4話【屈辱を味わった】(脚本)
〇荒れたホテルの一室
暮内亜紋「では、間宮様・・・」
間宮燈「はい!」
暮内亜紋「こちらの感情はどうなさいますか?」
暮内が指差したのはベッドだった。シーツはビリビリに裂け、木枠はボロボロに腐食していた。
間宮燈「ベッド・・・に見えているだけで、実は感情・・・でしたね・・・」
暮内亜紋「その通りでございます」
間宮燈「どんな感情なんですか?」
暮内亜紋「こちらは──」
間宮燈「あっ!待ってください!」
暮内亜紋「はい?どうかなさいましたか?」
間宮燈「いや、その、また記憶が蘇るのかと思うと・・・」
間宮燈「なんというか、心の準備が・・・」
間宮燈「すいません・・・」
燈は、また嫌な記憶が蘇ってしまうのではないか?と内心、恐怖を抱いていた。
暮内亜紋「間宮様が謝る必要などございません」
暮内亜紋「時間はたっぷりありますので、自分のペースでいいんですよ」
間宮燈「はい・・・」
間宮燈「すぅー・・・」
間宮燈「ふぅー・・・」
燈はゆっくりと深呼吸する。
間宮燈「・・・・・・」
間宮燈「暮内さん!もう大丈夫です・・・」
間宮燈「どんな感情なのか教えてください・・・」
暮内亜紋「かしこまりました」
暮内亜紋「こちらの感情は──」
暮内亜紋「【屈辱を味わった】という感情でございます」
〇白
再び燈を眩い光が包み込み──
記憶を蘇らせる──
〇教室
燈が教室に入ると、クラスメイトがざわついていた。
いじめっ子A「よっ!ビッチの登場!」
いじめっ子B「あっ!本当だ!ようビッチ!」
間宮燈「ビッチ?」
燈自身、意味がわからなかった。
燈は今まで、男性と付き合った経験はなく、バージンだったからだ。
間宮燈「ビッチってなに?」
いじめっ子A「アレ!アレ!」
いじめっ子B「黒板見なよ!」
間宮燈「え?黒板って・・・」
クラスメイトから黒板を見ろと伝えられ、燈は黒板の方向へ振り向く。
間宮燈「な、なに・・・コレ・・・」
黒板には、燈が裸になり、男性と性行為をしている写真が何枚も貼り出されていた
間宮燈「え・・・私?」
いじめっ子A「お前ってさぁ、こんな大胆な事するヤツだったんだ!」
いじめっ子B「チョー意外なんですけど!」
間宮燈「これ・・・私じゃ無い・・・」
おそらく、アイコラや、ディープフェイクなどと言われる加工が施された写真だったのだろう
体格など、燈とは似ても似つかない物ばかりだった。
いじめっ子A「いやいや、明らかにお前の顔じゃん!」
いじめっ子B「もしかして、私たちに危ない事させるつもりだったりして」
間宮燈「いや、だから、コレは・・・」
いじめっ子A「まじキモイんだけど・・・」
間宮燈「・・・・・・」
いじめっ子B「私たちの学園生活を汚さないでくれる?」
間宮燈「だからコレは私じゃないんだってば!」
間宮燈「誰かがイタズラで──」
いじめっ子A「ちょっと聞いた?コイツ人のせいにしてんだけど!」
間宮燈「あ、いや・・・これは・・・」
いじめっ子B「おい!おい!ふざけんなよ!」
間宮燈「いや、だから・・・」
いじめっ子A「誰のイタズラだって!え?言ってみろよ!」
間宮燈「うぐ・・・」
いじめっ子B「証拠もなしにクラスメイト疑うとか有り得ないんだけど!」
燈は、あまりの辛さに、教室から逃げ出す。
いじめっ子A「あははは!逃げた!逃げた!あははは!」
いじめっ子B「あんなヤツ居ない方がいいもんね!あははは!」
〇学校の廊下
間宮燈「酷い・・・酷いよ!みんなして!」
間宮燈「あんなの・・・私じゃないのに・・・」
間宮燈「何で信じてくれないの?」
〇荒れたホテルの一室
間宮燈「・・・・・・」
暮内亜紋「間宮様・・・大丈夫ですか?」
間宮燈「は、はい・・・」
間宮燈(大丈夫だって思ってたけど、やっぱり思い出すの・・・辛い・・・)
間宮燈「すいません・・・やっぱり・・・まだ慣れなくて・・・」
暮内亜紋「間宮様・・・こちらをお使いください」
暮内は、涙を流す燈に、ハンカチを差し出す
間宮燈「あ、ありがとうございます・・・」
暮内亜紋「間宮様・・辛く苦しいかもしれません。しかし、これもこころの清掃のため!しばしご辛抱ください!」
間宮燈「は、はい・・・」
〇荒れたホテルの一室
それから燈は、暮内の協力のもと、次々と 美容な感情を処分していった
【屈辱を味わった】をはじめ、【苦しかった】【悲しかった】【切なかった】
様々な感情を処分していった。
そしてこの部屋に残る負の感情は、残すところ、あとひとつという所まで来ていた。
また、このこころ部屋は、燈のこころと完全にリンクしているため、感情を処分すればするほどに、燈のこころは軽くなっていった。
燈の表情からも、時折笑顔が垣間見えるようになっていた。
暮内亜紋「こちらはが最後の感情ですね・・・」
間宮燈「な、なんか・・空気が重く感じますね」
その感情は、肉眼で認識できない燈にさえも、その重苦しい空気が伝わるほどに、負のオーラに満ちていた。
暮内亜紋「そうでしょうね。なにせこの感情は間宮様が自殺なされた、最も大きな要因ですからね」
間宮燈「ど、どんな感情なんですか?」
暮内亜紋「伝えてもよろしいんですか?」
間宮燈「え?」
暮内亜紋「心の準備はどうですか?大丈夫ですか?」
間宮燈「ちょっと不安だけど・・・大丈夫です・・・」
暮内亜紋「かしこまりました」
暮内亜紋「こちらの感情は──」
間宮燈「ゴクリ──」
生唾を飲み込む燈。
暮内亜紋「【死にたい】という感情になります」
間宮燈「死にたい・・・」
〇白
再び燈を眩い光が包み込み──
記憶を蘇らせる──