先輩の秘密(脚本)
〇走行する車内
では、なぜ彼女がそこに就職したのか。話は彼女の幼少期に遡る。
珠璃の母親「そろそろ我が家よ」
珠璃の父親「うちに帰ったら、ご飯作ってやるよ」
珠璃の兄「父さんと母さんの作る料理、楽しみだよ!」
珠璃(幼少期)「そうね」
珠璃は何不自由なく生活していた。
その時だった!
珠璃の母親「え?」
珠璃の父親「どうした?」
うわーっ!
〇ゆるやかな坂道
珠璃の家族の車は、追突事故に巻き込まれたのだ。
(どうか、お父さんとお母さん、無事でいて....!!!!!)
しかし、願いは通じなかった。
警察官「君たちのお父さんとお母さんは、困ったことに、焼死してしまったんだ」
なお、トラックの運転士に関しては、飲酒運転だということが分かり、逮捕されている。
運転手「俺は少し飲んだだけだって! 俺は一家離散してて孤独なんだよ!」
警察官「通用しません!署で全部話してもらいます!」
その後、そのトラック運転手は、森薫の親戚だったことが分かった。
〇法廷
その後の裁判において、有罪が確定し、会社から賠償金が出たものの、珠璃の心は満たされなかった。
珠璃の兄「まだ納得いかないのかい?」
珠璃の親戚「賠償金も出たんだし、僕が君らの面倒も見てるんだから、安心しなよ」
珠璃(幼少期)(あの運転手の身内を突き止めて、復讐するわ...!!!)
珠璃の親戚(こんな事件、二度と起きてほしくないわね)
〇一人部屋(車いす無し)
山本珠璃「行ってきます」
珠璃には、両親を失った悲しい過去を背負っていたのだ。「いつか復讐してやる」という思いが、彼女にいつしか芽生えていたのだ。
山本珠璃(いつか、森薫を殺してやる!)
〇オフィスのフロア
上司「森君、おはよう」
森薫「おはようございます、森下課長」
上司「ほほう、覚えててくれてたんだね」
会社の同僚「おはようございます」
森薫「先輩、おはようございます」
山本珠璃「おはよう」
会社の同僚「なんか、山本先輩って、話しにくい感じだと思うな」
森薫「なぜでしょうか?」
会社の同僚「あんな目つき、過去に絶対何かしたんだと俺はにらんでるんだよ」
森薫「何か、きっかけでもあるんじゃないのでしょうか」
〇レトロ喫茶
昼食の時間になった。
森薫(なんて先輩は、私に冷たいの?)
前川恵「ちょっといい?」
森薫「確か、同じバス会社の運転手の、前川先輩ですよね?」
前川恵「正解。今日は深夜バスの夜勤明けよ。いったいどうしたの?」
森薫「実は、山本先輩が、私に対して冷たいんです」
前川恵「それって、どういうことなのかしら?」
ウェイター「お客様、ご注文は?」
前川恵「オムライスセットをお願いします。飲み物は、レモンティーをお願いします」
森薫「じゃあ私は、カレーライスセットで、飲み物は、ホットミルクをお願いします」
ウェイター「かしこまりました」
しばらくして、食事が用意された。
ウェイター「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます!」
食事をしながら話を進める二人。
前川恵「そういえば、聞いた話だけど、山本先輩は、昔交通事故で両親を亡くしてるの」
森薫「それ、同僚からも聞きました。私の親戚で、一家離散していたって言ってます」
前川恵「つまり、あなたはその事故の加害者の親戚なの?」
森薫「ええ。ちっとも知りませんでした」
前川恵「犯罪を起こせば、加害者家族も苦しむのは、事実よね」
森薫「私の場合は遠かったので何とも言えませんが、とにかく不安でしたね」
山本先輩の秘密を知った森薫は、びっくりした。やがて、二人は食事を終えた。
ウェイトレス「食器、おさげします」
「お願いします」
その後、森薫は会計を支払った。
〇オフィスのフロア
倉田俊成「ほほう、それで悩んでるわけだね?」
私は、山本先輩がいないところで話をしていた。
森薫「そうなんです。山本先輩に悲しい事件があったとは、知りませんでした」
倉田俊成「とりあえず、このことは山本君には黙っておいてくれよ」
森薫「はい」
氷川先輩が、薫の耳元でこう言った。
氷川純也「山本先輩は、何でも君の命を狙ってるらしいが、僕が何とか守って見せるからね」
森薫「氷川先輩...!!」
〇アパートの台所
その夜。
森薫「祖父母から送られてきた、野菜を使って料理しなくっちゃ」
数分後。
森薫「できたわ!」
完成したのは、焼うどんだった。コンソメスープも作っていたのだ。
森薫「誰かしら?」
森薫は電話に出た。
森薫「もしもし?」
〇おしゃれなキッチン
森薫の母親「薫?一人暮らしは順調?お父さんは、今日夜勤で遅いから、ちゃんと食事して、きちんと生活するのよ?」
〇アパートの台所
森薫「ちゃんと生活してるわ。お父さんにも伝えてね」
私はそう言って、電話を切った。
森薫「メールだわ!」
そのメールは、薫の弟からだった。
森薫「お姉ちゃん、こっちは順調?僕は寮生活順調だよ。今日は軽音楽部の練習で遅くなったけど、頑張ってるよ」
森薫「そっか、今年国立大学に現役で受かったんだもんね。しかも私の母校!」
森薫は、元気づけられた。
〇一人部屋(車いす無し)
山本珠璃「ただいま。今日はあの子とは話す機会はなかった」
家に帰り、両親の写真に手を添える珠璃。
山本珠璃(いつか、両親の仇、取って見せるわ!)
珠璃の頭の中には、いつしか復讐の想いが日に日に募るのであった。