アイトゥダイ

烏塵(からすちり)

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〇教室
鷹居 鉱「兄さん」
鷹居 鉱「今日、嶺と夜の学校に侵入するんだけど」
鷹居 鉱「止めるの手伝ってほしい!」
鷹居 鉱「兄さんの言葉なら聞いてくれると思うんだ」
菱目 唯我「・・・勝手にすれば」
鷹居 鉱「・・・そっか」
菱目 唯我「帰る」
鷹居 鉱「うん、またね」
菱目 唯我「!」
菱目 唯我「俺は兄じゃない」
梁間 嶺「お、鉱じゃん! どうする、今日の肝試し」
梁間 嶺「・・・どうしたんだよ」
鷹居 鉱「ううん、大丈夫」
梁間 嶺「いや、大丈夫な奴の顔じゃないけど」
鷹居 鉱「本当に大丈夫だよ」
鷹居 鉱「それより本当に行くの?」
鷹居 鉱「学校に侵入なんて、すごく怒られるよ?」
梁間 嶺「ま、バレなきゃいい話だろ?」
梁間 嶺「あと──」
岸宮 数多「嶺ちゃーん!」
梁間 嶺「数多!抱き着くのは危ないって」
岸宮 数多「受け止めてくれるから大丈夫!」
岸宮 数多「あ、今日どうする?」
岸宮 数多「こっそり入る?正々堂々入る?」
梁間 嶺「・・・あと、放っておけないでしょ?」
鷹居 鉱「そうだね」

〇渡り廊下
菱目 唯我「・・・」
菱目 唯我「寒い」
  この渡り廊下は老朽化している。
  隙間風の音、隙間から入る雪、窓はガムテープで補強。
  靴の中の石を出そうと窓に寄りかかったら割れるほどである。
菱目 唯我(創立100周年ってこんなもんなのか?)
菱目 唯我「ごめん、大丈夫?」
生徒1「こちらこそごめんなさい!」
菱目 唯我「気を付けてね」
生徒1「はい!次はちゃんと前見ます!」
菱目 唯我(走らない方がいいって話なんだけど・・・)
生徒1「お待たせ!」
生徒2「ねぇ、あの人と何話したの?」
生徒1「え? ぶつかったから、ごめんなさいって」
生徒2「あの人とあんまり話さない方がいいよ」
生徒1「え、何で?」
生徒2「噂だけど、告白されたとき目の前で 「気持ち悪い」 って言ったらしいよ」
生徒1「え、本当に!?」
生徒2「うん」
生徒1「うーん・・・」
生徒1「まぁ、気を付けるよ!」

〇男の子の一人部屋
菱目 唯我「・・・」
菱目 唯我「あのマフラー」

〇教室

〇男の子の一人部屋
菱目 唯我「まだ使ってたんだな」
  小学二年生、鉱の誕生日。
  子供の成長は早いからと特別大きなマフラーをプレゼントした。
  中学一年も終わろうとしている今ですら体に合っていない。
菱目 唯我「・・・また昔みたいに話せたらな」

〇教室
「俺、お前と遊びたくない」
菱目 唯我「・・・」
菱目 唯我「え?」
「女と遊んでるし、何してもどうせ勝てないし」
「だからつまんない」
菱目 唯我「そっか、じゃあまた今度!」
「はいドッジするやつこのゆびとーまれ!」
「え、やりたーい!」
菱目 唯我「・・・」

〇田舎の学校
菱目 唯我「どうしたの、こんな所に呼び出して?」
「あ、あのね」
「好きです、付き合ってください!」
菱目 唯我「え?」
  好き?
  好きって、何?
  分からない。
  よく遊んでた友達は突然遊んでくれなくなった。
  そんな不安定な心で。
  二、三回遊んだだけの相手のことを好きになって。
  僕が君のことが好きかわからないのに。
  なん
「うっ──」
「・・・え?」
「唯我君が吐いた!!」

〇教室
梁間 嶺「兄ちゃん、遊ぼうぜ!」
鷹居 鉱「何して遊ぶ?」
菱目 唯我「──」
菱目 唯我「遊ばない」
「え?」
菱目 唯我「僕・・・俺は、兄じゃないよ」

