灰燼ブラッドストーカー(脚本)
〇地球
〜2XXX年〜
人類は外宇宙生命体によって壊滅的な打撃を受けた。
〇荒野
少年「はぁ・・・ はぁ・・・はぁ・・・!!」
少年「くそっ・・・!! 下手打った!!」
────────────
少年「(逃げきれそうにない・・・!!)」
──────
傀神「!!!!!!!!」
────
少年「────────────」
ブラッドストーカー「・・・・・・・・・・・・」
黒い人型の存在は、
しばらく少年にも刃を向け立っていたが、
やがて刃を収めて去ってゆく・・・
少年「(なんだアイツ・・・ 俺を・・・助けてくれたのか・・・??)」
〇黒背景
〜灰燼ブラッドストーカー〜
〇研究所の中枢
──外宇宙生命体 侵略拠点──
傀神「なに?人狩りをしているところで 同朋が何者かに殺害されただと!?」
傀神「ああ。殺害される直前に念波で飛ばして来た映像がコレになる」
傀神「我々と少し似ているな。 しかしコイツは我々とは違う」
傀神「我々『デウス・カースス』は 侵略当初この星旧来の言葉から 『災いの神』という意味を当てて 『傀神』(カイジン)と名乗った」
傀神「コイツの呼び名は──そうだな。 仮として我々と似て非なる者、塵あくたの存在という意味を込め『灰塵』とでも文字を当てておけ」
傀神「報告だ!! 人狩りに向かっていた連中が、 更に次々とその黒いヤツに倒されているという情報が上がっているぞ!!」
傀神「幹部クラスの強力な同朋も混じっているとのことだ!!」
傀神「ほぅ・・・面白い・・・!! 今の段階に至るまで、この星の活動には苦戦した記録があまりないからな」
傀神「我らの本懐は闘争!!!! 強敵をねじ伏せ、血をすすり、叫ぶ!!!! これこそが至上の喜び!!!!」
傀神「少し泳がせておけ。いよいよ手が付けられなくなったら、最終的にはワタシが出る」
傀神「貴様どこか楽しそうだな」
傀神「それはそうだろう? この星を襲い始めてから初めて少し骨のあるヤツが出てきた!!」
師団長ドラグファフニール「ヤツの首はこの師団長!! ドラグファフニールが取りたい!!!!」
師団長ドラグファフニール「むしろだ! 私が出ざる得なくなるまで そう簡単にやられてくれるなよ!!」
師団長ドラグファフニール「フハハハハハハッ!!!!!!!!」
師団長ドラグファフニール「ハーハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!」
〇組織の廊下
──人類のシェルター──
男性「そうか・・・それは大変だったな。命が助かって良かった」
少年「アイツは一体何者だったんだろう・・・。 見た事がないヤツだった。 ・・・新しく生まれたのかな??」
男性「普通に考えればそれで済む話ではあるが・・・。 そいつは奴らを襲っていたんだよな。 そして、オマエは逃がしたと・・・」
少年「・・・なぁ、もしかしたらアイツ使えるんじゃないか?」
少年「俺達ではほとんど倒せたって記録が残っていない人型タイプを、アイツ普通に倒したんだ」
少年「なんとか・・・例えば、今狙っている奴らの生殖場に上手く誘導してさ・・・」
少年「アイツに厄介な人型のヤツを・・・ あわよくば倒してもらってさ。 俺達はその隙に卵を潰す」
男性「・・・ふむ。 ドローンでそれらしきヤツを補足したら、 少し張り付いて観察してみよう」
男性「味方とは限らないが・・・つぶし合ってくれるなら確かに好都合だ」
〇荒地
────
〇研究機関の会議室
少女「監視対象の黒い人型タイプの居場所が特定されました!!」
少女「監視対象は別の人型タイプを次々と撃破し、 今は私達の狙っている化け物達の生殖施設に向かっているようです」
女性「もしかしてコレってチャンスなんじゃないかい?」
少年「俺達にはまだ自力で人型のを倒すほどの力は無い・・・。でも・・・」
男性「うむ。あの黒いのが化け物を狙い続けているのは間違いないな」
