エピソード1(脚本)
〇林道
今ここに 大変怖い思いをしている人がいる
”人”と言っても
怖い思いをしているのは右の怪人である
何?どういう事?となった皆さん
順ををって説明するのでご安心を
〇組織のアジト
遡ること1日前
まま「人志ー!ご飯よー」
ぱぱ「早く来ないと ぱぱ全部食べちゃうぞー」
怪 人志「全部食うなよ!」
ぱぱ「だって、ままのご飯美味しそうなんだもん」
怪 人志「イジけるなよ」
ここは怪人の家
そして彼らは怪人一家である
ちなみに”怪人”は人間から消え去った”感情”から生まれる(らしい)
そんなことはさておき
300歳を越えても尚ラブラブな両親を持つ人志には密かな夢があった
怪 人志「まま、ぱぱ 大事な話があるんだ」
まま「どうしたの?改まって」
怪 人志「ぼく・・・」
怪 人志「人間と友達になりたいんだ!」
「・・・!!」
ぱぱ「なんで急に?」
怪 人志「急じゃないよ!ずっと考えてたことなんだ」
まま「でもあなたには怪人の友達がいるのに?」
怪 人志「もちろんいるよ?」
怪 人志「円周率を全部言えるけど足し算できない友達と」
怪 人志「世界各国の言葉話せるけど日本語だけ話せない友達と」
怪 人志「見た目めっちゃ悪魔なのに、自分のこと”うさぎ”だと思い込んで、人参しか食べない友達」
ぱぱ「いいじゃないか!!」
怪 人志「良くないよ!普通の友達が欲しいの!」
怪 人志「というわけで」
怪 人志「明日人間の住む町に行こうと思ってる」
「・・・・・・」
まま「私たち怪人が人間に会うってどういうことか分かってるの?」
怪 人志「もちろん、覚悟は決めてる」
怪 人志「どんなに非難されても、逃げられても諦めない」
「・・・・・・」
ぱぱ「本当にあるんだな」
怪 人志「うん」
まま「なら応援するわ!」
ぱぱ「ぱぱも応援するぞ!」
怪 人志「ありがとう!ぱぱ!まま!」
まま「うん!当たって挫けてきなさい!!」
怪 人志「え、本当に応援してる?」
そんなこんなで
〇組織のアジト
次の日
怪 人志「じゃあ行ってくるね!」
ぱぱ「達者でな!」
怪 人志「夜には帰ってくるよ」
まま「はいこれお弁当!」
怪 人志「鍋ごと!?」
ぱぱ「いいなぁ!ままの料理おいしそう! 僕も食べたいなぁ」
怪 人志「美味しそう!?」
怪 人志「見た目からまずそうだよ?」
まま「あなた目悪くなった?」
怪 人志「正常だよ」
怪 人志「ってもういいよ」
「どうもありがとうございました」
怪 人志「漫才やってんのか」
怪 人志「もう行く!」
怪 人志「キリがない!いってきまーす」
「行ってらっしゃーい!」
〇林道
怪 人志「はぁ、朝から無駄に疲れちゃった」
怪 人志「・・・」
怪 人志「さて考えなきゃ」
怪 人志「人間と会ったらどうしよう」
怪 人志「まず、危害を加えるつもりはないって言うのを」
怪 人志「全面にアピールしなきゃいけないよな」
怪 人志「そのためにはやっぱり 手を挙げてしゃがむのが1番かな?」
怪 人志「でも見た目がな・・・」
怪 人志「どう見ても悪い事しそうな見た目だよな」
怪 人志「どうしたものか」
怪 人志「ん?なんだ?」
怪 人志「動物か?」
サナ「痛ッ! 木で擦れちゃった」
怪 人志(人間!)
