透明色の raison d'etre

いしころ

真実のカケラ(脚本)

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〇警察署の資料室
  新大特区、異形研究センター
  資料室────
月白雪乃(誰かと似た気配を纏うタイプの異形っていうのは、やっぱり見当たらないなぁ・・・)
月白雪乃「やっぱりドッペルゲンガーは異形では無いのかな・・・」
朽葉陽「月白」
月白雪乃「っ、朽葉隊長!! お疲れ様です!」
月白雪乃「何故こちらに?」
朽葉陽「俺もここに用があってね。 午前中に来た時に月白が資料室に入っていくのを見かけたから、もしかしたらと思って覗いてみたんだ」
月白雪乃「そうだったんですね。 ”異形(バディ)”の点検とかですか?」
朽葉陽「そんなところだ。 月白は一日中資料室で何を探してたんだ?」
月白雪乃「誰かの気配を模倣するような異形についてなんかを調べていました」
朽葉陽「・・・それは、アイツの件?」
月白雪乃「いえ、先輩の件とは別・・・ということにしておいてもらえませんか?」
朽葉陽「何か掴んだのか?」
月白雪乃「まだ何とも」
朽葉陽「・・・そうか」
朽葉陽「・・・俺が言うのもなんだが、無理はするなよ、月白」
朽葉陽「月白が俺の隊の隊員として本部に戻れるよう、俺も上にかけあっている」
朽葉陽「俺に出来ることがあったら、何でも言ってくれ」
月白雪乃「ありがとうございます。 でも私、案外遊撃部隊を楽しんでいますよ」
朽葉陽「それならいいんだが・・・」
月白雪乃「ところで朽葉隊長。 似た気配の存在が2つ、という事象に何か心当たりはありませんか?」
朽葉陽「似た気配、か・・・ 似た姿、ならアイツの事件がまさにそうだが、気配となるとなかなか難しいな」
朽葉陽「そうだ」
朽葉陽「アイツの事件が有耶無耶に終わり月白が遊撃部隊に飛ばされたあとしばらくした頃に・・・」
朽葉陽「異形研究センターへ過去の研究に関する情報をまとめるように中央から通達が出ていたな」
朽葉陽「表向きは研究の歴史の保存だが、実際は過去に行われたあまりよろしくない実験なんかの責任の所在を不明にする為という噂だが」
月白雪乃「責任云々はさておいても、情報収集としてはいいかもしれませんね」
月白雪乃「新大特区に居ないと、そんな情報も得られませんでした。ありがとうございます」
朽葉陽「いや、こちらこそ何かと任務に忙殺されて失念していたよ、申し訳ない」
  少しの沈黙の後、朽葉は言いにくそうに言葉に詰まりながら、控え目に口を開いた。
朽葉陽「無責任で申し訳ないが・・・」
朽葉陽「アイツの為にも・・・ なんとか、その、真実の糸口を見つけてくれ・・・!!」
朽葉陽「・・・すまない、口ばかりで」
  かつての仲間の事件の真相を知りたいという朽葉個人と、保安隊の小隊長であるという立場に板挟みにされながら絞り出された言葉。
  朽葉の責任感の強さを元部下としてよく知る雪乃には、朽葉の複雑な感情が痛いほど理解できた。
月白雪乃「いえ、これは私が勝手にやってることなので。 それに、朽葉隊長には立場もありますし」
月白雪乃「こういうイレギュラーなことは、それこそ『遊撃部隊』の私にお任せください!!」
朽葉陽「ありがとうな、月白」
月白雪乃「では早速、その過去の研究資料を探しに、別の資料室へ行ってみます!! 情報、ありがとうございました」
  過去の研究に関する資料の存在を知っていても周りの目がその調査を許さなかったであろう朽葉の立場は忸怩たる思いだっただろう。
  遊撃部隊というほぼ飼い殺しで放任されている自分の立場を、雪乃はもしかしたら初めて喜ぶことが出来たかもしれない。
  雪乃は、地下にあるという資料室へ向かいそこで更に半日を過ごすことになった。
  日付が変わり外で朝陽が登り始めた頃、雪乃は思いもよらない実験の記録を目にすることになった。
