APAS討伐部~パートナーになったのは、最凶最悪の怪異でした~

菜鳥オウル

11.未来と過去の話をしましょう。②(脚本)

APAS討伐部~パートナーになったのは、最凶最悪の怪異でした~

菜鳥オウル

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〇黒
  私は元々孤児だったらしい。
  家族となる狐守家に引き取られたのは、3歳のころだと聞いている。

〇広い和室
幼い玲奈「じー・・・」
狐守家の陰陽師1「よっ! 見張り当番さん。 今日の殺生石の様子はどうだった?」
狐守家の陰陽師2「いつもと同じ、変わりなし。ヒビの1本入りやしないよ」
狐守家の陰陽師1「だよなー。国の連中にはヤバいヤバいと言われてるが、本当かどうか怪しいもんだ」
  狐守家は怪異関連で重要な任務を負っていたらしく、屋敷には常に陰陽師が多く行き交いしていた。
  そんな彼らに、私はよく遊んで貰っていた記憶がある。
幼い玲奈「とりゃー!」
狐守家の陰陽師1「うわあっ!」
狐守家の陰陽師1「・・・って、玲奈様か。この悪戯っこめ」
幼い玲奈「えへへ。ねえ、私と蹴鞠しましょ!」
狐守家の陰陽師1「ああ、いいよ。丁度仕事が終わったところだから──な?」
狐守家の陰陽師2「はぁっ!?」
狐守家の陰陽師2「おい、何言ってるんだよ? コイツは殺生石の──」
狐守家の陰陽師1「シッ、聞こえるだろ! 大丈夫だ、中身は普通の子供だから」
幼い玲奈「なにお話してるのー?」
狐守家の陰陽師1「な、なんでもないって」
狐守家の陰陽師1「それより蹴鞠だろ。このお兄さんもやってくれるらしいから、3人で庭行こう」
幼い玲奈「やったぁ! 蹴鞠、蹴鞠~」
狐守家当主「・・・玲奈」
「ご、ご当主様! お疲れ様です!」
幼い玲奈「おとーさん! どうしたの?」
狐守家当主「どうしたの、じゃない。今日は診察の日だっただろう」
  お父さん曰く、私は引き取った時から特殊な病気にかかっていたらしい。
  だから月に一度、医者の診察を受けていた。
幼い玲奈「あっ、そうだった!  すっかり忘れてたよ」
狐守家当主「まったく・・・ 観崎先生も既に来ている。急ぎなさい」
幼い玲奈「はーい」

〇古風な和室(小物無し)
観崎先生「バイタル、精神状態、共に安定。霊力変換も順調・・・」
観崎先生「ふむ、異常なしじゃな」
幼い玲奈「わーい! 私、偉い?」
観崎先生「偉い偉い。さすがはわしの最高傑作──」
狐守家当主「観崎先生」
観崎先生「ふぉっふぉっふぉ。怖いのう。お前さんも共犯じゃというのに」
観崎先生「しかし、思ったより順調に進んでいるようじゃ。この調子なら、あと1年程度で──」
  先生とお父さんの会話は難しくてよく分からなかった。
  けれど、病気があと少しで治るんだということだけはなんとなく伝わって来た。
幼い玲奈(病気が治ったら、お屋敷の外にも出れるようになるかな)
幼い玲奈(かけっこしたり、木登りしたり・・・ あっ、陰陽師さんたちも誘って鬼ごっこもいいかも!)

〇黒
  あの頃の私は、未来への期待に胸を膨らませていた。
  それが叶わなくなるとは知らないままに。

〇古風な和室(小物無し)
  その日も私は、先生の診察を受けていた。
観崎先生「さて、今日も始めるかのう」
幼い玲奈「うん、よろしくお願いします!」
  先生にお辞儀をしたと同時に、部屋の扉が勢いよく開き、陰陽師が駆け込んでくる。
狐守家の陰陽師1「ご当主様! 大変です!」
狐守家当主「静かにしろ、診察中だぞ」
狐守家の陰陽師1「で、ですが怪異が──」
狐守家の陰陽師1「う、うわああああああ!!」

〇黒
  その後のことは、よく覚えていない。
  僅かな記憶に残っているのは。

〇広い和室
  部屋に充満した、むせかえるような血のにおいと。
幼い玲奈「お父さん?」
  赤。
幼い玲奈「先生?」
  ──赤。
幼い玲奈「陰陽師さん・・・?」
  ──赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。
幼い玲奈「なんで? どうして?」
  涙を流し、うわごとのように「どうして」を繰り返す。
  そんな私の前で、全ての元凶の怪異は楽しげに笑っていた。

