アライブ・ソルジャーズ

七話 晶の過去(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  遠くにいた黒沼が突然倒れた。
  でも、ギャラジーに攻撃されたようには見えなかった。
渋屋 杏「な、何があったのよ・・・!?」
一般人男性「よぉ、お嬢ちゃん」
渋屋 杏「な、何よそれ・・・! 血がついてるじゃない!」
渋屋 杏「まさか、あなたが黒沼を・・・!」
一般人男性「嬢ちゃんは新入りか。 じゃあ覚えておくんだな」
一般人男性「お前らが命を見殺しにすれば、その報いが返ってくるってことを」
渋屋 杏「ま、待ちなさい!!」
渋屋 杏「動けないって、嘘だったの・・・!? 黒沼を刺すために、わざわざギャラジーの近くに行ってあいつを誘き寄せたってこと!?」
渋屋 杏「どうして、どうしてそんなこと・・・!」
渋屋 杏「ギャラジー・・・! いい加減にしなさいよ・・・!」
渋屋 杏「次こそ仕留めきれたわね。 黒沼を早く運ばないと・・・!」
渋屋 杏「黒沼、しっかり!」
渋屋 杏「ッ、何箇所も刺されてる・・・! 止血しないと!」
  止血をするため、黒沼の服をめくる。
  鍛えられた腹筋には、先程の傷のほかに痛々しい古傷が無数にあった。
渋屋 杏「何、これ・・・ 古い刺し傷が何箇所も・・・」
黒沼 晶「ぐっ、う・・・ 渋屋・・・」
渋屋 杏「ちょ、ちょっと喋らないで! これ以上傷を酷くする気!?」
  黒沼は私の袖を引きながら話す。
  今にも意識が飛んでしまいそうだと言わんばかりに、その声は弱々しかった。
黒沼 晶「エージェントは、人を救えなきゃ人間からも憎まれる・・・」
黒沼 晶「どれほどの人間を救っても、少しでも救えなかった人間がいれば・・・ その憎しみの矛先は、俺たちなんだ・・・」
黒沼 晶「──・・・」
渋屋 杏「ッ!!」
渋屋 杏「救急隊員、早く助けにきて!! 黒沼の命が危ないわ、だから早く!」
渋屋 杏「私はお前に死んで欲しいわけじゃない・・・! 死なないで、絶対に・・・!!」

〇警察署の医務室
渋屋 杏「・・・」
中井 雛「杏ちゃん」
渋屋 杏「先生! 黒沼は大丈夫なんですか・・・!?」
中井 雛「うん、黒沼くんはあれくらいじゃ死なないよ。 痛みに耐えきれなくて意識を失ったみたいだね」
渋屋 杏(”あれくらい”・・・!? 何箇所も刺されていた上に、出血も酷かったのに!?)
中井 雛「でも、またか・・・」
渋屋 杏「また、って・・・! 今までもこんなことがあったんですか!?」
中井 雛「うん。 晶くんの体、見た?」
渋屋 杏「み、見ました・・・」
中井 雛「あの古傷は、全部人間にやられた傷なんだ。 晶くんはギャラジー戦で大きな怪我をしたことがない」
中井 雛「彼はリスキーなことはしない主義だったからね。 どんな犠牲を払ってでも、必ず無事にギャラジーを倒すという目的を果たしてきた」
中井 雛「でもその結果・・・ 人間たちに攻撃されるようになってしまったんだ」
渋屋 杏「そ、そんな・・・!」
中井 雛「家族や友人を見殺しにされたと晶くんのことを恨んでる人は多い。 そんな人たちが、晶くんが普通に生活する権利を奪ってしまった」
中井 雛「それが原因で、エージェントはこの施設から出られないという規則ができたんだ。 その規則があっても、こんなことに・・・」
渋屋 杏「どうしてなんですか」
渋屋 杏「どうして何もしていない人間が、命を張って戦ってるあいつを責めるんですか!?」
渋屋 杏「何もしていない人間が、あいつを責める権利なんてないはずなのに!! 自分たちはいつも助けられるのを待ってるだけのくせに!」
渋屋 杏「私はそれが嫌だから、ここに来た・・・! あいつがやらないなら私がやってやるって、戦いに来た・・・!」
渋屋 杏「それなのに、何もしようともしない人たちがどうして黒沼を・・・!」
中井 雛「莉呑ちゃんの存在が、大きいんだと思う」
渋屋 杏「莉呑・・・?」
中井 雛「十年前にいたエージェントのこと。 晶くんの幼馴染で、優しくて、何もかも完璧にこなしちゃうような子だった・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
神野 莉呑「また来たか、ギャラジーたち!」
神野 莉呑「人間を攻撃する悪い子たちはこの私、神野 莉呑が倒してしまうぞ?」
神野 莉呑「さあ、みんなは安心して逃げて!」
黒沼 晶「相変わらずだな、莉呑。 まさに無敵って感じだ。 また被害者数ゼロが目指せるんじゃないか?」
神野 莉呑「こら、油断しない! 君も怪我しちゃダメだぞ、晶!」
黒沼 晶「ああ、分かってる」
  莉呑ちゃんはギャラジーを倒して、一人残らず人を救い続けてた。
  それだけの天才的な戦闘能力があったんだ。
  その上、容姿端麗で優しいと評判だった。
  本当に多くの人に好かれてたよ、彼女のグッズが出るくらい。
  ──彼女がいたあの頃は、まだ晶くんはエージェントじゃなかった。
  晶くんは、エージェントにはなれなかったんだ。
  なぜなら、体が身体能力向上装置に適応できなかったから。
  彼はずっと、隊員として莉呑ちゃんを支えていた。

〇渋谷のスクランブル交差点
  でも六年前、莉呑ちゃんは──
神野 莉呑「晶、逃げるんだ! 相手は大型ギャラジー、攻撃を食らったらただじゃ済まないぞ!」

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