第13話 対策(脚本)
〇可愛らしいホテルの一室
ラビッシュ「──見ての通り、おいらの火力じゃ、奴にはとどめを刺せなかった。 奴はダメージが蓄積してくるとすぐに逃げ出してしまうんだ」
ラビッシュ「だから、おいらだけじゃとどめを刺せないんだ」
イリア「渚さん、どう思います?」
以龍 渚「・・・なぁ? 最後の攻撃、なんで顔面──頭部を狙って攻撃したんだ?」
ラビッシュ「なんでって・・・ 一撃で決着をつけるのなら、頭部への攻撃は当たり前の判断じゃないか?」
以龍 渚「そこが間違ってる」
イリア「え? どういうことですか?」
以龍 渚「仮に俺がラビと同じ能力を持っていたとしたら、俺なら翼を狙う」
ラビッシュ「翼って・・・ 頭部に集中攻撃しても倒せなかったって言うのに、翼にまで攻撃を拡散してたら──」
以龍 渚「なんで攻撃を拡散する必要がある? 狙うのは翼だけ。それも片方の翼だけでいい」
ラビッシュ「そんなことして、何の意味があるのさ?」
以龍 渚「正直、あんなサイズの相手に俺の考えが通用するのかどうかはわからんが──」
以龍は立ち上がり、部屋に備え付けてあったメモ帳からメモ用紙を一枚破り取って持ってきた。
イリア「? ──書いて説明をするのであれば、もっと大きな紙がありますよ?」
以龍 渚「そんなまどろっしい事はしないさ」
以龍はメモ用紙を二つに折り、それをまた広げる。
そして、真ん中についた折り目の部分を指で挟むように持つ。
以龍 渚「このメモ用紙を鳥だと思って見ててくれ」
中央の折り目を持ったまま、以龍はメモ用紙を上下に揺らす。
──まるで、鳥が羽ばたいているかのようにメモ用紙が動く。
以龍 渚「・・・今は普通に羽ばたいて見えるよな? けど──」
メモ用紙の左側の一部を破り捨てる。
この状態で先ほどと同じようにメモ用紙を上下に振ると──
メモ用紙は鳥が羽ばたくような挙動を見せなくなった。
以龍 渚「つまりはこういうことだ」
イリア「片方の翼だけでも、使えなくしてしまえばもう羽ばたけなくなるってことね」
ラビッシュ「兄ちゃんは、あのフォルクスに勝てるって思ってるの?」
以龍 渚「まだ実際に遭遇したわけじゃないから、勝てるとは言い切れないが、俺は勝つつもりでいる」
ラビッシュ「それを聞いて安心したよ。 やっぱり、兄ちゃんたちを選んで正解だった」
ラビッシュ「──じゃあ、明日の準備もあるし、おいらは戻るね。 チェックアウトの時間に迎えに来るから、しっかりと準備はしておいてね」
ラビッシュが以龍たちの部屋を後にした。
イリア「でも、本当に大丈夫でしょうか? ・・・なんだか、ものすごく嫌な予感がするんです」
以龍 渚「まぁ、仮にも賞金首になるような相手だ。 一筋縄でいくとは思っていない」
以龍 渚「だが、今度は三対一での戦いだ。 もしかすると、グリズリーの時より楽に戦えるかかもしれんぞ?」
イリア「そうだといいんですが・・・」
〇西洋の街並み
ラビッシュは直接部屋には戻らずに、街に出ていた。
目的地は──
〇鍛冶屋
──ギルテの街、武器屋。
「よう。坊主じゃねぇか。 こんな時間に珍しいな? 今日はどうした?」
ラビッシュ「おっちゃん。 『ホルダー』を見せてくれる?」
「ホルダー? おいおい。魔法が使えるお前さんには必要のないモノだろう?」
ラビッシュ「へへ。 おいらが使うんじゃないんだよ」
「えらく上機嫌だな? ──お。 そうか、ついにお前さんにもいい仲間が見つかったんだな?」
ラビッシュ「そういうこと。 とびっきり、かっこいいのを見繕ってくれよ。 ──兄ちゃんに似合いそうな、かっこいいヤツを」