最後にもう1つ質問します

ましまる

面接官の苦悩(脚本)

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〇大企業のオフィスビル
  ──就活
  
  今や新卒生にとっての就活は、
  ”戦争”などとと形容されることもあり、
  事前準備や戦術も必要とされる。
  そして、新卒採用に向けて
  大きな関門とされるもの・・・
  そう、「面接」である。

〇オフィスの廊下
  ここは、都内某所に本社を構える
  某大手企業。
  これから、就活生に対する
  二次面接が行われようとしている。
  面接担当者は人事課長。
  
  ここを通過した者のみが、
  役員による最終面接に進むことができる。

〇面接会場
就活生「・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・です。 以上です」
人事課員「はい、ありがとうございます」
人事課長「では、最後にもう1つ質問します」
人事課長「あなたを「おでんの具」で例えると、 何になるでしょうか?」
就活生「はいっ!」
就活生「私を「おでんの具」で例えると、 「黒はんべ」です」
就活生「全国的には知名度が高くないですが、 静岡のおでんでは定番の具材で、 出汁をよく吸い込んで旨味を増します」
就活生「私自身も、地元の静岡で学んだことを基に 多くの知識や情報を吸い込もうとしており そこは黒はんべと共通していると考えます」
就活生「もし御社に入社させて頂けましたら、 御社の社風を黒はんべ以上に目一杯吸収し 一層自身を高めたいと思っております」
人事課長「はい、結構です。 有難うございます」
人事課員「以上で二次面接は終了となります。 結果につきましては・・・・・・」
就活生「本日は誠に有難うございました。 失礼します」
人事課員「課長、お疲れ様でした」
人事課員「ちなみに、最後の質問はいったい・・・」
人事課長「ああ、あれね。 想定外の質問をすると、 面接相手の本質ってよく見えてくるの」
人事課長「機転が利くかどうか丸わかりだし、 本音も見え隠れするから、楽しいわよ!」
人事課員「ちなみに今の方はどうでしたか?」
人事課長「合格ね すぐに回答できたし、その内容も ちゃんと自己アピールできていたから」
人事課長「吸収力の高さをアピールするのに、 「黒はんべ」なんてもってこいよね。 しかも、地元愛も入れ込めるし」
人事課員「では、最終面接にも・・・」
人事課長「進ませていいわ」

〇大企業のオフィスビル
  ──翌年

〇面接会場
人事課長「では、最後にもう1つ質問します」
人事課長「あなたを「焼き鳥の具材」で例えると、 何になるでしょうか?」
就活生「はいっ!」
就活生「私を「焼き鳥の具材」で例えると、 「白ネギ」です」
就活生「白ネギは、それだけで「いかだ」にしても お肉と一緒に「ネギま」にしても、 美味しく食べられる食材です」
就活生「これまでの学生生活で、 個人行動、集団行動のいずれにおいても 価値や楽しみを見出してきた私と 共通する存在だと考えます」
就活生「なお、一般的に、 焼き鳥屋さんのメニューでは、 野菜串の割合は2割程度です」
就活生「御社の従業員も、女性の割合が 2割程度と伺っております」
就活生「もし御社で働くことができましたら、 焼き鳥の「いかだ」のように、 2割の中でも堂々と一人前になり、」
就活生「「ねぎま」の白ネギのように、 男性社員と共にお互いを高めながら 仕事していきたいです」
人事課長「はい、結構です。 有難うございます」
人事課員「以上で二次面接は終了となります。 結果につきましては・・・・・・」
就活生「本日は誠に有難うございました。 失礼します」
人事課員「課長、お疲れ様でした」
人事課員「今年も、盛り込んできましたね」
人事課長「ええ、結局のところ、 この質問が一番人柄を見られるからね」
人事課員「それで、今の方はどうでしたか?」
人事課長「即答できたのはよかったのだけど、 後半はちょっとグチャグチャだったわね」
人事課長「焼き鳥の中の野菜というマイノリティと、 男社会の女性を重ねたかったのだろうけど ちょっとこじつけが強いかな」
人事課長「でも、男性社員の中でもバリバリ働くって 気持ちは伝わる内容だったわね」
人事課員「最終面接はどうしましょうか?」
人事課長「そうね、進ませていいわ」

〇大企業のオフィスビル
  この年の二次面接も恙なく終了した。
  しかし、同じような質問を
  2年続けて行ったということは
  就活生に知れ渡ることとなった。

