最終話【認められる個性】(脚本)
〇教室
燈の登校初日。
当然、燈が自殺未遂をしたという話は学校中で話題になっていた為
燈がいつもの服装で登校してきた事に、クラスメイトは驚きを隠せない様子だった。
いじめっ子A「あんたも懲りないよねぇ」
いじめっ子C「このまま学校辞めればよかったのに」
いじめっ子B「そんなに私たちにいじめられたいの?」
間宮燈「私・・・何言われても平気だから!」
いじめっ子C「はぁ?」
いじめっ子B「どうしたの・・・急に・・・」
間宮燈「好きなだけ、何とでも言ってよ!」
間宮燈「私・・・周りの目を気にせず、自由に生きるって決めたから!」
いじめっ子A「はぁ?何訳の分からない事言ってんの?」
間宮燈「私は変わったの!」
いじめっ子C「何・・・こいつ・・・」
いじめっ子A「また殴られたい?」
間宮燈「好きにすれば?」
いじめっ子A「はぁ?」
いじめっ子C「頭沸いた?」
いじめっ子A「わかったよ!また殴ってやるよ!」
いじめっ子B「ちょ!教室はまずいって!担任くるから!」
担任教師「こら!予鈴なってるわよ!席につきなさい!」
いじめっ子A「クソ・・・」
担任教師(間宮さん・・・)
〇学校の廊下
担任教師「間宮さん・・・ちょっといいかしら?」
間宮燈「なんですか?先生!」
担任教師「貴方、相変わらずその格好はやめないつもり?」
間宮燈「はいっ!やめません!」
担任教師「貴方ねぇ・・・」
間宮燈「私は自由に生きるんです!」
間宮燈「じゃあ!先生!また明日!」
担任教師「ちょっと!間宮さん!待ちなさい!」
担任教師「・・・・・・」
担任教師「なんなの・・・あの子・・・」
〇オフィスビル前の道
間宮燈「なんか人生が変わったみたい!」
間宮燈「自分のために自由に生きるって、こんなに素晴らしい事だったんだ!」
間宮燈「私・・・なんか幸せ!」
間宮燈「でも何でだろう?何でこんなに自信がみなぎる感じがするんだろ?」
間宮燈「やっぱり夢の中で男の人に言われた言葉のおかげなのかな?」
間宮燈「顔は思い出せないけど、不思議と言ってくれた言葉は覚えてるんだよね」
間宮燈「まぁ、いいっか♫」
燈の記憶からは、暮内亜紋の面影は消えつつあった
それと同時に燈の学園生活も、より明るく変わりつつあった。
そんな燈の身の回りで、ある変化が起き始めたのは、これより数日後の事だった。
〇大きな木のある校舎
間宮燈「おはよ!」
いじめっ子A「朝っぱらからウゼェなぁ」
いじめっ子B「でも何かアイツ・・・最近変わったよね」
いじめっ子A「はぁ?変わった?」
いじめっ子B「なんかさぁ、前に比べて、明るくなったって感じ?」
いじめっ子A「なにそれ・・・ウザさが増しただけじゃん!」
〇教室
同級生A「あの・・・間宮さん・・・」
間宮燈「あ、おはよ・・・」
間宮燈「って!どうしたの?その服!」
同級生A「へ、変かな?」
間宮燈「ううん!全然!すごく似合ってる!」
同級生A「あ、ありがとう・・・」
間宮燈「でも急にどうしたの?イメチェン?」
同級生A「実は、昔からこういう服に憧れてたんだけど」
同級生A「着て来る勇気がなくって・・・」
同級生A「でも、なんか、さ・・」
同級生A「自分の個性を恥ずかしがらずにさらけ出してる間宮さんの事見てたら」
同級生A「何か勇気出てきて・・・」
間宮燈(そっか!みんな同じだったんだ)
間宮燈(みんな同じように悩んでたんだ・・・でも、勇気がなくて、一歩を踏み出せなかったんだ・・)
同級生B「私のはどうかな?」
間宮燈「うわぁ♫めっちゃ可愛い♫」
同級生B「私も昔から着てみたいって思ってたんだぁ」
間宮燈「着たい服着るのが一番いいよ!」
同級生B「なんか、間宮さんが言うと、説得力が違うね・・・」
間宮燈「えへへ♫そうかな?」
同級生C「おはよう!」
間宮燈「うわぁ♫お姫様みたい!可愛い!」
同級生C「思い切って着てみたんだ!」
同級生B「すごい可愛い!」
間宮燈「どこで買ったの!教えて!」
同級生C「えっと、駅前の──」
その日を境に──
この学校では──
明るい服で登校する生徒が急増したという──
燈の「普通じゃない」が「普通」になる日は、そう遠くはないのかもしれない。
〇教会の控室
暮内は、巨大モニターに映し出されている燈を見ながら、優しげな表情で微笑んでいる。
暮内亜紋「間宮様・・もう大丈夫ですね・・」
暮内の後輩「彼女・・大丈夫ですかね・・・」
暮内の後輩が、暮内に燈の今後を心配する言葉を投げかける。
暮内亜紋「大丈夫ですよ!見てください!あの間宮様の顔を」
モニターに映る燈は、こころクリーニングをする前の、周りの普通に押し潰され
自分の個性を殺していた時とは正反対に、自信に満ちた表情をしていた。
暮内亜紋「間宮様なら大丈夫!もう既に間宮様の価値観は、周りに受け入れられつつあります」
暮内亜紋「これは間宮様の自信につながります!我々が心配する必要など、もうありません」
そういうと、暮内なPCのマウスを動かし、モニターの映像を削除した。
暮内の後輩「え?消しちゃうんですか?」
暮内亜紋「もう必要ありませんからね」
暮内の後輩「おそらく、もう彼女の記憶からは、暮内さんの面影は消えているでしょうしね」
暮内亜紋「それもありますが、間宮様にはもう、この場所は必要ないでしょうし」
すると、壁に埋め込まれたスピーカーから、音声が流れて来た。
こころ部屋待合室に、新たな救済対象者が確認されました!
近くにいる救済人はただちに──
暮内の後輩「また、ですか・・最近多くないですか?」
自殺者のあまりの多さに、後輩は落ち込んだように、ガックリと肩を落とす。
暮内亜紋「愚痴を言っている時間はありませんよ?」
暮内亜紋「この世界にはまだ、我々の手助けが必要な人々が、星の数ほどいるんですから」
暮内の後輩「そうですよね!我々がしっかりしないと!」
暮内亜紋「その通りです!」
暮内は、スーツを小慣れた手つきで直す。
暮内亜紋「さぁ!行きますよ!こころクリーニングの時間です」
暮内は、長い渡り廊下へ向かって歩いていく。
END
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