エピソード18〜再会〜(脚本)
〇集中治療室
〜聖裁大学 隠し部屋〜
学長モルダート「・・・俺の孫はここにいる。機材には触れるなよ。誤作動したら困るからな」
学長バルバロッサ「・・・だそうじゃ。気をつけろよ、上田」
上子「何で俺に言うんですか!大丈夫ですよ、触りません!!」
上子「・・・あ・・・もしかして」
上子「このベッドの上にいるのが・・・」
学長モルダート「・・・そうだ」
「・・・俺の、孫だ」
学長モルダート「もし彼女が今も元気にしていたら、レイやリオと同じ19歳・・・大人の女性に憧れる年頃になっていただろうが・・・」
学長モルダート「俺が毎日彼女の時を戻しているから、9歳のまま、成長が止まっているんだ・・・」
学長モルダート「あの日から、ずっとこう。目を覚さず、成長せず・・・。セリーナも、俺の心も、10年前と何も変わっていない・・・」
学長モルダート「だが、もう終わりにしたい。俺もセリーナも、時の歯車を動かしたいんだ」
学長モルダート「セリーナに魔法をかけることで、これから俺たちの人生がどうなるのかはわからんが・・・。やはり、前に進んでいかないとな」
学長モルダート「・・・だから、よろしくお願いするぞ、上田」
上子「・・・わかりました。やってみます」
学長モルダート「・・・ちなみに。俺が初めてセリーナの時を戻したのは、デパートの崩壊が起きてから2日後だった」
学長モルダート「だから、少なくとも2日以上は時を戻してもらう必要がある」
学長モルダート「・・・正直、きついぞ」
上子「・・・ええ。でも俺、諦めません」
上子「セリーナ様を必ず・・・目覚めさせます。だから学長、俺のことを信じて見守っていてください」
学長モルダート「・・・ふっ。若造が。随分頼もしいことを言ってくれるじゃないか」
学長モルダート「では待とう。いくらでも。少なくとも俺は、10年は待ち続けたんだからな・・・」
上子「・・・それではまず・・・。あなたの魔法をコピーして・・・」
上子(精神を集中・・・。セリーナ様のことだけを考えるんだ・・・)
上子「・・・時よ、セリーナ様が元気になる時まで・・・戻れ!!」
〇集中治療室
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・う・・・・・・」
セリーナ「・・・あれ・・・私・・・。今まで何して・・・」
セリーナ「確かデパートにいて・・・それで・・・。でも、ここはどこ・・・?」
「・・・せ・・・せ・・・」
学長モルダート「セリーナ!目を・・・覚ましたのか!?」
セリーナ「・・・その声・・・もしかして、おじいちゃん?」
セリーナ「・・・何だか・・・急に老けたね。声もちょっと皺がれてるし」
セリーナ「何だか私、未来にタイムリープしたみたい・・・」
学長モルダート「セリーナ!!」
学長モルダート「良かった・・・本当に、良かった・・・!!」
セリーナ「わわわっ、おじいちゃん急にどうしたの?私のことそんなにぎゅーっと抱きしめて・・・。ち、ちょっと苦しい・・・」
学長モルダート「す、すまん。つい興奮してしまった」
学長モルダート「ちょっと色々あったんだよ。後でゆっくり説明する。ところでセリーナ・・・特に、痛いところとかは、ないかな?」
セリーナ「あ、うん。大丈夫だよ」
学長モルダート「そうか・・・やっぱり・・・無事時が戻ったんだな・・・。本当に、良かった・・・!!」
セリーナ「もー。おじいちゃんたらどうしたの?そんなに涙流して。悲しいの?」
学長モルダート「違うよ・・・。これは、嬉し涙だ」
セリーナ「嬉しいのに涙が出るの?何か、変なの−!!」
学長バルバロッサ「・・・良くやったな、上田。ご苦労じゃった」
上子「・・・そ・・・そうっすね・・・。お疲れ・・・っした」
学長バルバロッサ「・・・おい、大丈夫か?何だか、魂が抜けてるようだぞい」
上子「そりゃあ・・・。魔法使うのに、あんなに集中したの初めてですから」
上子「モルダート学長は、毎日1時間もこんなしんどい思いをして魔法をかけていたなんて・・・。せ、精神力が強すぎる・・・」
学長バルバロッサ(・・・30分で3日間も時を戻してしまう、上田の魔力の強さもすさまじいがのう・・・)
学長モルダート「・・・上田。礼を言うぞ。お前にはいくら感謝してもしきれん」
上子「へへっ・・・。まあ、助ける、って・・・約束しましたからね、あなたと」
学長モルダート「本当に、お前の魔法は規格外だな」
学長モルダート「・・・せいぜい俺のように道を踏み外して、悪いことに魔法を使うなよ?」
上子「・・・き、肝に銘じておきます」
学長バルバロッサ「モルダート。セリーナ様が目を覚ましたことを、リオたちに伝えても良いな?きっとみんな、そわそわしとるだろうからのう」
学長モルダート「ああ、構わん」
学長モルダート「だが、しばらく会うのは待ってもらいたい。念のため、セリーナの身体検査をしたいからな」
