この世の女は俺のママ!

危機綺羅

5.無力なママではいられない。その4(脚本)

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危機綺羅

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〇山の中
部下「──隊員を呼びますか?」
ソウガ「いや、いい それよりも、降物の運搬を急がせろ」
アルバス「そこを動くなよ、ロリコン共っ!」
ソウガ「マザコン・マントコート相手だ 私が時間を稼ぐ。指示と援護を頼むぞ」
部下「了解しました」
部下「──発見した降物の運搬を急げ! 完了の後、速やかに撤退する!」

〇山の中
アルバス「──出たな、”隊長”! 今一番殴りたいのはお前だぜ!」
ソウガ「貴様に殴られる筋合いはない 我々の邪魔をするな」
アルバス「人のママに手を出しておいて、 すっとぼけんじゃねえっ!」
ソウガ「くっ・・・!?」
ソウガ「ママ? あの女のことか? あんなに年の近い母親がいるか!」
ソウガ「女がいれば母親だなんだと、 いつもいつも訳の分らんことを・・・」

〇森の中
シタラ(──さっきからすごい音だけど、 いったいなにが起こってるんだろ?)
シタラ(アルさんは隠れてろって言ったけど、 やっぱり私も行ったほうが・・・)
「──シタラ!」
シタラ「あっ・・・リシマくん、クロシカさん!」
クロシカ「シタラちゃん? 一緒に来てたんですか!?」
シタラ「クロシカさん、私と話した後に いなくなったから、心配で・・・」
シタラ「私が変なこと言ったせいですよね? ごめんなさい!」
クロシカ「ち、違います!  シタラちゃんのせいじゃ・・・」
ヤラリシマ「──二人とも、謝るのは後だって!」
ヤラリシマ「アル兄ちゃんが戦ってくれてるんだ! 今の間にもっと離れなきゃ・・・」
シタラ「た、戦ってるって・・・ さっきから何が起こってるんですか?」
シタラ「煙が上がったり、 爆発みたいな音も聞こえましたよ?」
ヤラリシマ「見りゃわかるって! ──ほら、あそこっ!」

〇山の中
アルバス「──うおっ!」
ソウガ「今だっ!」
部下「了解!」

〇森の中
シタラ「えっと──」
シタラ「さ、散髪?」
ヤラリシマ「いや、髪切ってるわけないだろ! なに言ってんだ!?」
シタラ「だ、だって! あれ見たらそうなるでしょ!?」
シタラ「ソウガさんがバリカンを振り回して、 もう一人はドライヤー構えて・・・」
シタラ「これはもう散髪以外にないでしょ!」
ヤラリシマ「あるだろ!? あんなもんで髪なんて切るか!」
シタラ「むしろ髪を切る以外になにが──」
シタラ「へ!?」

〇山の中
アルバス「──あっちぃな! こんなもん撃ってくるんじゃねえ!」
ソウガ「鉄の山を吹き飛ばす熱風だぞ? 熱いで済ますな・・・!」
アルバス「おっと──」
ソウガ「くっ・・・」

〇森の中
シタラ「・・・」
ヤラリシマ「ほら、危ないってわかったろ? 早く安全な所に──」
シタラ「いやいやいや! なにあれ!?」
シタラ「ドライヤーから火の柱? 熱線? みたいなのが出てたんだけど!?」
シタラ「あのバリカンだって、 鉄くずを簡単に刈り取っちゃってる!」
クロシカ「──あれも降物です」
クロシカ「その中でも、恐らく人を傷つけることに 特化したより危険なもの・・・!」
シタラ「違いますよ!? 髪を整える道具ですからっ!」
ヤラリシマ「・・・あれで髪はいじくれないだろ」
シタラ「だから、本来ならあんな風には・・・」
シタラ(あ、でも、記憶ないんだし・・・ 私がおかしいのかな?)

