憑依職業体験(脚本)
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
僕の名前は正雄。大学2年生だ。
今日も大学で就活セミナーを受けてきたばかりだ。そろそろ真面目に就活を考えないといけない。
でも、僕はこれといった取り柄も夢もなく、年賀状の仕分けと引っ越しの短期バイトしかやったことない。
いきなり就職って言われても実感がわかない。かといって今からバイトしまくるのもなんだかなぁ・・・
大輔「よっ!!」
そんなことを考えていると、悪友の大輔がやってきた。
正雄「なんだ、大輔か」
大輔「なんだとはなんだよ。どうせ就職のことで悩んでたんだろ?」
正雄「うっ・・・まぁな」
大輔「実は今日はいい物を持って来たんだ♪」
正雄「いい物?」
大輔「じゃ~~ん♪」
正雄「なんだこれ?」
大輔「憑依薬さ♪」
正雄「憑依薬?」
大輔「あぁ、これを飲めば一定時間、幽体離脱して他人に乗り移ることができる」
正雄「大丈夫なのか? 危ない薬なんじゃ・・・」
大輔「大丈夫♪ 大丈夫♪ 俺がすでに飲んで実証済みだぜ♪ 本当にこれを飲むと幽体離脱して他人に憑依できるんだよ♪」
正雄「マジか・・・」
大輔「せっかくだからこの薬を使っていろんな職業を体験してみないか? きっと就職のいい参考になると思うぜ♪」
正雄「う~ん・・・」
大輔「あ、そうそう ちなみに異性にしか憑依できない」
正雄「なぜ異性限定?」
大輔「同性だと魂が定着しやすくて、最悪元に戻れなくなる可能性があるらしい」
正雄「それはやだな」
大輔「どうする?お前が嫌だったら無理強いはしないぜ?」
正雄「う~ん・・・ せっかくの機会だからやってみるか」
大輔「よし!そうと決まれば早速開始だ!!」
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
僕達はベッドに寝転び、薬を飲んだ。
すると、頭がボーッとしてきて、次第にふわ~と体が宙に浮かぶような感覚がした。
正雄「すげー!本当に幽体離脱している!!」
大輔「だから言っただろ♪」
眼下を見ると、ベッドの上で意識を失っている自分達の抜け殻が見えた。
大輔「幽体になると、他人からは見えなくなる。あと、物体をすり抜けることができるぜ♪」
たしかに棚の上の写真立てをつかもうとすると、指が写真立てをすり抜けた。
大輔「それじゃあ行くか♪」
大輔は部屋の壁をすり抜けて外へ出て行った。僕も後を追う。
どうやら手足を動かさなくても行きたい方向を思うだけで移動できるようだ。
〇ゆるやかな坂道
大輔「幽体での移動方法はわかったようだな。じゃあ早速、あの親子で憑依の練習だ!」
大輔の向く方を見ると、親子が歩いていた。娘は幼稚園ぐらいで、母親は30歳前後だろう。
何か行事の帰りなのだろうか、結構おめかししていた。
女児「ママ~ ケーキ食べたい~」
母親「おうちに帰ってからね」
大輔「俺がお手本を見せるからお前も続くんだ♪」
そう言うと、大輔は娘の方へ飛んでいき、その体に飛び込んだ。
女の子(大輔)「ヘヘッ、憑依成功だ♪ おい、早くお前も乗り移れよ」
女の子が突然、僕の方を向きながら男口調で話し始めた。本当に大輔が乗り移ったんだ!!
