怪人はヒーローになりたい

蒸気

怪人はヒーローになりたい(脚本)

怪人はヒーローになりたい

蒸気

今すぐ読む

怪人はヒーローになりたい
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇繁華街の大通り
  キャー!怪人よ!
  普段と変わらない日曜日の午後
  女性の悲鳴が日常を切り裂いた
怪人アストライアー「フフフ・・・逃げ惑え人間たちよ・・・」
怪人アストライアー「不死鳥の石は俺のものだ!」
魔法少女マミマミ「そこまでよ!怪人アストライアー!」
魔法少女マミマミ「これ以上あなたの好きなようにさせないわ!」
  パニックになった人々は怪人から少しでも離れようと、あわてて逃げていく
男の子「怖いよ・・・」
男の子「ママ・・・どこ?」
  小さな男の子が人混みに揉まれていた
  怪人はさりげなく男の子を人混みから連れ出した
怪人アストライアー「危ないから早くここから逃げるんだ」
男の子「え、うん・・・」
  母親らしき女性が男の子を見つけて、彼を引っ張っていった
魔法少女マミマミ「・・・」
魔法少女マミマミ「怪人よ!覚悟しなさい!」
怪人アストライアー「俺を倒せると思うのか?」
魔法少女マミマミ「魔法少女マミマミがお仕置きしてあげる!」
魔法少女マミマミ「マジカルラブリーストリーム!!」
怪人アストライアー「ぐっ・・・!」
怪人アストライアー「ウワー!ヤラレター!」
魔法少女マミマミ「やったわ!」
怪人アストライアー「今日はここまでにしといてやる・・・」
怪人アストライアー「次はないと思えよ・・・」
魔法少女マミマミ「逃げるなんて卑怯よ!待ちなさい!」
  怪人は黒い渦とともに姿を消した
魔法少女マミマミ「みんなもう大丈夫よ!」
女性ファン「マミマミ、ありがとう!助かったわ!」
男性ファン「この町の平和はマミマミのおかげだよ!!」
魔法少女マミマミ「みんなが無事で良かった!」
魔法少女マミマミ「困ったときはいつでも助けに行くわ!」

〇女性の部屋
  ──愛美の部屋
愛美「なんなの?今日のあの演技?」
  愛美は缶ビールを開けると一気に飲み干した
愛美「ふざけてるの?」
怪人アストライアー「ふざけてないよ、愛美ちゃん」
愛美「昔、雨の中であんたのことを助けてあげたのは誰だっけ?」
怪人アストライアー「愛美ちゃんです・・・」
怪人アストライアー「でも、色んな人を騙してるみたいでいやなんだ・・・」
愛美「騙してるんじゃないわ。 みんなに希望を与えるだけ!」
愛美「あなたは悪役」
愛美「そして、私は魔法少女」
愛美「あなたを倒すのは魔法少女として当然だわ」
怪人アストライアー「それはそうだけど・・・」
  ボクは一年前から愛美ちゃんの家で居候している
  魔法少女と怪人が一緒に住んでるなんてだれにも言えない
  もちろん魔法少女である愛美ちゃんと怪人のボクが手を組んでいることも

〇落下する隕石
  一年前に謎の隕石が日本の✕✕市の山の中に墜落した
  多くの人が、隕石を珍しい思ったが、その石に不思議な力があるとは知りもしなかった。
  石は不死鳥の石と呼ばれ──
  石は持った者に不死身の力を与える力を秘めていた
  その石を我先に手に入れようと多くの怪人が地球に襲来した
  僕もその怪人のひとりだった
  仲間の悪い怪人に誘われて、彼らと博物館に移動された石を略奪する計画を立てていた
  仲間の怪人たちは石を得るためなら人間たちを殺しても構わないと思っていた
  ボクはその考えに反対だった
  人を傷つけることはしたくなかった
  そのため、ボクは仲間たちに逆に袋叩きにされ雨の町に捨てられた

〇白いアパート
愛美「あんた、大丈夫?」
愛美「なにがあったの?」
  雨が降る深夜、コンビニから帰ってきた愛美に愛美の自宅前で遭遇した
  愛美はボロボロのボクを自分の部屋まで連れていってくれた
  そして、ボクの怪我が治るまで愛美はつきっきりで看病してくれた
  人を殺したり、傷つける悪い怪人もいたのに愛美はなぜかボクを疑ったりしなかった
  だからボクは愛美のためならなんでもすると決めた
  石を狙う怪人の襲来と同時に、怪人から人々を守るヒーローや魔法少女が現れるようになった
  恐ろしい怪物が蔓延る世界で、ヒーローや魔法少女は、多くの人の希望の光だった
  そんな魔法少女になりたい愛美のためにボクは力を貸すことにした
  こうして魔法少女マミマミは生まれた

