この世の女は俺のママ!

危機綺羅

6.無力なママではいられない。その5(脚本)

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危機綺羅

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〇児童養護施設
ヤラリシマ「──なあ、こんな夜中になにすんだよ?」
シタラ「静かに! 中の音が聞こえないから」
ヤラリシマ「そこ、アル兄ちゃんの部屋だろ? 普通に入ればいいじゃん」
シタラ「なに言ってるの? こういうのはタイミングが重要なの」
シタラ「うかつに入って”最中”だったら・・・」
シタラ「”あの”アルさんのプレイとか、 トラウマになったらどうするの!?」
ヤラリシマ「プレイってなんだ?」
シタラ「え? あー・・・それは・・・」
シタラ「──アルさんとクロシカさんが、 夫婦になるようなことだよ!」
ヤラリシマ「母さんもいるのか? それに、兄ちゃんと夫婦に?」
シタラ「そう、あのアルさんとだよ? クロシカさんを思うなら止めないと──」
ヤラリシマ「すっげえいいじゃん!」
シタラ「・・・え?」
ヤラリシマ「母さんと結婚したら、 兄ちゃんはずっと村にいるだろ?」
ヤラリシマ「そしたら母さんも嬉しいし、 俺も嬉しいしで良いことずくめだ!」
シタラ「いやいや、アルさんだよ? 赤の他人をママって呼ぶ人だよ!?」
ヤラリシマ「俺も母さんって呼んでるし、 兄ちゃんだってそんな感じだろ」
シタラ「それは親子だからでしょ? アルさんは血のつながりもないし・・・」
ヤラリシマ「俺だってそうだよ! 赤ん坊の時に引き取ってくれたらしいし」
シタラ「そ、そうだったの・・・?」
シタラ「──ごめんなさい! 私、無神経なことを言って・・・」
ヤラリシマ「いいって、いいって! 別に気にしてないしさ!」
ヤラリシマ「俺が母さんだと思ってるんだ だから、クロシカさんが母さんなんだよ」
シタラ(自分が思うなら・・・)
ヤラリシマ「きっとアル兄ちゃんも似たような──」

〇レトロ
  ──お願い、この子をこのまま育てさせて
  だって、私のことを
  ママって呼んでくれるのよ?
  この子にとって、私はもう母親なの
  私も、もう息子だって思ってる・・・
  親子になれたと思うの
  だから、
  これが全部なくなるなんて嫌・・・!

〇児童養護施設
ヤラリシマ「──シタラ? どうしたんだ?」
シタラ「え? いや、ちょっとぼーっとして・・・」
シタラ(今の感じ・・・私の記憶・・・?)
シタラ(いや、まさかね・・・ 私の年齢で子供がいるわけないし)
ヤラリシマ「なんだ、眠いのか? ならもう部屋に戻ろうぜ」
シタラ「いやでも、クロシカさんが──」
「私がどうかしましたか?」
ヤラリシマ「やべっ!」
クロシカ「二人とも、 こんな夜中になにをしてるんですか?」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「まったく、子供がこんな時間に 起きてたらいけませんよ?」
ヤラリシマ「だって、シタラがさ・・・」
クロシカ「人のせいにしない! ほら、子供は寝る時間ですよ」
シタラ「ま、待ってください! このまま帰るわけにはいきません!」
クロシカ「なにか用事があるんですか?」
シタラ「私たちが帰ったら、 二人でなにをするつもりなんですか!」
クロシカ「へ? なにって・・・?」
ヤラリシマ「夫婦になるようなことするんだろ? アル兄ちゃんと!」
クロシカ「──な、なにを言ってるの!?」
ヤラリシマ「なあ、アル兄ちゃん! 母さんと結婚するのか?」
アルバス「結婚か・・・ クロシカママは確かに魅力的だな」
クロシカ「あ、アルさんまで・・・!」
アルバス「でも、それはねえかな! 俺とママは親子だからな!」
クロシカ「・・・」
ヤラリシマ「なんだ・・・シタラの勘違いか・・・」
クロシカ「そうですよ、リシマ アルさんと結婚なんてしません」
クロシカ「大人でも子供でも、誰でも構わず ママ呼びする人と結婚だなんてそんな──」
シタラ(ど、怒気が見える・・・!)
シタラ(──あれ? クロシカさんを そういう目で見てないなら・・・)
シタラ「アルさん、なんでクロシカさんを 部屋に呼んだんですか?」
アルバス「シタラママのことで、 相談しとこうと思ってさ」
シタラ「私?」