母親「どうしたのユナ!?」
女の子(大輔)「ヘヘッ、奥さん もうすぐ連れがあなたに入りますのでご安心ください♪」
母親は豹変した娘の言動に戸惑っていた。このままじゃかえってかわいそうだ。僕は母親の身体に飛び込んだ。
母親(正雄)「う、うわぁ!? 本当に憑依してる!!」
女の子(大輔)「どうだ女になった気分は?」
母親(正雄)「へ、変な感じ・・・」
髪は伸び、胸は膨らみ、股がスースーして心許ない。
女の子(大輔)「身体は正真正銘本人だからな つまり、俺はお前のお腹から産まれてきたってわけだ♪」
母親(正雄)「や、やめろ 気色悪い・・・」
女の子(大輔)「ママ大好き♡」
母親(正雄)「ひぃ!?」
女の子(大輔)「ま、これで憑依方法はわかっただろ? 次行こうぜ!」
母親(正雄)「ちょ、ちょっと待って! どうやって身体から出るの!?」
女の子(大輔)「「身体から抜けたい」と強く思うだけでいいんだ」
僕は目を閉じて「身体から抜けたい」と強く思った。
すると、ふわっと浮き上がる感覚がし、身体から抜けて幽体に戻っていた。
正雄「す、すごい! 憑依薬の効果は本当だったんだな!!」
大輔「だから言っただろ♪」
親子を見下ろすと、周りをキョロキョロ見回しながら戸惑っていた。
大輔「憑依されてる間の記憶は無いんだ。 なんかやってみたい仕事はあるか?」
正雄「う~ん・・・特には」
大輔「じゃあ飛び回りながら考えるか♪」
〇コンビニのレジ
コンビニ店員「いらっしゃいませ~」
正雄「コンビニ店員やってみたいなぁ」
大輔「よし、行ってこい!」
僕はコンビニ店員への憑依に成功した。
さっきの母親の身体と比べると、ズボンだから男の時とあまり違和感がない。ただ、ブラジャーとショーツの締め付けは感じる。
お、早速お客さんが来たぞ
コンビニ店員(正雄)「いらっしゃいませ~」
きれいな人だな・・・
女性はレジに男性向け雑誌を出してきた。
どうしてこんなきれいな人がこんな本を・・・
コンビニ店員(正雄)「あ!お前もしかして大輔だな!?」
OL(大輔)「ヘヘッ、バレたか♪」
コンビニ店員(正雄)「まったく・・・ どうりでおかしいと思ったよ」
OL(大輔)「読んじゃダメ?」
コンビニ店員(正雄)「ダメ!!」
〇病室
次に僕達は老人ホームにやってきた。
介護職員「はい、山崎さん」
山崎「いつも悪いねぇ・・・」
山崎(大輔)「い、いてぇ!」
介護職員(正雄)「お、おい、どこが痛むんだ!?」
山崎(大輔)「か、身体の節々が・・・」
介護職員(正雄)「大丈夫か? ほら、俺が支えてやるよ」
山崎(大輔)「悪いな・・・。老人っていつもこんな痛みに耐えてるんだな。大切にしなきゃ・・・」
スケベ爺「ヘヘッ、今日もいいケツしとるのぅ」
介護職員(正雄)「うわっ!?」
うげっ!男におしり触られた・・・
最悪・・・
〇東急百貨店
大輔「次はデパートに行ってみるか」
正雄「おう」
〇デパートのサービスカウンター
デパートに入ると、サービスカウンターの中に二人の受付嬢がいた。
正雄「二人ともすごい美人だなぁ」
大輔「そりゃあ受付嬢はデパートの顔だからな とりあえず乗り移ろうぜ」
受付嬢(正雄)「エヘヘ♪ 自分の顔を見れないのが残念だなぁ♡」
受付嬢(大輔)「見ろよ、この肌 すっごいスベスベしてる♪」
そう言って大輔はきれいな指で頬ずりしていた。
受付嬢(正雄)「うっ・・・」
受付嬢(大輔)「どうした?」
受付嬢(正雄)「なんかさっきからお腹が締め付けられる感じがするんだ・・・」
受付嬢(大輔)「ガードル付けてるんじゃないか?」
受付嬢(正雄)「ガードルってなんだよ・・・」
受付嬢(大輔)「お腹やお尻を引き締めてきれいに見せるための補正下着みたいなやつだよ」
受付嬢(正雄)「そうなのか・・・ 受付嬢って優雅そうに見えて結構大変なんだな。まるで白鳥が水の下で足をバタつかせてるみたいだ・・・」
