クズハさんと、少年の真夏の異界デート

れこん

後日談(脚本)

クズハさんと、少年の真夏の異界デート

れこん

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〇病室
クズハ「・・・」

〇清潔な浴室
  後日。
  私は血だらけのバスルームで意識を取り戻したあと、必死にリビングに戻って再び薄れゆく意識の中、救急に電話をした。
  そして救急隊員によると、搬送最中、私はずっとうわごとのようにある男の子の名前を呼び、謝り続けていたようだ

〇病室
クズハ「全部思い出したわ。あの世の光景・・・あれは、地元のお祭りにそっくり」
クズハ「それとあの少年──あれは当時同じ学校の文芸部員だった『三枝君』」

〇学校の部室
  当時私は文芸部にいて、三枝君と二人で活動していた
クズハ(中学生)「ど、どうかな私の書いた小説・・・」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「・・・」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「独特の世界観でとっても面白いよ!」
クズハ(中学生)「あー!! その独特の世界観って感想は殆ど内容が意味不明の小説に送る辺り触りの無い言葉(偏見)!」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「ええっ!!そうなの? けど、僕は本当にクズハさんの書いた小説の世界観は好きだな」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「特に今主人公が迷い込んだ世界で行われる死者が永遠にどんちゃん騒ぎするお祭りなんて、実際にあったらおもしろそうだし」
クズハ(中学生)「えっ、そ、そう? デゥフフフ」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「・・・」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「僕、いままでお祭りは言った事ないから、一度は行ってみたいな」
クズハ(中学生)「ほほう、なんとなんと・・・だったら今度私家の近くの神社のお祭り一緒に行く?」
クズハ(中学生)「規模は小さいけど、結構楽しいんだよ。 盆踊りして、汗をかいたら」
クズハ(中学生)「私の大好きなかき氷『ブルーハワイ味』を食べながら夜空に上がる花火を眺めるの」
クズハ(中学生)「あっ、でも・・・うちの祭りの盆踊りって、亡くなった人の遺影を持って踊るから」
クズハ(中学生)「初めて見る人はちょっとびっくりするかも・・・」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「へぇ、そうなんだ。 けどクズハさんと一緒に行ってみたいな」
クズハ(中学生)「うぇ!? わ、私と一緒に・・・本当にいいの!?」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「うん」
クズハ(中学生)(な、なんぞこれ。勇気を出して誘ったらフラグが立ったわ!)
クズハ(中学生)(よくやったわ、私!)
クズハ(中学生)「あっ、でも待って・・・。三枝君、最近体の調子は大丈夫なの? また最近学校休みがちだし・・・」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「ははっ、大丈夫・・・病気も前より良くなってきてるみたいだし行けるよ」
  三枝君は子供の頃に病気を発症して以来、体が弱かった。
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「ところでお祭りはいつなの?」
クズハ(中学生)「えっと、8月15日──お盆が終わる日よ」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「そっか・・・でも、ギリギリ間に合う」

〇学校の部室
幼馴染「失礼します。千歳・・・いますか?」
クズハ(中学生)(あっ・・・三枝君の幼馴染さん)
クズハ(中学生)(うっ・・・三枝君の下の名前を呼び捨てで、しかも容姿も私と違ってめっちゃ可愛い)
幼馴染「千歳、明日は病院の検査があるんだから早く帰って体調整えないと!」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「あ・・・うん」
幼馴染「それじゃ、千歳は連れて帰るんで」
クズハ(中学生)「あ、はい・・・」
幼馴染「・・・。 千歳、悪いけど先に行ってて」
三枝千歳(さえぐさ ちとせ)「わかった・・・」
クズハ(中学生)「・・・何か用かな?」
幼馴染「単刀直入に言います、千歳に関わらないでくれますか?ああ見えて結構千歳無理してるんで」
クズハ(中学生)「えっ? でもさっき結構楽しそうに部活して──」
幼馴染「聞いてください!」
幼馴染「今度千歳は『大事な手術』を受けるんです。その為に安静にしとかないといけないんで無理させたくないんです!」
クズハ(中学生)「えっ、それっていつなんですか?」
幼馴染「8月16日に入院してすぐです」
クズハ(中学生)(えっ、それじゃあ私とお祭りに行く約束なんて・・・ギリギリで無理するに決まってるじゃん)
幼馴染「それでは、くれぐれもお願いしますね」

