ついに現れたスルト。村が危ない!(脚本)
〇可愛らしいホテルの一室
タケル「うそ、だろ・・・」
ユーヤ「・・・ッ」
そこにいたのは炎に包まれた人型の化け物だった。
〇牧場
スルト「ゴォォォオオオオ!!」
スルトは炎を口から炎をまき散らし、牧場に火を放つ。
〇牧場
瞬く間に牧場は炎に包まれ、それに気がついた家畜たちが一斉に牛舎から飛び出した。
「フガッ・・・! フガッ!」
「メェー!!」
スルト「グォォォォオオオオオ!!」
再び咆哮を上げ、無造作に足下の動物を掴む。
スルト「・・・・・・」
「め、メエェエエエ!!」
捕らえた獲物をそのまま口に放り込んだ。
スルト「グチィ・・・グチャ、ギチッ・・・!」
スルトは牛や羊を飴玉のように、口に入れては骨ごと咀嚼する。
口元からは血が噴き出し、地面には肉片が飛び散っていた。
「モォォオオ゛オ゛オオオ!!」
今度は牛のような動物を、両手で掴むと──。
紙切れのように引きちぎった。
〇可愛らしいホテルの一室
ユーヤ「うっ・・・」
思わず目を背けるユーヤ。直視をするにはあまりに残酷な光景だった。
タケル「大丈夫か、ユーヤ!」
ユーヤ「うん・・・。でもこれがもし人だったらって思うと・・・・・・」
タケル「確かに・・・うぇっ」
想像するのもおぞましい。俺も吐き気を催す。
ユーヤ「・・・倒しに行かないとね」
タケル「ああ、アイツを野放しにはできない」
俺はあえて倒せるか、とは聞かなかった。
タケル(こんなの勝てるわけない――でも)
俺が止めてもユーヤはコイツを倒そうとする。
タケル(だったらこっちも玉砕覚悟で・・・)
恐ろしい。だがユーヤが立ち向かうのなら俺だって戦うべきだ。
タケル(ユーヤを護るって決めたんだ)
心を奮い立たせて俺は獲物を持つ。たとえ刺し違えたとしても、スルトを倒すのだ。
???「まあ待て、巫女と少年」
タケル「誰だ!?」
場違いなほど穏やかな声に驚き、剣を構える。
暗闇から浮き上がったのは――村長だった。
村長「お主らが焦ると思って来たら大当たりじゃ・・・実際にスルトを見た感想はどうじゃ?」
タケル「感想って、そんな悠長にしてられるのかッ! スルトはもう目の前にいるんだぞ!」
ユーヤ「早く行かないと・・・沢山の犠牲が出る前にッ!」
村長「まあ待て、巫女と少年。奴にはちゃんと生贄を用意してある。今宵は村まで襲ってこん」
そう言って村長はスルトを睨みつける。
窓から見えるのは、一方的に虐殺を行う強大な力を持つ巨人。
スルト「グォォォォオオオオオ!!」
村長「・・・神に近い怪物。いや、古の巨人。それがスルトじゃ」
村長「ワシらでは到底力が及ばぬ存在なのじゃ」
村長「だからせめてもの時間稼ぎに生贄として、家畜を準備した」
村長「・・・それも保って3日が限界じゃろうが」
タケル「それが無くなったら・・・」
村長「・・・村を襲う。そして多くの人間が喰われるじゃろう」
ユーヤ「・・・・・・」
タケル「・・・大丈夫だ」
自分にも言い聞かせるようにユーヤを励ます。
村長「今宵は大人しくここにおれ。こやつを倒す算段でも話し合うんじゃな」
言外に、そんなことは無理じゃろうが、と告げるように老人は言い放つ。
〇牧場
スルト「グワォオオオオオオオオオ・・・」
腹が満たされたのか、動きを止めるスルト。
スルト「ゴォォォゥゥゥ・・・」
そして、スルトも腹が満たされ満足したようで、再び地ならしをしながら村から離れて行った。
〇可愛らしいホテルの一室
タケル「・・・・・・」
ユーヤ「・・・・・・」