受付嬢(大輔)「アハハ!おもしろいなその表現♪」
受付嬢(大輔)「おい!誰かこっちに来るぞ!!」
「いらっしゃいませ」
女性客「ATMはどこかしら?」
受付嬢(正雄)「ATMはえっと・・・」
僕達はカウンターの上にある地図を見ながらなんとか探し出した。
受付嬢(正雄)「ここです」
女性客「ありがとう」
受付嬢(正雄)「今の子、すごく美人だったなぁ」
受付嬢(大輔)「あぁ、あんな子を彼女にしたいぜ」
それから10分くらい立っていたが、暇だったので次に行くことにした。
〇美容院
僕達は美容師と客に憑依した。
美容師(正雄)「散髪用のハサミって普通のハサミとは違って持ち辛い・・・」
女性客(大輔)「ま、そりゃそうだろう」
美容師(正雄)「うわっ!切り過ぎた!!」
女性客(大輔)「やべっ!ずらかるぞ!!」
〇ウェディングドレスショップ
僕達はドレスショップにやって来た。
花嫁「どうかしら?」
店員「えぇ、とてもよくお似合いですよ♪」
花嫁「うふふ、彼も喜んでくれるかしら」
花嫁(大輔)「すげー!俺がウェディングドレス着てる!!」
店員(正雄)「いいなぁ 俺も着てみたいなぁ」
花嫁(大輔)「着ればいいじゃん そこに一杯掛かってるんだから」
店員(正雄)「じゃあ着てみるか♪」
店員(正雄)「お~い、ちょっと手伝ってくれ!」
花嫁(大輔)「お、おう」
花嫁(大輔)(なんで花嫁の俺が店員の着付けを手伝ってんだ?)
店員(正雄)「あは♪ どうかな?」
花嫁(大輔)「あぁ、似合ってると思うぞ」
店員(正雄)「ウェディングドレスってワサワサして動きづらいんだな」
花嫁(大輔)「ま、見た目重視だからな」
店員(正雄)「結婚式のリハーサルしようぜ♪」
花嫁(大輔)「あぁ、いいぜ♪」
店員(正雄)「新郎新婦の入場です」
僕達は腕を組んで歩いた
店員(正雄)「それでは誓いのキスを・・・」
僕達は唇を重ね合わせた
店員(正雄)「はぁ~ 楽しかった♡」
花嫁(大輔)「次行くか」
店員「えっ!?えっ!? なんで私がドレスを!?」
花嫁「唇が熱いのはなぜかしら・・・」
〇幼稚園
園児「せんせ~ みて~ バッタ~」
保育士(正雄)「す、すごいわね~」
園児「せんせ~ おままごとしよ~」
保育士(正雄)「は、は~い」
園児「あたしがママでせんせ~とリサちゃんがこどもだよ」
園児「いまごはんつくりますからね~」
保育士(正雄)「はぁ・・・」
リサ(大輔)「大丈夫か?」
保育士(正雄)「今までで一番きついかも・・・」
リサ(大輔)「俺があの子と遊んでてやるから、その間に休めよ」
保育士(正雄)「頼む」
リサ(大輔)「ママ~ あたしにもてつだわせて~」
園児「ちいさいこはあぶないからきちゃいけません!」
リサ(大輔)(本当は俺の方が4倍ぐらい年上なんだけどな・・・)
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
それからもいろんな職を転々とし、部屋に戻ってきた。
正雄「ふぅ・・・やっぱり自分の身体が一番落ち着くなぁ」
大輔「どうだ?やりたい仕事は見つかったか?」
正雄「う~ん・・・余計にわからなくなってきた どれも一長一短で・・・」
大輔「まっ、まだ時間はあるんだから、じっくり考えればいいさ♪ また体験したくなったら付き合ってやるよ♪」
正雄「おう♪ サンキュー♪」
女性に成り済まそうとして四苦八苦する姿を見るのは好きです!元の体との違いや立場の違いも描写してるのも凄く良いですね!続きも読んでみたいです!
楽しい〜!私もこんな憑依経験をやってみたい!女の体に憑依したい!あっ!失礼しました。やはり仕事は経験してみないとその苦労や大変さはわからないんですね。
職業体験というより、女性に成りすまして経験したことが一番刺激的で楽しそうでしたね! 仕事ってやってみないとわからないことが沢山あるけど、この体験が就活へのよい動機付けになればいいですね。