〇暖炉のある小屋
アルバス「──なあ、シタラママ」
アルバス「どうして、 これの使い方を知ってたんだ?」
シタラ「なんでって・・・知ってるから、としか」
クロシカ「シェルターの人が使っていた物も、 シタラちゃんは知っているようでしたね」
シタラ(ドライヤーとバリカンのことかな?)
アルバス「降物の使い方ってのは、 色々試してようやくわかるもんなんだ」
アルバス「なのに、シタラママは”知ってる” これは異常なことなんだよ」
ヤラリシマ「──けどさ、兄ちゃん シタラだって変なこと言ってたぜ?」
ヤラリシマ「すげえ威力の降物を、 髪を整える道具とか言っててさ・・・」
アルバス「髪か・・・ママ、具体的に どう使うものか説明できるか?」
シタラ「え? 髪を短く刈り取るのと、 熱い風で寝ぐせを直したりする、かな?」
アルバス「・・・規模は違うが、内容は合ってるな」
クロシカ「それなら、やっぱり──」
アルバス「ああ、シタラママは、 降物の使い方がわかるみたいだな」

〇暖炉のある小屋
アルバス「まあ、シタラママが来てくれて ちょうどよかったな」
アルバス「──いいか、ママ このことは秘密にしなきゃダメだ」
シタラ(ひ、秘密・・・?)
アルバス「あのロリコン共も含めて、 降物を使うやつはたくさんいる」
アルバス「このことがバレたら、 きっと悪い奴から狙われるようになるぞ?」
アルバス「そうなったら、ここにいられないぜ ママが嫌でも、俺と二人旅だ」

〇山の中
シタラ「マイク、ですよね?」
ソウガ「・・・使い方もわかる?」
シタラ「え? わかりますけど・・・」

〇暖炉のある小屋
アルバス「だから、このことは誰にも言ったら──」
シタラ「あ、あの・・・実はその・・・」
アルバス「・・・言ったのか?」
シタラ「初めて会った時に、 ソウガさんにポロっと・・・」
クロシカ「ソウガって、シェルターの隊長の・・・」
シタラ「あ、あの、さっきから言ってる、 そのシェルターっていうのは──」
アルバス「ママ・・・」
アルバス「──二人旅、決定っ!」
シタラ「えぇええええええ!?」

〇暖炉のある小屋
アルバス「──さて、明日からは二人旅だ! 早く寝て英気を養おうぜ!」
シタラ「うう・・・なんで・・・」
アルバス「気を落とすなって、ママ! 俺がちゃんと守ってやるからさ!」
クロシカ「そ、そうですよ! アルさんは頼りになる人ですから!」
ヤラリシマ「兄ちゃんと旅なんて楽しそうじゃん! 羨ましいぜ、シタラ!」
シタラ「なら、替わってよぉ・・・」
ヤラリシマ「いや、替わったら意味ないだろ・・・」
クロシカ「さあ、夜も遅いし、もう寝ましょう? 二人とも、部屋に戻りましょうね」
ヤラリシマ「前向きにいけよ、シタラ! じゃあ、おやすみ。また明日な!」
クロシカ「ほら、シタラちゃんも・・・」
シタラ「・・・クロシカさんは?」
クロシカ「え?」
シタラ「一緒に戻ればいいのに、 なんで私とリシマくんを先に・・・?」
クロシカ「えっと、それは・・・」
アルバス「どうした、シタラママ? 一緒に寝かしつけてもらうか?」
シタラ「はい? 寝かしつけ・・・?」
クロシカ「そ、その、アルさんに頼まれて・・・」
アルバス「お礼をさせてくれって言うから、 ママに寝かしつけてもらおうと思ってさ」
アルバス「子守歌を歌って、 寝るまで一緒にいてもらうんだよ」
シタラ「・・・」