〇男の子の一人部屋
菱目 唯我「なんで思い出すかな」
菱目 唯我(今度、ちゃんと話そ)
菱目 唯我「ん?」
  満足したみたい、今からかえ(をにーみ
菱目 唯我「?」
  どうした?
               えた))54
菱目 唯我「は、え?」
  カーテンを開き学校を望む。
  0時過ぎなのに学校の三階、窓が煌々と明るんでいる。
菱目 唯我(あ、行かなきゃ)
  気付いた時には部屋のノブに手がかかっていた。
菱目 唯我(いや、待て)
  ショルダーバッグ、それと
菱目 唯我「・・・」

〇ボロい校舎
  どれくらい走っただろう。
  そんなことを考えながら汗を拭う。
菱目 唯我(暑っつい・・・)
菱目 唯我(走ったから? いや、それにしては暑すぎる)
  いつも見ているはずの学校が夜というだけでどこか怪しく見える。
菱目 唯我「ん?」
菱目 唯我「何か、いる?」
  家から見えた光はもうなくなっている。
  ただ、その教室に何かが見えた。
菱目 唯我「・・・」
  不意に足元の雪を両手に握る。
  そして、
菱目 唯我「うん、冷えた」

〇階段の踊り場
菱目 唯我(やっぱり暑すぎる)
「うわっ!」
菱目 唯我「ん?」
梁間 嶺「た、助け」
梁間 嶺「・・・え、お前」
梁間 嶺「なんでお前がいるんだよ!」
菱目 唯我「助けに来た」
梁間 嶺「はぁ!?助けるって、何を」
菱目 唯我「怪物から助けにきた」
梁間 嶺「なっ」
梁間 嶺「見たならわかるだろ!? 助けるとかじゃない!」
梁間 嶺「逃げるしかないって!」
菱目 唯我「鉱は?」
梁間 嶺「っ──」
梁間 嶺「多分あの怪物のところに」
梁間 嶺「逃げろ、って言われて。 逃げたくなくて、でも怖くて、」
  詰まる言葉と、苦しそうな顔。
菱目 唯我「・・・わかった、行ってく」
梁間 嶺「行かないで!」
梁間 嶺「助けたいけど、でも、絶対危ないし」
梁間 嶺「だから!」
  堰を切ったように後悔と恐怖が口からあふれ出て、地面にへたり込む。
  そんな嶺の頭に手を添えていた。
菱目 唯我「兄ちゃんに任せてくれ」
梁間 嶺「え?」
梁間 嶺「にい、ちゃん?」

〇教室
菱目 唯我「鉱!」
鷹居 鉱「兄さん!?」
怪人「・・・誰?」
  教室内は異様な熱気。
  その教室の中に男幼馴染と何かがいた。
菱目 唯我「こっちのセリフだよ。 お前、そもそも人なのか?」
怪人「君、綺麗な色だね」
菱目 唯我「・・・は?」
菱目 唯我「なんでもいい、鉱から離れろ」
怪人「なるほどぉ?」
怪人「そうだ、僕とゲームをしよう!」
怪人「ゲームするならこの子は放っておく」
怪人「しないなら、こう!」
  掛け声とともに教壇の机が燃え上がる。
怪人「ルールは簡単。 君を食べたら僕の勝ち、倒されたら僕の負け!」
怪人「ま、ハンデとして僕は十分間ここに留まっておくよ」
鷹居 鉱「ちょっと、こっちの話も聞かないで──」
怪人「やらないの?」
菱目 唯我「やるよ」
鷹居 鉱「兄さん!」
菱目 唯我「任せてくれ。 昔から腕っぷしは強かっただろ?」
鷹居 鉱「でも、」
菱目 唯我「僕の事、信じてくれよ」
鷹居 鉱「・・・え?」
怪人「逃げるんでしょ?ほら、早くしないと焼いちゃうけど」
菱目 唯我「──っ」
怪人「はぁ、良い希望の色だった」
怪人「絶望させたらどんな色になるんだろ」