月白雪乃「みつけた・・・!!」

〇組織のアジト
  追憶街、某所────
  シキは雑に男を放り投げ、足元の水溜まりから氷柱を生み出し倒れる男の首元の近くまでそれを伸ばしていた。
烏羽シキ「ほら、もう痛いのも嫌でしょ。 知ってること話してくれたらいいから」
チンピラ「いってぇ・・・ なんなんだよ、テメェ・・・」
チンピラ「くそ、調子に乗るなよ・・・!!」
  手も足も出ないまま制圧された男たちは、せめてもと悪態をつく。
烏羽シキ「次誰かに喧嘩売る時は、しっかり相手の力量を見極めてからなしな、怪我するよ」
チンピラ「舐めんなぁぁっ!」
  男が、隠し持っていた銃を徐ろにぶっ放した。
  生み出された鋭い岩片がシキの肩を抉り飛ばす。
チンピラ「へへっ・・・油断したな!!」
  噴き出す鮮血はしかし、すぐに何事もなかったように消えた。
チンピラ「・・・な、に!?」
烏羽シキ「・・・痛いなぁ。 ウロボロスにだって痛覚はあるんだから」
チンピラ「ウ・・・ウロボロスっ・・・!?」
チンピラ「傷が塞がっていく・・・!!」
烏羽シキ「ウロボロス見るの初めて? 大抵の傷はすぐに治るし、人間の精度と異形の出力でテラが扱える、便利な身体だよ」
チンピラ「じ、じゃあお前、人間を喰って・・・!?」
烏羽シキ「そりゃあ、ウロボロスだからね。 昔私を使役してた人間を魂ごと喰ったからこうなった」
チンピラ「マジかよ・・・!!」
烏羽シキ「で。 勝ち目が無いの分かったなら、知ってること話しな。 私はこれ以上あんたらに構ってられるほど暇じゃないし気も長く無い」
  少し苛立った声を出すと、男たちはあからさまに慌て出した。
チンピラ「わかった、わかったから! やめてくれ!」
チンピラ「どっかの孤児院で全員殺されてた事件だろ!?」
烏羽シキ「うん。 あれ、現場は荒れまくってたみたいだから素人の犯行かとも思ったんだけど、それにしては死体が綺麗でね」
烏羽シキ「この辺で殺しをやる奴の情報が欲しい」
烏羽シキ「あんたらだって、金積まれれば人だって殺すタイプのチンピラでしょ? だからこうしてわざわざ聞きにきたの」
烏羽シキ「あれくらい派手に綺麗に仕事する奴なら、あんたらみたいなチンピラの間でも噂くらいにはなるだろうと思ってね どうなの?」
  少し声のトーンを落としてドスを効かせれば、男たちは簡単に話し始めた。
チンピラ「誰とかはマジで知らないんだけど、おんなじ日に別の場所でおっさんが1人殺されてるってのは聞いた!!」
チンピラ「そのおっさんは新大特区の自宅で殺されてたらしいんだ。 どうだ、なんか参考になったか!?」
  シキは少し考えたのち、軽く首を傾げた。
烏羽シキ「少し足りない。 その二件は同一犯で間違いないの?」
チンピラ「俺ら保安隊じゃねえからわかんねぇよ!!」
チンピラ「でも、現場がそっくりだって噂だ!」
チンピラ「そうそう、なんかこだわりを持ってる、殺しのプロの犯行って・・・」
烏羽シキ「保安隊からはそんな話聞かなかったけど?」
チンピラ「おっさんはどっかの企業かなんかの偉いさんで、孤児院とは関係ないから別々に考えたんじゃねぇの?」
チンピラ「保安隊って、結局新大特区の中の治安は頑張って守るけどよ、その外の追憶街のことなんてぶっちゃけあんま気にしてねーだろうし」
烏羽シキ「なるほどねぇ・・・」
  プロである同一犯と見られる事件がもう一つ、新大特区で。
チンピラ「なぁ、もういいだろ?」
烏羽シキ「うん、まぁ、いいよ。 ありがとう」
烏羽シキ「最初から素直に話してくれれば痛い目に合わなくて済んだのに。 今度はもう少し相手見なね」
チンピラ「うっす・・・」
チンピラ「さーせん・・・」
烏羽シキ(もう片っぽの事件の被害者についても、軽く調べとくか・・・)
  シキは男たちの方を振り返ることもなく、あれこれと思案しながら、その場を後にした。

