怪しき人よ(脚本)
〇学生の一人部屋
ごく普通の女子高生、川鷺京子は、友達の怪人ダブをもとの世界に戻すために、その方法を探っていた。
研究者やヒーローに狙われながらも、京子はダブを元の世界に帰すことに成功した。
しかし、今度は京子がダブのいる世界に迷い込み、戻れなくなってしまったのである。
そして今、二人はダブの部屋で、窮地に立たされていた。
「ダブ!何を隠しているんだ!」
ダブ「と、とうちゃん!?」
ダブ父「何を隠していると聞いている!!」
ダブ(やばい、このままでは京子が、解剖や実験の被検体にされてしまうかもしれない、)
ダブ(あの時のおいらと同じで...)
ダブ父「さっさと見せなさい!」
ダブ「うわっ!!」
ダブ父「...なんだ、この生き物は...?」
京子(はわわわ、やばいよぉ、ダブゥ...)
ダブ父「私は昔から言っているよな、生き物を飼うには責任が伴うと」
ダブ父「お前はこんな大きな生き物を家で飼う気だったのか?」
ダブ「え?」
京子「ふえ?」
ダブ父「私もお前がいなくなった時は、どんなに責任を感じたか」
ダブ父「私が見ていない間に誘拐されたのではないかと」
ダブ父「心配で心配でたまらなかった、それも胸が張り裂けるようにな」
ダブ父「私はお前にそんな気苦労を背負ってほしくないんだよ」
ダブ「・・・いやその、解剖とかしないの?」
ダブ父「解剖?私は内科医だから外科のことは知らん」
ダブ「・・・父ちゃん、ちょっと待ってね」
ダブ父「え、あ、うん」
ダブ「・・・なんか思ってたのと違う」
京子「私もだよ、てっきりダブみたいに研究の対象になって追いかけられるのかと思ってたもん」
京子「もしかしてドブド族って、意外とそこんところ緩かったりするのかな、その、異種族関係的な」
ダブ「そういえば結構ドブド以外の住人いるから、確かに緩いのかも」
ダブ父「なんだ、その生き物は喋れるのか、ダブ、その生き物にはもう名前は付けたのか?」
ダブ「いや、京子はそういうんじゃなくて...」
ダブ父「京子というのか、となるとメスか、メスだと子供生まれて連れてくるからなぁ、父さんが昔飼ってた猫もそれで大変だったよ」
京子「ダブ、一旦飼われてるってことにしよ、多分説明面倒なやつだよ、私たち色々あったし」
ダブ「うーん、そうだね、仕方がないか」
ダブ「父ちゃん、俺責任もって飼うよ! 絶対に京子を見捨てないから!」
京子「ダブ!?」
京子(急にかっこいいこと言うから、良いんだよね。ダブは)
ダブ父「ダブ、本気なんだな」
ダブ「うん、おいら本気だよ」
ダブ父「よろしい、ダブの本気をないがしろにするのは私も本意ではなんでな、」
ダブ父「絶対に見捨てるんじゃんないぞ」
ダブ父「京子、君は今日から私たちの家族だ!」
こうして、京子はダブの家で居候することになった。
〇アパートのダイニング
京子が居候に決まった翌日、タブ宅では京子歓迎パーティーが開かれていた。
ダブ母「うふふ、京子ちゃん、ダブと帰ってきてくれてありがとうね」
京子「い、いえいえとんでもない!」
ダブ母「今日は恩人をもてなすパーティーよ、ご近所さんも呼んだから皆でワイワイやりましょ!」
京子「え、ご近所さん!?」
炎刃「お邪魔するよダブ!帰ってきたんだね」
イノマル「俺も来たよ!ダブ久しぶり!元気でよかったよ!」
ダブ「二人とも来てくれたんだね!ありがとう!」
イノマルと炎刃は、ダブの昔からの友達なのだ。
京子(はわわわわ、増えちゃったよぉ、ダブのご両親は受け入れてくれたけど、他の人はどうなのか分からないよぉ)
イノマル「おりょ、この子がダブを帰してくれた御仁かな?」
炎刃「へぇ、どんな種族なんだろうなぁ、」
京子(うわぁ、視線がぁ、)
イノマル「・・・」
炎刃「・・・」
イノマル「ま!ダブを助けてくれたんなら、きっと良いやつなんだろうな!」
炎刃「だろうな!まぁゆっくりしてってくれよ!お嬢さん!」
京子「え?」
ダブ「そうだよ!京子は本当にいい人なんだ!」
京子「本当だったんだ、色んな怪人がいるから、私みたいな「怪しい人」でも受け入れられるんだ!」
イノマル「怪人は皆怪しいからな!いちいち見たことない奴を怪しむなんて面倒だ!」
炎刃「そういうこったな!はっはっは!」
ダブ「良かったぁ、それじゃ気を取り直してパーティーだ!」
その日のダブ宅では、ご近所迷惑な大騒ぎが一晩中続いたという。
〇池袋西口公園
京子が迷い込んで数日が経過。
二人は日々元の世界に戻る手がかりを探していたのだが、一向に見つからないでいた。
京子「ゲート、ないねぇ」
ダブ「おいらが迷い込んだ時や、帰れた時にもゲートはあったんだけどなぁ」
京子「そういえばゲートってなんでできたんだろう?何か発生する条件でもあるのかな?」
ダブ「条件かぁ、そういえばゲートが出る時っていえば、あの人が一緒にいたような」
京子「あー、あの変な格好の人ね、いちいち邪魔してくるから、ゲート見つかっても入れなかったからなぁ」
京子「でもここは人間の世界じゃないし、ここまで来ることはないでしょ」
ダブ「そうだね、おいらあの人苦手だからそのほうがいいや」
「キャー!誰かー!!」
京子「何があったんだろう!?」
