レイズ(脚本)
〇ビルの裏
雨が降る夜の路地裏でうずくまっていると、彼女はやってきた
レイズ「・・・・・・」
レイズ「なに?」
???「どうしたの?ぼうや?こんなとこにいたら、風をひいてしまうわよ?」
???「パパとママは?」
レイズ「パパとママが、ここにいろって・・・・・・」
レイズ「僕、嫌われ者で、悪い子だから、もういらないって」
???「そう・・・・・・」
???「ひどいわね」
???「それなら、私のところにおいで?」
レイズ「え?」
???「私が、あなたを引き取ってあげる」
???「私と暮らせば、あなたに不幸は降りかからないわ。永遠に、幸せでいられるのよ」
そう言って、女の人は優しく手を差し伸べてくれた
???「さあ、いらっしゃい?」
レイズ「う、うん」
差し出された手をつかんで、僕はそっと身を近づけた。
これが、すべての始まりだった
〇立派な洋館
7年後
〇謎の施設の中枢
???「では、さっそく始めましょう」
研究員「了解しました。プログラム、起動します」
研究員「被検体の内部を分析中。まもなく完了します」
研究員2「100%到達」
???「どう?」
研究員「は、反応なし。失敗です」
研究員2「こちらも同様。ユイコ様がおっしゃるエネルギーも、抽出できませんでした」
???「あら、そう・・・・・・」
???「いいわ。終了して」
〇謎の施設の中枢
「──レイズ、終了だ。すぐに用意をし、食卓に向かいなさい──」
レイズ「はい。かしこまりました」
〇荒れた小屋
ユウコ「来た・・・・・・」
レイズ「あ、ユウコ様。お待たせし──」
ユウコ「遅えんだよ、この役立たず!!」
レイズ「ご、ごめんなさい」
ユウコ「飯食ったらすぐ怪人退治に出かけさせるからな」
レイズ「はい。──いただきます」
朝食を食べている間も、ユウコ様はむちを打つように説教を続けた
ユウコ「私がなんでお前を拾ったかわかってるか?」
レイズ「はい、承知しています」
ユウコ「私たちの計画に邪魔な怪人を始末するのはいいさ。が、お前からいまだに欲しいエネルギーが検知されない!!」
ユウコ「あれがなきゃ、意味ねえんだよ!」
レイズ「いて──」
ユウコ「食べたらさっさと出かけてこい!!」
レイズ「・・・・・・はい」
〇街中の道路
やっぱり、そんな甘い話なんてなかった。
俺は、そもそもこんな運命の元、生まれたんだ
そう、誰も助けてくれない、助けてはいけない
〇魔法陣のある研究室
父「レイズ、何をやっている?お前は必要ないといっただろう」
レイズ「で、でも、あそん──」
父「ほら、どっかいけ」
レイズ「・・・・・・」
・・・・・・
母「レイズ、別に人間界に行ってしまっていいのよ?」
レイズ「え?」
母「あなたなんかよりも兄のほうが大事だし」
・・・・・・
子供「あ、レイズとは遊ばないから」
子ども「なんかこいつ、おいたちの悪口言ってるって噂だよ」
レイズ「そんなこと、言ってないよ」
〇街中の道路
レイズ「怪人の気配がする」
〇超高層ビル
とあるビル
〇高層ビルのエントランス
「キャー!!」
「ば、化け物が出たー」
社長「・・・・・・」
社長「あ、あれはなんだ?」
モンスター「キッ、キッ、キッ」
モンスター「オレサマ、ニンゲン、キライ」
警備員「や、やめなさい!!」
モンスター「ソンナニおびえて。オレサマとやる気?」
警備員「うっ」
警備員「な、なんだこの煙は。い、意識が、」
モンスター「キッキッキッ。さて、邪魔はイナクなった」
社長「な、なんだ?」
モンスター「おまえ、一番キライ。先にコロス」
社員「社長に手を出すな!!」
社員「あ、あ」
社長「や、やめろ」
モンスター「ヒヒヒヒ」
社長「わ・・・・・・」
社長「わあああああ」
〇高層ビルのエントランス
社長「あ、あれ?」
モンスター「ん?なんだ?イマの爆発は」
レイズ「・・・・・・もう、終わりだ。暴れる時間は」
モンスター「あ?ナンだ、オマエ」
レイズ「・・・・・・」
モンスター「オマエ・・・・・・ナニ?」
レイズ「俺はレイズ。これよりお前を排除する」
レイズ「はあ!!」
モンスター「うわああああ」
〇超高層ビル
