はかいの怪人

こへへい

はかいの怪人(脚本)

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はかいの怪人
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〇街中の公園
怪人「破壊」
ヒロ「あなたは怪人?」
  ヒロの手が、怪人の腹を貫く。
怪人「は、はか、」
ヒロ「なら、殺さなくちゃね、」
怪人「うぐ、」
ヒロ「まだ息がある、とどめを」
「まてーい!」
ヒーロー「見参!最近めっきり減って成績落ちてんだよ怪人めぇ!女の子に何を...!?」
ヒーロー「ってあれ、怪人が怪我してる?」
ヒロ「ちっ、邪魔が入ったか」
ヒーロー「君!何故逃げる!」
ヒーロー「えー、どうしよ、怪人弱ってるし、とりあえずとどめ刺しとこうかなぁ」
怪人「はか、はかい、いいい、いい」
ヒーロー「こいつ、破壊衝動だけで生きているのか?」
ヒーロー「でもこんな弱った奴退治するってのも気が引けるし、」
怪人「はい、か、かは、かい、」
ヒーロー「ぅーん、」

〇簡素な一人部屋
怪人「は、はか、」
ヒーロー「ふぅ、こいつ重いな」
カズト「連れてきちゃったよ、どうしよっかなこいつ、」
カズト「野放しするのもあれだし」
カズト「かといって弱ってるのを殺すのもなぁ」
怪人「は、はかいかい」
カズト「お前、「は」と「か」と「い」しか言えないのか?」
怪人「はい」
カズト「おお、「はい」が言えるのか、まだコミュニケーションできそうだぜ」
怪人「い、いか」
カズト「烏賊?食いたいのか?」
怪人「はい」
カズト「待っとけよ、今焼いてやっから」
怪人「はい」
  じゅ~。じゅ~。
  カタン。
カズト「ほれ、昨日烏賊安かったんだよ、高タンパク低脂質ってな!」
怪人「...。ゴクン。 いい、」
カズト「そっか!良いか!烏賊は良いかってか!ははは!」
  烏賊を食べた怪人の怪我が、みるみるうちに塞がっていく。
カズト「お!元気になったか!やっぱり烏賊は良いか!ははは!」

〇簡素な一人部屋
カズト「でもあれだな、怪人匿ってるとかバレると、同業に何て言われるか」
怪人「は、は、」
カズト「ん?お前母ちゃんいんのか?」
怪人「はい」
カズト「そっか、怪人にも親はいるのか、」
カズト「だがこんなところにいたら、ヒーローに退治されちまうぜ?」
カズト「俺も一応ヒーローだが、俺みたいなお人好しばっかりじゃねぇからよ、さっさと母ちゃんとこ帰んな」
怪人「いかい」
カズト「異界?そりゃ確かに、俺たちの世界はお前らの世界にとっては異界みたいなもんか」
怪人「はは、いかい、はいかい」
カズト「な、まさかお前の母ちゃんが、この世界に迷い込んだってのか!?」
怪人「はい」
カズト「く、何てこった、なら早く見つけて帰さないと、ヒーローに見つかって退治されちまうぜ」
カズト「だがお前偉いな、母ちゃんのためにこんな危険なところに来るなんてよ」
カズト「母ちゃん好きな奴に悪いやつはいねぇ!怪人でもな!俺がお前らを元の世界に帰してやるよ!」
怪人「はい、はいぃ...」
「プルルルルル」
カズト「んあ?ヒーロー事務局からだ、静かにしてろよ」
カズト「はい、こちらS支部カズト」
「カズトか、今しがたS支部に怪人が現れたとの通報が入った。至急現場に向かってくれ!」
カズト「おっけーっす」
カズト「お前も来るか?」
怪人「はい!」
カズト「ならこれも持っておかないとな」
カズト「それと、母ちゃんだったらお前帰ることになるからさ、烏賊お土産に持っとけよ」
怪人「はい」

