死んで異世界に喚ばれた俺、少女と共に旅に出る

折原那央

まとめてかかってこい!(脚本)

死んで異世界に喚ばれた俺、少女と共に旅に出る

折原那央

今すぐ読む

  死んで異世界に喚ばれた俺、少女と共に旅に出る
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇牧場
眷属「ゴォウウゥ!」
  俺に向けて、弓矢の連続攻撃が襲いかかる。
タケル「俺を守れ──! カルラ!」
タケル「また!? うわっ」
  またもや自然に言葉が出る。水の奔流が攻撃を弾く。
タケル「うっ、あ゛──!」
タケル「腹、いってぇ・・・!」
  制服に血が染み出し始める。ジクジクと鈍い痛みを感じた。まるで内側から殺すように。
タケル(さっさと片付ける──!)
  時間をかけたら俺の命が保たない。
子ども「お兄ちゃん・・・大丈夫?」
タケル「ああ。君、ここで待っててくれるか?」
  俺は直ぐ後ろの燃えていない場所を指さした。
子ども「うん、分かった。お兄ちゃんも気をつけてね」
タケル「ああ・・・かのものを護りたまえ・・・キュスプリー」
  呪文を唱えると、少年の周りに光の囲いが現れた。
  魔法の壁を突き強度を確認した後、俺は再びモンスターたちに向きなおる。
眷属「イギィィ・・・」
眷属「ゴォォオオ・・・」
  唸り声を上げてこちらを睨む、2体のモンスター
タケル「さっさと片付ける・・・俺なら、できる!」
  俺はそう自分に言い聞かせて、刀の柄を強く握りしめる。
タケル「はぁあああッ」
  俺は地面を蹴り、弓矢を構えたモンスターに一気に詰める。
  まず狙うは、後方にいる弓矢を構えたモンスターだ。
眷属「ギィィイイイイ!!」
  それを前衛のモンスターが見過ごすわけもなく。俺に向かって爪を立てる。
タケル「邪魔だっ!」
  空を蹴りながら、俺は構えた腕ごと切り落とす。
眷属「ギェエエエエエ!!」
  悶絶する爪の眷属。俺は止まらない。
タケル(よしッ、振り切るぞ――!)
  俺は地を蹴り、飛ぶように一直線に走る。
眷属「ゴォォオオウウウ!」
  弓矢の眷属は、慌てて弓矢を構え、俺に向かって放つ。
タケル(大丈夫だ、このままでいける――!)
  先程までなら避けていた。だが、今の俺には振り切る力がある。
タケル「雷撃よ、我を護りたまえ・・・イラハッ」
  またもや、魔法が口から飛び出る。すると俺の周りに雷撃がまとわりつき、弓矢を弾き返した。
眷属「ゴゥッ!?」
タケル(よしッ、間合いに入ったッ!)
タケル「覚悟しろよ――!」
眷属「ゴォォオオウウウ!」
  モンスターは弓矢を手放し、拳で応戦しようとするが・・・。
タケル「遅いッ!」
タケル「たぁああああああ!!」
  俺は刃を心臓に突き刺した。
眷属「グガ・・・・・・ゴッ・・・・・・」
  バタンと音を立てて、弓矢のモンスターは倒れる。
眷属「イギィィイイ!!」
  切り落とした腕を再生し、体制を立て直したモンスターがこちらを見て威嚇をする。
タケル(もう、コイツは俺の敵じゃない)
  血を振り払い、俺は再度刀を構える。
タケル「次はお前だッ!」
  俺は踵を返し、鉤爪のモンスターに向かう。
タケル「ぐっ・・・・・・あ゛」
タケル(くそっ、さっきの魔法で体が──)
  血を吐き出す。喉が焼けるように熱い。あまりの激痛に、よろめきそうになる。
タケル「くぅ――ッ」
  俺は刀を地面に突き立て、深呼吸する。そうして激痛を何とかやり過ごした。
タケル(あと少し、踏ん張れよ――俺の体ッ!)
  体に鞭を打ち、俺は刀を構える。

〇牧場
眷属「キィィィイイイイイアアアアアアア!!」
  鉤爪のモンスターが、俺の右腹を狙う。
タケル「くっ、こいつ弱ってるところを――!」
タケル「はっ!」
  半歩下がって鉤爪をすんでのところで避ける。
眷属「イガァアアアア!!」
  今度はもう片方の手で挟み込むように、爪を振るう。
タケル「ふっ!」
  俺は、それをバク転で飛び上がり、囲い込んだ腕から逃れる。
  世界が逆さまになる。一瞬の隙を突いて――俺は、喉元に一閃刃を切りつけた。
眷属「イギッ!?」
  思わず受け身をとったモンスター。固い鉤爪のせいで、刃は致命傷には届かない。
タケル「やっぱ一筋縄じゃいかねーか・・・」
タケル「ならッ! 魔法も使うまで!」
タケル「水の鼓動よ、剣に宿れ・・・」
タケル「カルラッ!」
  俺が呪文を唱えると、空中から水流が現れ、刀にまといつく。
タケル「ぅぐ――かはっ!!」
  強い魔法を使ったことで、また体が軋む。左の肘が変な方向に曲り、激痛が走る。
タケル「あぐ――ぅあ゛、ぐぅ・・・いって、えッ――!!」
  この世のものとは思えない激痛。立っているのがやっとだ。だけど――。
タケル「やめねえ! こいつらを倒して――ユーヤを・・・護るんだッ!」

〇黒
  死ぬはずだった俺を助けてくれたユーヤ。
  彼女を残して、また死ぬことなんかできない。
  だから──。

〇牧場
タケル「絶対に俺が勝つッ!!」
タケル「はぁあああああああ!!」
  俺は、水を纏った刀をモンスターに突きつける。
眷属「キィィィイイイイイアアアアアアア!!」
  当然応戦する鉤爪のモンスター。両手で俺を挟み込むように、腕を振り上げる。
タケル「いけえぇぇぇぇぇええええ!!」
  魔力を刀に込めると、水流がより一層激しく波打つ。
眷属「イギッ!?」
  刀を爪で受けていた鉤爪のモンスターは、驚いた声を上げる。
タケル「はああああぁぁアアッ!!」
  堅い爪が激しい水流で削れていき――。
タケル「はッ!!」
  俺は爪ごと、モンスターの首を切り落とした。

〇牧場
タケル「はぁ、はぁ・・・勝った、ぞ」
タケル(あの子が無事か確認しないと・・・)
タケル「おーい、君、大丈夫?」
  俺は少年の近くに駆け寄り護りの魔法を解いてやる。
子ども「う、うん! 大丈夫!」
子ども「お兄ちゃんは大丈夫?」
タケル「ああ、だいじょう・・・」
  バタンと音を立てて崩れ落ちる。俺の体は限界だったようだ。
子ども「お兄ちゃん!? お兄ちゃん、しっかり!」

〇黒
  世界が暗転する。
  カランと音を立てて刀を落とし、崩れ落ちた。もう目を開けることもできない。
タケル(ああ、俺限界だったんだな・・・)
  急激に体が冷えていく。死の足音が近づいてくるのが分かった。
タケル「ユーヤ・・・ユーヤは大丈夫かな」
  ああ、もう目を開けていられない。俺は、そのまま気を失った。

次のエピソード:彼女が生贄に選ばれた日

コメント

  • お見事な戦いっぷりですね!バトルシーンが臨場感があってとても魅力的です。大ボスのスルトとの戦いの前に、力尽きた様子のタケル。タケルとユーヤはどうなるのか次話が楽しみです!

成分キーワード

ページTOPへ