第一話 最悪なオトコ(脚本)
〇歯車
ヴァジュラとダンガー。
其は、対を成す物なり。
ヴァジュラは男。
ダンガーは女。
其は、生命の大樹を蘇らせる礎。
ダンガーが啼けばヴァジュラは応えるであろう。
ヴァジュラは剣。
ダンガーは鞘。
啼かぬ剣が哭いた時──
其の姿は本来の姿を現すであろう。
──フォルテュナ国・古歴書より──
〇城壁
オルガ(あともう少し・・・!!)
オルガは、城壁を風のように走る。
〇貴族の部屋
そして・・・とある部屋にたどり着く。
オルガ(・・・ここね・・・!)
オルガ(お宝は──っと・・・!!)
オルガ(あった!あった!!)
オルガ(ヘヘッ♪ いっただきまーす!!)
???「探し物は、見つかったかい?」
オルガ(ヤバッ!見つかった・・・!!)
???「・・・僕の部屋で── 何をしているのかな?」
オルガは、急いで近くの窓へ走る。
???「逃がさないよ!!」
男が声を発すると同時に・・・木の根が這い上がり、オルガの足を絡めとる。
オルガ「わわっ!!!!」
???「義賊──ベルスフィア・・・」
???「やっと・・・見つけた!!」
オルガ「くっ・・・!」
男は、木の根に捕らえられたオルガに近付く。
???「ワザと城に入りやすくしてたの・・・気付いてた? 義賊ベルスフィアも・・・まだまだだね・・・」
???「逃してあげようか?」
オルガ「へっ!?」
???「ただし・・・ 必ずもう一度・・・ 僕に逢いに来て・・・ね?」
男は、オルガの髪を引っ張ると──チュッ♡とその髪に口づけた。
それが合図かのように──!!
オルガ「うわぁぁぁぁ──!!!!!!!!!!」
オルガは、巨大な竜巻に飲まれて城外へ吹っ飛ばされた。
???「──待ってるよ。 義賊ベルスフィア。 いや、オルガ・・・」
〇荒れた小屋
オルガ「・・・う・・・?」
宿屋のおばちゃん「気付いたかい?」
オルガ「・・・ここは?」
宿屋のおばちゃん「宿屋兼酒場のドレイクだよ。 アンタ、今朝方担ぎ込まれて来たんだよ?」
宿屋のおばちゃん「ちょっと待ってな。 運び込んで来たヤツを連れて来るから。 一応、お礼を言っときな」
オルガはキョロキョロと辺りを見渡す。
ソディト「お? 目、覚めたか?」
オルガ「貴方が助けてくれたんですか? ありがとうございます・・・!!」
ソディト「何があったか知らないけど・・・ アンタ・・・ 樹の根に絡まって森の中で倒れてたんだぜ?」
ソディト「俺が通りかからなかったら・・・妖魔にやられてたかもな? ま、何にせよ・・・ 目覚めて良かった!!」
オルガ「ありがとうございました。 私は、オルガと申します。 あの・・・貴方の名前を伺っても?」
ソディト「ああ。 俺は、ソディト。 ソルの国からの旅人だ」
ソディト「親切心からアンタを助けた──ってワケじゃないんだよなぁ・・・!」
オルガ「えっ?」
ソディト「アンタの首からのぞいてるその宝石。 俺は、それに用がある」
オルガ「え?宝石・・・?」
オルガ「って・・・えっ!? 何コレ!? いつの間にこんな首飾り・・・?」
ソディト「・・・その宝石は”エラトの魂跡”・・・。 なぁ? 助けたお礼にその宝石を譲ってくれないか?」
オルガ「い、いいですけど・・・って・・・!? ん?んん?? 何コレ!?取れない・・・!?」
オルガが首飾りを取ろうとするが・・・その首飾りはオルガの首から外れない。
ソディト「・・・やっぱりな・・・」
ソディト「アンタ・・・その”エラトの魂跡”に呪われてるな・・・」
オルガ「えっ──!! 呪われてる!?」
ソディト「──それを外したかったら・・・ それを付けた張本人の願いを叶えるしか方法はない・・・」
