俺たち、始動!!(脚本)
〇異世界のオフィスフロア
〜怪人カンパニー 本社〜
サナギ「んあああ〜〜やっと仕事終わったあ!!」
コーサス「全く。お前が重要なデータを消去するからこんなに遅くなったんだろう」
サナギ「ご、ごめんって。 ちゃんと上書き保存したつもりだったんだけどなー」
コーサス「はいはい、そのセリフもう50回くらい聞いたから」
コーサス「ところで、明日から1週間の夏季休暇だな。お前は何するんだ?」
サナギ「俺はねー、実家に帰るよ! 母ちゃんの手料理が食べたいし!!」
サナギ「お前はどうするの?どっか行くのか?」
コーサス「俺は・・・特に何も予定はないからな。 普通に家でごろごろするかな」
サナギ「えー!!せっかくの夏季休暇なのに!? もったいない!!」
サナギ「夏季休暇の使い方で後悔したランキング4位くらいじゃないの、それ! ただごろごろするだけって!!」
コーサス「うるさい! 社会人になると、休みの日は何もしたくなくなるんだ!」
サナギ「えー、でも1日2日ならまだしも、1週間もごろごろするのはなー」
サナギ「・・・あっ、そうだ!良いこと思いついた!!」
コーサス(嫌な予感)
サナギ「お前さ、俺の実家に来いよ! 母ちゃんの唐揚げマジで美味いからさ、食べに来なよ!!」
コーサス「・・・は・・・はああ〜〜〜!?お前ん家だと!?」
コーサス「何で仕事以外でお前と顔を合わせなくちゃいけないんだよ!」
サナギ「良いじゃん良いじゃん。 何なら、唐揚げじゃなくて肉じゃがも出てくるからよ」
コーサス(いや食べ物の問題じゃないんだけど・・・)
サナギ「とにかく、そうと決まれば明日出発だ〜〜! 明日の朝8時に駅前集合な!!それじゃ!!」
コーサス「おいっ! ・・・全くあの野郎。勝手に人の予定決めやがって・・・」
コーサス「まあ良いか・・・。暇つぶしにはなるだろうし」
〇実家の居間
サナギ「お〜い母ちゃん、帰ったぞ〜〜!!」
コーサス(・・・本当にこいつの実家に来てしまった)
母ちゃん「おやまあ、サナギかい!? よく来たねえ!!」
母ちゃん「何じゃ〜〜1ヶ月ぶりじゃのう!! 全く、仕事ばっかりしおって!!」
サナギ「ごめんよ〜〜、本当は1週間に1回は帰りたいんだけどさ、やっぱ遠いから中々来れなくて・・・」
コーサス「いや1ヶ月に1回も結構な頻度だぞ!!」
母ちゃん「おやまあ、隣にいるのはもしかして、いつも話に出てくる・・・」
サナギ「そっ! 俺の親☆友!!コーサスだよ!!」
コーサス「親友はやめろ気持ち悪い!!」
母ちゃん「サナギ、今日は腕によりをかけて、唐揚げたくさん作ったからね〜〜 コーサスさんも食べてくなんしょ!」
サナギ「わあい!!唐揚げ唐揚げ!! ありがとう母ちゃん!!」
サナギ「んん〜〜おいひぃ〜〜 やっぱり母ちゃんの手料理は世界一だよ!」
コーサス(・・・むむぅ。確かにこれは美味しい)
母ちゃん「そんなに喜んでもらえると作った甲斐があるのぉ〜〜 どんどん食べんしゃい!」
〇村の眺望
サナギ「おいコーサス〜〜! こっちこっち〜〜!!」
コーサス「・・・はあ、はあ。 ち、ちょっと待ってくれ」
コーサス「一体俺をどこへ連れて行く気なんだ・・・ というかお前体力ありすぎだろ・・・」
サナギ「え〜〜? 俺ん家の実家からここまでは1kmくらいしかないぞ?」
コーサス(・・・運動しない社会人にとって、1kmはめっちゃ辛いんだぞ・・・)
サナギ「まっ、良いか! とにかく俺たちは今、母ちゃんの畑に向かってるところだよ!!」
サナギ「これから一緒にトマトの収穫しようぜ!!」
コーサス「ははあなるほど。 母ちゃんの手伝い、って奴か・・・」
サナギ「おっ、トマトたくさんなってるなってる!ようしコーサス、早速・・・」
コーサス「・・・ん?猫の鳴き声? 野良猫か?」
サナギ「・・・あっ!コーサス、あれ! あそこの段ボールの中!!」
黒猫「・・・にゃあん」
コーサス「どうやら捨て猫・・・みたいだな」
サナギ「全く!こんなかわいい猫ちゃんを捨てるなんて、どうかしてるぜ!!」
サナギ「動物愛護団体に訴えてやる!!」
コーサス「ま、まあまあ。 でもこの猫、どうする?」
サナギ「俺が引き取る!母ちゃんの実家で飼うぞ!!」