〇レトロ喫茶
  本部からの仕事や地域内での日々のいざこざ、烏羽からシキの召集命令に灯のテスト期間。
  様々な要因が積み重なり、13班全員が集まってゆっくりと情報共有をする時間が取れたのは、しばらく後のことだった。
月白雪乃「改めて、情報収集お疲れ様でした。 誰も大きな怪我とかがなくて良かったです」
月白雪乃「今日のミーティングで、次の方針は決められると思う。 まずは私から報告するね。 補足は圭、よろしく」
「はいよー」
  一呼吸置いてから、雪乃は資料室で目にしたものをゆっくりと語り出した。
月白雪乃「結論から言うと、昔凍結された研究の残党みたいなものが関係してる可能性が出てきた」
月白雪乃「研究内容は・・・魂の複製」
浅葱明日香「それって・・・!?」
月白雪乃「うん。 明日香ちゃんのドッペルゲンガーがそれと決まったわけではないけれど」
月白雪乃「どうやら、人間がテラを操れるようになって異形を使役するようになった黎明期に──」
月白雪乃「異形を使役できる人間をより多く生み出すための研究が為されたみたい。 魂の複製も、その一環だったようだね」
蘇芳灯「何故そんな事を!?」
赤銅圭子「そりゃあ、優秀な兵士を育てるためさね。 空間の裂け目があるこの国では、テラを操れる人間が他国よりもずーっと多い」
赤銅圭子「異形の使役なんて、この国の人間じゃなきゃまず無理だね。 そして、異形はいい兵器になる」
月白雪乃「異形の使役は、テラを精密に練って鎖を作らないとできないし、その資質を持つ人はそんなに多くない」
赤銅圭子「つーまりっ! 雪乃は優秀なんだぜっ!!」
赤銅圭子「んでもって、テラを練る精度や質はその人によって違うから、じゃあ優秀な人をコピーして増やそう!!ってなったわけ〜」
浅葱明日香「そんなことのために・・・!?」
  圭子の明るい語り口とはチグハグに、語られる事実はあまりにも歪だった。
月白雪乃「魂の複製の研究は、資料によると多くは双子や三つ子が対象にされていたけれど、クローンを導入してた研究機関もあったみたい」
浅葱明日香「双子・・・クローン・・・」
  双子だとしたら、あの日あの場所で死んでいたのは、存在を知らなかった明日香の双子の姉か妹だったかもしれない。
  知らぬまに肉親を失っていたかもしれないという可能性に、吐き気が込み上げた。
月白雪乃「私が調べられたのはここまで。 被験体の情報や研究機関の情報はどれだけ探しても見つからなかったの・・・」
赤銅圭子「まー、こんな非道な実験がありましたよーって他人事決め込んで記録残して責任を無くなった研究機関に全投げしたいだけだろうよ」
赤銅圭子「これ以上の詳細が分からないのはしゃーなしよ」
浅葱明日香「・・・・・・」
烏羽シキ「あー、次、自分いいかな?」
  雪乃の報告が終わり重く沈みそうな空気の中、少し気だるそうに声を発したのは、シキだった。
  正直、明日香はまだシキのことをよく知らない。烏羽家の一人娘、烏羽雫に仕えている異形であるということしか。
浅葱明日香(異形・・・というよりは、もしかしたら、ウロボロスなのかもしれない・・・)
浅葱明日香(私のドッペルゲンガーの・・・ 仲間と同じ・・・)
烏羽シキ「自分は── ドッペルゲンガーの出所よりも、なんでそいつが死ななきゃいけなかったのかっていう切り口で捜査してきた」
烏羽シキ「たまたま死んだのはドッペルの方だけど、実際死ぬはずだったのは、ここに居る明日香ちゃんでしょ」
浅葱明日香「・・・そうね」
烏羽シキ「テラも練れない、仕事もない、身寄りもない。無い無い尽くしの明日香ちゃんを、わざわざ殺したい奴って?」
月白雪乃「・・・実は、裏社会の偉い人の隠し子だったとか?」
烏羽シキ「はは、おもしろ」
  乾いた笑いで一蹴するシキ。