怪 人志(どうしよ!どうしよ! まだ何も準備できてない)
サナ「あっ!」
怪 人志「あっ!」
怪 人志「いや僕は何も危害を加えるつもりはないよ!」
怪 人志(余計に怪しくなってしまった)
サナ「こんなところでどうしたの?」
怪 人志「へ?」
サナ「迷子?」
サナ「あっ!」
サナ「それとも人間の街に遊びに来たの?」
怪 人志「はい そうです・・・」
サナ「そうなんだぁ」
サナ「じゃあ案内してあげるよ」
怪 人志「ちょっと待って!!」
サナ「ん?」
怪 人志「僕が怖くないの?」
サナ「怖くないよ」
怪 人志「醜いとか思わないの?」
サナ「全く」
怪 人志「えーーー!怖い!」
サナ「大丈夫?」
怪 人志「いや怖い怖い怖い その優しさが逆に怖い」
サナ「なんで?」
怪 人志「だってもっと酷い扱いを受けるのもだと・・・」
サナ「そんな事しないよ!」
サナ「ほら行こ!」
怪 人志「うん・・・」
これで理解できたでしょうか
怖い思いをしているのは怪人だという
ことの成り行きを
〇ヨーロッパの街並み
サナ「ここが私たちが住む街だよ」
怪 人志「さすが僕らの街よりも発展してる」
サナ「そうなの?」
怪 人志「うん、僕らの街はそもそも地下にあるからね」
サナ「そうなんだ!皆 引っ越してくればいいのに」
サナ「地上は気持ちいいよ!」
怪 人志(この子が優しいのは、天性のものなのか・・・)
怪 人志(それともこの街全体がそうなのか・・・)
ネオ「サナー!」
サナ「あっ!ネオ!!」
ネオ「ん?誰だこの人?」
ネオ「知り合い?」
サナ「さっき道で会ったの!」
ネオ「そうなんだー よろしくな!!」
怪 人志(なるほど この街全体が優しいのか・・・)
怪 人志「よろしくお願いします!!」
ネオ「そんな敬語なんてよしてくれよ!」
ネオ「俺らもう友達だろ!」
怪 人志「え!?(展開早くない!?)」
サナ「じゃあ私が友達1号だね」
怪 人志(てか)
怪 人志「友達になってくれるの?」
「当たり前だよ」
怪 人志「なんて優しいんだーーーーーーーー!!」
サナ「そんなに喜ばなくてもいいのに」
怪 人志「へへ」
ネオ「まぁ俺は挨拶しに来ただけだから、もう行くわ!」
ネオ「じゃあ、また明日な!」
怪 人志(明日も来ていいんだ)
それからも会う人会う人が僕に優しくしてくれた
なんでこの街の人はこんなに優しいんだろ
〇ヨーロッパの街並み
怪 人志「ねぇ1つ気になることがあるんだけど」
サナ「なぁに?」
怪 人志「なんでこの街はこんなに僕に優しいの?」
怪 人志「普通1人や2人・・・」
怪 人志「いや多くの人が」
怪 人志「僕に対して悪く言う人がいても 可笑しくないのに」
サナ「うーん、理由は2つかな?」
サナ「1つは普通にみんなが優しい性格であること」
サナ「もう1つは・・・その・・」
サナ「法律で決められてるから かな?」
怪 人志「法律?どういうこと?」
サナ「この街はもともと争いとか殺人とかが よく起こっていた街なの」
怪 人志「嘘!?」
サナ「そう」
サナ「そしたら ある日誰かが言ったの」
サナ「”悪口や暴言を言わない”っていう 法律を作ればいいんじゃないか?」
サナ「って」
怪 人志「悪口や暴言を言わない・・・?」
怪 人志「”人を殺さない”っていう法律じゃなくて?」
サナ「それだと殺人は完璧には無くならないでしょ?」
サナ「悪口・暴言を言わなければ、そもそも殺人や争いを起こす理由はなくなる」
怪 人志「まぁ、確かにそうかも・・・」
サナ「実際そのおかげで殺人や争いは全く無くなった」
サナ「むしろ皆 優しくなって、手を取り合うようになった」
サナ「そうして今の街があるの」
怪 人志「そうなんだ、すごい過去だね」
サナ「でもいい話でしょ」
怪 人志「うん!」
サナ「私この話をおばあちゃんから聞いた時」
