ep.6 忘却の地(脚本)
〇荒廃した街
チューニャ「着いた~!」
チューニャ「よーし、探すぞ~!」
ラノ(クレムが死にたい理由を聞けないまま 目的地に着いちゃった・・・)
〇草原の道
ラノ「クレムが、死にたい・・・? どうして?」
チューニャ「あっ! 目的地が見えてきた!」
ラノ(は、はぐらかされた・・・)
ラノ「チューニャ、話を──」
チューニャ「薬草、沢山あるといいな~」
ラノ「・・・」
〇荒廃した街
ラノ(まぁ、いいや 後でクレム本人に聞こう・・・)
チューニャ「ちょっとラノ! ぼーっとしてないで探してよ!」
ラノ「ご、ごめん・・・ そもそも薬草ってどんな見た目なの?」
チューニャ「見た目・・・? よくわかんないや」
ラノ「え、わからないの?」
チューニャ「まあこんなとこ、目当ての薬草以外の 植物なんて生えないでしょ」
ラノ(確かに、こんな荒れた廃街に 植物なんてありそうにないな・・・)
チューニャ「とにかく草を見つけてよ 急いでね!」
ラノ「わ、わかったよ」
ラノ(草、草・・・ 瓦礫ばっかりで全然見当たらな──)
ラノ(何か踏んだ──?)
「危ない!」
ラノ「い、今、何が起きて・・・」
チューニャ「・・・見た?」
ラノ「え?」
チューニャ「見たよね?」
ラノ「な、何を・・・?」
チューニャ「私の魔法!」
チューニャ「も~つい助けちゃったよ 見なかったことにしてよね!」
チューニャ「・・・ま、別にいいんだけどさ」
ラノ「ちょっと待って! ま、魔法──?」
ラノ「って何?」
チューニャ「え? ふざけてるの?」
ラノ「い、いや、本気で聞いてるんだけど・・・」
チューニャ「あ~・・・記憶喪失なんだっけ? 魔法はね、手をこうしてみて」
ラノ「こう?」
チューニャ「で、目を閉じて、精霊さんを探して・・・」
ラノ「せ、精霊さん?」
チューニャ「こう!」
ラノ「こ、こう?」
「・・・」
ラノ(で、できない・・・)
ラノ(でも、魔法が不思議な力ってことはわかった 雲の国にはこんなのなかった・・・)
チューニャ「・・・ふーん、なるほどね ラノは王国出身なのかな?」
ラノ「え、なんで?」
チューニャ「本当に何も覚えてないんだね・・・」
チューニャ「王国民は魔法を使わないんだよ」
チューニャ「だから、魔法を使えなかったラノは 元々魔法を使ってない王国民かな~って」
ラノ「そうなんだ──って、え? じゃあチューニャはどうして魔法を・・・」
チューニャ「えへへ、なんでかなぁ? 秘密!」
ラノ(チューニャ、またはぐらかすつもりか・・・ 魔法使いは王国民じゃないってことなのか?)
ラノ(ロイたちや、クレムを攻撃した女の人も きっと魔法を使ってた・・・)
ラノ(あの人たちは帝国民だとして──)
ラノ「ねぇ、魔法ってなんでもできるの? ・・・水を出したりとか」
チューニャ「ん~その人の資質にもよるけど 少し水や火を出したりは大体できるかな?」
ラノ(・・・あの時)
〇荒れた競技場
クレム「大丈夫ですか?」
〇荒廃した街
ラノ(初めて会ったとき──クレムも 魔法を使ってた・・・!)
チューニャ「どしたの? 考え込んで」
ラノ「いや・・・なんでもないよ」
ラノ(クレムは王国の人じゃない・・・?)
ラノ(クレムには聞くことが沢山あるな 絶対に助けないといけない・・・!)
