ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

エピソード6(脚本)

ウンソーとハッカー

ソエイム・チョーク

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〇シックなリビング
  ううう、頭が痛い・・・
  ここはどこだ?
  木﨑さんのマンションか・・・
  昨日の夜はワインを飲みながら話をして
  酔いつぶれて、この場で寝てしまったのか・・・
  部屋を用意してあるとか言われたような気がしたけど・・・
木﨑瑠璃「ううう・・・」
  起き上がって辺りを見回すと、すぐ近くに木﨑さんも寝転がっていた
遠藤浩一「木﨑さん起きて、こんなところで寝ちゃダメだよ」
木﨑瑠璃「うーん、頭が痛い・・・」
遠藤浩一「風邪ひいちゃうよ」
木﨑瑠璃「・・・そう、ですね もう遅いかも」
遠藤浩一「せめて今からでもちゃんとした所で寝直した方がいいよ」
AI「おはよう、瑠璃」
  急にテレビがついた?
  あれは、誰だろう?
木﨑瑠璃「ああ、兄さん、おはよう」
遠藤浩一「えっ?」
  兄さん? あれが?
木﨑瑠璃「何か変化はあった?」
AI「大井戸商事が都心にビルを建設する計画 六星建設が契約を勝ち取った」
  何の話だろう?
木﨑瑠璃「そのビルは確か、土地確保が滞っていたはずだよね?」
AI「土地所有者の屋炉卯商事は立ち退きに応じていない、大井戸商事の内部では説計変更について議論されている」
木﨑瑠璃「うーん? どっちに転ぶのかわからないのでパス」
AI「トーナム運輸は新しい事業所の建設をキャンセルするようだ、今はまだその時期ではない、とか」
木﨑瑠璃「えっ? ええっ?」
AI「社内で二つの派閥が対立しているようだね」
木﨑瑠璃「そんな! 話が違うじゃない!」
  木﨑さんは大慌てで、テーブルの下からノートパソコンを引っ張り出すと、何かの情報を確認している
木﨑瑠璃「よかった、まだ値崩れしてない・・・」
遠藤浩一「何? 何があったの?」
木﨑瑠璃「ただの株取引ですよ、この株はもうすぐ値下がりする可能性が高いので、その前に売っておかないと・・・」
遠藤浩一「そんなのわかるの?」
木﨑瑠璃「いろいろあるんです」
遠藤浩一「あの画面に写っているのは誰?」
AI「木﨑幸雄です、初めまして」
木﨑瑠璃「あれは兄さんです」
遠藤浩一「どういうこと?」
木﨑瑠璃「兄が死んだ後、家族はバラバラになってしまって・・・兄が生き返ったら、家族も元通りになると思って、作ってみたんです」
AI「覆水盆に返らず」
木﨑瑠璃「実際には全然ダメでしたけどね」
遠藤浩一「作ってみたって、そんな簡単に・・・」
AI「DIYの可能性は無限大だ ただし大抵の場合は買った方が安い」
木﨑瑠璃「話しかけると何か答えを返してくれます 本物にはほど遠いんですけど」
木﨑瑠璃「ところで遠藤さん、ちょっと頼みたいことがあるんですけど」

〇街中の道路
  それから数日後、僕はいつものようにウンソーイーツをやっていた
  木﨑さんからは、藤山コインへの配達依頼があったら必ずうけるよう頼まれていたけど
  なかなか機会がない
遠藤浩一「えーと、次の配達先は・・・」
遠藤浩一「ああ、ついに来たか・・・」

〇雑居ビルの一室
遠藤浩一「こんばんは! ウンソーイーツです!」
加藤「おうおう、今日は偉く早いじゃないか うりゃうりゃ」
遠藤浩一「お、お客さん、棒でつつくのはやめてくださいね」
  早く来すぎて怪しまれているような気がする
  一時間ぐらい放置した方がよかったか?
遠藤浩一「あの、僕は急いでますんでこれで・・・」
加藤「ん? 何だこれ?」
遠藤浩一「あっそれは・・・」
加藤「へへへぇ、もーらいっ!」
遠藤浩一「か、返してくれよ! それ高かったんだから!」
加藤「あーん? 高いだぁ? こんなのその辺の店で買えば2000円ぐらいだろ、おまえ、そんなに金がないのか?」
宮本「さすがにそれは考えにくいよね 中身に秘密があるのかな? 何か価値のあるデーターでも入っているのか・・・」
遠藤浩一「返してよ!」
加藤「次来たときにな、それまで預かっといてやるよ、今日はもう帰りな」
遠藤浩一「そんなぁ・・・」