2人で沈黙する。圧倒的な力の差、なすがままになってスルトに喰われた動物たち。俺たちは打ちひしがれてしまった。
ユーヤ「そうだ、イェンティ! 無事か確かめないと・・・厩舎に行ってくる!」
タケル「あ、ああ! 俺も行く!」
ユーヤ「ううん、タケルはここで村の人を守って! 大丈夫、無茶はしないから」
タケル「ああ、分かった、俺も家を見回ろう」
気を取り直して俺たちは、それぞれの役割を果たすために走っていく。
〇児童養護施設
タケル「スルトに襲われた人はいないかっ!?」
村人「ああ、こっちは全員無事だ!」
村人「あなたも気をつけてね!」
タケル「ああっ!」
刀を構えながら俺は、一軒一軒様子を聞いていく。
タケル「大方終わったな・・・あとはあの家か」
「あ、あの! すみません!」
タケル「どうしたっ!」
俺が振り返ると、中年らしき男が顔を青くして立っていた。
父親「君は巫女様に付いていた人だねっ!?」
タケル「ああ、そうだけど」
父親「息子が村じゅう探してもいないんです! どうかお助けください!」
タケル「なっ──それはマズい!」
スルトにモンスターにされた動物たちを思い出す。もしかしたら、さらわれているかもしれない。
タケル「どんな子なんだ?」
父親「私の腰ぐらいの背丈で・・・髪の色は濃いブラウンだ」
タケル「分かった、すぐ探しにいく! 念のため、親父さんは村も探してくれっ!」
父親「もちろん、助かるよ!」
父親は踵を返し村に向かって走り出す。
タケル「絶対に助けるぞっ!」
そう言って俺はあの牧場に向かって走り出した。
〇牧場
タケル「さっき、スルトがいたのはここだな」
タケル「ひでぇことになってんな・・・」
牧場に着くと、血の臭いが充満していた。食い散らかされた肉片もそこら中に散らばっている。
タケル「おーい、誰かいるのなら返事くれー!」
腹から声を出し、周辺一帯に聞こえるように叫ぶ。
少年の声「ひぐっ、うぇっ・・・」
タケル「そっちにいるのか!」
タケル「なッ──!」
俺たちの前に立ち塞がったのは・・・
〇牧場
眷属「キィィィイイイ!!」
眷属「グォォォォオオオオオ・・・」
じりじりと少年に近づくのは、異形の怪物。それも2体いた。
タケル(くそっ! 2体同時に、しかも1人でなんて──)
こんなの勝てっこない。冷や汗が吹き出し、握った剣の柄を落としそうになる。
子ども「怖いよ・・・助けて、お兄ちゃん」
眷属「イーッヒッヒッヒッ!」
眷属「グゴゴゴゴゴゴ・・・」
モンスター2匹が俺を挑発するかのように、少年の両腕を掴み、爪を立てる。
タケル(・・・負けてたまるか)
俺はユーヤを、スルトから護ると決めた。こんな怪物程度、1人で十分だ。
タケル「はッ――!!」
眷属「んギィィイイイイ!」
眷属「グガァ!?」
タケル「キミッ! こっちだ!」
子ども「う、うん!」
俺は2体のモンスターを切りつける。怯んだ一瞬の隙に俺は少年を抱きかかえ、引き下がった。
子ども「うぇぇぇん・・・こわかった」
タケル「・・・もう大丈夫だ。俺が護ってやる」
タケル「キミッ、俺から離れるなよ!」
子ども「う、うん!」
眷属「イギャァアアアアア!」
眷属「ゴォォォオオオオオ!」
怒りで咆哮する2体のモンスター。だが、俺は恐怖を感じなかった。
タケル「まとめてかかってこい――! ぶっ潰してやるッ!」
俺は高らかに宣言した。
スルトの圧倒感や凶悪さが伝わる一話でしたね。スチルも効果的で!そんな存在にユーヤとタケルはどのように立ち向かうのでしょうか!?