ダークブリンガー

織原 誠

ヒーローの闇(脚本)

ダークブリンガー

織原 誠

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  闇はいつだって光の陰にいる。

〇センター街
ライトブリンガー「くらえ。ライトニングブレイド!」
ヴィラン「ぐあああぁぁッッ!」
ライトブリンガー「フッ。正義は必ず勝つ!」
  ヒーローの勝利に市民は盛り上がる。
「ありがとう。ライトブリンガー」
「さすがだぜ」
「頼りになるわねえ」
  皆に向かってライトブリンガーは決めポーズを取る。
ライトブリンガー「私がいる限り、ヴィラン共の好きにはさせない!」
  いいぞぉ、と声援を受けながらライトブリンガーは空を飛んで消えていった。
  光のヒーローが去っていく姿を、建物の陰から覗き見ている者がいた。
  全身が黒い鎧のような装甲で覆われている禍々しい姿の怪人。
  彼の名はダークブリンガー。
  ヒーローであるライトブリンガーの持つ二面性の闇から生まれた人ならざる者である。
  シャドウと呼ばれるヒーローの闇怪人の存在を当の本人たちは知らない。
「ん? おい、そこにヴィランがいないか!?」
ダークブリンガー「チッ」
  露骨に舌打ちをしてダークブリンガーは踵を返して陰に隠れた。
  人間から見れば、ヴィランもシャドウもたいして違わない。いや、ほとんど同じだ。
  通報されれば、ヒーローたちがすぐさま出動し、倒しに来るだろう。
ダークブリンガー(まったく、本体に見つからないようにするのも一苦労だな)
  それでも気になって、時折、こうしてライトブリンガーの活躍を陰ながら応援していた。
ダークブリンガー(本体に倒されるわけにはいかない。俺には、俺たちにはやるべきことがある)
  闇怪人であるダークブリンガーは、人々の見えないものに対する恐怖から生まれたモンスター、アンクシャスと戦っている。
  アンクシャスはヒーローにも見ることができない。
  感知することもできない。
  しかしそれでいて、増幅したまま放っておくと負の感情が世界に溜まってしまう。
  ゆえに、陰の存在が人知れずに倒さねばならないのだ。
「なんだよ、誰もいないじゃないか」
「あれぇ? おかしいなあ。いたような気がしたんだけど」
  誰にも知られることはなく、ダークブリンガーはその場から去った。

〇草原の一軒家
  まだ夜が暗かった時代の話だ。
  電気もガスもない時代の夜ではロウソクや松明の灯り、そして月の光が頼りだった。
  人々は魔物が潜んでいると暗闇を恐れた。
  目に見えない脅威に対して強い恐怖心を抱いたのである。