サナ「かっこいいなって思ったの!」
怪 人志「かっこいい?」
サナ「うん、警察が!」
サナ「だって警察の仕事って」
サナ「いわゆる”犯罪を未然に防ぐ仕事”でしょ?」
怪 人志「そう考えたらかっこいいかも・・・」
サナ「でしょでしょ!!」
怪 人志「・・・もしかして」
怪 人志「なりたいの?」
サナ「うーん、私がなりたいのは警察というか」
サナ「犯罪者と直接関わる刑務官かな」
怪 人志「え?そっち?怖くない?」
サナ「でも、悪い人を正しい道に戻してあげられるんだよ?」
怪 人志「確かにー!」
怪 人志「・・・サナならなれるよ!」
怪 人志「すごく向いてると思う」
怪 人志「と今日初めて会った人が言ってます」
サナ「あはは、人志君って面白いよね!」
サナ「ありがとう!」
サナ「でも恥ずかしいから他の人には内緒だよ」
怪 人志「了解しました!」
怪 人志「じゃあ日も落ちたことだし」
怪 人志「もう帰るね!」
サナ「うん!じゃあまた明日!」
「バイバーイ!」
〇組織のアジト
怪 人志「────って言うことがあってね!」
怪 人志「今日すごく楽しかったんだ!!」
ぱぱ「良かったな!」
まま「挫けて帰ってくると思ったのに・・・」
怪 人志「え 何でちょっとガッカリしてんの?」
ぱぱ「こうは言ってるけど、まま すごく心配してたんだぞ」
まま「ちょっとぱぱ それ内緒でしょ」
怪 人志「そうなの?」
まま「当たり前よ〜」
怪 人志「ままぁ──」
まま「ちゃんと息子の”泣き顔”が見れるか心配だったのよ〜」
怪 人志「なんの心配してんだよ」
怪 人志「もういいよ!」
まま「でも良かったわね!」
怪 人志「・・・ありがとう」
怪 人志「あ!明日も行ってくるからー!」
ぱぱ「じゃあ今日は明日に備えて もう寝なさい」
怪 人志「はーい!おやすみ!」
「・・・・・・」
〇ヨーロッパの街並み
ネオ「おーい!こっちこっち」
次の日僕はもちろん街へ遊びに行った
ネオ「遅いじゃねーか!」
怪 人志「いや9時集合の30分前ですけど!?」
サナ「私たちは1時間前からいるよ!」
怪 人志「早すぎるよ」
ネオ「そんだけ楽しみだったってことだよ」
ネオ「ほら行くぞ」
〇西洋の市場
ネオ「ここがこの街で一番の肉屋さんだ」
サナ「ここのお肉は皆やわらかくて美味しいんだよ!」
ネオ「まるでお前みたいだな」
怪 人志「僕どう見ても硬そうだろ!」
「あはは」
サナ「ツッコミ上手いよね」
怪 人志「いやいや、いつも家で鍛えてるから」
ネオ「なるほどー いつも筋トレしてるからツッコミ上手いんだな」
怪 人志「筋トレで上手くなるなら 世のボディビルダー皆 芸人になってるわ」
「あはははは」
ネオ「すげえな!皆手叩いて笑ってるぞ!」
サナ「ホントすごい!」
ネオ「じゃあもういっちょ」
ネオ「お前筋トレしてるのに、体は柔らかいんだな」
怪 人志「もう何もかもが 違うよ」
怪 人志「バカかよ!」
「・・・・・・」
怪 人志「え?」
怪 人志「今のツッコミダメだった?」
サナ「ダメだよ」
怪 人志「そっかぁ、ダメだったかぁ」
ネオ「この街は悪口言っちゃダメなんだ」
怪 人志「え?」
サナ「ちゃんと話したよね?」
怪 人志「悪口ってなんのこと・・・」
怪 人志「────!!」
怪 人志「まさかさっきの”バカ”かよ?」
サナ「だーめなんだ」
ネオ「ダメなんだ」
怪 人志「ちょっと待ってよ!」
怪 人志「今のはツッコミで、悪口じゃないよ!!」
怪 人志「え?どこいくの?」
怪 人志「ねぇなんでいなくなるの?」
怪 人志「誰?」
警察「いくよ」
怪 人志「え?どこに?」
警察「刑務所」
怪 人志「いや ちょっと待ってよ」
怪 人志「なんでだよ」
怪 人志「僕は悪口なんか──────」
〇刑務所の牢屋
怪 人志「どこだここ?」
怪 人志「まさか本当に!」
