APAS討伐部~パートナーになったのは、最凶最悪の怪異でした~

菜鳥オウル

17.過去と今に向き合う時間。①(脚本)

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〇旅館の和室
仲居「お部屋はこちらになります」
玲奈「ありがとうございます。荷物はその辺に」
仲居「承知しました。 では、ごゆっくりお過ごしください」
  須佐川さんから封筒をもらった翌日。私と時雨は任務のために殺生石付近へやってきた。
  けど、問題があって──
時雨「・・・」
玲奈「・・・」
玲奈(やっぱり、昨日から時雨の様子がおかしいわ)
玲奈(須佐川さんと何かがあったことは 確実なんだろうけど、聞いても 教えてくれないし・・・)
玲奈(とりあえず、普段通りに接するしかないか)
玲奈「じゃあ、早速調査に向かいましょうか」
時雨「・・・うん」

〇岩山
玲奈「ふう、着いた。案外近かったわね」
玲奈(普段は観光地だけど、資料にあった通り、ちゃんとうちの組織が封鎖してくれてるみたい。周りに他の人はいないわ)
玲奈「あの大きな岩が殺生石だけど、ぱっと見変なところはなさそうね」
玲奈「何かの妖力も感じるけどそれ以上のことは分からないし・・・」
玲奈「時雨はどう?」
時雨「んー・・・そうだね」
時雨「観崎の言った通りかな。この中には管野の事件の時感じた妖力と、もう一つ別の──玉藻の前の妖力が入ってるみたい」
時雨「あと言えることといえば、この2つの妖力は特徴が似てるってことかな」
玲奈「特徴が似てる──と何が分かるの?」
時雨「相手の怪異の種類かな」
時雨「妖力って個人ごとに違うものではあるんだけど、同時に怪異の種類によって特徴が出るんだよね」
時雨「例えば、狸なら狸っぽい妖力、蛇なら蛇っぽい妖力、狐なら狐っぽい妖力があるってこと」
時雨「だから石に宿ってる2つの妖力が似てるってことは・・・」
玲奈「管野くんの事件の犯人も玉藻の前と同じ狐の怪異ってこと?」
時雨「そう」
時雨「まあそれが分かったところでって感じではあるけど」
玲奈「いえ、情報が1つでも増えるのはいいことよ」
玲奈「他に何か分かったことはある?」
時雨「えっと・・・」
時雨「・・・いや、これ以上はなにもなさそう」
玲奈「そう。じゃあ次に行きましょうか」
時雨(・・・うん。これは多分、気のせいだよね)
時雨(玲奈ちゃんの霊力と玉藻の前の妖力が全く同じものに見える、だなんて)

〇けもの道
時雨「よいしょっと・・・」
時雨「にしてもこんな獣道を歩いて行かなきゃいけないなんて、キミの実家は変なところにあるんだね」
玲奈「狐守家は殺生石を監視する任務のため、 世間から隠れて生きていたのよ。 まあ私も資料で読んで知ったんだけど」

〇広い和室
玲奈(あの頃屋敷の外に出られなかったのもきっとその所為ね)
玲奈(ほんとに私、自分の家のことなにも知らなかったんだわ)

〇けもの道
玲奈(この先で、私は過去と対面することになる)
玲奈(何があっても冷静に、 気を強く持たないと・・・)
時雨「──あっ、あっちの方、家っぽいものが見える!」
玲奈「──!!」
玲奈(さあ、行くわよ)

〇森の中
玲奈「・・・・・・」
時雨「事件が起こったのは14年前。それでも結構痕跡は残ってるものなんだね」
時雨「じゃあ始めるけど・・・ いい? 玲奈ちゃん」
玲奈「・・・ええ。お願い」
時雨「分かった」
時雨「・・・使われたのは幻術」
時雨「これだと、人を疑心暗鬼にさせる類いのものかな。結構大がかりな術になってる」
時雨「だから狐守家の人々は・・・」
時雨「──互いで互いを殺し合った」
玲奈「あ──!!」

〇黒

〇広い和室

〇広い和室
白月「待っていてください。 貴方が成長したら──」
白月「──必ず迎えに行きますから」

〇森の中
玲奈「思い、出した」
玲奈(あの日起こった事も、あの怪異の姿も、最後に言われた言葉もすべて──)
時雨「大丈夫? 顔が真っ青だよ」
玲奈(正直、全然大丈夫じゃない。 身体が震える。胸が痛い。怒りと恐怖がごっちゃになって、どうにかなりそう)
玲奈(でも──)
玲奈「問題ないわ」
玲奈「乗り越えないと、きっと私はなにもできない」
玲奈「家族の仇を取るため、ちゃんと前に進まなきゃ」
時雨「・・・」

〇空

〇空

〇旅館の和室
玲奈「はぁー、良いお湯だった。たまには広いお風呂も良いわね」
時雨「あ、お帰り」
玲奈「ただいま、時雨。 あなたも温泉行ってきたらどう? 露天風呂、星が綺麗だったわよ」
時雨「んー、僕はいいや」
玲奈(うーん。調査から帰ってきてから、余計に時雨がおかしくなってる気がするわ)
玲奈(夕飯もほとんど食べてなかったし、お酒を勧めても飲まないし)
玲奈(触れないようにしてたけど、 さすがに・・・)
玲奈「ねえ時雨。昨日からほんとに どうしちゃったの? 須佐川さんとなにかあった?」
時雨「・・・」
時雨「・・・僕も、玲奈ちゃんみたいになれたらなあって」
玲奈「え? どういうこと?」
時雨「昨日ね、須佐川に言われたんだ。玉藻の前討伐のために神に戻れ、って」
玲奈「ああ、そういえばあなた、元水神だったのよね。最初に貰った資料に書いてあった気がするわ」
時雨「そう。それで僕は同意したんだけど、結局失敗しちゃったんだ。多分僕の気持ちの問題で」
時雨「・・・ねえ、玲奈ちゃん。聞いてくれる? 僕の昔の話を」

次のエピソード:18.過去と今に向き合う時間。②

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