幻想冒険譚 Advent(アドベント)

いりゅーなぎさ

第11話 仲間(脚本)

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〇旅館の受付
  ラビッシュは自分の部屋を手配しようとしていたようで、宿の受付にいた。
  詳しい話は食事がてらに、ということになり、三人は宿の食堂に移動することとなった。

〇おしゃれな食堂
ラビッシュ「いやぁ、ごめんごめん。 おいらとしたことが、肝心の内容を話すのをすっかり忘れていたよ」
ラビッシュ「お詫びと言っちゃあ何だけどさ、ここの代金はおいらが持つから、好きなもの頼んでいいよ?」
  注文を取りに来た給仕人にそれぞれの注文を伝える。
  給仕人は注文内容をメモに取ると、食堂の調理場の方へと消えていった。
以龍 渚「──人に頼みごとを持ってきておいて、用件を言い忘れとはどういうことだよ・・・」
イリア「・・・そういう渚さんだって、私に言われるまで気付かなかったくせに」
ラビッシュ「でもさ、わざわざおいらを呼びに来たってことは、いい返事をくれると解釈しちゃっていいのかな?」
以龍 渚「そうだな。 まどろっこしい駆け引きはなしにしよう」
以龍 渚「──率直な意見だ。 俺とイリアはお前を信用してもいいと考えている」
ラビッシュ「じゃ、じゃあ──」
以龍 渚「その前に、話しておかなくてはならないことがある」
ラビッシュ「話しておかなくてはならないこと?」
以龍 渚「さっき、イリアが俺のことを『訳あり』って言ってたのは覚えているか?」
イリア「な、渚さんっ」
  イリアは以龍を制止しようとするが──
以龍 渚「止めなくていい」
以龍 渚「──俺はな、自分が何者かがわからないんだ。 気づいた時にはただ空を見上げていた。 それまでの経緯もわからずにな」
ラビッシュ「それって、兄ちゃんは記憶喪失ってこと?」
以龍 渚「らしいな。 グリズリーを倒したのはなりゆきだ。 彼女──イリアにはずいぶんと世話になったからな。その恩返しのつもりだった」
以龍 渚「・・・グリズリーの報酬は譲り合ったんじゃない。 イリアが受け取るべきものだったってだけだ」
以龍 渚「もっともイリアは、それを知ったうえで俺を騙すようなことまでして、報酬を折半にしやがったんだがな」
イリア「ぐ、グリズリーの討伐に同行してもらっただけで、恩返しは充分だったんです。 報酬まで独り占めするつもりなんてありませんっ」
以龍 渚「──そういうわけだ。 話を聞いてどうだ? まだ、俺を信用するのか?」
ラビッシュ「・・・兄ちゃん。 改めてお願いするよ。 おいらの──ううん、おいらを兄ちゃんたちの仲間にしてほしい」
イリア「私たちの仲間って・・・ 歳はともかく、アドベントとしてのレベルはラビくんの方が上なのに、どうして?」
ラビッシュ「話を聞いて、兄ちゃんたちしかいないと確信したよ だから、おいらのバウンティが終わったら兄ちゃんたちに同行させてほしいんだ」
以龍 渚「同行も何も、俺には記憶がないんだぞ? これからのことなんてなにも決められないし、イリアだってこの先俺と一緒にいるとは──」
イリア「私はいいですよ。 もとより、渚さんの記憶が戻るまでは一緒にいるって決めていましたから」
ラビッシュ「じゃあ、おいらも兄ちゃんの記憶が戻るまで一緒にいるよ。 ──いいでしょ、姉ちゃん?」
以龍 渚「記憶が戻るまでったって、記憶が戻るあてすらないんだぞ?」
イリア「そんなことをいっても一人で行動するなんてはダメですからね? ──目を離すと、またとんでもない無茶をしかねませんから」
以龍 渚「俺に決定権はないのかよ・・・」
以龍 渚「──さて。 今度はきちんと話してもらうぞ? お前の追っているバウンティとやらを」
ラビッシュ「わかってるって。 ──兄ちゃんたち、『フォルクス』ってテットを知ってるかい?」
以龍 渚「フォルクス?」
イリア「ギルテの山に生息している、鳥のテットですよ。 ──昼間のグリズリーの時にも遭遇しましたよ? ほら、あの白い小さな鳥の──」
以龍 渚「──ああ。 あの、剣で軽くはたいただけで倒れたヤツか?」
ラビッシュ「知っているなら話は早いよ。 その剣ではたいて倒れたってヤツがおいらの追ってるバウンティなんだ」
以龍 渚「・・・はい?」
ラビッシュ「まぁ、話の流れからいくと、そんな反応になるよね? ・・・ちょっと待って。今、映像を──」
  ラビッシュが自分の左手の甲にある刻印を擦ろうとするが、指先を刻印に当てたところで動きを止めた。
ラビッシュ「おっと。 ここで映像を流すのはちょっとまずいかな? ──あとでまた兄ちゃんたちの部屋に行っていいかい?」
イリア「それはかまいませんけど・・・」
以龍 渚「映像ってなんだ?」
ラビッシュ「百聞は一見にしかずってね。 ごたごた説明するより、一度ターゲットの姿を見てみた方が早いでしょ?」
ラビッシュ「だから、昼間のおいらの映像を見せようと思ったわけ」
  食堂の給仕人が注文した料理を運んできた。
  ──運んできた料理を机に並べていく。
ラビッシュ「細かいことは後にして、とりあえずメシにしようよ」

次のエピソード:第12話 フォルクス

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