リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第九話 現れる悪魔(脚本)

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久望 蜜

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〇屋敷の大広間
アサギ「町はずれの教会。今は廃屋だが、あいつを拾った場所だ」
アサギ「かろうじて雨はしのげるし、もしかしたらそこにいるかもしれねぇ」
ユリナ「わかりました! 行ってみます」
ヨモギ「アサギさん、ありがとうっす!」
アサギ「二人とも、あいつを頼む」

〇荒廃した教会
ユリナ「アサギさんがいっていたのは、この教会ね・・・・・・」
ヨモギ「人の気配がなくて、不気味っすね・・・・・・。何か出そうっす」
ユリナ「わたしたちがお化けを怖がって、どうするのよ!?」
ヨモギ「そりゃ、そうっすけど・・・・・・」
ユリナ「ヒクイ! いるの!? お願いだから、出てきて!」
「きゃあ!」
カスアリウス「あーあ、ここなら見つからねぇと思ったのに・・・・・・。何故わかった?」
ユリナ「ヒクイ・・・・・・なの?」
カスアリウス「俺は、上級悪魔カスアリウス。 ヒクイじゃねぇよ」
ヨモギ「その名前、聞いたことがないっすね」
カスアリウス「監獄に捕まったことはねぇからな。この辺りは、もともと俺が縄張りにしていたんだ」

〇大きな木のある校舎
ユリナ「もしかして、イリスが石になった後に助けてくれた、学校の屋上の人影って──」
カスアリウス「俺だ。天界から逃げてきた奴らに縄張りを荒らされちゃ、堪らねぇからな」
カスアリウス「お前らに協力してやったのも、そのためだ」

〇荒廃した教会
ヨモギ「じゃあ、正体を現すのは、悪魔を全部倒してからでもよかったんじゃないっすか?」
ヨモギ「どうして、このタイミングで石を奪う必要が?」
カスアリウス「ふん、そこまで答えてやる義理はねぇな。 何でも訊けば、教えてもらえると思うなよ」
ヨモギ「くっ! 先輩、戦うしかないっすよ!」

〇新緑

〇荒廃した教会
アルテミシア「さぁ、大人しく縛につけっす!」
アルテミシア「・・・・・・って、先輩! 何で天使の姿に戻らないんすか!?」
ユリナ「わたしが甘いのは、わかっているよ」
ユリナ「でも・・・・・・ヒクイ!」
カスアリウス「うるせぇ! 俺はもうヒクイじゃねぇって、いっているだろ!」
ユリナ「ヒクイだって、十分甘いんだから! 悪魔を倒すだけなら、自分一人でできたはず」
ユリナ「それなのに、わたしたちに協力して、囮までやってくれたこともあった」
カスアリウス「お、俺は雑魚どもの悪魔の力を吸いとって、結界を壊すほどの力を手に入れたかっただけだ!」
カスアリウス「そのためには、奴らを石にする必要があったからな」
アルテミシア「ウチらを利用したってことっすか!?」
カスアリウス「あぁそうだ。俺の力じゃ、加減がうまくできなくて雑魚どもを消滅させちまうからな」
ユリナ「嘘ね。石が目的なら、最初のときに三匹も始末していない」
ユリナ「それに、結界を壊したかったのなら、ヒクイが石を奪ったときにイリスの石だって盗めたよね?」
カスアリウス「・・・・・・」
ユリナ「ヒクイ、悪魔を封じた石を返して!」
ユリナ「どうして力を求めているのかわからないけど、そんな無茶をしたら、ヒクイだって無事じゃすまない」
カスアリウス「俺はどうなったって、いいんだ!」
ユリナ「ヒクイ、この町からアサギさんを逃したでしょ。ヒクイにとって、アサギさんは大切な人間なんだよね?」
アルテミシア「なるほど。もし力が暴走しても、町の外に被害が出ないように結界を解除しなかった、ということっすか?」
カスアリウス「うるせぇ! そんなんじゃねぇよ!」
ユリナ「アサギさん、心配していたよ。 一緒に帰ろう?」
カスアリウス「そうか、この場所を教えたのは・・・・・・けど、諦めるわけにはいかねぇ」
ユリナ「どうして!?」
カスアリウス「あいつは・・・・・・ミルヴスは、今の俺の力では倒せねぇ。ユリナ単体でも無理だ」
アルテミシア「ミルヴスを倒したいんすか!? 同じ悪魔なのに?」
カスアリウス「こっちにも、事情があるんだよ!」
ユリナ「じゃあ、わたしとヒクイが協力して倒せば、万事解決じゃない!」
カスアリウス「は? 本気でいっているのか?」
ユリナ「え? 何で? 今までも協力してくれたでしょ?」
カスアリウス「俺は悪魔だぞ? お前らを裏切らない保証が、どこにある?」
ユリナ「だって、ヒクイは優しいもの」
カスアリウス「っ!?」
カスアリウス「おいヨモギ、このバカを何とかしろ!」
アルテミシア「無理っすよ。先輩は、頑固っすから」
カスアリウス「ハァ・・・・・・。わかったよ。俺の負けだ」
アルテミシア「で、その肝心のミルヴスは、どこにいるっすか?」
アルテミシア「電話のあと、ヒクイの様子がおかしくなったのを察するに──」
カスアリウス「鳶坂だ。あいつにとり憑いている」
ユリナ「え、そうだったの!?」
カスアリウス「あいつ、上級悪魔のくせに、人間に入りこんで盾にしてやがる。感知されづらくなるしな」
アルテミシア「なるほど・・・・・・。上級ともなると、殻の身体を強化できるので、厄介っすね」
ユリナ「そういえば、ショッピングモールで先生と話していたのって・・・・・・」
カスアリウス「学校で奴が俺に気づいたから、呼びだされたんだ」
ユリナ「何の用だったの?」
カスアリウス「この町の結界を解け、または魔界への道を開け、自分の下につけ・・・・・・だったか」
ユリナ「何それ!?」
カスアリウス(従わないと、俺の正体をバラす、こいつらを皆殺しにするともいわれたが・・・・・・。 まぁ黙っておこう)
カスアリウス「同じ上級悪魔でも、奴のほうが上だからな。 それに、俺は魔界を逃げだした身だ」
アルテミシア「どうして魔界から逃げたんすか?」