レイズ「どうした?」
モンスター「お、オノレ」
モンスター「か、カー!!」
レイズ「ん?」
モンスター「な、な?」
レイズ「効かんな」
レイズ「はああああ!!」
モンスター「キー!!」
〇超高層ビル
レイズ「・・・・・・」
「ば、化け物だああ!!」
一般人「あいつだよ、あいつ。最近話題になってるの」
一般人「ほんとだ、こわーい」
一般人「おい、こっちむいたぞ!!」
一般人「きゃー」
レイズ「・・・・・・」
俺は、ただ怪人から人々を守りたいだけ
〇ビルの裏通り
人目のつかない場所で、俺はぼんやりと雨の降る空を眺めていた
人を助けるたびに毎回襲ってくる、すべてを否定されたような気分をこらえながら
レイズ「・・・・・・俺は、一体なんのために」
──コッ、コッ、コッ──
誰かが歩いてくる音が聞こえる
レイズ「ん?」
エリナ「こんにちは、レイズくん」
レイズ「・・・・・・」
レイズ「また君か」
エリナ「うん、またわたし!!」
レイズ「もう、関わるなと言っているだろ。いい加減聞けよ」
エリナ「ごめんね。わたし、あんまり人の言うこと聞けない人だから」
レイズ「はぁ・・・・・・」
エレナ、いつの日からか、よく俺の前に現れては絡んでくる不思議なやつ
彼女が危険な目に合わないよう、できるだけ引き離すようにしているが、この子はそんなことお構いなし
なんか渡してきたり、飲食店にいったり、いろいろ話されたり
が、何故か、彼女と会うのが楽しみになっている俺もいる
レイズ「で、今日は何の用だ」
エリナ「うん、実はね」
そう言って、彼女は俺に近づいてきた
エリナ「一緒に行きたいところがあるの!!」
〇川沿いの公園
エリナ「晴れてきたねえ」
レイズ「・・・・・・なあ」
エリナ「ん?どうかした?」
レイズ「なあ、どうして俺なんかと、毎回毎回」
エリナ「・・・・・・怪人だから?」
レイズ「え?」
エリナ「私もね、実は怪人なの」
エリナ「どう?びっくりした?」
レイズ「ああ・・・・・・」
レイズ「怪人の気配がなかったから、わからなかった」
エリナ「うん。怪人の力は封印しているの」
エリナ「嫌だから」
〇土手
エリナ「怪人のみんなみたいに、争うのが嫌になったのかな」
エリナ「気に入らないことが合ったらすぐかっとなってさ。そういう『怪人の文化』みたいなのに疲れたの」
レイズ「まあ、わからなくもない」
エリナ「でも、そうじゃない怪人をね、ある時みつけたんだ!」
エリナ「それがね、あなただったの」
エリナ「ずっと、仲良くなりたいなって、思ってたんだ!!」
〇海辺
エリナ「着いた!!やった、時間通り!!」
エリナ「ね、最高にきれいでしょ?」
レイズ「・・・・・・」
エリナ「どう?元気でた?」
レイズ「え?」
エリナ「レイズ君、ずっと辛そうだったから」
エリナ「私、頑張っているレイズ君を応援したかったの」
エリナ「みんなのために、体を張って戦っているから」
レイズ「エリナ・・・・・・」
エリナ「うん!!」
レイズ「あ──」
エリナ「ん?」
レイズ「ありがとう」
エリナ「どういたしまして」
・・・・・・
エリナ「(私も、もう一度動いてみたい。みんなが、幸せになれる世界のために)」
〇洋館の廊下
レイズ「・・・・・・」
レイズ「なんか、今日はいい日だった気がする」
レイズ「な、なんだ? 今の音」
レイズ「地下室からか?」
〇謎の施設の中枢
研究員「お、お助け・・・・・・」
研究員「う、うわああ」
ユウコ「使えない!!」
ユウコ「機械の故障じゃないなら、何故、なぜレイズからブルーエネルギーが抽出されないの?」
ユウコ「あれだけ絶望させれば、その苦しみが源泉となるはずなのに!!」
怪人「ユウコ様、お言葉ですが」
レイズ「な、なんで怪人が」
ユウコ「ああ!?」
怪人「ひい、彼には、ひそかに心の支えなるものがあるようです」
ユウコ「心の支え?」
怪人「え、ええ。実はですね──」
ユウコ「ほおお、なるほど」
レイズ「なんだと──」
ユウコ「だれ?」
・・・・・・
ユウコ「気のせいかしら?」
怪人「・・・・・・」
怪人「まあ、そうでしょう」
〇見晴らしのいい公園
エリナ「ふふっ」
