リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第八話 訊く天使(脚本)

リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

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〇広い和室
ヒクイ「これさえ、あれば──」
???「そこまでよ、ヒクイ!」

〇広い和室
ヨモギ「その石をどうするつもりっすか!?」
ヒクイ「ちっ。俺の動きを張っていたのか?」
ユリナ「昼間のあなたの様子がおかしかったから、心配で・・・・・・」
ヨモギ「それに、昼間に捕まえた悪魔は、上級悪魔からウチらの正体を聞いていたっす!」
ユリナ「わたしたちの正体を知っているのは、わたしたちを除くと、あなたしかいない」
ユリナ「こんなこと、考えたくはなかったけど・・・・・・」
ヒクイ「へっ! 相変わらず、甘い奴だな。 そんな考えだと、また仲間を守れないぞ」
ユリナ「・・・・・・・・・・・・」
ヨモギ「それより、正直に答えろっす!」
ヨモギ「お前が天界から脱走した、上級悪魔ミルヴスっすか? ヒクイにとり憑いていたんすか? それとも──」
ヒクイ「とり憑いたんじゃねぇ。 この身体は、最初から悪魔の身体だ」
ヒクイ「もとから鳥羽ヒクイなんて人間、存在しねぇよ」
ユリナ「そんな・・・・・・!」
ヒクイ「全く、天使に知られちまったら、ここにはもう住めねぇな」
ヒクイ「どのみち目的は達したから、まぁいいか。 あばよ!」
ユリナ「ヒクイ! 待って──」
ヨモギ「くっ、逃げられたっす・・・・・・」

〇広い和室
ヨモギ「全く、ウチらを騙すなんて信じられないっすよ! あんな奴を信用したのが、間違いだったんす!」
ユリナ「うん・・・・・・」
ヨモギ(昨夜から、先輩の元気がないっす・・・・・・。ヒクイは戻ってくる気配がないし・・・・・・)
ヨモギ(イリス様の石は無事だったけど、悪魔を封じた石は全部持っていかれたっす)
ヨモギ「あいつ、石をどうするつもりっすかね・・・・・・?」
ユリナ「わたし、ちょっとその辺を探してくる!」
ヨモギ「え? さすがにもう、その辺にはいないっすよ!」
ヨモギ「あーあ、駄目だ、全然聞こえていない・・・・・・」

〇学校脇の道
ユリナ「ヒクイ、どこに行ったんだろ・・・・・・? 学校? 昨日のショッピングモール? それとも──」
ユリナ「ん? あれは・・・・・・」
ユリナ「鳶坂先生? ・・・・・・ですよね?」
鳶坂「君は、確か・・・・・・鳥羽ヒクイ君と一緒にいた生徒だね」
鳶坂「今日も休校だけど、一人で出歩くのは感心しないな。まだ、例の不審者も捕まっていないのに」
ユリナ「すみません・・・・・・」
鳶坂「あれ、そういえば君、どこのクラスだったっけ?」
ユリナ「そ、それよりも先生、昨日ショッピングモールにいましたよね?」
ユリナ「ヒクイ君と、何か喋っていたようですけど・・・・・・」
鳶坂「ああ。そういえば、会ったね。 会話の内容は聞こえたかい?」
ユリナ「あ、いえ、それは聞こえなかったです。 あの、一体何の話をしていたんですか?」
鳶坂「ただの世間話だよ。 彼とはたまたま、あそこで出会ってね」
ユリナ「そうだったんですか・・・・・・」
ユリナ(それじゃあ、ヒクイの居場所の手がかりにはならないか・・・・・・)
鳶坂「そんなことより、家まで送っていくよ。 君みたいなかわいい女の子、一人歩きは危ないからね」
ユリナ「え? えっと──」
ヨモギ「あー! 先輩、やっと見つけたっす!」
ユリナ「ヨモギ!?」
ヨモギ「もう、一人で飛びだしていくから、心配したっすよ! ほら、早く帰るっす」
ユリナ「ちょっと、ヨモギ、そんなに引っぱらないでよ! じゃあ、先生、さようなら──」
鳶坂「あーあ、もう少しだったのに。 残念だなぁ」

〇開けた交差点
ヨモギ「全く、知らない人について行っちゃ駄目っすよ!」
ユリナ「いや、ヒクイの学校の先生だし! そんな危ないことには、ならないから!」
ヨモギ「先輩は、意外とチョロいみたいっすからね〜」
ユリナ「どういう意味よ、それ!?」
ヨモギ「あ!」
ユリナ「な、何!? どうしたの?」
ヨモギ「思いだしたっす! ウチ、アサギさんのスマホの電話番号を聞いていたっすよ!」
ユリナ「え?」
ヨモギ「アサギさんなら、ウチらの知らないヒクイのことを何か、知っているかもしれないっす!」
ユリナ「そうよ、その手があった!」

〇怪奇現象の起きた広間(血しぶき無し)
アサギ「はい、もしもし──」
ユリナ「あの! アサギさんですか!?」
アサギ「その声・・・・・・ユリナちゃんだったかな?」
ユリナ「はい・・・・・・。えっと、昨日お見送りしたばかりなのに、ごめんなさい。 その・・・・・・」
アサギ「ヒクイに何かあったか?」

〇広い玄関
ユリナ「あ・・・・・・その、ヒクイが怪我をしたとか、そういうのではないんです。ただ──」
ヨモギ「家出したっす!」
ユリナ「あ、こら! ヨモギ!」
ヨモギ「アサギさんなら、何か知っているっすよね? 例えば、ヒクイの正体とか・・・・・・」
アサギ「ハァ・・・・・・。あいつ、どこまで喋った?」
ヨモギ「正体が悪魔だと、バラしたっす」
ユリナ「ち、ちょっと、そんなことをアサギさんにいっちゃ──」
アサギ「あぁ、そこまで白状したんなら、隠すことはねぇな」
ユリナ「ヒクイのこと、知っていたんですか!? それなのに、ヒクイの保護者を・・・・・・?」

〇怪奇現象の起きた広間
アサギ「話せば長く・・・・・・はならねぇな」
アサギ「十年前、あいつが人間界で住む場所も食うものもなくて困っていたから、拾ったんだ」
ヨモギ「ど、どういうことっすか!?」
アサギ「いや、そのまんまの意味」

〇荒廃した教会
アサギ「野垂れ死にそうなガキがいたから拾ったら、そいつが悪魔だったってだけだ」
ヨモギ「そんなこと、あるんすか・・・・・・?」

〇怪奇現象の起きた広間
アサギ「まぁ俺は昔から、トラブルに巻きこまれる体質だからなぁ」
アサギ「人間じゃねぇものに、よく好かれるし」
???「・・・・・・」

〇広い玄関
ユリナ(確かに、人間にしてはヨモギもよく懐いていると思っていたけど・・・・・・)
ヨモギ「何で、ヒクイはそんな状態で・・・・・・?」
アサギ「詳しくはわからないが。魔界で馴染めなかったらしい。あいつ、悪魔にしては優しすぎるところがあるからな」
ユリナ「確かに、ヒクイは優しいですもんね!」
ヨモギ「けどそんなに優しいなら、何でウチらを騙したんすか!?」

〇屋敷の大広間
アサギ「その辺の詳しい事情は知らねぇが、本人に直接訊いてみるしかないんじゃねぇか?」
アサギ「あいつの行きそうな場所に一つ、心当たりがある」

次のエピソード:第九話 現れる悪魔

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