GoToフェス!(3)(脚本)
〇警察署の資料室
最上「・・・」
「おい。いるのは分かっている」
「ここで何をしている」
最上「・・・天粕か?」
天粕「発見したのが私で良かったな」
天粕「爆発事件がらみか。手を引け、と言ったはずだぞ」
最上「ああ。そうだな。分かったよ」
天粕「・・・協力が必要か?」
最上「え?」
天粕「私はあくまでも中立である。大儀があれば手を貸してもいい」
最上「・・・」
最上「い、いや。諦めるよ。これ以上新司令殿を嗅ぎ回ったらどんな目に合うか」
最上「中立じゃなくていいから、早く口添えして司令部に戻してくれよ」
最上「色々すまんな」
天粕「三文芝居、とはいえ腐っても憲兵か」
天粕「だが顔に出過ぎ、だ」
〇ボロい倉庫
「すまない。随分と走らせてしまったな」
根室「いえいえ。これくらいの逃走」
「貴様に言ってるんじゃない」
アラハタサンソン「来栖川家令嬢、桜子女史に詫びている」
桜子「目的は何ですか?お金ですか?」
根室「違うよ。この人は・・・」
アラハタサンソン「根室。貴様、一体誰と繋がっている?」
アラハタサンソン「誰につけられている?」
根室「え?つけられてるとは?」
アラハタサンソン「チッ・・・やはり気づいてなかったか」
アラハタサンソン「貴様との連絡を絶つというオオスギの判断は正しかった。でなけば今頃は易々とこのアジトが知られていただろう」
桜子「オオスギ?」
桜子「まさか、貴方は・・・」
根室「申し訳ありません。迂闊でした」
アラハタサンソン「だが、危険を冒しても貴様に接触し問い質したい要件が出来た。中に入れ」
根室「・・・」
〇警察署の入口
伝八「はあ?活動家の資料を見せろだあ?」
最上「根室は目下捜索中である」
最上「そちらもこっちの都合に協力してもらう」
最上「協力し合うと言ったはずだぞ」
伝八「まあ、そりゃそう言ったけどよ・・・」
伝八「・・・で」
伝八「お嬢ちゃんは迷子かな~?だったら中に受付があるから・・・」
猪苗代「私、成人しておりますです」
伝八「そ、そりゃ失礼」
猪苗代「ちなみに性別は女です」
伝八「見りゃ分かるよ」
猪苗代「刑事さんは見かけによらず紳士ですね」
伝八「は?」
最上「悪かったよ」
最上「こちら、やまのて新聞の記者さんで猪苗代女史」
伝八「おう、やまのて新聞か。取ってるぜ」
猪苗代「ご購読ありがとうございます」
伝八「やまのて下町公論。中々辛口でいいよな」
伝八「山の手先生が下町目線で政治経済から時事問題までぶった切る!」
猪苗代「はい。私が担当としてぶった切らせていただいております」
伝八「お嬢ちゃんが山の手先生だったのか!凄いな若いのに」
猪苗代「いえいえ私こう見えて年齢は・・・」
最上「いいかなその話は後で」
最上「とある人物を追っているのだが、そっちの活動家のリストに載っていないかと思って」
伝八「つまりはあれか?わざわざこっちの資料検索に来たってことは憲兵隊(身内)は信用できないって案件か?」
最上「・・・」
伝八「お前さんも色々大変みてえだな」
猪苗代「それでは資料室に案内して頂きたく」
伝八「待て待て待て待て!」
伝八「確かにこの図々しさは、十九二十歳じゃねえな」
最上「俺一人ではいつ調べ終わるか分からんのだ」
伝八「だからっつって一般人を通せるかよ」
猪苗代「え?山の手先生ですよ、私」
伝八「だから何だ。いかんもんはいかん」
猪苗代「だったら刑事さんが代わりに協力してあげて下さい」
伝八「何で俺が・・・」
猪苗代「協力してあげたいとは思わないんですか?」
猪苗代「見て下さい。少尉の小鹿のような目を」
伝八(あー面倒くせえなこいつら)
伝八「分かったよ。一緒に探してやるよ」
猪苗代「ありがとうございます。私どもが調べているのはこの男です」
〇王宮の入口
〇警察署の入口
伝八「こいつは確か、バロン吉宗っていう道化師」
最上「ああいや、そっちではない」
猪苗代「右側の男です」
伝八「・・・この男」
最上「では警部。一緒に調べてくれ」
伝八「いや、その必要はねえ」
「え?」
伝八「この男は既に死んでいる・・・」
〇兵舎
桜子「ハートのフラッシュです」
サカイトシアキ「う~わ~!またやられた!」
サカイトシアキ「すごいなお姫さん。ブルジョワならではのガツガツしないとろが強さの秘密かね?」
オオスギアマネ「・・・」
サカイトシアキ「ほらオオスギ。負けは負けだぞ。出すもん出せ」
桜子「いいですよ。お金なんて」
オオスギアマネ「い、いやそれは駄目だ。も、もう一勝負」
サカイトシアキ「そうだそうだ。勝つまで止めんのが活動家ってやつだ」