エリナ「これで、ちょっとだけでもみんなが幸せになる世界が来るといいな」
「そうね。私も願っているわ」
エリナ「え?」
ユウコ「こんにちは。エリナさん、よね?」
エリナ「あの、誰?」
ユウコ「あら、別に何者でもないわ。ただ、素晴らしい願いね、と思ったのよ」
エリナ「あ、ありがとう?」
・・・・・・
ユウコ「あなたのその願い、今から叶えてあげる」
エリナ「え? それってどういう・・・・・・」
エリナ「はっ」
〇見晴らしのいい公園
怪人「ヒッヒッヒッ」
エリナ「か、怪人」
ユウコ「そう、私が思い描く、「みんなが幸せになる世界」、その実現のために、あなたには消えてもらう」
ユウコ「怪人の崇高な未来のためにね」
怪人「ヒッヒッ。俺たちが世界を支配するのだ」
エリナ「・・・・・・」
エリナ「最低だね」
ユウコ「は?」
エリナ「そうやって自分たちを一番だと思い込んで、またみんなに迷惑かけるの?」
エリナ「何度も何度も、恥ずかしいとお思わない?」
怪人「お前・・・・・・」
ユウコ「な、何止まってるんだ! はやく始末しろ!!」
怪人「は、は!!」
怪人「わあああああ!!」
レイズ「はあ!!」
エリナ「レイズ君・・・・・・」
レイズ「どういうことですか、ユウコ様。その怪人は一体?」
エリナ「レイズ君、あの女の人、操られてる!!」
レイズ「え?」
ユウコ「は?お前たちは何を言っている」
怪人「・・・・・・」
怪人「くそ、こうなったら仕方がない」
ユウコ「うっ」
〇見晴らしのいい公園
レイズ「なんで・・・・・・」
怪人「ふん。人間を使えば、うまくやれると思ったんだが」
怪人「まあ、あの操り人形に振り回されるお前も滑稽だったけどな」
レイズ「なに?」
怪人「ふん。本当なら今頃、お前からブルーエネルギーを奪い、パワーアップし」
怪人「さらにお前を意思のない奴隷とし、人間を支配していたはずだが、仕方ない」
怪人「お前ら二人まとめて、消す」
「力も元通りだ」
エリナ「レ、レイズくん──」
レイズ「大丈夫だ」
〇見晴らしのいい公園
レイズ「すぐ終わらせる」
怪人「ほお、私に対してよくそんなことが、」
怪人「言えたなああああ」
レイズ「くっ」
レイズ「はああ!!」
怪人「ん?」
怪人「なんだそれはあああ!!」
レイズ「うわあああ」
レイズ「くっ、く」
怪人「大口たたいてその程度ですか?」
レイズ「くっ」
怪人「とどめをさそう」
レイズ「・・・・・・!!」
怪人「ぐわっ。なんだ?」
レイズ「エ、エリナ?」
エリナ「私、やっぱりか弱い子ぶってんの止めた」
怪人「お前、やっぱり怪人!?」
レイズ「いいのか?封印を解き放っても」
エリナ「いい!!」
エリナ「レイズ君、立てる?」
レイズ「・・・・・・」
レイズ「ああ!!」
エリナ「いくよ」
怪人「て、てめえらあ」
怪人「うわあああ」
怪人「ん?」
怪人「くっ」
怪人「のわあああ」
〇公園のベンチ
エリナ「それで? 最近はどうしてるの?」
レイズ「なんとかユウコ様も回復して、非公認だけど、影の怪人退治として、がんばってるよ」
エリナ「そう、それはよかった!!」
レイズ「・・・・・・」
レイズ「ありがとう」
エリナ「え?」
レイズ「なんか、いろんな意味で、君がいてくれてよかったと思う」
レイズ「今まで、闇の中でとらわれていた俺が、君の声で、光を味わうことができた」
レイズ「俺の運命は、エリナによって救われたんだ」
エリナ「え?え?そんなこと、ないよ」
エリナ「レイズは頑張ったよ、うん」
レイズ「はは」
エリナ「そ、それじゃ、街に行こう! いいとこ教えてあげる」
レイズ「それは楽しみだ」
レイズにはエリナという心の支えがあるから悪の怪人にはなりきれない、という設定がよかったです。結局、人の心を救うのはいつもその人を思う別の人の心なんですね。
人生の機転っていつ訪れるかわからないものですよね。
それが良い方向に行くか悪い方向に行くかは…また別の話ですが…。ハッピーエンドでよかったです!
レイズは解放の先にこんなにも明るい光を感じることができてこちらまで嬉しくなりました。どんな状況に身を置いても、一つぶれないものをもっている人は強いですね。