浅葱明日香「・・・今となってはあれが父親か怪しいけど、少なくとも私は自我が芽生えてから父親らしき人に連れられてあの孤児院に入ってる」
浅葱明日香「そんな、裏社会の偉い人なんて雰囲気じゃない・・・ もっとこう・・・ くたびれたような・・・」
烏羽シキ「研究者的な?」
浅葱明日香「そう・・・かも・・・!!」
浅葱明日香「いやでも待って、だってすごい昔の記憶で、全然分からないよ・・・!?」
烏羽シキ「こいつ?」
  そう言うと、シキはおもむろに一枚の写真を取り出した。
  それは、知らない家族の家族写真だった。
  しかし・・・
浅葱明日香「──っ!! この人っっ!!」
烏羽シキ「明日香ちゃんを孤児院に連れて行った男?」
浅葱明日香「そう! そう、この人!! この写真はまだ少し若いし健康的だけど・・・ でも、うん、間違いない!」
月白雪乃「でもどうして? この家族写真には明日香ちゃん、写ってないよ?」
烏羽シキ「さーね。 そこまではちょっと分からんね、調べてないから」
烏羽シキ「分かってるのは、この男が、ドッペルが死んだのと同じ日に、新大特区内の自宅で惨殺されてたってことだけ」
月白雪乃「その事件、知ってる・・・!! 本部が大騒ぎになったんだよ。 おかげで追憶街で起こった事件はほとんど重要視もされなくて」
浅葱明日香「同じ日に、父・・・じゃないのか、この男の人も、殺されてたの・・・」
烏羽シキ「本部が、追憶街を蔑ろにして新大特区の事件だけを丁寧に捜査したのが悪かったね。 この2件の事件、現場がよく似てる」
烏羽シキ「裏にいる殺し屋もどきのチンピラとおしゃべりしてたらさ、どうやらこの二件の事件には同じプロの殺し屋が関わってるみたいだよ」
蘇芳灯「プロの殺し屋っ・・・!! そいつの特徴は? どこに行けば会えますか!? 得物はっ!?」
  「プロの殺し屋」という言葉に、灯が激しく反応した。
蘇芳灯「そいつに会う必要がありますよね!? すぐに探しましょうっ!!」
赤銅圭子「うぉーうぉー、落ち着けあかりんや。 プロの殺し屋が、そんなホイホイ見つかるわけ無かろうぞ?」
赤銅圭子「ねぇ、シキシキ?」
烏羽シキ「無理無理。 現場が派手なので有名みたいだけど、逆にそれでずっと裏社会でも上手く隠れてるみたいだから、一朝一夕ではとても」
烏羽シキ「下手に探ったら、近付く前にバラバラにされる奴だな」
赤銅圭子「ほらー、シキシキもこう言ってるし、一旦落ち着こう?」
蘇芳灯「私は落ち着いています! 圭子さんこそ、何寝ぼけたこと言ってるんですか!? 有力な手掛かりなんでしょう? 追わなきゃ!」
赤銅圭子「有力な手掛かりなのは── あかりんの案件の方だよね?」
烏羽シキ「少なくともこっちの案件は、こうなると、誰が殺したかよりも、誰が依頼したかの方が重要になってくる」
蘇芳灯「っ・・・でも!」
赤銅圭子「いずれは追うよぅ。 でもさ、今すぐに、何の準備も無しに捜査始めちゃったらさ、うちら全滅の危機よん?」
蘇芳灯「早くしないと、遠くへ行ってしまうかもしれませんっ・・・!!」
  普段物分かりのいい灯だが、この時ばかりは違った。
  必死に食い下がる。
  無茶なことだと灯自信、理解していても。
蘇芳灯「今からそいつを追うと方針を決めたら、明日未明からでもローラー作戦で・・・!!」
烏羽シキ「少なくとも自分がその辺のチンピラとかを片っ端から殴った程度じゃ居場所はこれっぽっちもわからなかったから」
烏羽シキ「デカめの組織ひとつひとつにカチコミかけに行くしかないけど、多分死ぬね」
赤銅圭子「あたし、あかりんに怪我してほしくないし、無駄な労働もしたくないよ!」
赤銅圭子「大丈夫、その殺し屋のことを無視するわけじゃない。 今は泳がせて、次に誰かを殺す時にとっ捕まえる作戦の方がいいと思わない?」
蘇芳灯「・・・・・・」
烏羽シキ「じゃ、自分の報告はこれで終わります」
蘇芳灯「・・・・・・」
