透明色の raison d'etre

いしころ

閑話〜雫と明日香〜(脚本)

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〇図書館
  追憶街の一角にある図書館にて────
浅葱明日香「あぁ、いたいた」
  自習室で参考書を睨みつけていた灯の横にやってきたのは明日香だった。
蘇芳灯「・・・明日香さん。 どうしたんですか、こんな所に」
浅葱明日香「んー、圭子がね。 「あかりんが遊んでくれないよ〜」って喚くからさ」
浅葱明日香「多分、灯のこと、心配してるんじゃないかな?」
蘇芳灯「・・・はぁ あの人はすぐ他人を巻き込んで人の邪魔ばかり・・・」
蘇芳灯「明日香さんも、わざわざ律儀に付き合ってやる必要なんてありませんよ」
蘇芳灯「それに今私、試験勉強中なんです。 申し訳ありませんが、もういいですか?」
  灯は、機嫌が悪いのを全く隠すことが出来なかった。
  先日の班会議以降、心のざわつきが取れない。
  灯自信、無茶を言っていた自覚はある。
  それを圭子に宥められたのが気に食わなかったのだ。
蘇芳灯(人を子供扱いして・・・!!)
浅葱明日香「ね、灯。 私テラの練出が出来ないから勉強だけは!ってずっと頑張ってきたからさ、結構頭はいい方なんだよ?」
蘇芳灯「・・・だからなんですか」
浅葱明日香「後で試験勉強に付き合うからさ、ちょっとだけ外出ない?」
浅葱明日香「あかりんとクレープでも食べてる写真見せたら圭子も納得してくれると思うんだ」
浅葱明日香「お願いっ! じゃないと私ノーチラスに戻ったらまた延々と酔っぱらい圭子に絡まれる!!」
  圭子という人間は、灯にとって全くわからない人種だった。
  頭はいいはずなのにふざけてばかりで本気を出さないでフラフラして、他人に迷惑をかけてばかり。
  尊敬している雪乃が、なぜあんな奇人と馬が合うのか全く納得がいかない。
  今度は、明日香にまで迷惑をかけている。
蘇芳灯「・・・本当に困りものですね、圭子さんは」
浅葱明日香「ねー、ホント、困っちゃう」
蘇芳灯「あれじゃ、ただの小さな子供ですよ・・・ いつも思い付きでわがまま言って、言うだけ言って他人に迷惑かけたら満足なんですから」
浅葱明日香「あはは、それ、うちの孤児院にいた小学生の男の子2人とおんなじじゃん!」
蘇芳灯「はぁ・・・ 明日香さんが迷惑を被っている以上、意地を張っている場合でもないですし・・・」
蘇芳灯「わかりました、クレープ食べに行きます。 代わりに、後で数学教えていただけますか?」
浅葱明日香「もちろん! ありがと、灯。 助かったよ」

〇公園のベンチ
浅葱明日香「美味しかったね」
蘇芳灯「ええ、とても久しぶりに食べました!」
  甘いものはイライラに効くと言うが、本当らしい。
  陽の光も、灯の荒んでいた心を少し柔らかくしてくれる。
蘇芳灯「・・・明日香さん、ありがとうございます」
蘇芳灯「明日香さんの方がしんどいはずなのに、気遣ってくれて・・・」
浅葱明日香「ううん、私も色々と気晴らしが出来てよかったよ。ありがとうね」
浅葱明日香「ふふっ 私たち、圭子に乗せられちゃったかな?」
蘇芳灯「それは断じて認められませんね!!」
浅葱明日香「・・・・・・」
蘇芳灯「・・・・・・」
浅葱明日香「ふふふっ」
蘇芳灯「もー、なんですか?」
浅葱明日香「べつにー?」
  何か特別面白いことがあったわけではないが、何故か笑いが込み上げてきた。
  灯にとっていつしか明日香の隣はとても気が楽になる場所となっていた。
  雪乃のように尊敬で固くなってしまうわけでもなく、圭子のように苦手なわけでも、シキのようにど恐怖心があるわけでもない。
  ただフラットに、信頼できる仲間として、その隣に居られる存在だった。
浅葱明日香「はー、笑った笑った。 よくわからないけど!」
  ピロン♪
  と、明日香の持つ携帯端末が音を出した。
浅葱明日香「ん、誰だろ、雪乃かな・・・?」
浅葱明日香「げ」
  そっと明日香が画面を見せてくれた。
  そこには。
  ええん!
  あっすーだけあかりんと遊んでずるいゾ☆
  圭子ちゃんも今からそっち行く〜♡
蘇芳灯「うわぁ・・・」
浅葱明日香「・・・図書館戻ろっか!」
蘇芳灯「そうですね!」
  この日の夜、ぐちぐちと何かを愚痴りながら酒を煽りまくる圭子の姿が雪乃の部屋にあったとかなかったとか────

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