村に到着! でも様子がおかしくて…?(脚本)
〇森の中
ユーヤ「ふぅ~、いい朝だね! タケル!」
タケル「ははは、そうだな・・・」
結局俺は一睡もできず目元にはクマが付いている。
ユーヤ「タケル? ちゃんと休めた? ごめんね、テント狭かったかなあ」
タケル「いやいや! そんなことない、休めてるって」
ユーヤ「ならいいけど・・・無理は禁物だよ!」
タケル「ありがと!」
タケル(慣れるまで時間がかかりそうだ・・・)
まさかユーヤにドキドキして眠れなかったなんて本人には言えまい。
ユーヤ「じゃあ朝ご飯作ろっか♪」
タケル「りょーかいっ」
タケル(はあ・・・)
ユーヤにバレないようにそっとため息を吐き、俺は朝の支度を手伝った。
〇谷
〇谷
〇谷
〇谷
俺たちが旅をしてから、数日が経った。
山を登り、たまにモンスターと戦って、野宿をする毎日はそれなりに楽しかった。
相変わらず、夜はあまり寝付けていなかったけれど。
そして今日も、行く手を阻むモンスターを切り捨てる。
モンスター「ゴォォオオオオオ・・・」
モンスターは短く断末魔をあげると、その場に倒れた。
タケル「最近、やたらモンスター出てこないか?」
ユーヤ「そうだね、今朝も1体倒したばかりなのに・・・」
イェンティ「ブルルル・・・」
イェンティも短く声を出す。コイツも不安がっているのだろう
タケル「まっ、倒せてるんだからいっか!」
ユーヤ「ふふっ、何だかタケルら・・・」
そんなたわいもない会話をしていた途中――草むらから音がした。
ユーヤ「タケル、今草むらが動いたよ!?」
ユーヤ「イェンティ、隠れて!」
イェンティ「ブルッ!」
そうユーヤが言うと、イェンティは急いで物陰に隠れる。
タケル「誰だッ!」
俺は刀を構え臨戦態勢をとる。だが──
現れたのは、無防備な姿の旅人だった
タケル「なんだ、人間か」
どうやら敵ではないようだ。俺は構えた刀を腰に戻す。
旅商人「君たちがここにいたモンスターを倒してくれたのか?」
タケル「そうだけど・・・あんた誰?」
旅商人「俺は、この先の街で商人をやってるもんだ。道を塞いでいて、帰れなくて困ってたんだ」
ユーヤ「そうなんだ~。どういたしまして♪」
旅商人「良かったら街に来てくれないか? 礼がしたい」
タケル「ユーヤ、どうする?」
ユーヤ「食料少なかったから助かるよ! 一緒に行こう?」
タケル「じゃあ行かせてもらうな。道案内頼む」
旅商人「任せてくれ!」
こうして俺たちは男に付いていくことになった。
〇草原の道
旅商人「そろそろ着くぞ~」
タケル「へえ、こんなところに村があるんだな」
あれから数時間ほど歩くと人の住んでいそうな場所が見えてきた。
村の入り口までには至る所に牧場があり、のどかな雰囲気だった。
ユーヤ「私も来るの初めて~、あ、あそこ動物がいっぱいだね」
ユーヤが指さした場所には、たくさんの羊やヤギ、牛のような動物が柵の中にいた。
ユーヤ「これだけいたら、たくさんお肉食べられるかなあ?」
タケル「ははっ、ユーヤは食いしんぼうだな」
ユーヤ「むっ、そんなことないもん! タケルだってガツガツ食べるくせに!」
プイと顔を背けるユーヤ。
タケル「わっ、機嫌直せって」
ユーヤ「うーそだよ! あはは、おもしろーい!」
タケル「くっそ~騙された!」
旅商人「ははっあんたら、仲いいな。俺までにやけちまうぜ。ふう・・・そろそろ着くぜ」
〇児童養護施設
タケル「お、結構大きいな!」
思わずため息を吐く。こんな山路の奥に場所に人が住むところがあったなんて。
ユーヤ「こんなに大きい村来るの初めてだよ! 私が住んでたとこより大きい!」
イェンティ「ヒヒーン!」
イェンティも驚いたように嘶きを上げる。
タケル「お前もびっくりするのかよ!」
タケル「って、そうだ。話戻すけど、ユーヤはどこに住んでたんだ?」
ユーヤ「この村よりもっと麓だよ。はあ~あ、何にも無い場所だから、羨ましいなあ~」
そう言うと先頭を歩いていた旅商人が俺たちのほうを向く。
旅商人「そりゃ良かった。俺らの所もそこまで都会じゃねえけど、楽しんでくれ」
旅商人「まずは、村長に帰りの報告をせにゃいかん。お前たちもそれでいいか?」
タケル「ああ。問題ないぞ」
ユーヤ「うん、お願いね」
旅商人「じゃあこっちだ。迷子になるなよ?」
俺たちは村の奥にある村長の屋敷に向かう。
〇お化け屋敷
俺たちは村の奥にある村長の屋敷に向かった。
そこはお偉いさんの家らしく、村の家よりも豪華な外装だった。
旅商人「これから挨拶に行ってくる。待ってろよ」
古びた屋敷の門をくぐり、旅商人は1人で屋敷の戸を叩く。
そして中に入っていった。
〇お化け屋敷
旅商人「村長にお前たちのことを伝えてきた。是非直接会って話がしたいとさ」
旅商人「食料や旅の準備についても、村長が融通してくれるそうだぞ」
タケル「おお~! お偉いさんに招かれたんだ、すげえなユーヤ」
ユーヤ「私もびっくり! ・・・どきどきするなあ」
旅商人「じゃあ、村長の部屋まで案内する。こっちに来てくれ」
俺たちは男に着いて、屋敷の敷居を跨いでいく。
〇上官の部屋
通された場所は執務室のような場所だった。
旅商人「んじゃ、俺はお前たちの馬を厩舎に連れていくわ。くれぐれも粗相の無いようにな」
そう言って旅商人は部屋から出て行った。そして、先程まで話をしていた、村長がこちらに向き直る。
村長「ようこそ。我が村へ。ワシが村長じゃ」
握手を求められて、俺とユーヤは応じる。
タケル「どーも」
ユーヤ「お招きくださってありがとうございます」
ユーヤは礼をする。俺も慌ててお辞儀をした。
村長「そう構えずとも良い。2人ともご苦労じゃった。何、あまりもてなしはできんが、ゆっくりせぇ」
ユーヤ「ありがとうございます」
村長「そこの女。問いに答えろ」
ユーヤ「はい! 何でしょう?」
村長「おぬしがスルトを封印する巫女で間違いないか?」
ユーヤ「・・・はい、そうです」
タケル(巫女? ユーヤがそうなのか? 封印なんて始めて聞くぞ?)
