ふたり(脚本)
〇草原
リリア・ツヴァイ「足痛い・・・」
そう言って立ち止まった、十二歳くらいの外見をした黒い髪の彼女を、私は振り返って見た。
まったく、まだ半日しか歩いてないわよ。ホント、人間の体って脆弱で煩わしい。
しかも喉も乾いてるし空腹感もある。警告なのか不可解な焦燥感が突きあげてくるのが分かる。水分と食事が必要か。
すると私の地図情報に、コンビニエンスストアが引っかかってきた。
リリアテレサ「しょうがない。背負っていくか」
私は、自分と殆ど背丈の変わらない彼女の体を背負って、そこからさらに三十分歩いた。
〇草原の道
他に人家も見当たらない、ただただ視界が開けているだけの、集落と集落を結ぶ幹線道路。
もう自動車も通ることのないそこをとぼとぼと進む。
私の体は機械だから、疲れることはない。心もないから苦痛は感じない。
ただ、余計な手間を掛けられるとそれを『煩わしい』と人間が称するのは知っている。
〇草原の一軒家
そんな私の視界の先に、ぽつんと忘れ去られたかのように佇む一軒の店舗が見えた。
〇コンビニの店内
急速充電スタンドが併設されたコンビニエンスストアだ。
そこまで歩くと、私は彼女を下した。
でももう満足に立ち上がることもできないようだったから店の前に彼女を残して私は中に入っていった。
けれど、店内にも人の気配はない。照明も点いてるし冷蔵庫も動いてるけど、従業員の姿さえない。
ただ床に、人の形に埃のようなものが積もっているのが見えた。私はそれが何か知っているけれど、敢えて無視して店内を物色する。
私の名前はリリアテレサ。正式にはリリアJS605sという。一般的には<メイトギア>と称される種類のロボットの一台だ。
人間に似た外見とメイドを模したデザインが施され、人間の生活全般のサポートをするのが私達メイトギアの役目だった。
本来は。
もっとも、私は今、その役目を放棄して、彼女、リリア・ツヴァイと一緒に旅をしている。
〇草原の道
リリア・ツヴァイは、生身だけれど正確には<人間>じゃない。
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状況の記述から、少しの恐怖感と期待感です。ロボットが生身に近いようなロボットと旅に出る、それだけですでに私の頭の中は異次元に行けたような気がします。