チューニャ「てか、気をつけてよね さっきみたいに、その辺踏まないで!」
ラノ「そうだ、さっき僕が踏んだのって何なの?」
チューニャ「仕掛け魔法・・・罠ってやつだよ この街は10年前の戦争で滅びたの」
ラノ「戦争?」
チューニャ「うん、帝国との戦争 その頃に仕掛けられた罠がまだ沢山あるの」
ラノ「戦争は終わったの?」
チューニャ「終わったよ でも、最近また帝国の動きがよくないんだ」
チューニャ「・・・クレム様も落ち着かないし 戦争なんて、いいことひとつもないよ」
ラノ「・・・そうだよね・・・」
ラノ(争いなんてしない方がいいに決まってる ・・・いつかベスルのこと、説得しなきゃ)
チューニャ「・・・ラノが質問ばっかりするから つい話しちゃったけど、早く探すよ!」
ラノ「ごめん、急ぐよ」
ラノ(ん・・・? なんだろう、なにか光ってる)
ラノ「あ・・・あった!」
チューニャ「わぁ~! きっと、これだよ~!」
チューニャ「やるじゃん、ラノ! ありがとね」
ラノ「いや、僕の方こそありが──」
チューニャ「それじゃあね、バイバイ」
ラノ「え──」
〇黒
〇荒廃した街
ラノ(う・・・動けない!)
ラノ「チューニャ、これ、何のつもり?」
チューニャ「どこの馬の骨かわからないあなたに 何かを託すつもりはないの」
チューニャ「国王様の気が知れないよ・・・ なんであなたのことなんか信じたのかな」
チューニャ「これも」
チューニャ「これも」
チューニャ「ちゃんと渡しておいてあげるね ラノは死にました~って報告付きで!」
チューニャ「安心して! クレム様は私がちゃんと助けるよ」
チューニャ「待ってても誰も来ないと思うけど・・・ そしたらいつか天国で会おうね~」
チューニャ「じゃ、またね──」
チューニャ「──えっ?」
ラノ「チューニャ! 後ろ!」
〇荒廃した街
〇荒廃した街
チューニャ「なっ、ななな、何っ? 何この怪物!」
ラノ「地上にも竜がいるの?」
チューニャ「この怪物のこと知ってるの?」
竜「──たい・・・」
ラノ「えっ?」
チューニャ「だーかーら、この怪物のこと 知ってるのってば!」
ラノ「チューニャじゃなくて! 竜に聞いてるんだ! なんて言ったの?」
竜「痛い・・・痛い・・・!」
ラノ「痛い・・・? どこか怪我してるの? それとも病気?」
チューニャ「誰と話してるのよ 怖いんだけど!」
竜「昔、魔法・・・痛かった」
竜「そこの人間、魔法、使ってた」
ラノ「待って、チューニャは君に何も──!」
チューニャ「きゃああぁぁぁ!」
竜「やはり、人間、魔法を使う・・・ 私を傷つける・・・!」
チューニャ「ぜ、全然効いてないっ・・・!」
ラノ「チューニャ、もうやめて!」
ラノ(何もないのに身動きが取れない・・・! チューニャの魔法のせいだ!)
チューニャ「こ、これなら──!」
チューニャ「い、いったぁぁぃ・・・ 何? 剣が手から弾かれたの? なんで?」
ラノ「チューニャ! 僕を解放してよ!」
チューニャ「も~やだ! 本当最悪! 薬草だけ持ってもう帰るもん!」
ラノ(き、聞いてない・・・!)
竜「そこの人間、許さない」
ラノ(竜も話を聞いてくれないし チューニャが危ない・・・!)
ラノ(僕を縛り付けてるのが魔法なら 魔法でなら解除できるのか?)
ラノ(仕掛け魔法・・・あっちにも埋まってる 動けないけど這うくらいはできる──!)
ラノ(戦争のための魔法・・・ そんなの食らえばどうなるかくらい──)
ラノ(でも、大丈夫・・・ 何があっても助けるって決めたから)
〇ソーダ
(クレムも)
(ルディも)
(・・・ベスルも)
(チューニャだって)
〇荒廃した街
ラノ「絶対、助ける!」
チューニャ「こ、今度は何──あっ!」
チューニャ「剣が──って、ラノ? どうやって 抜け出して・・・ボロボロじゃん!」
ラノ「この剣は僕のだ」
ラノ「安心して チューニャは僕がちゃんと助けるよ」
ラノ「僕は助けたいんだ・・・君のこともね」