〇明るいリビング
玲奈「──でも、何故かその怪異は私を殺さなかったの」
玲奈「血塗れの家に1人で放置されて・・・ それから、明け方やってきたAPASの職員に保護されたわ」
玲奈「その後、色々と聴取や検査を受けている過程で、陰陽師の資質があると分かったのよ」
玲奈「だから私は、迷わず陰陽師になる事を決めたわ」
玲奈「あの怪異を──そして人を害する怪異すべてを、滅ぼさないといけないと思ったから」
玲奈「まあ今はその考えを少し改めて、家族を殺したあの怪異に復讐できればいいって思ってるくらいだけど」
玲奈「さあ、これで分かったでしょう。私の怪異嫌いの理由は」
時雨「・・・ごめん」
玲奈「なんで時雨が謝るのよ」
時雨「だって僕、そんな辛いことがあったキミに、ひどい事を・・・」
玲奈「ひどい事?」
玲奈(ああ、もしかして──)

〇オフィスのフロア
時雨「なのに人間ってば、自分達の都合で僕らのやることなすことひとまとめに「悪」だなんて決めつけて。ほんっとひどいよね」

〇明るいリビング
玲奈「始めの頃のことなら気にしなくて良いわよ。あれはお互い様でしょ」
時雨「でも・・・」
時雨「・・・」
時雨「分かった。なら僕、誓うよ。僕は絶対にキミを傷つけない。何があっても守るから」
時雨「キミに信用してもらえる怪異だって、証明してみせる」
玲奈「──!?」
玲奈(なによ、いきなりそんならしくないことを!)
玲奈「そ、そんなこと言うくらいなら、少しは生活力を上げたらどうかしら!?」
時雨「生活力?」
玲奈「そうよ。大体あなた、戦闘では頼りになるけど、それ以外のところで手がかかりすぎるの」
玲奈「家の事は何にもしないし、おまけにデリカシーないし」
時雨「む・・・」
玲奈「と、とにかく! 話も終わったからもう休むわ!」
玲奈「明日が休みとはいえ、早く寝ないとお肌に悪いし!?」
時雨「・・・」
時雨「生活力、かぁ」

〇空

〇通学路

〇女の子の一人部屋
  ピピピピッ。ピピピピッ。
玲奈「んん・・・ 今日、休みじゃなかったかしら・・・?」
玲奈「ああ、スマホのアラーム消し忘れてたのね」
玲奈「ふぁあ・・・まだ6時半なの? 二度寝しようかしら。どうせ時雨も起きてこないし・・・」
  バーン!!
玲奈「ななななななに!?」
玲奈(何かが爆発したみたいな・・・ というか、変な匂いもするんですけど!?)
玲奈「音は、キッチンの方──!!」

〇おしゃれなキッチン(物無し)
時雨「卵が・・・爆発した・・・」
玲奈「一体何事──って、なによこれ!?」
玲奈(電子レンジから煙が!? キッチンもぐちゃぐちゃだし・・・ それに、皿の上の黒い物体はなに!?)
時雨「玲奈ちゃん・・・」
玲奈「おはよう時雨、この時間に起きてるなんて珍しいわね」
玲奈「とりあえずこの惨状を説明してくれる?」
時雨「えっとね、朝ご飯を作ろうとしたんだ。僕と、玲奈ちゃんの」
玲奈「あ、朝ご飯!?」
玲奈(あの家事も料理も一切しない 生活力皆無の時雨が、朝ご飯!? しかも私の分まで!?)
時雨「そう。で、いつも玲奈ちゃんがやってるのを真似してみたんだけど、失敗しちゃって」
玲奈(どういう風の吹き回しかしら。今まで一切やろうとしなかったのに)
玲奈(──はっ。もしかして、昨日時雨に「家の事はなにもしない」って言ったから?)
玲奈(そういうことならチャンスだわ。これを機に、時雨にも家事を・・・)
時雨「やってみて分かったよ。僕、こういうの向いてないんだって。役に立ちたかったけど、やっぱり・・・」
玲奈「諦めるにはまだ早いわ!」
時雨「え?」
玲奈「今日は休日。時間はいくらでもある・・・」
玲奈「という訳で、特訓よ!」

次のエピソード:12.料理は準備も大変です。①

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