8.変化にもいろいろあるようです。②(脚本)
〇魔法陣のある研究室
???「おおっ、いらっしゃーい! 待ってたよ、討伐部の諸君★」
〇魔法陣のある研究室
玲奈「ええっと、あなたは?」
???「ふっふっふー。よくぞ聞いてくれました!」
???「観崎家の名誉を挽回するため、日々怪異の真実を突き詰めて、ついに怪異研究最高峰まで上り詰めた天才科学者!」
観崎「研究部部長にしてこの研究室の責任者、観崎希美とはアタシのことだよ★」
「テンションが高い・・・!」
玲奈「えっと、観崎さん。私達、身体検査を受けに来たんですけど、担当者ってもしかしてあなたですか?」
観崎「うんうん、そもそも検査を提案したのはアタシだからね~」
玲奈「えっ、須佐川さんじゃなかったんです?」
観崎「そう。実は例の管野少年の事件で、いくつか気になる点があってね」
観崎「色々調査した結果、被害者の人間は全員幻術にかかっていた事が分かったんだ」
酒巻「幻術・・・」
観崎「それから、管野少年の身体からも他の怪異の妖力が検出された」
観崎「茨木ちゃんの証言から、おそらく妖力を暴発させる術をかけられてたんだと思う」
観崎「以上から、先日の件の真犯人は別にいると推定される。しかもまだ特定ができない。イコール、相手はかなりの強敵ってこと」
観崎「今後そいつと接触することになれば、間違い無く激しい戦いになる・・・」
観崎「だから今のうちに色々調べといた方がいいって須佐川ちゃんに言ったんだよ」
酒巻「そんな、あの件がまだ解決してなかったなんて・・・」
観崎「まあ、真犯人は別にいる、なんてよくあるパターンだし。そんな落ち込まないでいいって~」
観崎「今できる事をやれば良い。って事で、早速実験──違った、身体検査を始めるよ!」
玲奈「あの、今不穏な言葉が聞こえた気がするんですが・・・?」
観崎「気のせい気のせい! さあさあ、早くインカム付けてあの装置の中に入って!」
〇研究装置
観崎(通信)「やっほー、聞こえる?」
玲奈「問題ありません」
観崎(通信)「おっけー! それじゃあ、ポチッとな★」
グオォォオオ・・・!
酒巻「これ、ヤマタノオロチ──!?」
観崎(通信)「の、ホログラムだね。結構良くできてるでしょ?」
観崎(通信)「この装置は一種の戦闘シミュレーターかな。それで、2人が戦ってるところをこっちで観察させて貰う」
観崎(通信)「霊力とか諸々測るから、全力で戦っちゃって!」
観崎(通信)「──という訳で、バトルスタート★」
〇研究装置
ガァアア!!
酒巻「うぁっ!?」
酒巻「──ああ、身体検査って聞いてたのに、まさかこんな事になるなんて!」
玲奈「これじゃ体力検査じゃない! でも、こうなったらやるしかないわ──」
玲奈「《妖魔調伏》!」
酒巻「そうだね──羅刹剣、抜刀!」
酒巻「源流奥義──《花の剣・焔華》!」
〇魔法陣のある研究室
観崎(ふーん。さすが須佐川ちゃんが例のプロジェクトに選んだ2人。結構やるじゃん)
観崎「2人の霊力はどうなってる?」
研究員「はい。まず酒巻悠一ですが、こちらは保有量500、放出率70%、総合ランクはB+といったところでしょうか」
研究員「陰陽師としては平均以下だと思うんですが、どうしてあれだけ戦えているのでしょう・・・」
観崎「あの子の家──源家は、自分の霊力を増幅させてくれる特殊な剣を媒介にして術を使うんだ」
観崎「だから本人の霊力が低くても、それ以上に戦えるって訳」
観崎(でも酒巻ちゃん、怪異「だけを」斬るあの技はまだ使えないんだね)
観崎(それに加えて、須佐川ちゃんの言う通りあの子が「アレ」なら、潜在能力とかあるかもだし・・・)
観崎(これは伸ばす余地ありかな)
観崎「次、狐守ちゃんの方は?」
研究員「えーっと、狐守玲奈は・・・」
研究員「え?」
観崎「ん、どしたの?」
研究員「いやその、霊力だけじゃなく妖力も表示されて・・・」
研究員「それを除いても放出率10%の総合ランク特級SSSSなんて、何かの間違いでは?」
観崎「ほんとだね。おかしいな、この装置先週整備したばっかり・・・」
観崎「──いや、待って」
観崎(狐守、狐守・・・)
観崎(そうか! キミがあの「キツネちゃん」か!)
観崎(はぁ、まさかあの子をプロジェクトに参加させるなんて。須佐川ちゃんも何考えてるんだか)
〇研究装置
グルルルル・・・!!
玲奈「はぁ、はぁ・・・ まだ、終わらないのかしら・・・」
酒巻「もうそろそろ、体力の限界・・・」
観崎(通信)「はーい、お疲れ様。 ここらでしゅうりょーう!」
「──!!」
観崎(通信)「ドアのロックは外したから、戻ってきていいよ~」
〇魔法陣のある研究室
観崎「ありがとう! お陰で良いデータがとれたよ★」
玲奈「・・・」
玲奈(やっぱり私達、検査じゃなくて実験に協力させられたんじゃ・・・)
観崎「今日の結果は報告書にして後日須佐川ちゃんに渡しとくから。気になるならあの人から聞いてね」
観崎「それじゃあ、今日はもう帰って大丈夫だよ。酒巻ちゃんに、キツネちゃん?」
〇薄暗い廊下
酒巻「嵐みたいだったね・・・」
玲奈「ええ、なんだか凄く疲れたわ」
玲奈(しかも最後の「キツネちゃん」ってなんなのよ。ツッコむ気力もなかったけれど)
酒巻「時間もかなり経ったみたいだね。もう18時を回ってる」
酒巻「これから討伐部に戻って、カバン取って、茨木さんと帰って・・・」
酒巻「・・・はぁあああ・・・」
玲奈「・・・酒巻くん。検査前も思ったけど、やっぱり何かあったでしょう」
玲奈「なにか仕事に失敗した? それとも・・・茨木さんがらみ?」
酒巻「うっ・・・まあ、そうだね」
玲奈(なるほど。さすがの酒巻くんも茨木さんとの生活に思う所があったのね)
玲奈(少しでもリフレッシュできたら──)
玲奈(──そうだわ!)
玲奈「ねえ、酒巻くん。今日の夜、空いてる?」
酒巻「え? 一応何もないけど・・・」
玲奈「なら、飲みに行きましょう! 人間同士で!」