男性「あの生殖場を狙うならこれ以上のチャンスはない。 十分に危険を冒す価値はある。いくぞ!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
──外宇宙生命体 生殖施設前──
ブラッドストーカー「・・・・・・!!!!!!!!」
傀神「!!!!!!!?」
少年「黒いヤツ!! 援護する!!!!」
少年「いけぇえっ!! みんな!! もっとだ!!!!」
女性「くらいなっ!! 私達のとっておきだよ!!!!」
男性「プラズマカノン発射!!!!」
────
ブラッドストーカー「────!!!!」
────
少年「よし!化け物の相手はアイツに任せて! 俺達は卵をやるぞ!!」
〇薄暗い廊下
〇地下に続く階段
〇黒
──────
〇魔物の巣窟
──外宇宙生命体 生殖施設深部──
少年「はぁはぁ・・・ くそっ、胸糞悪い光景だぜ」
女性「奴らは人の肉体に卵を産み付ける」
女性「卵は骨以外の場所を溶かして吸って。 卵は卵のままで肉の繭をつくる・・・」
女性「肉の繭の中では、その人間の骨がベースになり、骨の強化と肉付けがされる」
男性「そして、素養があったものが人型の怪人タイプになり、それ以外が奇形の動物のようなモンスタータイプになる・・・」
男性「つまり、これらは奴らの卵であると同時に・・・我らの仲間の遺体、成れの果てって事だな」
男性「・・・弔うぞ」
少年「ああっ・・・!!」
〇魔物の巣窟
〇魔物の巣窟
少年「これで最後だ!!」
少年「──あいつは──!?」
少女(無線通信)「他の場所で人型タイプと戦っているのを ドローンが確認しています」
男性「良し!! 我々の目的は果たした!! 脱出するぞ!!」
少年「まて!! 何か妙な音が」
〇魔物の巣窟
────────────────
ブラッドストーカー「────────!!!!!!!!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
〇荒野
少年「なにがおきた!?」
少年は辺りを見回すが、仲間達は見当たらない。
そして直ぐに圧倒的な存在感を放つ白い人影に気が付き、
先ほどの閃光が、この人影による攻撃だったのだということを理解する。
師団長ドラグファフニール「クッ、ハハッ!!!! フハハハハハハハハッ!!!!!!」
師団長ドラグファフニール「これはまた大層な事をしでかしてくれたものだな!!」
師団長ドラグファフニール「しかし、それでいい!!!! これくらいのことが起きなければ 私が直々に出向くことなど許されぬ!!!!!!」
ブラッドストーカー「・・・・・・・・・」
師団長ドラグファフニール「先ほどの攻撃は挨拶代わりだ!!!! これでようやく貴様と戦える!!!!」
師団長ドラグファフニール「さあ!!!! 思う存分に!!!! 殺し合いを始めようではないか!!!!」
──────
師団長ドラグファフニール「遅いな!! こちらだ!!」
ブラッドストーカー「────!!!!」
師団長ドラグファフニール「ハハハハハハハッ!!!!!!!! 貴様の力はそんなものか!!!!!!!?」
────
少年「・・・なんだよ。あの化け物・・・ 黒いヤツ完全に押されてるじゃねぇか・・・」
〇組織の廊下
男性「オマエはこれを持っていけ」
少年「この銃は・・・?」
男性「開発中の新兵器の試作品なんだがな」
男性「少しだけアイツらが火だの雷だの飛ばしてくる能力を抑えて、動きを封じることができるんだ」
男性「・・・仮に止めたところで、俺達には強力な人型の方を倒せる武器は無い」
男性「最大限上手く使って逃げられるかというところだが・・・」
〇荒野
少年「(俺達には無理でも、アイツなら!!)」
少年「(でも・・・撃ったところでまともにあの化け物に当たるのか・・・?)」
少年「(──いや、アイツ等は俺らの事なんて虫ケラみたいに思ってる・・・)」
少年「(ましてやあれほど自分の力に自信をもっていそうなやつだ。 ・・・だったら俺の経験上・・・)」
白い傀神は左腕の手の平で
銃弾を受け止めた──
少年「(狙いさえ外さなければ、避ける事さえせずにまともに当たる────)」