〇児童養護施設
  ──こんな人と旅なんて、嫌ぁ!
「お、落ち着いて、シタラちゃん!」

〇児童養護施設

〇児童養護施設
シタラ「──クロシカさん、短い間ですけど、 お世話になりました」
クロシカ「いいんですよ 記憶が戻ったら、また来てくださいね」
ヤラリシマ「アル兄ちゃんを困らせるなよ!」
シタラ「逆の心配をしてくれる?」
アルバス「クロシカママ、 またあいつらが来るかもしれないし──」
アルバス「これを持っててほしいんだ」
クロシカ「・・・遠くの人と話せる降物、ですね」
アルバス「ああ、いくつか持ってるし、 遠慮しなくていいぜ!」
アルバス「こいつで呼んでくれれば、 俺はいつでも駆けつけるからよ!」
アルバス「・・・ママ?」
ヤラリシマ「──俺が持つよ! 使い方教えて?」
クロシカ「り、リシマ・・・!」
アルバス「ああ、使い方はな・・・」

〇児童養護施設
アルバス「──それじゃ、元気でな!」
シタラ「ありがとうございましたー!」
ヤラリシマ「・・・」
ヤラリシマ「行っちゃった・・・ もっと居てくれればいいのにさ!」
クロシカ「ええ、本当に・・・」
クロシカ「──ねえ、リシマ 後で”それ”の使い方、教えてくれる?」
ヤラリシマ「なんだよ、俺が持つって!」
クロシカ「違うの、心配なわけじゃなくて・・・」
クロシカ「頼り過ぎも良くないでしょ? いざという時は、私も使えないと!」
ヤラリシマ「・・・でもさ、昔あった事故のせいで、 母さんは降物が怖いんだろ?」
ヤラリシマ「なら、やっぱり俺が──」
クロシカ「大丈夫・・・これは、 今までみたいな無茶じゃないから」
クロシカ「怖いことを押し込めるんじゃなくて、 克服したいの、あなたのために」
ヤラリシマ「・・・わかった。後で教えるよ」
ヤラリシマ「じゃあさ、母さん、俺も頑張るよ」
ヤラリシマ「呼び方とか、形じゃなくて、 アル兄ちゃんみたいに頼れる男になる!」
クロシカ「それは楽しみね・・・」

〇けもの道
  お兄ちゃん? お兄ちゃんなの!?
シタラ「へ!?」
???「──お兄ちゃん!」
シタラ「だ、誰ですか?」
???「あ、ごめんなさい・・・ その人が、死んだお兄ちゃんに似て──」
アルバス「間違ってるぜ、ママ! 俺たちは親子だろ?」
???「・・・は? 親子?」
???「えっと──そう、間違えちゃった! 死んだ息子に似てて、つい・・・」
シタラ「いや、間違えるわけないでしょ!?」

次のエピソード:7.悪女のママではいられない。その1

コメント

  • サイコな主人公のギャグ作品と思いきや、降物などの深い設定、ちょぴり泣ける展開もあり、一気読みしてしまいました!
    こちらの世界の日用品が、転移後にパワーアップするのも面白かったです。TapNovelにはたくさんの日用品アイテムがあるので、この先のバトルも期待です^^
    旅も始まり、新キャラも登場(こちらもサイコさん?)。続きが楽しみです!

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