サナギ「そうと決まれば、この子に名前を付けないとな! ええっと、夏に見つけたから・・・」
サナギ「夏太郎! 今日からお前の名前は夏太郎だ!!」
コーサス「・・・ださっ!そして安直な名前!!」
サナギ「良いじゃん。結局安直なのが一番良いってモンよ」
コーサス「・・・おい。心なしかこの猫の顔つきが険しくなってるんだが・・・」
コーサス「夏太郎って名前、気に入ってないんじゃないか?」
サナギ「そんなことないって! というか猫に俺らの言葉がわかる訳ないだろ〜!ねっ、夏太郎!!」
夏太郎「わかるわ、ボケが」
サナギ「・・・え?」
夏太郎「なんじゃ夏太郎て。今どき猫にそんな名前つける奴おらんじゃろ」
サナギ「う、嘘だろ。猫が、喋ったぞ!!」
サナギ「すごいじゃん夏太郎! お前テレビに出れるよ!!」
夏太郎「わっちはテレビなぞに興味はない!! というか「夏太郎」って呼ぶな!!」
夏太郎「わっちはお前らと違って忙しいんじゃからな」
コーサス「忙しい? お前は一体、ここで何してるんだ?」
夏太郎「・・・ちょっと、『奴ら』を待っとるんじゃ」
コーサス「奴ら?」
夏太郎「そうじゃ。奴らに拾われるフリをするために、ダンボールに入っていたのじゃ」
サナギ「拾われる?どういうことだ?」
夏太郎「・・・実はここ最近、猫を連れ去る奴らがこの辺りに出没していての」
夏太郎「飼い猫も野良猫もお構いなし。自分たちの施設に連れて行って、法外な値段で売買しているようなんじゃ」
夏太郎「実際、わっちの仲間も奴らに連れて行かれた」
夏太郎「だから、捕まった仲間を救出するために、わざとわっちも奴らに捕まろうとしているんじゃ」
夏太郎「・・・はっ、奴らが来た! おいお前ら、さっさとここから・・・」
サナギ「・・・おいおい、連れて行かれるのがわかってて、ここから逃げる訳、ないだろ?」
サナギ「俺がそいつらにがつんと言ってやる! それで猫たちを返してもらえれば万事解決だ!!」
夏太郎「ばかーっ!! そんなにうまく行く訳ないじゃろが!!」
???「・・・おっ、いましたぜィ、アニキ!!」
フリッパ「おっ、黒猫かぁ! これは高く売れますぜ!!」
アニキ「おお、これは良い商品だな」
アニキ「早速持ち帰ろう。 ポッポ、いくらで売ろうかな・・・」
???「あいや待てぃーーーーーーー!!」
サナギ「俺の夏太郎に手を出すなあ!!」
アニキ「名前ダサッ!!」
アニキ「な、何だお前はいきなり!!」
サナギ「俺はこの猫の飼い主だ! お前たち、猫を売買してるっていう悪い奴だろ!!」
サナギ「許さん、今すぐやめろ! やめないと今から警察に通報するぞ!!」
アニキ「ほォ。・・・ちなみに、俺たちが猫を売買しているという証拠はあるのか?」
サナギ「な・・・何ッ!!」
アニキ「無いだろう。それなのに、警察が動く訳ないだろ。警察だって暇じゃないんだからな」
サナギ「ぐ・・・。なら、お前が自分で証拠を出せば良いだろ!!そんで逮捕されろ!!」
アニキ「・・・何だこいつ。 もしかして、ただのバカなのか?」
コーサス(・・・ただのバカです、ハイ)
フリッパ「アニキ、こんなバカに構ってないで、さっさと行きましょうや」
アニキ「・・・それもそうだな。 では、この猫はいただいていくぞ」
サナギ「おい待てよ! 俺はバカじゃないし、その猫はそもそも俺のものだって!!」
アニキ「ポッポー!そんなの知らん! ではさらば!!」
サナギ「あああ・・・。俺の夏太郎があ〜〜!!」
サナギ「一体どうすれば・・・」
コーサス「サナギ、『アレ』は! 『アレ』に頼るのはどうだ!?」
サナギ「『アレ』・・・ ハッ、そうか!!」
サナギ「・・・『アレ』よ、頼む。 どうか助けてくれ〜〜!!」
〇田舎道
フリッパ「ひっひひ、今日のオシゴトも大成功ですね、アニキィ!!」
アニキ「そうだな、思わず笑っちまうぜ! ポッポ−!!」
アニキ「・・・ん?」
アニキ「上から何かが・・・落ちてきて・・・?」
「ばっ、ばばばば、爆弾だあああああああ!!」
フリッパ「・・・ってあれ? 爆発しないですぜ、これ」
アニキ「・・・え、マジ? 何だ、ただの見掛け倒しじゃないか」
フリッパ「その割にはめっちゃビビってたじゃないですかアニキィ〜〜!!」
アニキ「ポーポポポッ。殴るぞ、お前」
「ぎゃあああああああああ!!」
