北の七夕

糸本もとい

第1話「ローソク出せ」(脚本)

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〇ラブホテルの部屋
大串葉月「ローソク、出ーせー、出ーせーよー」
滝野夏樹「どうした? 急にローソク出せの歌なんて」
大串葉月「ううん・・・なんか、ふっと浮かんだだけ」
  2010年8月7日16時40分
滝野夏樹「もう、こんな時間か・・・」
滝野夏樹「そろそろ出ないと、子供たちが店に来る時間に間に合わないな」
大串葉月「うん・・・」

〇コンビニ
滝野湊「ローソクだーせーだーせーよー♪」
大串紬「だーさーないとーかっちゃくぞー♪」
「おーまーけーにーかみつくぞー♪」
大串葉月「来たねー」
大串葉月「はい。お菓子だよー」
「わーい。ありがとー」
大串紬「ママ、きょうは何時に帰ってくるの?」
大串葉月「うーん・・・ちょっと遅くなるから・・・」
大串葉月「おばあちゃんの言うこと聞いて、いい子で寝ててね」
大串紬「わかった。そのかわり、あしたはおでかけね」
大串葉月「うん。お出かけね」
滝野湊「つむぎ! つぎの家に行こう!」
大串紬「うん! じゃあねママ!」
大串葉月「気をつけてねー」
「はーい!」
「ローソクだーせーだーせーよー♪」
大串葉月「・・・・・・」
菊田奈緒「ほんと、いい子だよねえ。紬ちゃん」
大串葉月「うん・・・」
菊田奈緒「なした?」
大串葉月「ううん、なんでもないよ」
菊田奈緒「なんか罪悪感とか感じてる?」
大串葉月「え・・・?」
菊田奈緒「誕生日ぐらい堂々と羽を伸ばしても、罰は当たらんべさ」
大串葉月「うん・・・」
菊田奈緒「土日に休めない仕事とはいえさ、妻の誕生日に不在な夫が悪いんだから」
大串葉月「それは、しょうがないことだから・・・」
菊田奈緒「まあ、今夜は家庭のことなんか忘れて楽しもうよ」
大串葉月「うん・・・」
滝野夏樹「子供たちも行ったことだし、そろそろ行こうか」
菊田奈緒「いこいこ。店長のおごりで、ただ酒ただ酒♪」

〇居酒屋の座敷席
菊田奈緒「ここ、美味しいんだよね」
大串葉月「そうなの?」
菊田奈緒「うん、新しいけど評判で人気なんだよ」
大串葉月「そなんだ」
菊田奈緒「よく土曜日の夜に、個室の予約取れたね」
滝野夏樹「ああ、おやじの知り合いが経営してるんだ」
菊田奈緒「ええ!? そうなの? オーナーってば顔が広いんだねえ」
店員「お待たせいたしましたー」
菊田奈緒「乾杯しよ! 葉月、誕生日おめでとう!」
「カンパーイ!」
大串葉月「ふう・・・美味しい・・・」
本郷克彦「失礼を・・・愉しんでおられますか?」
滝野夏樹「本郷さん・・・! いらっしゃったんですか」
本郷克彦「ええ、ちょうど店に顔を出していたものですから」
本郷克彦「漏れ聞こえましたが、お誕生日ですか?」
大串葉月「あ、はい・・・」
本郷克彦「それは、おめでとうございます」
大串葉月「ありがとうございます・・・」
本郷克彦「ご挨拶が遅れました。本郷と申します」
大串葉月「あ、大串と申します」
本郷克彦「ご迷惑でなければ、私からのお祝いとしてボトルでも、お入れしましょう」
大串葉月「えっ!? よろしいんですか?」
本郷克彦「焼酎などは、お飲みになりますか?」
大串葉月「あ、はい。芋焼酎は好きです」
本郷克彦「それでしたら甕雫など、いかがでしょう。お好きですか?」
大串葉月「あ、はい。好きです。けど、そんな高価な・・・」
本郷克彦「お祝いとご挨拶を兼ねてですので、どうか遠慮なさらず」
本郷克彦「今後とも、ご贔屓に願います」
本郷克彦「それでは、私は、これで失礼を。ゆっくりお愉しみください」
大串葉月「あ、はい。ありがとうございます」
滝野夏樹「さすがに気前がいいなあ・・・」
菊田奈緒「今のって、店長が言ってた?」
滝野夏樹「ああ、この店を含めて色んな会社を経営してる本郷さんだ」
菊田奈緒「へー、あんな絵に描いたようなイケおじ、実在すんだねえ」
菊田奈緒「得しちゃったね、葉月」
大串葉月「え、うん。良かったのかな・・・」
滝野夏樹「いいさ、遠慮なくもらっておけば」
大串葉月「うん・・・」
菊田奈緒「さーて、今夜は飲むぞー!」