〇センター街
怪人アストライアー「グワー!やられたー!」
  いつも通り、僕はマミマミにやられたふりをして地面に倒れこんだ
  やはり演技がへたくそ過ぎたのか
  愛美ちゃんの視線が冷たい
男性ファン「マミちゃん助けてくれてありがとう!」
魔法少女マミマミ「これくらいあたりまえよ!」
  マミマミのファンの人たちが嬉しそうに彼女に声をかける
怪人アストライアー(愛美はいいなぁ・・・)
怪人アストライアー(みんなに感謝されて・・・)
怪人アストライアー(ボクもそんなヒーローになれたらいいのに)
魔法少女マミマミ「怪人アストライアー、あなたを許すわ」
怪人アストライアー「へ?」
男性ファン「だめだよ!マミマミ!そんな怪人を信じちゃ!」
魔法少女マミマミ「そんなことないわ!!」
魔法少女マミマミ「私あなたは優しい怪人だって知っているわ」
怪人アストライアー「マミマミ・・・」
  やっぱり愛美は優しい子だ・・・
怪人アストライアー「本当はボク、ヒーローになりたかったんだ・・・」
怪人アストライアー「たくさんの人から感謝されるヒーローに」
魔法少女マミマミ「ふたりで悪いやつから世界を救いましょう!」
怪人アストライアー「ありがとう、マミマミ!!」
女性ファン「マミマミなんて優しい子なのかしら!」
男性ファン「あんな怪人を許すなんて! やっぱり彼女は天使にちがいない!」
男性ファン「マミマミ最高!」

〇ビルの裏
  ──路地裏
怪人アストライアー「愛美ちゃん、ありがとう。僕のために」
愛美「あんた何言ってるの?ファンのためよ」
怪人アストライアー「はい?」
愛美「あなたの大根芝居にファンは疑い始めていたわ。もしかしたらヤラセなんじゃないかって」
怪人アストライアー「え、そんな・・・!」
愛美「だから、決めたのあなたを仲間にするって!」
愛美「そして、みんな私のことをこう思うわ」
愛美「なんて慈悲深い少女だと!」
怪人アストライアー「は、はぁ・・・?」
  まあそんな簡単にヒーローにはなれないか
怪人アストライアー(でも、怪人だって悪いやつに決めつけられるより良いか)
怪人アストライアー(周りのボクの見方も変わるかもしれない)
怪人アストライアー「でも、そんなことしなくても愛美ちゃんが本当は優しい子だってぼくは知ってるよ」
愛美「おべっかはよしてよ・・・」
怪人アストライアー「本当のことを言ってるだけだよ」
愛美「アストライアーがそう思ってるだけじゃだめなの!」
愛美「私はみんなに認めてもらいたいの!」
怪人アストライアー(愛美ちゃんの承認欲求は常軌を逸している・・・)
怪人アストライアー(愛美ちゃんはもう十分に素敵な子なのに)
怪人アストライアー(どうしたらそれに気づいてくれるんだろう・・・)

