こころクリーニング

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6話【行ってらっしゃいませ】(脚本)

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〇綺麗なダイニング
  先ほどまで、ゴミ屋敷と化していたこころ部屋は整頓され、見違えるように綺麗になっていた。
間宮燈「あっ!部屋が・・・」
暮内亜紋「間宮様のこころ部屋にある負の感情が全て処分されました」
暮内亜紋「これにて、こころクリーニングは全ての工程を修了いたしました」
間宮燈「終わったんだ・・・」
  燈は安堵に満ちた表情をしていた。
暮内亜紋「では間宮様!こころクリーニングは終了いたしましたので、ここからの間宮様の選択はふたつです」
間宮燈「ふたつ?」
暮内亜紋「まずひとつめが、このまま成仏されるか」
間宮燈「成仏・・・」
暮内亜紋「そしてふたつめが、再び生き延びて自分の為に自由に生きるか」
間宮燈「自由に・・・」
暮内亜紋「しかしもう、間宮様の答えは決まっていますよね?」
間宮燈「私は・・生きたいです!普通じゃないなんて言われたとしても、恥ずかしがらず、自分を責めず、堂々と自由に生きたいです!」
暮内亜紋「こころクリーニング前より、自信に満ちた、美しい表情になられましたね!そちらの方が素敵ですよ!間宮様!」
間宮燈「あ、ありがとうございます・・・」

〇洋館の廊下
  燈は、暮内に連れられ、蘇生の間なる場所へ通づる廊下を歩いていた。
間宮燈「あの・・・暮内さん」
暮内亜紋「どうかされましたか?」
間宮燈「その、私みたいな人って、いっぱい居るんですか?」
暮内亜紋「間宮様みたい・・・とは?」
間宮燈「その・・・自殺しちゃう人・・・」
暮内亜紋「そうですね・・・守秘義務がございますので、あまり多くは語れませんが」
暮内亜紋「やはり多くいらっしゃいますね・・・」
間宮燈「そうですか・・・」
暮内亜紋「どうかされたんですか?」
間宮燈「いやぁ・・・ただ・・・」
間宮燈「私も将来的に、暮内さんみたいに、誰かを助けることができる仕事をしたいなぁ・・・なんて」
暮内亜紋「そうですかぁ」
間宮燈「なんか暮内さん・・・嬉しそうですね?」
暮内亜紋「それは嬉しいですよ」
暮内亜紋「間宮様が人をお救いする職業につきたいと、仰ってくれて、感激していますよ」
間宮燈「お、大袈裟ですよ・・・」
暮内亜紋「間宮様なら出来ますよ!」
暮内亜紋「こんなに心が清らかなんですから」
間宮燈「暮内さん・・・」
暮内亜紋「陰ながら応援させていただきますよ」
間宮燈「あ、ありがとうございます・・・」
暮内亜紋「さぁ!着きましたよ!蘇生の間です!」

〇神殿の広間
  ──蘇生の間──
暮内亜紋「これより、間宮燈様の蘇生の儀式を始めさせていただきます」
暮内亜紋「準備はよろしいですか?」
間宮燈「はい!」
  燈は暮内に言われるがままに、祭壇の上に仰向けで横たわる。
暮内亜紋「では間宮燈・・・お別れですね」
間宮燈「暮内さん!」
  燈は起き上がり、暮内に抱きつく
暮内亜紋「ちょ、間宮様!」
間宮燈「私・・・暮内さんのおかげで、生きる希望が持てました」
間宮燈「ありがとうございます!」
暮内亜紋「間宮様・・・」
間宮燈「暮内さんの事・・・絶対に忘れませんから・・・」
暮内亜紋「間宮様なら大丈夫ですよ!自身を持ってください!」
間宮燈「はいっ!」
暮内亜紋「では間宮様・・・」
暮内亜紋「いってらっしゃいませ!」
  暮内は燈を見送ると──
暮内亜紋「申し訳ありません・・・間宮様・・・」
暮内亜紋「こころクリーニングが終わると」
暮内亜紋「間宮様の記憶からは、私の存在は消えてなくなるんですよ・・・」
暮内亜紋「でも間宮様ならきっと大丈夫だと信じております・・・」
暮内亜紋「どうかお元気で・・・」

〇病室のベッド
間宮燈「う、うー・・・ん」
  昏睡状態だった燈は、病院のベッドの上で目を覚ました。
間宮燈「こ、ここは・・・病院?」
間宮椿「あ、燈・・・」
間宮燈「お母さん・・・」
間宮椿「燈!」
  椿は燈を力強く抱きしめる。
間宮燈「お母さん・・・ごめんなさい・・・」
間宮燈「私・・・私・・・」
間宮燈「うわぁぁぁぁぁん!ごめんなさい」
間宮椿「いいのよ!いいのよ!」
間宮椿「お母さんこそごめんなさいね!」
間宮椿「燈が一人で、こんな苦しんでたのに・・・全然気づいてあげれなくって・・・」
間宮燈「ううん・・・お母さんは・・・悪く無いよ」
間宮椿「燈!もう、あんな学校行かなくていいっ!」
間宮燈「お母さん・・・」
間宮椿「燈は私のそばにいて・・・」
間宮燈「お母さん・・・私は大丈夫だから・・・」
間宮椿「ど、どうしたの?急に・・・」
間宮燈「私ね、眠ってる間・・・夢を・・・見てたの」
間宮椿「夢?」
  燈は母に、昏睡状態の時に見ていた夢について話して聞かせた。
間宮燈「その部屋には私のこころがあってね──」
間宮燈「要らない負の感情を処分するとね──」
間宮燈「最後に部屋が綺麗になってね──」
  母は、燈の夢の話を黙って聞いてくれた。
  ただただ、暖かく見守って聞いてくれた。
間宮燈「でね!でね!その人が言うの!」
間宮燈「私は自分の為に自由に生きるべきだって!」
間宮椿「そう・・・!素敵な人ね!」
間宮燈「うん!」
間宮燈「顔にはモヤがかかってで、どんな顔してる人かは分からなかったんだけど」
間宮燈「なんか、こう、生きる希望っていうかな?」
間宮燈「なんか生きたい!って、そう思えたの!」
間宮燈「だからお母さん・・・」
間宮燈「私・・・もう、誰にも負けないから!」
間宮燈「お母さんに心配かけないから!」
間宮椿「なんか知らないうちに、大人になったわね!燈!」
間宮燈「えへへ♫そうかなぁ♫」
間宮燈「だから・・・私・・・」
間宮燈「学校は辞めずに、頑張って行ってみようとおもうんだ!」
間宮椿「が、学校に?」
間宮燈「うんっ!」
間宮椿「で、でも燈・・・」
間宮椿「貴方がこうなったのは・・・」
間宮燈「私は大丈夫だから!」
間宮燈「誰に何言われたってヘッチャラ!」
間宮椿「・・・・・・」
間宮椿「そう・・・」
間宮椿「燈がそう決めたのなら、無理には止めないわ」
間宮燈「ごめんね・・・ワガママ言って」
間宮椿「でも!これだけは約束して?」
間宮燈「約束?」
間宮椿「一人で抱え込まずに、お母さんに言うこと!わかった?」
間宮燈「うん♫約束する♫」
  それから数日後、何事もなく病院を退院した燈は、学校への登校を再開させた。

次のエピソード:最終話【認められる個性】

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