〇池のほとり
怪人「ころ、す、」
怪人「うぐぅ、」
  小さな手が、怪人の腹に突き刺されると、穴から知が吹き出た。
ヒロ「あなたも私の糧になりなさい、怪人」
「みーつけたぁーーー!!!」
ヒロ「この声は」
ヒーロー「見参! おい、あいつが母ちゃんか!?」
怪人「はい!はい!」
ヒロ「あなた、また来たの?それに取り逃がした怪人も」
ヒーロー「君、手から血が!」
ヒーロー「いや、前にもいたよな 君なのか、この怪人を襲っているのは」
ヒロ「ふ、怪人と女の子がいたなら、普通は怪人が私を襲っていると考えるのが自然じゃないの?」
ヒロ「仕方がないわね、まだ完全じゃないけれど」
マヒロ「「怪人に殺された」 単純だけど自然で分かりやすいわよね」
マヒロ「貴方の最期の筋書きは」
ヒーロー「女の子が怪人に!?」
マヒロ「不完全だけどね、だから完全に怪人になるためには、もっと多くの怪人を食べないといけないの」
ヒーロー「させないよ、不完全というのなら、まだ君は人に戻れるんだ」
怪人「う、ころ、すろ、ろすこ、」
ヒーロー「こいつらは家族なんだ、それに話してみると害意はない良いやつんだよ」
ヒーロー「だから俺は君を止めて、こいつらを元の世界に返す!」
マヒロ「私はもう10体も怪人を食べた、貴方が今まで戦ってきた怪人とは訳が違うのよ!」
  マヒロの手から繰り出された炎がヒーローに降り注ぐ。
  ヒーローはそれらを両手で弾き返した。
マヒロ「なっ、炎を弾いた!?」
ヒーロー「くっ、中々やりやがる」
ヒーロー「だがこの程度どうってことはねぇ、」
ヒーロー「とりゃ!」
  ヒーローの手刀が、ゴツンとマヒロのうなじに衝撃を与えた。
マヒロ「ぐはぁ、」
  マヒロは意識を失い、その場に倒れ込む。
ヒーロー「ふぅ、とりあえず無力化だな」
怪人「はは!はは!」
怪人「ここ、ろころ、すこす」
ヒーロー「おい、大丈夫かよ母ちゃん!」
怪人「ロス、ここ、ココス、」
ヒーロー「ここはロサンゼルスでもココスでもねぇ!しっかりしろ!」
ヒーロー「そうだ!お土産の烏賊!これ食え!」
  怪人の母は烏賊を口に含み、ゴクンと喉が鳴る。
  すると、腹に出来た傷がみるみるうちに塞がった。
怪人「こ!ここ!すこすこ!」
ヒーロー「良かったぁ!母ちゃん治ったぜ!これで安心だな!」
怪人「はい!かいは!かはい!」
ヒーロー「良かったな、もう二度と帰ってくるんじゃねぇぞ、お前らはここでは怪人なんだからな」
怪人「は...」
ヒーロー「何だよ、そここそ「はい」じゃねぇのかよ」
ヒーロー「母ちゃんのこと、今度こそしっかり守れよな」
怪人「・・・はい!はいぃ!」
  怪人世界侵入用のワープゲートが作動する。
  カチッ.

〇病室
ヒロ「ここは、」
カズト「よ、気がついたか?お前ん中の怪人成分は大分中和されたから、もう怪人化はしないぜ」
ヒロ「貴方は、誰?」
カズト「そっか、変身した姿しか見てなかったもんな」
カズト「首は痛まないか?」
ヒロ「貴方は、あの時のヒーロー!」
カズト「何で怪人になんてなりたいんだ?」
ヒロ「...お母さんが、怪人に殺されたの。私を庇って」
ヒロ「ヒーローが来た頃にはもう手遅れで、でもヒーローは自慢げに私を守ったって言い張って」
ヒロ「お母さんを守ってくれなかったヒーローなんて、私が消してやるんだ」
カズト「そっか、お前も母ちゃんが好きなんだな」
ヒロ「大好きよ、だからこそ、守ってくれなかったヒーローが憎い!」
カズト「けどよ、母ちゃんはお前を怪人から、命をかけて守ってくれたんだろ?」
カズト「なら今のお前には、お前だけじゃない、母ちゃんの命も込もってるんだぜ?」
ヒロ「え、」
カズト「怪人になったら、ヒーローに命を狙われちまうからな、」
カズト「母ちゃんが守ったお前自身を、粗末にしちゃいけねぇよ。母ちゃんのためにもな」
ヒロ「う、うう、お母さん、」
  こうして、親子怪人と女の子が救われた。

コメント

  • 三文字を駆使してなんとか会話する怪人親子が可愛くて仕方ありませんでした。イカを食べた後「カイ」と言って貝もおねだりしたり、「カイィ」と痒がったり、無限に妄想が広がりました。怪人親子もヒロも同時に救うなんて、カズトこそ真のヒーローだなあ。

  • 怪人もひろちゃんもお母さん思いがその怪人への変貌をそそるなんて、なんだか切ないですね。最後のヒーロー君との会話がとてもよかったです。

  • 怪人可愛い!イカ、美味しいですよね!安いし!

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