ソディト「エラトの魂跡は、グラディルク城の城主が持っていると聞いていたが──」
オルガ「グラディルク城の城主!?」
オルガ「・・・じゃあ・・・アイツは・・・!」
ソディト「ん? ──って、アンタ・・・グラディルク城の城主の婚約者じゃないのか?」
オルガ「こ、ここ婚約者!????」
ソディト「エラトの魂跡は、グラディルク城の城主──今はクロノアが持っていて・・・ 代々その婚約者となる者に与えられると耳に──」
オルガ「ちょちょちょっと待って──!! 誰が誰の婚約者!?」
ソディト「えっ!? アンタ・・・グラディルク城の城主クロノアの婚約者なんだろ!? 違うのか?」
オルガ「はぁあ!????」
オルガ「い、いらない!いらない!! こんな首飾り、いらない!!!!!!!! ──って、何で!? 外れないっ!!!?」
ソディト「──外すには・・・」
オルガ「外すには!?」
ソディト「──・・・二人が・・・愛し合った暁に・・・外れると・・・噂で耳にしたが・・・」
オルガ「・・・・・・・・・」
オルガ「いらなーいッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
〇草原の道
オルガ「ムカつく!ムカつく!! ムカつくったらありゃしない!!!!!!!!」
ソディト「オルガ・・・ 違う。違う。 また逆方向に進んでる・・・!!」
オルガ「あー!!!!!!!!!! もうッッッッ!!!!!! 憎ったらしい!!!!」
ソディト「エラトの魂跡は、身につけている者へ強運と加護をもたらすって聞いたことがあるけど──」
ソディト「まさか副作用で方向音痴になるとはね・・・」
ソディト「ま、俺がグラディルク城まで案内してやるから・・・ 城に着いたらクロノアに殴り込みに行くんだね」
オルガ「ううっ・・・!! ありがとう!ソディト!!」
オルガ「ところで、ソディトは何でこんな厄介な首飾りが欲しいの?」
ソディト「・・・俺の・・・ 最愛の人を助ける為に必要なんだ・・・」
オルガ「・・・最愛の人・・・」
オルガ「ここで知り合ったのも何かの縁だし! 助けてくれた恩も返したいし・・・ 私で良ければ力を貸すわ!」
ソディト「ああ。 ありがとう」
ソディト「でも、まさかあの”義賊ベルスフィア”がアンタだったとはね・・・」
オルガ「ま、大した事はしてないんだけどね?」
ソディト「いやいや?ソルの国でも結構名が響いていたぜ?」
ソディト「”義賊ベルスフィア” フォルテュナの国に颯爽と現れ、困っている人々の願いをささやかながら叶えてくれる・・・!!」
オルガ「ヘヘッ♪ 本当にささやかな物だけどね?」
オルガ「そう言うソルの国には・・・ ”大泥棒ゾアコトル”がいるじゃない!!」
ソディト「・・・あ、あ──まぁね」
オルガ「”大泥棒ゾアコトル”に盗めない物はない!! 私の憧れなんだぁ!! ねねっ! ゾアコトルの武勇伝!聞かせてよ!!」
ソディト「お、おぅ! また今度な・・・? つーか、オルガは・・・クロノアと面識があるのか?」
オルガ「いや、全然! 誰かと間違えたんじゃないかって思うのよねー!!」
ソディト「ま、それも本人に会ったら分かる事だろうし・・・ 先を急ごうぜ!!」
城主サマが何故彼女を好きになったのか、彼の背景も気になります😆それにしても大胆なアプローチ...素敵でした🌟
最初から世界観が好きな感じで楽しめました🤗
まさかあの瞬間に呪いの首飾りを付けていたとは😨
今後の展開が楽しみです❗
謎の風変わりな男性が、まさかグラディルク城主様だったとは。。。こんな曰くつきな首飾りを装着させて会いに来させるとは、もう歪な愛情表現ですね