〇西洋風の駅前広場
ヴィエリゼ「ふう・・・」
ダーリナ「今の魔族で最後です」
ヴィエリゼ「さすがにちょっと疲れちゃった」
ダーリナ「少し休みましょう」
ヴィエリゼ「いいえ、まだケルピーが残ってるわ。 早く見付けてあげないと・・・」
ゴーレム「エリゼ様ー!!」
ゴーレム「街外れの森に、ケルピーがいたよ！ 今、お姉ちゃんが宥めてる！」
ヴィエリゼ「よかった、ローレットと合流できたのね」
ヴィエリゼ「すぐに行くわ！」

〇大樹の下
ケルピー「ブルルルル・・・」
ローレット「だーかーらー、 あたしは味方だって言ってんじゃん！」
ゴーレム「お姉ちゃん、エリゼ様連れて来たよ！」
ヴィエリゼ「ローレット！」
ローレット「エリゼ！　無事でよかった！」
ローレット「オークション会場で何があったの？」
ヴィエリゼ「それは・・・」
ダーリナ「その話は城に戻ってからにいたしましょう」
ゲンティム「おっ、全員揃ってんな」
ダーリナ「ゲンティムさん！」
ダーリナ「勇者はどうなりました？ まさか殺──」
ゲンティム「してねえよ!!」
ゲンティム「ま、ちょっくら痛めつけてやったけど」
ローレット「え、何してんの!? 目的は一緒だったじゃん!!」
ヴィエリゼ「私のせいなの・・・」
ローレット「エリゼ・・・？」
キオル「待ちやがれ!!」
ローレット「キオル？　ミアも・・・」
キオル「初めから俺たちのこと騙してたんだな」
ローレット「何のこと？」
キオル「とぼけんじゃねえ!!」
ルカード「キオル、落ち着いて・・・」
ルカード「魔王──」
ルカード「忘れ物だ」
ヴィエリゼ「あ・・・」
ヴィエリゼ（剥製の妖精・・・）
ヴィエリゼ（持ってきてくれたんだ）
ローレット「これ──」
ローレット「何よ、これ・・・こんな・・・」
ヴィエリゼ「魔界に連れて帰ってあげましょう」
ローレット「こんな、ひどい・・・っ」
キオル「・・・ッ」
ヴィエリゼ「今日のところはここまでにしましょう」
ヴィエリゼ「次に会った時には──」
ルカード「きみは・・・」
ヴィエリゼ「あなたは・・・」
「敵だ　　　　/　　　　敵よ」
ルカード「・・・っ」
ミア「ルカード!?」
キオル「おい、しっかりしろ！」
キオル「クソッ！ 回復魔法は自信ねえってのに！」

〇黒

〇魔界
ルカード「うわぁぁあああーっ!?」
ルカード「ちょっ、待ってってば!!」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ルカード「痛ぁ〜。回復薬残ってたっけ・・・」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ルカード「どうしたの？」
ヴィエリゼ「すごい」
ヴィエリゼ「私の魔法で倒れなかった人は あなたが初めて」
ヴィエリゼ「ねぇ、もっと遊ぼう？」
ルカード「あ、遊ばないっ！」
ルカード「俺は魔王に用があるんだ!!」
ヴィエリゼ「お父様は最近ずっと忙しくしていて、 何日もお姿を見ていないわ」
ルカード「忙しくしてるって・・・」
ルカード「まさかまた人間界を侵略しようと──」
ヴィエリゼ「そうよ」
ヴィエリゼ「ワイヴァーンとグリフォンが人間に捕らわれてしまったから、助けに行くのですって」
ルカード「そんな上位魔獣の捕獲依頼は 出てないはずだけど・・・」
ヴィエリゼ「他にも、小型の魔獣たちが たくさん捕まってしまったみたいなの」
ルカード（もしかして、密猟──）
ヴィエリゼ「お父様は、制限が破られた以上、 容赦はしないって仰っていたわ」
ルカード（今まで必要最低限の狩猟は 魔族側にも黙認されていたけど・・・）
ルカード（人間側が欲をかいて上級魔獣に手を出した結果、魔王の逆鱗に触れたのか）
ルカード「──よしっ!!」
ルカード「きみの話が真実なら、 俺が人間界の歪みを正してみせる！」
ヴィエリゼ「本当に・・・？」
ルカード「うん、本当に」
ルカード「約束だ、ヴィエリゼ」

〇貴族の部屋
ヴィエリゼ「・・・ルカードっ」
ヴィエリゼ「──はっ」
ヴィエリゼ「・・・っ」
ヴィエリゼ「夢・・・」
グエル「おはようございます、ヴィエリゼ様」
ヴィエリゼ「グエル・・・」
グエル「あら・・・顔色が優れませんね」
グエル「昨夜は色々あって、眠れませんでしたか？」
ヴィエリゼ「大丈夫。ちょっと夢見が悪かっただけ」
ヴィエリゼ「朝食はいいや。 書斎にいるから、何かあったら声掛けて」
グエル「あっ・・・」
グエル「ヴィエリゼ様・・・」

〇屋敷の書斎
ヴィエリゼ「・・・はぁ」
ヴィエリゼ「だめだめっ」
ヴィエリゼ「落ち込んでたって何にもならないんだから」
ヴィエリゼ「今、私にできることを考えなくちゃ──」
ヴィエリゼ「そういえば、『死ぬまでにしたい100のこと』どのくらい達成したんだろう」
ヴィエリゼ「スライムシリーズは ほとんどクリアしてる・・・」
　　ペンを手に、達成した項目に線を引く。
ヴィエリゼ「『ゲンティムの家に遊びに行く』 『ローレンとキャッチボール』」
ヴィエリゼ「これも済み、と・・・」
ヴィエリゼ「『ダーリナに寝起きドッキリ』」
ヴィエリゼ「これは近いうちにやらなくちゃ。 ダーリナ怒るだろうな～」
ヴィエリゼ「『フェゴールの羽根でダウンコートを作る』」
ヴィエリゼ「これは換羽の時期に本人に内緒で落ちた羽根を回収すればいける・・・かな？」
　　最近書いたばかりなのに、見返していると、なんだか懐かしい気持ちになってくる。
ヴィエリゼ「あっ・・・」
　　『勇者とお出掛けしたい』
　　『勇者と手を繋ぎたい』
　　勢いのままに書いた、勇者としたいこと。
ヴィエリゼ「これとこれはクリア」
ヴィエリゼ「手料理は・・・食べ損ねちゃったなぁ」
　　ルカードが叶えてくれた様々なことを、ひとつひとつ、線を引いて消していく。
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「こんなことも書いたっけ」
　　『死ぬまでにしたい100のこと』の、一番最後の願い事。
　　それを黒く塗り潰して、新たに願いを書き直した。