刑務官「やぁ気がついたかい?」
怪 人志「あなたは?」
刑務官「僕は君専門の看守だよ?」
怪 人志「専門ってどういう事?」
怪 人志「そもそも 僕は本当に捕まったの?」
怪 人志「だとしたら、冤罪だよ!」
怪 人志「僕は悪口を言ったつもりはない!」
刑務官「黙れグズが」
怪 人志「え」
刑務官「お前は捕まったんだよ」
刑務官「それで今日からここで教育を受けるんだ」
怪 人志「は?」
怪 人志「てか今暴言吐いたよね?」
刑務官「あーそうか」
刑務官「君知らないんだ」
刑務官「我々刑務官はね」
刑務官「この街で唯一」
刑務官「悪口・暴言を許されてる職業なんだ」
怪 人志「・・・なんで?」
刑務官「そんなのお前らみたいな罪人を調教するためだよ」
怪 人志「・・・どういうこと?」
刑務官「お前らに毎日 悪口・暴言を言い続けて」
刑務官「言われた側の気持ちを分からせてあげるんだ」
怪 人志「そんなのおかしいだろ!」
刑務官「あぁ おかしいだろうね」
刑務官「でもこの街は狂ってるんだ」
刑務官「ここで まともな考えを持ってるのはお前だけだろうな」
刑務官「って 俺が言うことではないか」
怪 人志「そんなことないよ・・・」
怪 人志「この街には心の綺麗な人も・・いる・・・」
刑務官「フッ」
刑務官「知ってるか?」
刑務官「この街で1番人気の職業」
怪 人志「────」
刑務官「刑務官だよ」
怪 人志「・・・」
刑務官「みんな表面上では仲良く」
刑務官「優しい顔をしてるが」
刑務官「腹の中は真っ黒だ」
怪 人志「そんな・・・」
怪 人志「じゃあサナも」
刑務官「覚えときな」
刑務官「”刑務官になりたい”っていう奴は」
刑務官「”人に暴言を吐きたい”っていう奴だ」
刑務官「もしかしてお前の身近にも そんなヤツいたんじゃねぇか?」
怪 人志「・・・・・・」
刑務官「まぁ俺にはどうでもいい事だ」
刑務官「じゃあこれから毎日よろしくな!」
怪 人志「嫌だ」
怪 人志「いやだイヤだ」
怪 人志「イヤダァァアアアアア!!!」
〇組織のアジト
怪 人志「ァア────────!!」
怪 人志「あれ?」
まま「あんたどうしたの?急に叫び声上げて」
怪 人志「え」
怪 人志「もしかして夢!?」
ぱぱ「なんだ 怖い夢でも見たのか」
怪 人志「そう」
怪 人志「そうなんだ!それがさぁ」
まま「そんなことより」
怪 人志「そんなことより!?」
怪 人志「息子が怖い思いしたってのに」
怪 人志「そんなことより!?」
まま「今日人間の街に行くんじゃなかった?」
怪 人志「あぁ」
怪 人志(あんな夢見た後じゃ、行く気にならんな)
怪 人志(予定とは別な街に行くか?)
ぱぱ「行かないのか?」
怪 人志「・・・」
怪 人志「いや、行くよ」
ぱぱ「おう」
怪 人志「うん!行ってやるよ!!」
まま「うんうん」
怪 人志「行ってきます!」
ぱぱ「達者でなー!」
まま「・・・」
まま「あらヤダ」
まま「お弁当渡すの忘れたわ」
〇林道
怪 人志「フー大丈夫」
怪 人志「夢と現実は違う」
怪 人志「大丈夫 大丈夫」
怪 人志「!!」
サナ「痛ッ!気で擦れちゃった」
サナ「あっ!」
サナ「こんにちは!」
怪 人志「・・・・・・え」
もう一度言おう
”怪人”は人間から消え去った”感情”から生まれる
彼の両親が愛情に溢れた怪人である理由は
言うまでもないだろう
〜Fin〜
「なんか怖い」の答えがラストのナレーションに集約されてる!怖いのは怪人ではなく人の心を失った人間だという鮮やかな結末、お見事です。怪人の名前が「人の志」というのも皮肉がきいてますね。
ずっと半面で身構えてました...最後までなんか怖かったです😫
ほのぼのするお話かと思ったら、途中から雰囲気が……! ダークな感じが好きです! 最初に語った伏線をラストできれいに回収する構成がいいですね!