〇田舎道
ボレオ「・・・ふう。無事救出できましたね。 お怪我はありませんか?」
夏太郎「・・・お、お主は一体・・・」
「・・・あっ、いたいた。 ボレオさ〜ん!!」
サナギ「来てくれてありがとうございます! すみません、休暇中に呼び出して・・・」
ボレオ「本当ですよ。結婚記念日に、妻とクルージングしてたところだったんですよ?」
サナギ「すいやせ〜〜ん」
夏太郎(『すいやせ〜〜ん』で済まんじゃろそれ・・・)
ボレオ「・・・それで。さっき爆発させた2人が、猫の売買をしている奴らということで間違いないですか?」
サナギ「そうです。法外な値段でですよ。 しかも野良猫飼い猫問わずに連れ去ってるようなんです」
ボレオ「・・・ふむう。わかりました」
ボレオ「では、詳細については、あの道路にのびてる奴らに吐かせることにしますよ」
サナギ「はい、よろしくお願いします!」
ボレオ「・・・はあ。今日はクルージングに戻れそうにないな・・・。妻に何て言い訳しよう・・・」
ボレオ「今回の件については、休日出勤としてオプション料金追加させていただきますからね」
サナギ「大丈夫ですよ、そのつもりで呼んだんですから!!」
ボレオ「それと、ここまでの交通費、爆弾代、妻への謝罪金もろもろ込みで・・・」
ボレオ「はい、これ今回の請求書です。 30日以内に口座振込よろしくお願いしますね」
サナギ「了解了解〜〜・・・って」
サナギ「高っ!!ちょ、今回オプション盛り盛りじゃないッスか!!」
ボレオ「仕方ないでしょう。結婚記念日に呼び出されたんですから。それ位は払っていただかないと」
サナギ「・・・はぁ〜〜い。うう、また上司に『使いすぎ』って怒られる・・・」
ボレオ「・・・それでは、これで」
サナギ「うへえ〜〜それにしても高くついたな今回は・・・。まあ全部コーサスのせいにしよっと」
コーサス「・・・おい、聞こえてるぞ」
サナギ「うわあ!何だ、来てたのか!! というか来るの遅いな!」
コーサス「お前が行くのが早いんだろ! はあ、はあ・・・。やはり自分の体力の低下を感じるな・・・」
夏太郎「・・・あの〜。さっきの人は一体・・・?」
夏太郎「というか、お前らも何者なんじゃ?」
サナギ「え、ああ、俺たち? 俺たちはね、怪人カンパニーの社員だよ!」
サナギ「名前のとおり、怪人が取引相手の会社でね!」
サナギ「何か事件や協力要請があった場合に、その場に適切な怪人を派遣するための、連絡調整を行うお仕事なんだよ!」
サナギ「俺は営業マンだから、協力してくれる怪人を見つけて交渉して、契約を取ってくる役割!」
コーサス「俺は営業事務として、こいつが派遣した怪人に対する謝礼金の支払い手続きを主にやってるぞ」
サナギ「俺たちの会社は、警察とも繋がりがあってね」
サナギ「警察じゃ動けない案件とか抜け穴を補完するために動いているんだよ!! どう、すごいでしょ!」
夏太郎(・・・こ、こいつら、そんなにすごい奴らだったんじゃな)
夏太郎(いかにもアホっぽいのに・・・)
夏太郎「でも、助かったぞ。感謝する」
サナギ「どういたしまして!これが俺たちの仕事ですから!!」
サナギ「・・・ということで、」
サナギ「夏太郎!お前は今日からうちの子だからね!これからもよろしくぅ〜〜!!」
夏太郎「・・・え」
夏太郎「・・・た、確かにわっちはお前らに感謝はしている。が・・・」
夏太郎「こんなアホに・・・ 飼われるのだけは嫌じゃ〜〜!!」
サナギもコーサスも表情筋がないのにどんな顔してどんな動きをしてるのか手に取るようにわかるのは、ひとえに作者さんの筆力の賜物ですね。ウマとニワトリがネコを捕獲して売買することに疑問も抱かず読んでる自分が怖くなってくるほど登場人物全ての関係性がシュールで面白かったです。
サナギさん、怪人態で生まれてきたんですか…お母さん、出産大変だったでしょうね_:(´ཀ`」 ∠):
なんだかほのぼのした世界で、ほっこり(自分の作品含め、怪人ということで苦労する設定が多いですからね)
ニワトリさんとお馬さんは、精肉工場行きですかね
ニヤリ( ̄∀ ̄)
楽しい怪人カンパニーですね。それぞれの怪人の個性が光っていましたよ。善良な怪人たちで世の中平和ですね。それにしても、怪人の母ちゃんが人間だとは驚きです。