〇女の子の一人部屋
クズハ(中学生)(あーあ・・・折角浴衣まで買って用意したのに・・・。仕方ないよね)
クズハ(中学生)(三枝君に会ったときに約束をなかったことにしよう)
  けれどこの後、私は何度も三枝君に断りを入れる機会があったのに結局言い出せなかった・・・。
  なぜなら、彼のお祭りを楽しみにする表情がとても眩しくて、壊したくないと思ったからだ

〇学校の部室
幼馴染「千歳があなたと祭りに行き気満々なんですが、これはどういう事なんですか?私いいましたよね」
クズハ(中学生)「う、うん・・・言われたけど、どうしても断るタイミングが無くて・・・」
幼馴染「はぁ・・・仕方ないので私から千歳に言いますけど、一応あなたも当日お祭りには来ないで下さい」
クズハ(中学生)「わかったわ・・・」
幼馴染「ボソ)万が一の事があるかもしれないわ この女には釘を刺しとかないと・・・」
  こうして私は祭りに行くのをやめた。
  けれども・・・。
  本当はこの後、三枝君は幼馴染さんの監視を抜けて、私が祭りに来るのをずっと待ってたんだね・・・。

〇女の子の一人部屋
  それから後日、幼馴染さんから連絡があって、手術後に三枝君の容態が悪化した事を知った。
  そしてそのまま三枝君はこの世を去った。
クズハ(中学生)「うわあああああん三枝君!! 私あなたが好きだったのに! ごめんなさい!ごめんなさい!お祭りに行かなくてごめんなさい!」

〇病室
クズハ「・・・」
クズハ「決めたわ・・・これから生きてする事」

〇本屋
  数か月後。
  とある本屋のサイン会場
ファンの女性「クズハ先生、私先生の作品を読んで感動してファンになりました!」
クズハ「どうもありがとうございます。 今度新作を出すんでそちらも是非」
ファンの女性「はい、勿論!」
  後日、私はあの世の出来事を一冊の本にした。
  最後のエンディングはネタバレするが、主人公はあの世の暮らしが悪くないと思い
  謎の少年といつまでもあの不思議な夏祭りにて、永遠にどんちゃん騒ぎするのだ
クズハ(これが私にできるせめてもの供養。 そっちに行くのは当分先になりそうだからこれで勘弁してね)
クズハ「さーて、死ぬ前にどんどん私の妄想の世界を世の中に出していくぞー!」
  終わり

コメント

  • めちゃくちゃ良い話でした…!!ちゃんとブルーハワイが好きというのを覚えていて後日談で号泣です…(;ω;)
    クズハさんの本が供養になったらいいな、と、いつかクズハさんがそちらに行ったら2人で夏祭り楽しんでほしいです…!三枝くんお婆ちゃんのクズハさん見ても同じ反応してくれそうですね(*^^*)

  • 前話で気になっていた「少年」の正体を知り、悲しさと切なさで胸中がいっぱいになりそうです。あちらの世界での「少年」は、前話のクズハさんの微妙な対応をどう思ったのか想像するのも楽しくなります。(会えて嬉しかったのか、不審なオタ女子と化していたことに若干落胆したのかなど)とまれ、夏の空気感にマッチした素敵な物語に感激です。

  • 千歳君の『独特な世界観』の感想、思い当たる節が、あががが...!
    彼女には前を向いて生きていってほしいです。
    素敵なお話、ありがとうございました。

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