〇ネオン街
菊田奈緒「はー、食べた食べた。2軒目はどこどこ?」
滝野夏樹「バーで飲み直そう」
菊田奈緒「いいね、たまには。でも土曜の夜だけど、席空いてるかな?」
滝野夏樹「予約してある。本郷さんが経営してるバーなんだ」
菊田奈緒「へえ、バーも・・・手広くやってる人なんだね」
滝野夏樹「ああ、やり手だよ」
菊田奈緒「それで、あの見た目かあ・・・」
菊田奈緒「札幌にもいるんだね、ドラマの登場人物みたいな人って」

〇シックなバー
菊田奈緒「たまには、ちゃんとしたカクテルもいいね」
大串葉月「うん。美味しい」
本郷克彦「愉しんでおられますか?」
大串葉月「・・・はい。とても素敵なお店ですね」
本郷克彦「ありがとうございます」
本郷克彦「失礼かとは思いましたが、ちょうど顔を出していたものですから」
大串葉月「週末も忙しいお仕事なんですね」
本郷克彦「はい。書き入れ時は飛び回っています。大串さんはウイスキーなど飲まれますか?」
大串葉月「え、はい。ハイボールなら・・・」
本郷克彦「それでしたら、私からのお祝いとしてボトルをお入れしましょう」
大串葉月「え・・・」
本郷克彦「山崎などいかがですか?」
大串葉月「いえ・・・そんな高級な・・・」
本郷克彦「七夕の夜に2度も偶然お目にかかったのも何かの縁でしょう」
本郷克彦「是非、お誕生日を祝わせてください」
大串葉月「・・・では、お言葉に甘えて」
本郷克彦「それでは、私はこれで失礼します。よい誕生日の夜を」
大串葉月「あ、ありがとうございます」
菊田奈緒「太っ腹だねえ・・・山崎ってさ、高いよね・・・?」
大串葉月「うん・・・」
バーテンダー「大串様。こちらが当店のメンバーズカードとなっております」
大串葉月「あ、ありがとうございます」
バーテンダー「こちらが、お預かりした山崎の12年となっております。お開けになりますか?」
大串葉月「あ、はい。では頂戴します」
バーテンダー「かしこまりました。飲み方は如何なさいますか?」
大串葉月「では、ソーダ割りで・・・」
バーテンダー「かしこまりました」
菊田奈緒「ちゃんとしたバーでボトルキープって初めて見るかも」
大串葉月「わたしも初めてだよ」
菊田奈緒「店長も、すごい知り合いがいるもんだね」
滝野夏樹「いや、懇意にしてるのは、おやじだけどね」
菊田奈緒「ああいう人って、どんな遊び方してるんだろね」
大串葉月「だねえ」

〇備品倉庫
  翌週、月曜日の朝
  マスカット北24条店バックヤード
菊田奈緒「土曜日は楽しかったねえ」
大串葉月「うん。楽しかった」
菊田奈緒「ボトル入ってるんだし、今週の週末も行っちゃう?」
大串葉月「うーん・・・」
菊田奈緒「行こうよ。また、本郷さんに会えるかもよ」
大串葉月「え?」
菊田奈緒「え? じゃないよ。すっとぼけても無駄。葉月のドストライクだべさ、本郷さん」
大串葉月「あのねえ、わたしって一応、人妻なんだよ?」
菊田奈緒「今さら、それ言う? 店長より断然に好みじゃん」
大串葉月「そもそも、わたしなんか相手にしてもらえないよ」
菊田奈緒「わっかんないよー?」

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コメント

  • 愛憎劇の言葉が、色々な妄想を駆り立てます。一体、これからどう転がっていくのかと😥😥💦そして序盤の歌の意味は一体!?

  • 危険な香りのイケオジに目を奪われますね!子供たちの七夕行事と、オトナたちの危ない空気感、対比がたまらない(?)ですね。ドキドキ感が止まりません!

  • 道民なので、タイトルに惹かれて読み進めましたが、イケオジにクゥ〜!っとなりました。
    やはりバーはススキノでしょうか?
    確かに北海道の七夕は8/7なので、ニュースで七夕の話題になると、あ〜本州はねえ…みたいなクウキになります(笑)
    そして、ローソク出せが懐かしい。この風習が不倫とどう絡んでくるのか?

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