caseX:草木好子の場合 同棲 植木編(脚本)
〇女性の部屋
〜前回までのあらすじ〜
植木鉢から不審者ばりの
中年おっさんが生えてきて
困惑する好子。
捨てるのは躊躇われ、
好子はおっさん植物に「植木」
と名付け同棲を覚悟した──
好子「ただいまー」
植木さん「おかえりなさい、好子さん」
好子(ただいまって言ってくれるの、 うれしいなぁ〜)
好子(うれしいんだけど・・・)
好子(なんだろな〜。この、 ”一人暮らしの娘の部屋に居座っている 父親感” は・・・)
好子(でも、あのご婦人が 『植物にはリラックス効果がある』 って言ってたように、 たしかに何故か癒されるのよね・・・)
好子「じゃあ、今から着替えるから、 あっち向いててね」
植木さん「はい。いつもどおり、 布をかぶって待機しています」
好子(覗かれた事は一度もないのよね。 他の事に対しても従順だし・・・)
好子「着替え、終わったよ」
好子「あー、お腹空いた。 ご飯の準備、してくるね」
植木さん「・・・・・・・・・・・・」
好子「といっても、コンビニ弁当なんだけど」
好子「いただきまーす♪」
植木さん「・・・・・・・・・・・・」
好子「ごちそうさまでした!」
植木さん「・・・・・・・・・・・・」
好子(ふー。 やっと一息・・・)
植木さん「すみません、好子さん」
好子「なに?」
植木さん「そろそろ、水をいただけませんか」
好子「ああっ、ごめん! 忘れてた!」
霧吹きで、植木さんに水をあげた
植木さん「ああ〜。生き返る〜」
好子(まるで、風呂上がりに ビール飲んだようなセリフだ!)
好子「そんなに気持ちいいなら、 もっとかける?」
植木さん「それはダメです! かけすぎると、根腐れしてしまうんです!」
好子「そっかあ・・・」
好子(そうだ! 今度の休みに、 植物用栄養剤でも買ってきてあげよう! サプライズで!)
〇スーパーの店内
週末────
好子「あった! 植物用栄養剤!」
好子(久しぶりだし、ちょっとブラブラして 帰ろう・・・)
好子「・・・ん?」
植物由来の育毛剤
好子(育毛剤・・・ さすがに植木さんには効果ないよね)
〇女性の部屋
好子「ただいまー」
植木さん「おかえりなさい、好子さん」
好子「植木さん。 はい、これプレゼント♪」
植木さん「おお〜。なんでしょう? ありがとうございます!」
植木さん「開けてみてもいいですか?」
好子「どうぞどうぞ」
元気印の植物用栄養剤
植木さん「おおっ、これは・・・!」
好子「植木さんが、 元気になるかなーと思って」
植木さん「う、うれしいです・・・ ありがとうございます・・・!」
好子「そんなに喜んでもらえるなんて。 買ってきた甲斐があったわ」
好子「土に刺しておけばいいかな?」
植木さん「はい、元気が湧いてくるようです!」
好子(なんとなく、 若々しく見える気がする・・・! 気がするだけかもしれないけど!)
好子(頭頂部の輝きも 増しているように感じるわ・・・!)
〇女性の部屋
その夜────
好子(うぅーん・・・ なんだか、寝付けないなぁ・・・)
好子「水でも飲もう・・・」
好子「植木さんは・・・?」
植木さん「・・・・・・・・・・・・」
好子(寝てる・・・ 植物でも寝るんだ・・・)
好子「ふふっ、寝顔を見たの初めてかも♪」
ちょっと風にあたろうと、ベランダに出ようとしたその時────
好子「・・・えっ!?」
〇団地のベランダ
見知らぬ男が、ベランダでうずくまっていた。ド、ドロボー!?
好子(窓を閉めなきゃ・・・!!)
好子(何か・・・挟まれた!? 窓が閉まらない!!)
好子(逃げなきゃ・・・!!)