ダブ「行ってみよう!」
〇街中の道路
ヒーローハヤブサ「貴様、怪人だな、京子をどこへやった!」
道端の少女怪人「わかんないよぉ、京子って誰ぇ?」
ヒーローハヤブサ「貴様まさかしらばっくれる気か?」
ヒーローハヤブサ「怪人に加担するとは、いくら見た目がか弱い少女を真似ようと怪人は怪人、成敗してくれる!」
ダブ「やばいよ、あの人来ちゃってる!」
京子「はぁ!?もうしつこいなぁ、ダブ、合体やるよ急いで!女の子が危ない!」
ダブ「あれやるのかぁ、分かったよ、しんどいけど頑張るよ」
京子はダブと合体することで、強靭な合体怪人シラサギに変身することができるのだ。
道端の少女怪人「誰かー!!!」
シラサギ「あんたまた邪魔する気なの!?いい加減しつこい!」
ヒーローハヤブサ「なっ!?貴様はシラサギ!?なぜここに!?」
シラサギ「どうでもいいでしょそんなこと!こんなところに来て女の子いじめて!」
ヒーローハヤブサ「ひ、人聞きの悪いこというな!俺は人を探していて──」
シラサギ「人探しのためにあんた女の子泣かせるんだ、」
シラサギ「そういや人間の世界では正義の味方とか自分で言ってたけど、」
シラサギ「正義の味方は怪人なら女の子でも退治しちゃうんだ、」
シラサギ「それがあんたの正義なんだー!?へぇー!!」
ヒーローハヤブサ「う、うぐぅ...。正義はそんなんじゃない!だが怪人は怪人だ!やがては人に牙をむくんだぞ!」
シラサギ「怖かったねぇ、大丈夫だった?やなことされなかった?」
道端の少女怪人「あの人私をぶとうとしたんだよぉ...しくしく」
シラサギ「だってさ!消えろクソヒーロー!」
ヒーローハヤブサ「えちょまっ!」
シラサギ「水龍!」
ヒーローハヤブサ「きょーこー!絶対に連れて帰るからなぁー!」
突如出現したゲートに、吹っ飛ばされたヒーローハヤブサが吸い込まれるように入っていった。
シラサギ「あれって!?」
京子「あれってゲートだったよね!?」
ダブ「やっぱりあの人が来たこととゲートが出たことは、何か関係があるかもしれないね」
ダブ「おいらの見立て通りだ!」
ダブ「...って、あのゲートに入ったら京子戻れたんじゃ、しかもあの人「きょーこー」って言ってなかった?」
京子「いやほら、「強行」って言ったんだよ、だいぶ強引な人だし」
京子「それに「京子」だとして、私あの人と戻りたくないよ、戻って何されるかわからないし、身の危険を感じる、怪しい人だもん」
ダブ「怪しい人って、怪人はおいらだけどね!!」
道端の少女怪人「おねぇちゃんありがとう!」
京子「ケガなかった?大丈夫?」
道端の少女怪人「大丈夫だよ!」
道端の少女怪人「だけどあの人誰なんだろう?お姉ちゃんのお友達なの?」
京子「いいや、あれは、んー・・・」
京子「あ!そう怪人だよ、怪しいお兄さんだったでしょ?」
道端の少女怪人「怪しかった!怪人なら、いつか意地悪やめてお友達になれるかな...?」
京子「・・・」
京子「そうだね、きっとあいつが心を改めたら、友達になれるかもしれないね」
京子の元の世界に、安全に帰るための生活は、今後も続くのだった。
〇研究所の中枢
一方そのころ、人間世界ではヒーローハヤブサがゲートから帰還していた。
ゲートの先では、ハヤブサのアジトに繋がっていた。
ヒーローハヤブサ「はぁ、はぁ、」
駿介「いや無理、ハヤブサ強すぎ!なんでいるんだよあいつ!」
博士「いやはや、京子君がいたところには必ず現れていた、あのハヤブサがいたとなれば、」
博士「もしかしたら京子君もいるかもしれないね」
駿介「博士、ポジティブシンキング過ぎるよ、」
駿介「京子がいたとして、あのハヤブサをどうやって打倒すれば」
博士「それにしてもワンパンて、マジ?弱くね?わしが調整ミスってたかな?わしのせいにする?現実逃避する?」
駿介「すみませんって!強化率25%が俺の限界なんですよ!」
博士「いいや、駿介の体もパワードスーツに慣れてきているころだから、」
博士「ここいらで強化率を上げてみてもいいと思っている」
駿介「ホントっすか!?おなしゃす!俺絶対に京子を取り戻さないといけないです!」
博士「分かっておる、君の熱意はきっと京子君に届くよ。そのサポートは全力でさせてもらう」
博士「今は休息したまえ、飯は冷蔵庫に入ってるからチンしてね」
駿介「しゃっす!」
駿介(絶対に取り戻す。待っていろよ京子)
博士「さて、京子君がいることは確定したし、次のステップかな」
京子が、安全に帰れる日はまだ、遠い。
映画の「猿の惑星」を思い出しました。「怪しい人」という存在があるわけではなく、自分たちと違う存在を「怪しい人」と呼ぶわけだから、場所や立場が変われば誰でも「怪しい人」になりうるわけで。京子とダブが対等に共存できるような場所があってもいいと思うのですが、理想論ですかね。
私も動物を飼うときに反対されたものです。
命の大切さを説かれたのを思い出しました。
それはさておき、ゲートの手掛かりを早めに入手して帰れるといいですね!
京子が怪人達から酷い扱いを受けない事はいいことです。怪人の世界も何だか人間界のように生活があるんですね。ホームパーティとかウケました。