〇魔界
ヒクイ「悪魔っていうのは、粗暴な奴が多いんだよ」
ヒクイ「俺の身体が人間に似て小さいもんだから、しょっちゅう難癖をつけてくる」
ヒクイ「まぁ、俺は生まれつき力は強いから撃退できたが、ほとほと嫌気がさしていた」
ヒクイ「それで人間界に来たんだ」

〇荒廃した教会
ユリナ「そうだったんだ・・・・・・」
アルテミシア「ヒクイも人間相手に、乱暴っすけどね」
カスアリウス「あれは、アサギさんが絡まれたからな。 こっちから仕掛けたことはねぇよ」
ユリナ「ほら、やっぱりヒクイは優しいじゃない」
カスアリウス「うるせぇ! それ、何回目だよ!?」
???「おや、ヒクイ君。 結局、天使の味方をするんですね」
カスアリウス「ぐあっ!」
「ヒクイ!?」
カスアリウス「てめぇは・・・・・・鳶坂!?」
鳶坂「やぁ。 こんなところで、天使と結託の相談かい?」
アルテミシア「この、よくも!」
鳶坂「そんな攻撃、僕には効かないよ」
アルテミシア「うわっ! こいつ、強いっす・・・・・・」
鳶坂「さぁ、天使の石を渡せ。 そうすれば、君たちの命だけは助けてやろう」
ユリナ「嫌よ! 誰が、あんたなんかに!」
ユリナ「きゃあっ」
鳶坂「石を渡さないなら、カスアリウス・・・・・・君が魔界への道を開くのでもかまわない」
カスアリウス「・・・・・・わかった」
ユリナ「ヒクイ!」
カスアリウス「けど、安定して通れる道を開くには、三日かかる」
カスアリウス「それまでにこいつらに手を出したら、俺は自ら命を断つ」
ユリナ「なっ!」
カスアリウス「俺にいなくなられたら、困るんだろ」
鳶坂「そのときは天使の石を奪うだけだけど、まぁ手間は少ないほうがいいか」
鳶坂「いいよ、今は引こう。 三日後までに、ここに道を開いておけ」

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