八話 居たたまれない後悔(脚本)
〇警察署の医務室
私は黒沼が倒れてから、毎朝保健室に来て様子を見ている。
でも、あいつが目を覚ます様子はない。
渋屋 杏「あれからもう二日・・・ お願いだから、早く起きなさいよ・・・」
中井 雛「杏ちゃん、今日も来てくれたんだね」
渋屋 杏「先生・・・ 黒沼は、いつ目を覚ますんですか」
中井 雛「大丈夫、明日までには目を覚ますと思うよ。 晶くんは強い子だから」
渋屋 杏(・・・強い子、か。 そんな言葉で済まされないくらい、黒沼の生命力は強いような気がする)
渋屋 杏「先生、気になったんですが・・・」
日谷 紗枝「失礼します、雛先生」
中井 雛「あれ、紗枝さん? 突然どうしたの、晶くんのお見舞い?」
日谷 紗枝「いいえ。 ギャラジー研究科に進歩があったようなので、報告に来ました」
渋屋 杏「先生、この人は?」
中井 雛「あ、杏ちゃんは初対面か」
中井 雛「この人は日谷 紗枝(ひたに さえ)さん。 ここ、地球外生命体対策本部「リベリオン」の副部長兼、秘書さん!」
中井 雛「主に「リベリオン」の技術開発本部、ギャラジー研究本部の指揮をしてるの! ちょーっと厳しいけど、すっごく賢い人なんだ!」
日谷 紗枝「そんなに褒めないでください。 雛先生に言われると嫌味のように聞こえます」
中井 雛「え、どうして!?」
日谷 紗枝「世界でも有名な大学を卒業し、そのままストレートで帰国した後医師免許を取り、今となってはギャラジーの研究まで」
日谷 紗枝「技術者としても成果を多く出し、ギャラジーの死体の研究でも活躍。 その上に、エージェントのメンタルケアや手当も同時進行」
日谷 紗枝「日本最大戦力である「リベリオン」という組織、そしてまだ日常を保つことができている東京」
日谷 紗枝「それら全てがあなたのおかげだと言っても過言ではありません」
中井 雛「そんな〜! 紗枝さんに言われると照れちゃうな」
渋屋 杏「そ、そうだったんですか、先生・・・!」
日谷 紗枝「身体能力向上装置も発案、開発したのはこの人よ。 自分のこと棚に上げて、よく私に賢いだなんて言えますね」
中井 雛「ごめんごめん! そういえばギャラジー研究の進歩ってどんなの? 丁度杏ちゃんもいるし、今聞かせてほしいな!」
渋屋 杏「私も知りたいです」
日谷 紗枝「分かりました。 ギャラジーの目的は今も分かりませんが、出現方法についての研究が進歩しました」
日谷 紗枝「ギャラジーは元より、空から降ってきて東京を攻撃するわけではありません。 しかしその死体は確実に地球外から来たものです」
日谷 紗枝「なので、彼らは地中にいる可能性が高いと考えられていました。 ですがいくら地中を漁っても、ギャラジーの姿は見当たりません」
中井 雛「うんうん、そうだったよね。 そこまでは私も聞いてた」
渋屋 杏(全然知らなかった・・・)
日谷 紗枝「しかし今回、ギャラジーの出現場所を調べ続けていたところ、一つの可能性が出てきました。 それは・・・」
日谷 紗枝「地中で眠る、肉眼では確認できないほど小さいギャラジーの胎児が、人間の死体を食らうことで巨大化していくという可能性です」
日谷 紗枝「七年前、殺戮を楽しむ知性を持ったギャラジーが出現しました。 それが出現したのは、大量殺人犯が行方不明になったとされる山」
日谷 紗枝「仮説としては、その犯人を食らった胎児のギャラジーが、犯人の人間性を取り込んでしまった」
渋屋 杏「そ、そんなこと・・・!」
中井 雛「あり得るところが怖いね。 実際、七年前の大型ギャラジーによる襲撃の時も、死亡者より行方不明者の方が多かった」
中井 雛「そしてその大型ギャラジー襲撃の直前、出現するギャラジーは少なくなっていた」
中井 雛「目に見えない極小ギャラジーが地球に降りて、地面に埋まる。 そして人間の死体を食べて成長し、人間が集まる場所を襲撃する」
中井 雛「死んだ人間はそのまま胎児のギャラジーの餌に。 生命の輪廻がちゃんと回ってるし、可能性は高いと思う」
中井 雛「襲撃も、ほぼ同じところばかりで行われていることも説明がつくね。 人間の死体があるところだから、ってこと」
日谷 紗枝「今分かっているのはそれだけです。 また進歩がありましたら報告に参ります」
中井 雛「分かったよ、ありがとう!」
日谷 紗枝「ああ、そういえば黒沼さんの状態は?」
渋屋 杏「そういえばって何よ・・・! 黒沼のこと、なんだと思っているの!?」
中井 雛「あ、杏ちゃん・・・!」
渋屋 杏(あ、しまった・・・ つい口に出ちゃった・・・)
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