俺が頭を悩ませている間も、村長はそのまま話を続ける。
村長「左様か。まだ若いのに巫女に選ばれるなど災難だったな」
ユーヤ「あの、私は封印をするのではなく・・・スルトを倒したいと思っています」
村長「巫女、勝算はあるのか?」
ユーヤ「それは・・・」
ユーヤは口ごもる。
村長「意地の悪いことを聞いたな。すまない」
村長「この村は1番スルトの神殿に近いものでな。ワシらはあやつの脅威を身に沁みて感じている」
村長「故に貴殿らに・・・倒すというのであれば、ワシに説明せよ」
村長「如何様な方法で奴を倒すのだ?」
ユーヤ「う・・・」
タケル(何だよ、ユーヤを追い詰めて何が楽しいんだよッ!)
タケル(大体、2人で立ち向かってるってのに・・・まてよ?)
もしかしたら、この村で戦える兵士を貸してもらえないか。そんなことを思いつく。
タケル「じーさん、こっちからも質問だ。この村ではスルトと戦えるヤツはいないのか?」
村長「封印なら巫女1人で足りることだ。なら人をつける理由はどこある?」
タケル「はあ? そんな言い方ないだろっ!」
ユーヤ「た、タケル! 落ち着いてっ!」
俺は思わず声を荒げるが、村長は眉一つ動かさない。
村長「・・・それが、1番犠牲の少ない方法なのじゃ。若造には分かるまい」
ユーヤ「そう、ですよね・・・」
タケル「ユーヤ・・・」
村長「少年、ワシらだって何もしてこなかった訳では無い」
村長「ここ100年余りスルトを何度も──何度も倒そうとした。だがこの有様じゃ」
村長「歯がゆいが、ワシらにはあやつと戦う手段がもう無いのじゃよ」
タケル「・・・・・・」
村長「その代わりと言ってはなんだが、この屋敷での滞在を許可しよう。食事も物資も自由に持っていくがよい」
ユーヤ「ご協力感謝します」
タケル「・・・納得できねえけど、ユーヤがそれでいいのなら・・・」
村長「ワシは仕事に戻る。用があれば呼び出すが良い」
そう言って、村長は部屋から出て行った。
タケル「ユーヤ、さっきずっと言われてた巫女ってどういう意味なんだ?」
ユーヤ「スルトを封印する女の子をそう言うんだ・・・深い意味は無いよ」
タケル(本当にそうなのかな・・・)
もっと大事なことを、ユーヤは隠しているような・・・そんな気がする。
ユーヤ「・・・・・・」
タケル「・・・・・・」
けれど、もう話しかけて欲しくなさそうな彼女を見ると、俺は何も言えなくなっていた。
〇可愛らしいホテルの一室
タケル「久々のベッドだ! 嬉し〜!」
俺はふかふかのベッドに思わず飛び込んだ。生き返って初めてのベッドにテンションが上がる。
タケル(それにベットが別ってのがありがたい・・・)
ユーヤと密着して眠るのは、嬉しい反面本当に眠れなかったのだ。
ユーヤ「そうだね、ぐっすり眠れそう!」
タケル「出してくれた食事も美味しかったよな〜まあ、ユーヤの料理ほうが美味しいけど!」
ユーヤ「そんなこと言ったって何も出ないよ〜、でもお肉出なかったのは残念だね」
タケル「ほんとユーヤは肉好きだよな!」
ユーヤ「だって美味しいんだもん♪」
タケル「たしかに、魚ばっかだったよな。牧場に牛っぽいのとかいたのになんでだろ?」
この村は牧畜が盛んなように思えるのだが、肉料理は一切出てこなかった。
ユーヤ「不思議なこともあるんだねぇ・・・」
首を傾げるユーヤ。俺もうんうんと頷く。
〇可愛らしいホテルの一室
タケル「なっ、何だ!? 地震か!?」
地面からの衝撃で、明かりが消えてしまった。
ユーヤ「・・・もしかして、スルトかも」
タケル「んなわけ・・・」
俺は近くの窓をのぞき込むと――。
タケルとユーヤの距離感の変遷が見ていて楽しくなりますね。今やベッタリなのに、スルトの話になると変わる空気感。2人の関係性とスルト討伐、双方とも楽しめます!