師団長ドラグファフニール「──焦るな人間。気付いているぞ。 邪魔をするな!!」
師団長ドラグファフニール「────!? これは??」
師団長ドラグファフニール「しかし、この程度動きが封じられたところで戦況は────」
しかし、黒き影は
その隙を見逃さなかった。
師団長ドラグファフニール「貴様そんな力を隠し持っていたか・・・!!!!この私を倒すとは──」
師団長ドラグファフニール「フッ・・・フハハハッ!!」
師団長ドラグファフニール「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!」
──────
──────
──やがて、少年が駆け寄って来る。
少年「ハッ、ハハッ・・・!! やった!! やったじゃねぇかオマエ!!!」
少年「助かったぜ!! コレでようやく、 仲間達の無念が少しは・・・」
────
安堵の表情を浮かべる少年
黒き人の形をした者は、
しばらく無言で少年を見つめていたが、
──やがて
────
──────
少年「どう・・・して・・・ おまえ・・・オレたちの味方じゃ・・・」
少年「────────────────」
────────────────
事切れた少年の亡骸が、本来の姿に戻る──。
その姿はこの地球本来の人類のものでは無い。
────
黒き人の形をした者
ブラッドストーカー・・・。
彼にはもう・・・
それであった頃の記憶はない・・・。
取り戻す事もない──。
〇荒廃した教会
???「・・・もう・・・ダメだ。皆殺されちまった・・・」
???「多分、生き残っている人間は、世界中を探しても・・・もう・・・」
???「教会か・・・もう何もかもが憎い・・・。 あの化け物達も、今の自分も・・・」
???「存在しない神を崇めていたってこの場所も・・・」
無造作に転がっている
古びた剣を見つけた。
???「・・・奴らに寄生されて身体を奪われるよりはマシか・・・」
最後に強く強く憎しみを込めて想う
・・・・・・
神──いや、存在するのであれば、
この星の悪魔に・・・・・・
???「俺の・・・いや、 空から現れた奴等に殺された全ての人々の魂を生贄に・・・!!!!!!!!!!」
???「どうか奴らを滅ぼし尽くす為の呪いを・・・!!!!!!!!」
???「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ブラッドストーカー「・・・・・・・・・・・・」
ブラッドストーカー「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
〇地球
〜2XXX年〜
〇謎の施設の中枢
この星にいた元の人類は、
外宇宙生命体によって既に滅ぼされていた。
〇組織の廊下
今この星で人類とされる者は、
過去この星にやって来た、擬態しているだけの外宇宙生命体の一種である。
〇荒野
もはや人ではない何かとなった
本来の人類最後の生き残りである
男の中にあるものは・・・
──激しく深く──
〇血しぶき
──歪にゆがんだ憎しみだけ──。
〜灰燼ブラッドストーカー〜
END
少年、少女、男性に名前がないのはそんな理由があったからなんだ。それを知ると、最後の生き残りであるブラッドストーカーの狂気と悲哀がますます重く感じられます。みなさんコメントで仰るように、生殖施設の描写がえぐいですね。あと、ドラグファフニールが笑いすぎて過呼吸になるかと思った。地球人以外であんなに笑ってる人初めて見ました。
人類側も結構頑張ってるなー、と見せかけてからのコレ。叶わぬ願いであろうとも、いつか灰燼さんに心休まる日がくればいいなと思いました。個人的に卵の描写が昆虫の完全変態でお気に入りです。多分元の人格とかもドロドロに攪拌されてるんだろうなぁ、と。
すごくブラッドストーカーの辛さが伝わってきました。
結局憎しみはいつまでも消えませんよね。例え仇を取ったとしても。
あと卵を産みつけるところは想像したらご飯が食べれなくなりますね…。