〇小さい会議室
加藤「USBメモリーに入ってる大切なデーター 何だと思う?」
宮本「住民基本台帳とか?」
加藤「何それ?」
宮本「役所の超大事なデーターだよ」
加藤「ウンソーイーツやってるやつが、何でそんな物持ってるんだよ・・・」
宮本「誰かが落としたのを拾ったんじゃないの? この前もニュースになってたし・・・」
加藤「高かったって言ってたぞ 買ったんだろ」
加藤「あいつが人の個人情報を買って何に使うんだよ」
宮本「それもそうか、じゃあ、無修正エロ動画だな」
加藤「ゲームかも知れないし、モザイクかかったエロ動画の可能性もあるだろ」
宮本「そんなのネットで売ってるでしょ USBメモリーに入れて持ち運んだりするかな?」
加藤「ふーん、じゃあ、中身確認しようぜ 今夜は皆出払ってて暇だからな」
宮本「先週の報告書、終わった?」
加藤「後でやるさ」
「おお・・・」
宮本「やはりエロ動画だったか」
加藤「いや、エロ動画ごときで騒ぐ必要あるか? その気になれば、そこら辺の店で・・・」
宮本「報告書が終わってからにした方がいいと思うけど」
加藤「ったく・・・仕事はつらいぜ」
加藤「しかし、遠藤のくせにいい趣味してやがる けど画質が悪いな、画面全体にモザイクかかってるようなもんだろ」
宮本「サンプルのgifはこんなもんでしょ 本命はこっちの動画・・・」
宮本「何だこのファイル形式!?」
加藤「なんだ? 見れないのか?」
宮本「fogプレイヤーじゃないとダメ? しかも追加dllが必要なの?」
加藤「見れないのか?」
宮本「いや、ちょっと待ってね・・・あれ?」
加藤「何だこの警告?」
宮本「何でもない、俺がかけた制限なんだから、俺の邪魔はさせん ほら、できた」
「うおおおおおおお?」

〇シックなリビング
  ミッション達成、ウンソーの配達は今日はもう終わりにして木﨑さんのマンションに向かう
遠藤浩一「お邪魔します」
木﨑瑠璃「いらっしゃい、あ、夕飯まだですか?」
遠藤浩一「うん・・・」
木﨑瑠璃「カレー多めに作っちゃったんですけど食べます?」
遠藤浩一「いただきます」
木﨑瑠璃「じゃぁ温めますね」
  木﨑さんはコンロの火をつける
遠藤浩一「ところで、あのUSBメモリー、言われた通りにわざと落として来たけれど、どういうこと?」
木﨑瑠璃「ふふふ、藤山コインのパソコンにあのUSBを刺させるのが目的です」
遠藤浩一「そうか! あの中にコンピューターウイルスが入ってるんだね?」
木﨑瑠璃「ハズレです、あの中には無修正エロ動画しか入っていません」
遠藤浩一「ブホアッ?」
木﨑瑠璃「無修正エロ動画です」
遠藤浩一「二回言わなくていいよ、って言うか、違法じゃないの?」
木﨑瑠璃「持ってるだけなら合法ですよ というか、コンピューターウイルスの方が違法ですけど」
遠藤浩一「何でそんな物を?」
木﨑瑠璃「ちょっとした仕掛けがあって・・・中のファイルを再生するためには、特別なプログラムが必要なんです」
木﨑瑠璃「そのプログラムは私の特別製で、インストールするとセキュリティーに穴が空いてしまいます」
遠藤浩一「ごめん、何を言っているのか全然わからない」
木﨑瑠璃「今、私のパソコンは藤山コインのサーバーと繋がっています 中身を覗き放題です」
遠藤浩一「凄い! でも、いいの? そんなことをして・・・」
木﨑瑠璃「絶対ばれません、大丈夫です」
遠藤浩一「やっぱり違法なんだ・・・」
木﨑瑠璃「ハッキングですからね」
遠藤浩一「ところで、その動画はどこで手に入れたの?」
木﨑瑠璃「ネットは広大ですからね あんなの探せばいくらでも落ちてますよ」
遠藤浩一「・・・」
木﨑瑠璃「もしかして・・・遠藤さんも見たいんですか? エロ動画」
遠藤浩一「えっ? それは?」
木﨑瑠璃「ふふふ、どうしてもと言うなら、今ここでお見せすることもできますよ」
遠藤浩一「えっ? さすがに、それは・・・」
木﨑瑠璃「ただし、その場合、カレーの話はなかったことになるかも?」
遠藤浩一「えっ、あの・・・」
  木﨑さんはコンロの火を止める
  顔は笑っているけど、目が笑ってないような気がした
遠藤浩一「カレーでお願いします」
木﨑瑠璃「よろしい、大盛にする権利を与えよう」

次のエピソード:エピソード7

コメント

  • 2人のやり取りが面白い!見たのかな、見てないのかな?気になります!

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