  何か言いたげに俯く灯は、渋々と言った感じでソファに身を預けた。
月白雪乃「・・・あとは、明日香ちゃんだね」
浅葱明日香「私・・・私は・・・」
浅葱明日香「瓦礫街で、ウロボロスに会いました」
烏羽シキ「お、仲間じゃん」
浅葱明日香「・・・やっぱりシキはウロボロスだったのね」
烏羽シキ「そうだよ、それが何?」
浅葱明日香「いえ、別に・・・」
浅葱明日香「・・・そこで出会ったウロボロスは、私のドッペルゲンガーのことを知ってるみたいで」
月白雪乃「本当!? すごい収穫じゃない!!」
浅葱明日香「・・・それで、その その人曰く、私のドッペルゲンガーは・・・」
浅葱明日香「テロリスト、だったようです」
烏羽シキ「あー、わかった。 あの連中か」
浅葱明日香「っ、シキ、何か知ってるの!?」
烏羽シキ「自分も一回勧誘されてね。 ウロボロスを便利な家畜としか思ってない人間どもに、どっちが上か教えてやろうって」
烏羽シキ「まぁ自分は雫ちゃんが居るからそれ以外は特に興味がないから断ったけど」
浅葱明日香「そいつらの恨みと私のドッペルゲンガーに何の関係があるって言うの!?」
烏羽シキ「知らないよ」
烏羽シキ「んかの実験の犠牲者みたいなドッペルちゃんが、同じくなんかの実験の犠牲者のウロボロス達と共感したとかじゃない?」
浅葱明日香「っ────!!」
月白雪乃「・・・その線で考えるのが一番妥当かもしれないね」
浅葱明日香「じゃ、じゃあ、同じ日に死んだ偽親父の件はどう解釈するの!?」
烏羽シキ「さぁ? 少しは自分で考えたら?」
月白雪乃「実はその人も何かの実験の間接的な被害者で・・・テロリスト達にドッペルゲンガー経由でいろんな支援をしてたとか?」
月白雪乃「それで、新大特区の誰かから恨みを買って、ドッペルゲンガー諸共殺された・・・」
烏羽シキ「殺す側はまさかおんなじ気配おんなじ姿が居るなんて思いもしないから、ドッペルゲンガーと勘違いして明日香ちゃんを狙って」
烏羽シキ「それで”たまたま”孤児院に来てたドッペルゲンガー本人を殺害して、”ついでに”孤児院の人間全部道連れ・・・ねぇ・・・」
烏羽シキ「一理無いことはないけど、なんか引っかかるものは残るね」
月白雪乃「とはいえ、これ以上の情報は今はもう無いと思う」
烏羽シキ「同感」
  明日香もこれ以上は何も言えなかった。
  それよりも、少しずつ明らかになっていく、自分の知らない身の回りのことの数々に
  ただただ圧倒されて、息をすることが精一杯だった。
赤銅圭子「んじゃ一旦今言ってた方針に沿うとして! 次はどうする!?」
烏羽シキ「自分は引き続き、殺し屋の雇い主探すよ。 ペアはいらない、1人が気楽だから」
蘇芳灯「じゃ、じゃあ私も一人で殺し屋本人をさがしに・・・!!」
赤銅圭子「おぅ、だーめだめそれは。 あかりんはしばらくあたしとペア組んで、偽親父さんに恨みを持ってそうな人探しぃ」
赤銅圭子「それでおっけー、雪乃?」
蘇芳灯「ちょ、何を勝手に・・・!!」
月白雪乃「それでOK。 2人とも、よろしくね」
蘇芳灯「・・・・・・」
月白雪乃「・・・明日香ちゃんは私と一緒にもう一度、瓦礫街に行ってくれないかな?」
浅葱明日香「・・・え?」
月白雪乃「まだ、そのウロボロスの人たちに聞きたいことがたくさんあるの。 明日香ちゃんも居た方が話してくれやすいかなって・・・」
浅葱明日香「・・・・・・」
浅葱明日香「・・・そうね。 うん、ありがとう雪乃。 よろしくね」
月白雪乃「うんっ!」
  迷っていても仕方がない。
  止まっていては何も得られない。
  明日香には幸い仲間がいる。
  得体の知れない不快感と鎮まることを知らない不安を押し退けて、明日香は真実を掴むために進むことを選んだ。

次のエピソード:閑話〜雫と明日香〜

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