桜子「でも何だか以外です」
桜子「アナキストの英雄って呼ばれてるくらいだから、もっと厳しい人だと思ってました」
オオスギアマネ「や、やめてくれ。英雄なんて」
サカイトシアキ「そうだろ。こいつは女性が相手だと、からきしどもるんだ。何千の労働者を前に堂々と演説する男がだ」
桜子「官憲を相手に怯みも逃げもせず逮捕されるたびに獄中で一つの国の言葉を習得する。まさに革命家の鑑と尊敬しております」
サカイトシアキ「こっちも驚いたよ。かの来栖川司令の令嬢がとんでもない過激思想の持ち主とは」
サカイトシアキ「お~怖い怖い」
桜子「私も驚いてますわ。オオスギ先生は少年のようだしサカイ先生は面白い方」
桜子「革命結社の大幹部がこんな砕けた人達だったなんて」
サカイトシアキ「おいおい、革命結社に大幹部ときたぞ」
オオスギアマネ「ど、ど、どこでそんな大げさな噂が」
オオスギアマネ「た、ただの同好会だ」
サカイトシアキ「それにまあ、革命家と言えどそんないつもいつも気を張ってられないさ」
サカイトシアキ「熱いのはあのサンソンくらいだ。なあ」
革命結社、美しきけものたち
アラハタサンソン「もう一杯飲むか?」
根室「い、いえもう大丈夫です」
アラハタサンソン「大丈夫とは肯定の意味か否定の意味か?」
根室「ええと、もう十分です」
アラハタサンソン「ならばはっきりそう言え」
根室「は、はい・・・」
アラハタサンソン「確かに革命の裾野を広げんとする、貴様の意見は分かる」
アラハタサンソン「だが享楽を餌に有象無象を幾ら集めたとてなんの力にもならんぞ」
アラハタサンソン「有象無象とは思想を薄め悪戯に行動ばかりを急く決意なき者。その行きつく先は革命ではない、暴走だ、瓦解だ」
アラハタサンソン「貴様が集めた者どもは貴様がきちんと教育せよ。でなければ我々はいずれ袂を分かつことになるぞ」
アラハタサンソン「我らに挑むというなら受けて立つがな」
根室「と、とんでもありません!」
根室「御忠告、肝に銘じます」
アラハタサンソン「それともう一つの話だが・・・」
「フルハウスです!」
「ええーっ!?」
「も、もう一勝負!」
アラハタサンソン「表で話そう」
アラハタサンソン「大芸能博覧会爆発事故について・・・」
根室「・・・え?」
アラハタサンソン「・・・」
サカイトシアキ「・・・」
オオスギアマネ「・・・」
根室「・・・」
〇ボロい倉庫
根室「何ですか一体?」
アラハタサンソン「来栖川の令嬢には聞かせられないだろう?」
根室「仰ってる意味が分かりません」
アラハタサンソン「大芸能博で貴様を見た者がいる」
根室「他人の空似でしょう」
アラハタサンソン「何をしていた?」
根室「誰と?」
アラハタサンソン「・・・」
根室「鎌をかけるなんて、闘士の鑑たるアラハタ先生のする事ではないですよ」
アラハタサンソン「かつて、公衆の面前で来栖川男爵に罵倒されたそうじゃないか」
アラハタサンソン「組織の噂になっているぞ。私怨これありと」
根室「・・・」
根室「ははっ。そんなこともありましたっけ?」
アラハタサンソン「我らの足をすくうなら覚悟しろ。日本中の労働者が貴様の敵になるだろう」
根室「何か勘違いをしていませんか?僕は常に、末端の人々と共にあります」
根室「そうそう。近々、貧民窟にてお祭りなども行おうと思っています」
根室「私はアーティストです。世の人々の笑顔が見たいだけなんです」
アラハタサンソン「自分に笑顔を向けてくれる人間だけを欲しがっているんだろう?」
根室「どう取られても結構」
桜子「根室さん・・・」
アラハタサンソン「ゲームは終わったようだな。こちらの話も終わった」
桜子「オオスギ先生が送ってくれるそうです」
根室「結構。大先生のお手を煩わせるまでもない」
根室「帰っていいならこのまま帰ろう」
根室「では失礼します」
桜子「お会いできて光栄でした」
アラハタサンソン「・・・クロだな」
アラハタサンソン「真っ黒だ。どうする。アジトの場所を把握されてしまったぞ」
サカイトシアキ「まあまあ。奴も一応は革命の同志だ。仲間を売って命を危うくするほど馬鹿じゃないだろう」
オオスギアマネ「知られたらまた逃げればいい」
オオスギアマネ「捕まったら獄中で叫び続ければいい」
オオスギアマネ「知ってるか?」
オオスギアマネ「『言、行を顧みず志に突き進む。即ち狂』」
アラハタサンソン「なんだそれは?」
サカイトシアキ「出たぞ。オオスギの至言が」
オオスギアマネ「僕の言葉じゃない」
オオスギアマネ「『MAD・AGE』達が残した言葉さ」
アラハタサンソン「意味が分からん」
サカイトシアキ「全くだ」