつて、生体兵器のBプランとして 進められていた超能力計画『イブリス』」
ロイド博士「人間を生物兵器として利用するには、 その血がどうしても必要だった」
サイボーグ「では、俺の細胞には・・・」
ロイド博士「そうだ」
ロイド博士「細胞の完成にはイブリスブラッドが 必要だった」
ロイド博士「だが、問題はその血の入手方法だ」
ロイド博士「適性のある一部の人間にしか ウイルスは馴染まない」
ロイド博士「10年前、イブリスに馴染んだ検体は一人」
ロイド博士「その検体も事故で失われた」
サイボーグ「なら、この子供は?」
ロイド博士「研究者の一人が、自らに活性化しない イブリスを注入し、子供を産んだ」
ロイド博士「それがこの子と言うわけさ」
ロイド博士「この子には、活きた因子が生まれながらに備わっている」
ロイド博士「その証拠に超能力にも覚醒しているだろう」
ロイド博士「この子供の血があれば、計画はさらに加速するぞ」
ロイド博士「お前をもっと強力な生物にしてやれる」
サイボーグ「それは楽しみです」
サイボーグ「しかし、研究員を殺して子供を奪ったのは問題だったのでは?」
ロイド博士「どうせ凍結された計画の職員だ」
ロイド博士「上は問題視しないさ」
〇魔法陣のある研究室
ロイド博士「なんだ?」
サイボーグ「侵入者のようです」
〇研究施設の廊下
兵士「ぐあっ!」
兵士「うわああっ!」
マイ「タケちゃんの仇だ ケガしたくなかったら道を開けろ!」
マイ「ここか!」
〇魔法陣のある研究室
ロイド博士「なんだお前は!」
サイボーグ「ほう、生きていたか」
サイボーグ「さっきお話しした、 野良のサイキッカーですよ」
サイボーグ「おおかた別のセクションから逃げ出した 個体でしょう」
ロイド博士「この子を助けに来たのか?」
ロイド博士「赤の他人だろう どうしてそこまで?」
マイ「正義漢なんてガラじゃないけどね」
マイ「アンタらみたいなのが のさばっているのは許せないだけさ」
ロイド博士「はははっ、威勢がいいな」
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マイとミサキ、覚醒するのはどちらなんだろうとワクワクしながら読みました。とにかくタケちゃんの存在が最高すぎる。かつてタケちゃんに助けられたマイが今度はミサキを助けるという善の連鎖の描き方も良かったです。最後、死んだかもと思ったタケちゃんが生きててくれたのには心底ほっとしました!
マイちゃんはたくましさと優しさを兼ね備えた特別な存在で魅力的な女性ですね。たけちゃんとの関係はまるで親子のようで心が温まりました。人間の醜さと優しさがとても伝わるストーリーだと思いました。