〇木造校舎の廊下
菱目 唯我「はっ、はっ」
菱目 唯我(どうするべきか考えろ)
  持ち物を確認。
  財布、腕時計、スマホ、イヤホン、ハンディライト。
  それと、
  この、エアガン。
菱目 唯我(弾はどのくらい入ってたかな)
菱目 唯我「・・・は?」
菱目 唯我「モデルガンかよ!」
菱目 唯我(父さんのと間違えて持ってきたか)
菱目 唯我(どうする、唯一使えそうなのだったは使い物にならない)
  ふと腕時計を見るとすでに半分が経過。
菱目 唯我(・・・)
菱目 唯我「あれ、無理じゃね?」
  炎を出す怪物と、そこら辺の中学生。
  勝てないのは一目瞭然。
菱目 唯我「あ、無理だ」
  完全に倒すことを諦めた。
  何かが「ぷつ」と切れた。
菱目 唯我「じゃあ」
菱目 唯我「じゃあ、どうやって諦めさせる?」
菱目 唯我(寧ろ頭が冴えた。 心なしかこの薄暗い学校も明るく見えるな)
菱目 唯我(良く考えたら使えるもの、この学校の全部だ)
菱目 唯我「行くか」

〇渡り廊下
怪人「あれ、逃げるのはやめ?」
菱目 唯我「違う、来るのを待ってたんだよ」
  そういいながらモデルガンを構える。
  ただ、そんなこともお構いなしに歩み寄ってくる。
怪人「ん、君何してるの?」
菱目 唯我「知らないの?ハンドガンだよ」
  そういった瞬間に怪物の歩みが止まる。
怪人「・・・へぇ?」
菱目 唯我「信じてないでしょ?」
菱目 唯我「ほら、本物の証拠」
  ゆっくりと銃をガラスの方へと向けて。
菱目 唯我(・・・これで信じてくれ)
  この渡り廊下のガラスは寄りかかるだけで割れるような脆さ。
  そのうえ寒暖差でかなり弱っている。
  だから撃った時の反動だけで窓ガラスが割れた。
菱目 唯我(正直賭けだったけど)
怪人「なんだ、本当にただの銃じゃん」
菱目 唯我「・・・は?」
怪人「僕たちみたいなのってさ、普通の人間よりも頑丈にできてるみたいなんだ」
怪人「頭を銃で撃たれても死なないくらいにはね」
菱目 唯我「化け物かよ・・・」
怪人「怪人だよ」
  そう言った瞬間に隣にあった下駄箱が激しく燃え上がり、瞬く間に廊下中の窓が割れる。
菱目 唯我「くっ・・・」
菱目 唯我(銃で怯まないなら、次の作戦だ)
怪人「・・・」

〇ボロい校舎
鷹居 鉱「兄さん・・・」
梁間 嶺「鉱?」
鷹居 鉱「嶺!」
鷹居 鉱「どこにいたの?」
梁間 嶺「数多の事を探してたんだけど、いなかった」
鷹居 鉱「──」
鷹居 鉱「多分ちゃんと逃げれてるよ。 玄関の靴が無くなってたから」
梁間 嶺「それなら良いんだけど」
梁間 嶺「ていうか、何であいついるの?」
鷹居 鉱「多分、これ」
梁間 嶺「・・・あんな奴と連絡とってたのか?」
鷹居 鉱「呼ぶつもりは」
梁間 嶺「そうじゃなくて、今までの話だよ」
鷹居 鉱「・・・」
鷹居 鉱「なんか、勘違いしてない?」
梁間 嶺「え?」
鷹居 鉱「兄さんの事毛嫌いしてるけど」
梁間 嶺「そりゃ、いきなり突き放したりあんな方法で女振った奴の事なんて嫌いになるだろ」
鷹居 鉱「兄さんはさ、吐いた後謝ったんだ」
鷹居 鉱「付き合うとかわからないし、まだちゃんと君のこと知らない。 だから、これから一緒に遊んで色々教えてほしい」

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