〇黒
  121: 名無しの就活生さん
  
  おでん、焼き鳥がきたから、
  来年は寿司あたりか?
  122: 名無しの就活生さん
  
  >>121
  俺ハンバーグ寿司
  123: 名無しの就活生さん
  
  >>122
  餓鬼っぽいから不採用
  ここは細巻で大人感アピール
  124: 名無しの就活生さん
  
  >>123
  お前のチソコが細巻サイズだからか
  125: 名無しの就活生さん
  
  >>124
  やめてクレメンス・・・
  127: 名無しの就活生さん
  
  >>121
  寿司よりも鍋料理の可能性
  129: 名無しの就活生さん
  
  >>127
  しゃぶしゃぶなら肉一択
  130: 名無しの就活生さん
  
  >>129
  ワイはポン酢や
  139: 名無しの就活生さん
  
  人事課長はドSの女王様
  145: 名無しの就活生さん
  
  >>139
  課長たん(´Д`)ハァハァ
  146: 人事課長
  
  >>145 様の益々のご活躍をお祈り申し上げます

〇大企業のオフィスビル
  ──翌年

〇オフィスの廊下

〇面接会場
就活生「私を「チーズフォンデュの材料」で例えると、 「白ワイン」です」
就活生「チーズフォンデュにおいて、 白ワインは一見、 チーズの濃度調整と思われていますが、」
就活生「白ワインに含まれる酒石酸などの有機酸が チーズが乳化するのを促し、 分離を防ぐ作用があります」
就活生「いわば、チーズフォンデュの主役である チーズを、長く好ましい状態にする 陰の功労者でもあります」
就活生「学生時代、サークルやアルバイト先で、 リーダーをサポートする立場が多かった 私と重なるところがあると考えます」
就活生「もし私が御社で働くことができましたら チーズフォンデュの白ワインみたいに、 管理部門から、他の社員を支えたいです」
人事課長「はい、結構です。 有難うございます」
人事課長「あれ、絶対に事前準備しているよね?」
人事課員「あんなの、アドリブで絶対に無理ですよ」
人事課長「チーズフォンデュと言われて、 チーズやパンと答えずに「白ワイン」って」
人事課員「それに酒石酸なんて普通は知らないですよ」
人事課長「これでは、素の人間性が見えないじゃない」
人事課員「もう来年からは別の質問をしましょう」
人事課長「いいや、こうなったら続けるわよ! 来年こそは、どんな就活生も 絶対に対策できない質問にしてやるわ!」
人事課員「ちなみに今の方ですが、 最終面接はどうしましょうか?」
人事課長「悔しいけど、進ませてちょうだい」

〇大企業のオフィスビル
  ──翌年

〇オフィスの廊下

〇面接会場
就活生「私を「カレー粉のスパイス」で例えると、 「コリアンダー」です」
就活生「コリアンダーは甘い香りのするスパイスで カレー粉では、ターメリックやクミンと 並ぶ、メインのスパイスです」
就活生「コリアンダーの持つ、 他のクセのあるスパイスの香りをまとめ、 肉や豆などと調和させるところは、」
就活生「学生時代、サークルのまとめ役だった 私と重なるところがあると考えます」
就活生「また、コリアンダーはインドのみならず、 中国でも漢方薬と用いられ、 健胃、鎮痛などの効能があるとされ、」
就活生「インド、中国など複数の国を股にかけ、 様々な場面で活躍するスパイスです」
就活生「もし御社で働くことができましたら コリアンダーのようなまとめ役を目指し 社外とも調和し上手に折衝ができるよう 精進します」
就活生「そして、コリアンダーシードから パクチーが生え育つように、 私自身からも立派な後進を育てられるよう 努力します」
人事課長「はい、結構です。 有難うございます」
人事課長「あんなの、事前対策してなきゃ無理よ!」
人事課員「はい、課長が誰かに漏らしてない限りは」
人事課長「漏らす訳ないじゃない!」
人事課員「それと、課長の質問のせいか、 「あなたを〇〇に例えると何?」という テーマのサイトや掲示板が出来たようです」
人事課員「掲示板では、得てして 大喜利大会になるみたいですね」
人事課長「それを先に言ってちょうだい!」
人事課員「もうこの質問は今年いっぱいにしましょう」
人事課長「いいえ、あと1年やる! 来年こそはギャフンと言わせてやるから。 就活生共に、目に物見せてやるわよ!」
人事課員「ちなみに、最終面接はどうしましょうか?」
人事課長「はいはい、進めていいわよ! あー腹立つ!」

〇大企業のオフィスビル
  ──翌年

〇オフィスの廊下

〇面接会場
人事課長「では、最後にもう1つ質問します」
人事課長「あなたを「ヤンソンの誘惑の具材」で例えると、 何になるでしょうか?」
就活生「えっ!」
人事課長「ですから、あなたを 「ヤンソンの誘惑の具材」 で例えてください」
就活生「えっ、えっ、 ・・・わかりません」
人事課長「はい、結構です」
就活生「・・・わかりません」
就活生「・・・わかりません」
就活生「・・・わかりません」
人事課長「か、勝った!!」
人事課長「就活生共の対策を、私は超えたのよ!」
人事課長「必死に準備してきた連中 ざまーみろ!!」
人事課長「アーッハッハッハッハッハ」

〇大企業のオフィスビル
  この年の採用者数 0名
  同、最終面接者数 0名
  程なく、人事課長が
  その職を追われることになった

〇黒
  961: 名無しの就活生さん
  
  今年のお題は無理ゲー
  963: 名無しの就活生さん
  
  就活生、あぼーん
  人事課長タンも、あぼーん
  999: 名無しの就活生さん
  
  >>1000なら人事課長たんは俺の嫁
  1000: 名無しの就活生さん
  
  >>1000なら人事課長様の益々のご活躍をお祈り申し上げます

コメント

  • おもしろーい!どんどん引き込まれていって、最後のオチもよかったです!食べ物の例え、ねぎまのくだりが個人的ツボでした。やるなぁ就活生。

  • 掲示板の表現が最高でした。
    最初の黒はんペで答えた彼で、既に笑ってしまったのですが、続けざまに優秀な人材が多くて、ニヤニヤが止まりませんでした。
    人事課長が居なくなったのは残念でした。
    彼女なら、他の企業でも人事課長として復活できそうですけどね!
    (続き希望するワイ)

  • 年が経っていくうちに、面接担当課長対面接者の戦いのようになっていたのが面白かったです。例えも、度が過ぎると質問の本質から外れまくっていきますね。こういう質問で機転がきく人は、仕事の失敗のいいわけも上手そう!と思ってしまいました。

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