〇公園通り
  夜が明るくなった現代では、同じ見えないものでも対象が異なる。
  人々は自分の将来に対する恐怖を覚えるようになった。
  受験に失敗したら、就職に失敗したら、仕事で失敗したら、恋愛で失敗したら、などである。
  そんな見えない未来への強い不安が恐怖となり、アンクシャスという化け物を生み出した。
  今もその敵とダークブリンガーは対峙していた。
  結界を張っているので人間を巻き込む心配も、ヒーローが駆けつける心配もない。
  赤い刀身の剣を振って敵に襲いかかる。
  武器攻撃に対して敵は素手で対処してくる。
  硬質さが自慢らしく、斬られても平然として殴りかかってくる。
  斬る。殴る。蹴る。激しい攻撃の応酬が続く。
  すると、どういうわけか、アンクシャスのほうから話しかけてきた。
アンクシャス「わからんなあ。拳を交えてもさっぱりわからん」
ダークブリンガー「なにがだ?」
  問うと、敵はこちらを指さしてくる。
アンクシャス「貴様らだ。ヒーローの闇から生まれたはずのおまえたちが、なぜ我らアンクシャスに敵対する?」
ダークブリンガー「同じだと言いたいのか?」
アンクシャス「そうだ。ヒーローの闇である怪人シャドウと不安や恐怖から生まれたアンクシャス。いったいなにが違うというのだ」
  人間やヒーローから見れば、どちらも同じようなもの。
  それはアンクシャスにとっても同じ考えだったようだ。
アンクシャス「貴様らが考えを改めるというのなら、我らも手を結んでやってもいいのだぞ」
ダークブリンガー「ほざけ。誰がおまえたちに与するものか」
  ダークブリンガーは剣先を敵に向ける。
ダークブリンガー「闇の怪人とはいえ、俺たちはヒーローから生まれた存在だ。心は同じなんだよ」
アンクシャス「ハッ。笑わせてくれる。ダークヒーローごっこをしてなにが楽しい」
  ニヤつきながら敵は言ってはいけないことを言ってくる。
アンクシャス「誰もおまえたちの功績など認めてはくれないのによぉ」
ダークブリンガー「貴様ァッ!」
  斬りつけると敵は右腕だけで攻撃を防いできた。
  鍔迫り合いのような状態のまま、懲りずにまた挑発してくる。
アンクシャス「ほら、どうしたどうした? さっきよりも剣が鈍っているぞぉ?」
ダークブリンガー「くっ・・・・・・」
  押し込む力が弱くなったのを見逃さなかった敵は左手でボディブローをしてきた。
ダークブリンガー「うぐッ」
  ダメージが入り、よろめくダークブリンガーを敵は連続攻撃で畳み掛けてくる。
アンクシャス「オラオラオラァッ!」
ダークブリンガー「ぐあぁぁッ」
  連続ラッシュを喰らい、最後に蹴りが直撃した。
ダークブリンガー「ガハァッ・・・・・・」
  地面に転がるダークブリンガー。
  すべての攻撃をまともに受けてしまったため、起き上がることさえできないでいる。
  それでも離れてしまった剣を掴もうと必死に手を伸ばす。
  そんな彼をあざ笑うがごとく敵は手を踏みつけてきた。
アンクシャス「なるほど。よくわかった。貴様はヒーローにとっての弱さそのものだ」
ダークブリンガー「なに!?」
アンクシャス「ヒーローとて人間だ。神ではない。強さを持っているが同時に弱さも持っている」
アンクシャス「それがおまえだ」
ダークブリンガー「俺がライトブリンガーの弱点・・・・・・だと・・・・・・ッ!?」
  違う! と内心で必死に否定する。
  あいつは完全無欠のヒーローなのだ。
  人間らしい部分もあるが、こんなふうに簡単に敵にやられたりはしない。
アンクシャス「このまま殺してもいいが・・・ふむ。しかしそれではつまらんな。おまえに生きるチャンスをくれてやろう」
ダークブリンガー「チャンス・・・?」
  酷薄の笑みを浮かべて敵はとんでもないことを言い出す。
アンクシャス「三日やる。そのあいだにライトブリンガーを殺せ。そうしたらおまえが本物だ」
ダークブリンガー「な、なにを馬鹿なことをッ」
アンクシャス「ハハッ。まあそう言うな。本来であれば二人でひとりなのだから、まったくの的外れではないはずだ」
  頭から足をどけると敵は背を向けて歩き出した。
ダークブリンガー「ま、待て!」
  それで待たれてもどうしようもないがそれでも叫んでしまう。
  そんな彼を馬鹿にするように敵は後ろ手を振った。
アンクシャス「またな。次に会うときは本物になっていろよ」
  ひとり残されたダークブリンガー。
  止めようと伸ばした手は虚しく空を掴んだだけだった。

〇川沿いの公園
  アンクシャスに生かされた翌日、ダークブリンガーは街をさまよっていた。
  戦いの傷はもう癒えた。
  だが心の傷は深く残ったままだ。
ダークブリンガー(俺がライトブリンガーの弱さ)
  敵から指摘されて改めて気付かされた。
ダークブリンガー(そういえば、あいつの闇である俺はいったいどういう性質なんだ?)
  ただ、ヒーローの持つ二面性の闇の部分が実体化したとしか思っていなかった。
  アンクシャスの言うように、弱点だとしたら人には言えないなにかが彼にはあるのか。
ダークブリンガー(知りたい。俺が何者であるかを確かめるためにも)
  言いなりになって殺しに行くわけではない。
  これは、もうひとりの自分との戦いなのだ。
  ダークブリンガーは本体である片割れを探しに動いた。

〇繁華な通り
ライトブリンガー「ジャスティスパーンチ!」
ヴィラン「ああああぁぁッ!」
  ヴィランを倒した勝利の拳を高々と天に突き上げると市民は湧いた。
  拍手喝采は自然とコールへと変わる。
「ライトブリンガー! ライトブリンガー!」

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コメント

  • 三人の登場人物は、一人の人間の心の中の有り様を実体化したようにも思えて、読み応えがありました。表の自分が不安や恐怖に押しつぶされそうな時、裏の自分が陰で戦って不安や恐怖を解消してくれる。私たちが日常的に心の中で行っていることに似ているかもしれません。そう考えれば、三者のバランスが崩れた時は、自分が潰れてしまう前にライトもダークも互いに助け合うことも大切かもしれませんね。

  • ダークブリンナーは陰のヒーローとして、悪と戦うことが宿命であるがために、誰からも評価されず、また称賛も受けず人知れず戦う姿勢が素晴らしい。

  • この作品を拝読し、人間の善い所と悪い所・強さや弱さを、考えさせられました。「ヒーローは神では無い」というセリフ。なんだか私の心にグッときて、とても印象に残りました。何度も読み返したくなる作品です!

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