〇山の中
部下「──わかった。我々も後から合流する」
部下「隊長、運搬が終わりました!」
ソウガ「撤退するぞ! スイッチを最大にして放て!」
アルバス「──また逃げる気かぁ!?」
部下「──なっ!? こ、これほどの火力とは・・・!」
部下「隊長! ご無事ですか!?」

〇山の中
ソウガ「──ゴホッ、ゲホッ!」
ソウガ「想定外の威力だが、 これなら奴も・・・!」
ソウガ「なっ──」
ソウガ「ぐあっ!?」
アルバス「大好きなスポットで寝転がってろ! ロリコン隊長っ!」

〇山の中
アルバス「もう一人は・・・いない?」
アルバス「──お前の隊長がそこに転がってるぞ! 助けなくていいのか!?」
アルバス「・・・もしかして、ママの方か!?」
アルバス「──シタラママ、聞こえるか? そっちは無事か!?」
アルバス「げっ!?」

〇山の中
部下「──ご無事ですか、隊長?」
ソウガ「やつに殴られたんだ 無事なわけがないだろう・・・!」
部下「申し訳ありません・・・」
ソウガ「いや、いい・・・すべて私の責任だ ドライヤーの火力を見誤った」
ソウガ「撤退するぞ。肩を貸してくれるか?」
部下「ご随意に」

〇森の中
クロシカ「い、今のアルさんの声は? いったいなにがあったんですか!?」
シタラ「わ、わかりません・・・ 通信も切れちゃって、返事がないですし」
クロシカ「そんな・・・!」
シタラ(アルさん・・・大丈夫かな・・・)
クロシカ「アルさん・・・!」
アルバス「呼んだか?」
クロシカ「──アルさん!?」
シタラ「ふ、普通に戻って来てる・・・」
ヤラリシマ「──アル兄ちゃん!」
アルバス「よお、リシマ! ちゃんとママを守れたみたいだな」
ヤラリシマ「まあね! でも、兄ちゃんのおかげだよ!」
アルバス「そんなことねえよ 俺は・・・あいつらを逃がしちまった」
アルバス「悪かったな、リシマ、クロシカママ」
クロシカ「あなたは私たちを助けてくれたんですよ 謝ることなんてありません」
クロシカ「それより、ケガはありませんか? どこか痛むなら、早く村へ戻らないと!」
アルバス「ああ、それは大丈夫だ! ほら、ピンピンしてるだろ?」
クロシカ「やせ我慢しないでください! 早く戻りますよ!」
アルバス「い、いや、本当に大丈夫だって! それにあいつらも追わないと・・・」
クロシカ「治療が先です!」
アルバス「は、はい・・・!」
クロシカ「・・・無事でよかった」
シタラ「・・・」
クロシカ「──な、なんですか?」
シタラ「いえ・・・別に・・・」

〇児童養護施設

〇暖炉のある小屋
シタラ「──これ、美味しい! 覚えてないけど、私の好物かも!」
アルバス「分かるぜ、ママ! こりゃ絶品だ!」
クロシカ「そ、そうですか? それならよかったです」
クロシカ「・・・あの、アルさん 改めてお礼を言わせてください」
クロシカ「今こうして、食事を楽しめるのも、 あなたが助けに来てくれたおかげです」
クロシカ「本当に、ありがとうございました」
アルバス「そんなことねえよ! 俺は結局、あいつらを追い払っただけだ」
アルバス「それに、一番早く助けに行ったのは──」
ヤラリシマ「美味いだろ?  母さん、料理が上手なんだ!」
アルバス「俺は後からついて行っただけだ 息子として嫉妬しちまうな」
クロシカ「・・・私にはもったいないぐらい、 できた息子です」
クロシカ「──ねえ、アルさん やっぱり私の気が済みません」
クロシカ「今までのお詫びもあります なにか私にできることはありませんか?」
アルバス「ママがそこまで言うなら、 考えるが・・・」
アルバス「──あ、そうだ! ママにやってほしいことがあった!」
クロシカ「なんでしょうか?」
アルバス「今日の寝る前、 俺の部屋に来てくれないか?」
クロシカ「え?」
シタラ「は?」
ヤラリシマ「どうした?」
シタラ(い、今聞こえたのって・・・)

〇児童養護施設
(──そういう意味、だよね!?)

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