第16話 シグナル(脚本)
〇山道
──ギルテ山。
二度目のギルテ山探索。
以龍たちは山のテットたちを蹴散らしながら山道を進んでいく。
以龍 渚「なぁ? さっきから適当に進んでいるように見えるけど、道は合っているのか?」
ラビッシュ「道? ・・・道なんてわかるわけないじゃん?」
以龍 渚「はい?」
ラビッシュ「──おっと、こっちか」
先頭を歩くラビッシュは、刻印から映し出されている球体映像を確認しながら獣道に入っていく。
〇山中の坂道
以龍 渚「ちょっと待て。 適当に歩いてたら道に迷うだろうがっ」
イリア「大丈夫ですよ、渚さん。 ラビくんはちゃんとシグナルの光を頼りに進んでいますから」
ラビッシュ「そういうこと。 けど、おいらのシグナルには地図データは入れてないから、だいたいの位置しかわからないんだ」
ラビッシュ「地図データの追加はお金がかかるし、こまめに更新が必要になるから面倒なんだよ」
以龍 渚「地図データ?」
ラビッシュ「あー、今は細かい説明はなしにして。 ──そろそろヤツが近いよ。 ボス戦の準備をするよ?」
イリア「具現化魔法の準備ですね? 今回の相手は空を飛んでいますから、渚さんが遠距離攻撃できるように攻撃魔法がけっこう必要ですね?」
ラビッシュ「魔力の配分には気をつけて、姉ちゃん」
ラビッシュ「──形成した魔法を具現化するより、属性魔法をそのまま具現化した方が魔力が節約できるし、威力も上がるよ?」
イリア「そうですね」
イリアが雷の具現化魔法を十枚生成し、以龍に手渡した。
イリア「渚さん、今回の具現化魔法には私の雷魔法がそのまま入っているので、使うときは注意してくださいね」
以龍 渚「注意?」
ラビッシュ「具現化魔法を使うときに、なにかの形をイメージしながら使う必要があるんだよ」
ラビッシュ「たとえば、飛来する矢をイメージして使うと、魔法の矢が飛ばせるってこと」
イリア「照明魔法の時のように、そのまま発動させるイメージで使ってしまうと、その場で雷が発動してしまい自滅しちゃいますからね」
以龍 渚「なんか、難しそうだな・・・」
ラビッシュ「大丈夫。兄ちゃんならすぐに使いこなせるよ。 ──おいらの方は炎の魔法だよ。 カードの色が違うからわかるよね?」
ラビッシュからも十枚の具現化魔法を受け取る。
たしかに具現化魔法カードを見てみると、カードの枠の部分の色が違っている。
イリアから受け取った雷の魔法は黄色、ラビッシュから受け取った炎の魔法は赤色の枠をしている。
ラビッシュ「あと、この魔法も渡しておくね」
そういって以龍に手渡したのは、水色の枠の具現化魔法カードだ。
以龍 渚「この魔法は?」
ラビッシュ「霧の魔法だよ。 ──これはもしもの時に使ってね。 たとえば、撤退が必要になった時の目くらましとかにね」
ラビッシュ「これはそのまま使っても問題ないよ? ──でも、範囲とかをイメージして使った方が効率がいいかもね」
以龍 渚「わかった」
以龍は受け取った具現化魔法をベルトにあるホルダーのポケットに入れた。
以龍 渚「おっと。 これはこっちに入れておいた方がいいか」
霧の魔法カードだけは、いざとなった時とっさに使用できるよう、ベルトのカードスロット部分に差し込んだ。
ラビッシュが刻印から映し出されたシグナルの位置を確認する。
球体の中では二つの光の点が交わろうとしていた。
ラビッシュ「・・・不思議だね、兄ちゃん。 昨日までは勝てる気がしなかった相手なのに、今日はなんだが負ける気がしないや」
以龍 渚「そういうことを戦う前に言うな。 ──だが、お前の言いたいこともわかる」
以龍 渚「たしかに不思議だ。 戦ったことのない相手なのに負ける気がしない」
イリア(本当に不思議な感覚。 でも、負ける気はしないのに、嫌な予感がおさまらない。 ──ううん。それどころか強くなってきている)
巨大な影が三人の頭上を横切って行った。
ラビッシュ「──来るよっ」