〇SHIBUYA109
  そうしてボクとマミマミは一緒に戦うようになった
  元から愛美ちゃんは不思議な力があるわけではなく、これまでもずっとボクがやられたふりをしていた
  そのため怪人を倒すのはもっぱらボクの仕事だった
男性ファン「いいぞ!アストライアー、かっこいい!」
  ボクを応援してくれる声は嬉しかった
  たくさんの人に認められたいと言う、愛美ちゃんの気持ちがわかるような気がした
  いまやボクは怪人でありながら、人を救うために怪人と戦うダークヒーロだった
  前みたいに罵声を浴びせられることはもはやない
怪人アストライアー「マミマミ・・・もしかして君は・・・ こうなることを考えて」
魔法少女マミマミ「なに?」
  キャー!
  突然の悲鳴が会話を遮った
怪人アストライアー「な、なんだ!」
怪人モラハラー「アストライアー、久しぶりじゃねぇか?」
怪人アストライアー「どうしてモラハラーが・・・?」
  モラハラーは博物館を襲撃しようと誘ってきた怪人のひとりだった
  まだ地球に残っていたなんて知らなかった
魔法少女マミマミ「早くでていきなさい!」
怪人モラハラー「うるせぇな!会話に口を挟むんじゃねぇよ!」
魔法少女マミマミ「きゃっ!」
  マミマミはモラハラーの攻撃によって吹っ飛ばされた
怪人アストライアー「マミマミ!」
怪人アストライアー「マミマミを傷つけるなんて許さない!!」
怪人モラハラー「おいおい、お前そんな人間の小娘と組んでるのか?正気か?」
怪人モラハラー「また俺と組まないか?」
怪人モラハラー「不死鳥の石をふたりで手に入れようぜ」
怪人アストライアー「おれは・・・」
怪人アストライアー「お前とは組まない!!」
怪人アストライアー「俺は人が笑ったり喜んだりしてくれる方が好きだ!」
怪人アストライアー「人が苦しんだり、悲しんでる姿なんかみたくない!!」
怪人モラハラー「バカめ・・・人間に絆されたのか」
怪人モラハラー「ふたり仲良くぶっ殺してやるよ!」
怪人アストライアー「うっ!」
魔法少女マミマミ「アストライアー!」
  愛美が近寄ってこようとするが、彼女を止めた
怪人アストライアー「マミマミ!きちゃだめだ!」
  モラハラー相手ではさっきみたいな怪我ではすまない
怪人モラハラー「おいおい、よそ見している場合か?」
怪人アストライアー「うっ!ゲホッ・・・!」
魔法少女マミマミ(わたしに力があれば・・・!!)
魔法少女マミマミ「彼を助けてあげられるのに!」
  マミの体が突然光り出した
魔法少女マミマミ「この光りはなんなの?」
  マミの姿は変わった。彼女は、まるで女神のようだった。
怪人アストライアー「マ、マミ?」
魔法少女マミマミ「不思議・・・力がみなぎってくる」
魔法少女マミマミ「覚悟しなさい!」
魔法少女マミマミ「みんなはわたしが守る!!」
怪人モラハラー「なんだ!この力は!」
怪人モラハラー「ただの小娘じゃなかったのか・・・!?」
怪人モラハラー「うっ、うわあああ!!!」
  攻撃を受けてモラハラーの姿は消えた
怪人アストライアー(愛美は本当に魔法少女だったのか・・・)
怪人アストライアー「マミマミ、ありがとう。助かったよ」
魔法少女マミマミ「う・・・うん」

〇ビルの屋上
  ──ビルの屋上
怪人アストライアー「愛美ちゃん、怪我は大丈夫?」
愛美「まだちょっと痛いけど大したことないわ」
愛美「女の子の顔を殴るなんてほんとあの怪人はどうかしてる・・・」
愛美「怪人なんて・・・」
愛美「あんたは違うわよ・・・?」
怪人アストライアー「うん・・・」
愛美「貴方こそボロボロじゃない?大丈夫?」
怪人アストライアー「怪人は人間より怪我の治りが早いんだ」
愛美「そう・・・」
愛美「あいつと一緒に行かなくて良かったの?」
怪人アストライアー「モラハラーと?まさか!?」
怪人アストライアー「ボクは誰かか喜んだり笑ってくれたりしたほうが好きだ」
怪人アストライアー「モラハラーみたいに人を傷つけたくない」
愛美「私もよ。みんなに幸せでいてほしい」
愛美「これからもよろしくね、相棒」
怪人アストライアー「よろしく、魔法少女マミマミ」
  ボクらはお互いに固い握手を交わした

コメント

  • マミマミに言われた通りに演技するけど下手すぎて叱られるアストライアーが可愛いかったです。善と悪はキッパリ分かれているわけではなくて、善寄りの悪や、悪寄りの善、完全な中立など、いろんな存在がいるんですよね。この二人のように互いに影響しあっていい方向に傾いていけば理想なのですが。

  • 最初は彼女は承認欲求が全ての女だと思いましたが、本当にやさしい子でよかったです。

  • マミちゃん、承認欲求が強いと書いてありましたが、普通にいい子じゃん!
    怪人を足蹴にするために拾って来たわけでもなく、敵役を命令するわけでもなく、あくまで『お願い』でというところが優しいなと思いました。
    怪人くんについては、「みんなに喜んで欲しい」は非常に共感しました。
    いつか他の怪人達にも、伝わればいいですね。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