私は身の危険を感じて、部屋の奥に逃げた。
〇女性の部屋
男はナイフらしきものをチラつかせて、
室内に入ってきた。
好子「う、植木さん! 植木さんっ・・・!!」
植物の植木さんに、何ができるかはわからないが、とにかく大声で植木さんを起こした。
私が人の名を叫んだから誰かいると思ったのか、男は一瞬部屋を見回した。
そして、私のほかに誰もいないとわかると、男はこちらに向かってきた。
好子(も、もうダメだ・・・!)
好子「助けて・・・。 助けてよ! 植木さん!!」
「こっちだ、侵入者め!!」
好子(植木さん・・・!?)
好子(まさか、今一瞬光ったのは、 頭頂部の輝き・・・!!)
好子(な、なにか割れた・・・!?)
好子(侵入者がいない・・・? ど、どうなったの・・・?)
好子(電気を・・・つけてみよう・・・)
〇女性の部屋
好子「う、植木さん!?」
なんと、男の上に植木さんが乗っていたのだ。
好子(侵入者は・・・気絶してる・・・?)
好子「植木さん、植木鉢が割れてる!!」
植木さんは、倒れた拍子に植木鉢が割れ、
足の根が剥き出しになっていた。
植木さん「好子さん・・・。怪我はありませんか?」
好子「私は、なんともないわ。 それよりも、あなたが・・・!」
植木さん「そうですか、好子さんが無事で良かった。 昼間いただいた栄養剤のおかげで、 なんとか動けました」
好子「動けるんだ!?」
好子(植木さんを、元に戻さないと・・・!)
私は、ちらばった土を集めようとしたが・・・。
植木さん「好子さん! 先に、警察に連絡ですよ! 私は、少しの間なら大丈夫です!」
そ、そうだった・・・!
私は、すぐに110番通報した。
〇女性の部屋
警察は、すぐに来てくれた。
男は途中で目を覚ましたようだけど、植木さんが上からガッチリと押さえつけてくれていたので、逃げられる事はなかった。
警察「災難でしたね。 犯人は、最近この辺りをターゲットに している強盗でした」
警察「一人暮らしの女性や、高齢者の家を 狙うんです。高階層でも、今回のように ベランダから侵入する事があるんですよ」
警察「しかし、 お父さんがいて良かったですね!」
好子「そ、そうですね〜 あはは・・・」
好子(お父さん・・・)
警察「お父さん、倒れたままですが、 起こすのを手伝いましょうか?」
好子「ああ、いえ! 父は足が悪くて! 起こすのは慣れてますので、 大丈夫です!」
警察「そうですか。手伝いが必要でしたら 言ってください」
警察「現場検証はこれで終わりですが、 今日は夜も遅いので、詳しい事情聴取は 後日となります」
好子「そうですか。 ありがとうございます〜」
警察「では、また何かありましたら ご連絡ください」
好子「・・・・・・・・・・・・」
好子「ふーっ・・・」
犯人が逮捕されて、ようやく静けさが戻った。
好子(そうだ、 植木さんの植木鉢を直さないと・・・)
植木鉢のかけらを拾いながら、さっきまでの事を振り返っていた。
好子(植木さんが動いていなかったら、 私は・・・)
好子「植木さん・・・。あの・・・。 ありが、とう・・・・・・」
緊張の糸が切れ、私はポロポロと泣いてしまった。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
ひえっ泣きました😭
まさか、そうですか、植木さんより年上になりましたか
お父さんとも恋人とも友人ペットとも植物とも違うほんとに不思議なお話です
懐かしの植木さん!
ゲームで初めて生えたのも植木さんでしたから、小説でも再会できて嬉しいです🎵
強盗との格闘時の植木さん、輝いてますね!いろいろと…w
不審なオッサンのビジュアルの植木さんに、だんだんと愛着を持ってしまってます。頭頂部も可愛く思えてくる不思議感が。植物へのお水って、風呂上がりのオッサンのビールと通じるものがありますねww