学長バルバロッサ「そうじゃな。10年間も眠っていたんじゃし。よく診てもらえ」
学長バルバロッサ「そして、会える時が来たらすぐに連絡するんじゃぞ」
学長モルダート「承知した。まあ、一週間もあれば検査も終わるだろう」
学長モルダート「・・・上田。本当に、ありがとう」
学長モルダート「お前は、俺の幻を実現してくれた」
上子「幻・・・ですか。まあでも、こうしてセリーナ様が動けるようになったのは・・・」
上子「モルダート学長。あなたが毎日欠かさず、彼女に魔法をかけ続けていたお陰ですよ。あなたが、希望という名の魔法を繋いだんです」
上子「だから、これは幻なんかじゃない。あなたの努力の賜物ですよ」
学長モルダート「・・・俺は、その努力のために、色々なものを犠牲にし、踏み潰してきた・・・」
学長モルダート「決して綺麗な努力とは言えないがな。とはいえ、そう言ってもらえて嬉しいぞ、新入り」
学長モルダート「約束だ。俺はもう誰にも危害は加えたりしない。誰かを傷つける理由も、もう無いからな」
学長バルバロッサ「・・・理由があっても、傷つけるなよ。短絡的な発想をする貴様のことだからな。危なっかしいわい」
学長モルダート「ぐっ・・・。承知した」
学長バルバロッサ「では上田。わしらは蔵杏大学に帰るとするかの。みんなに良い知らせを早く伝えたいのでな」
上子「そうですね。みんながどんな反応をするのか楽しみです」
学長バルバロッサ「モルダート、それじゃあまたな。連絡待っとるぞい」
学長モルダート「ああ。時が来たら、セリーナを蔵杏大学に遊びに行かせよう」
学長モルダート「・・・それじゃあ、な」
上子「あ〜〜早くみんなに知らせたい〜〜俺がやったって言ったら俺の好感度爆上げになるかな〜〜?」
学長バルバロッサ「・・・・・・・・・・・・」
〇校長室
〜2週間後 蔵杏大学 学長室〜
「失礼しまーす!」
セリーナ「わああ・・・。ここが、くらあんだいがくの、学長室?」
「セリーナちゃん!」
リオ「セリーナちゃん・・・本当に・・・久しぶり・・・!!」
セリーナ「そ、その声はもしかして、リオ?リオなの!?」
セリーナ「うわあ〜〜〜!何だかしばらく見ない間に、すっかり大人っぽ〜〜い!!」
リオ「セリーナちゃん・・・ごめん・・・本当にごめんね・・・!」
リオ「デパートが崩壊した日・・・私・・・あなたを置き去りにして・・・!本当は助けたかったのに・・・!!」
セリーナ「・・・リオ。もう謝らなくて大丈夫だよ」
セリーナ「私のおじいちゃんが言ってた。あの時のリオは、他の人をテレポートすることができなかったんだ、って」
セリーナ「確かに、置いて行かれた時はショックだったけど・・・」
セリーナ「でも、もう良いの。だって私今、こーんなにピンピンしてるんだもん!!」
リオ「傷とかは残ってない?大丈夫?」
セリーナ「うん!上田お兄ちゃんが、ぜーんぶ治してくれたんだって!!」
上田「いやあ、それほどでも」
上田(上田お兄ちゃんか・・・。何だか、良い響きだな)
上田「いかん、幼女好きに目覚めてしまいそうだ・・・」
リオ「・・・上田。思わず心の声が漏れ出てるわよ」
上田「う、うそッ!!うわやばいどうしよう、ただのヘンタイに思われる!!」
リオ「安心しなさい、あんたはもうみんなからヘンタイ認定されているから」
上田「それは困る!!」
「・・・あ・・・あの、セリーナ様。無事お目覚めとのことで、何よりです」
レイ「わ、私のことは、覚えてますか?」
セリーナ「もちろん覚えてるよ!レイでしょ!!」
セリーナ「でも、身長は相変わらず小さいんだねえ。私と大して変わらないかも?」
レイ「なっ!こ、これでも当時よりは伸びたんですよ!2cm!!」
セリーナ「2cmぅ〜?全然伸びてないじゃない!私の方がこれから身長大きくなるもんね〜〜!!」
レイ「くぅ〜〜!!悔しいですの・・・」
セリーナ「あとさ、レイ。ずっと思ってたんだけど・・・」
セリーナ「セリーナ「様」って言われるの、ちょっと、嫌だなあ・・・」
セリーナ「セリーナって呼んでよ!セリーナちゃんでも良いよ!!私たち、友達でしょ?」
レイ「そ、そんな!王様の孫に向かってそんな、気安く呼ぶなんて・・・」
セリーナ「もー!その王様の孫が命令してるんだよ!?私の命令聞けないの!?ぷんぷん!!」
セリーナ「あと、敬語もダメなんだからね!!」
レイ「ええ〜〜〜!?な、なんか、私の全てが否定されているような・・・」
レイ「うぅ〜〜、わかったよ・・・。・・・セリーナちゃん」
セリーナ「わかればよろしい!!」
セリーナ「えへへ。またあの頃みたいに仲良し3人組で集まれるなんて。嬉しいなあ」
レイ「そ、そうですわね・・・」
レイ「・・・・・・・・・・・・」
すっごい感動回ですね!ハッピーエンドに向かう幸せな展開で!
そして、心がどんどん熱くなっていくところで、上田くんの性癖が水を差して冷却してくれますねw ストレートに感動させてくれない展開にやられました