〇女の子の一人部屋
瑠菜「はぁー、疲れたぁー」
　　あのあと、デートは明日決行、詳しくはメッセージでやりとりするということで解散した。
　　今日は本当に訳のわからないことがいっぱいだった。幽霊に会うわ憑依されるわで散々だ。
　　軽くシャワーを浴び、自室に戻ってきたわけだが、一向に気が休まる気配はなかった。
　　その理由は・・・
瑠菜「・・・なんでいるんですか」
日向「ごめん、わざとついてきた訳じゃないんだ 気づいたら勝手に・・・」
瑠菜「・・・お風呂、覗いてませんよね？」
日向「そ、そんなことしてないよ！」
瑠菜「本当ですか？なんかずっと視線を感じた気がしたんですけどね」
日向「本当にしてないってば！」
瑠菜「なんて、冗談ですよ、冗談 明日のこと話さなきゃいけないのでちょうど良かったです」
日向「なんだ冗談か・・・意外とお茶目なところがあるんだね」
瑠菜「・・・そういうことにしておいてください それより明日のことです、さっき実音からメッセージが来てました」
　　明日は９時にいつものモアイ像集合で！
日向「ああ、あれか！」
瑠菜「知ってるんですか？ 割とご近所さんなんですね」
日向「ああ、ぼんやりと覚えてるよ」
瑠菜「そうですか、じゃあ軽く道案内はするので、日向さんが歩いてください」
日向「わかったよ。他にメッセージはないのかい？」
瑠菜「ないです 実音と出かける時はいつも集合時間と場所だけ揃えてあとは全部あの子の気まぐれなので」
日向「それ、あの場で決めてても良くないかな？」
瑠菜「私もそう思いますがいつものことなので あとは明日の注意点を今のうちに話しておきますか」
日向「注意点？」
瑠菜「まずさっきも言ったとおり、必要以上に体を見たり触ったりしないでください あと、乱雑に扱ったりしないでください！」
日向「勿論だよ！借り物の体だからね、綺麗な状態でお返しするよ」
瑠菜「あと、外でこうやって話してるとイタい子だと思われちゃいそうで嫌なので」
　　私はスマホのメモ帳を開き、メッセージを打ち込んだ。
瑠菜「『こんな感じで筆談してください』」
日向「うん、気をつけるよ」
瑠菜「スマホは指紋認証で解除できるので多分大丈夫だと思います」
瑠菜「あと、私の体に入ってる間はその僕っていうのやめてもらっていいですか？ 男っぽい喋り方とかも禁止です！」
日向「僕は演劇部だったんだぞ？ 女の子の演技は完璧だよ」
瑠菜「じゃあ、やってみてくださいよ」
日向「えぇ〜と、わたしぃ、女の子の演技も完璧ですよぉ〜！」
瑠菜「うわっ、明日はもうちょい自然な感じでお願いします、マジで」
日向「ごめんごめん、ちゃんとやるから安心してほしい」
瑠菜「あとお手洗い行く時は絶対私に代わってください！覗きもしない！」
日向「でも、トイレ行きたい時に意識が飛んだら、その、危なくないかい？」
瑠菜「・・・そうですね」
　　確かに、それで大変な間に合わない保証がない。そんな事態が起こったら人生が終わる。かといって男にトイレを任せられるか？
　　究極の選択だった。
　　よく考えよう。メリットとデメリットだ。
　　前者の場合、何も起こらない可能性もあるし、大衆に恥を晒す恐れもある。不確定要素が多い。
　　なら後者の場合は？
　　こいつに恥ずかしいところを見られてしまう。ただし、こいつはこのデートが終わったらこの世から消える。
瑠菜「もしかして・・・トイレ行かせちゃった方が、マシ？」
日向「え？」
瑠菜「よし、決めました、今から女の子のことみっちり叩き込んであげます！ 今はすごい恥ずかしいけど、後で恥かくよりマシ!!」
　　やけになった私は、トイレの仕方のほか、女の子としての所作やメイクの直し方など、簡易的にでも教え込むことにした。

〇女の子の一人部屋
　　なんやかんやあって眠りについた私は、変な夢を見た。