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きせき

エピソード30-白色の刻-(脚本)

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〇怪しい研究所
白城百合香「・・・・・・」
白城百合香「(これは確かに毒だった。しかも、調べたところによると、飲ませるだけじゃなくて)」
白城百合香「(例えば、針のような鋭いものの先端に塗っても、人を殺せるタイプの・・・・・・)」
白城百合香「(本当なら警察に届けるべきなんでしょうね。本当なら・・・・・・)」
白城百合香「(でも、警察が話を聞いてくれるとも思えない)」

〇安アパートの台所
白城桃香「ちょっと痛いっ!!」
白城百合香「どうしたの? お母さん。それにこの人は?」
白城桃香「ああ、百合香。あたしはハメられたの!!」
白城百合香「ハメられた?」
警部「すみません、今は質問はご遠慮ください」
警部「それに、ハメられたというのはあくまで貴方が言ってるに過ぎないことで、」
警部「それを調べる為に我々がいるのです」
白城百合香「(調べる? お母さんは何をしたの?)」
白城桃香「信じて、百合香。あたしはクスリなんかやるつもりはなかったの!!」
白城桃香「アイツに騙されて、無理矢理打たれたの!!」
警部「これ以上、発言すると、こちらも無理矢理、連れていくしかなくなりますよ」
白城桃香「ちょっと、そんなに、引っ張らないでってば!!」
警部「おい、早く調べろ」
「はっ!!」
警部「あと、貴方には申し訳ありませんが、女性警官による身体検査を受けてもらいます」
白城桃香「ちょっと、関係あるのはあたしだけでしょ!」
警部「よろしいですね? 白城百合香さん」
白城百合香「はい、分かりました」

〇怪しい研究所
白城百合香「(結局、その時は何も持っていないってことで解放されたけど)」
白城百合香「(隠し持っていたなんて万が一、思われたら、実刑がくだるかも)」
白城百合香「(それに・・・・・・)」

〇安アパートの台所
???「消したいヤツの1人や2人、いるだろう?」

〇怪しい研究所
白城百合香「(えぇ、1人2人なんて可愛いものじゃないけどね)」
白城百合香「(消えてしまえば良い。皆、この世の全て・・・・・・この雪のように)」

〇黒
  でも、毒は精々、5人も命を奪えば消えていく量だった。
白城百合香「(まぁ、良いわ。こんなクソみたいな世界なら私の方から消えるから)」
  私は母が仮釈放になる時を待ち、仮の平穏を取り戻すと、
  とある山の樹海へと旅立った。

〇けもの道
白城百合香「(静かね・・・・・・まぁ、騒がしいのは好きな方じゃないから良いけど)」
  私は駅で適当に買ったお茶と例の毒を取り出す。
白城百合香「(どこから間違っていたんだろう)」
白城百合香「(私が母に夏坂さんを諦めるように言わなかったところから?)」
白城百合香「(それとも、もっと前から? 例えば、生まれたところからだったりする?)」
白城百合香「(それならそれで笑えるけど)」
白城百合香「(でも、それも今日でお終い。バイバイ、クソみたいな世界、クソみたいな人生)」
「ねぇ、君、そっちは危ないよ」
白城百合香「えっ!!」
明石朝刻「この先はよく人が迷うんだ。俺と入口まで行こう」
白城百合香「いえ、どうかお気になさらないでくださいませんか?」
明石朝刻「・・・・・・生きているのが辛くなった?」
白城百合香「・・・・・・」
明石朝刻「そうだよね。生きてるのは素晴らしいって誰かは言うけど、そんな日ばかりじゃない」
明石朝刻「身体が思うように動かなくて、思考もモヤがかかったようにクリアではなくなって」
明石朝刻「来ても欲しくない明日も来て、また頑張らないといけないのに頑張れないヤツは」
明石朝刻「ダメなヤツ扱い。世界はどこまでも冷たくて、いっそ、毒やら鉛玉の方が温かくてさ」
白城百合香「・・・・・・もう、良いですか? 確かに、少しは救済サイトよりはマシですが、」
白城百合香「生きてたってどうせ死ぬのでは? それが今日か50年先かくらいですよね」
明石朝刻「うん、多分ね。まぁ、俺の母親はその50年も生きられなかったんだけどね」
白城百合香「お母様が・・・・・・亡くなったんですか?」
明石朝刻「あぁ、先月だったよ。あとはそう・・・・・・彼女も俺を置いて行った」
明石朝刻「何か、兆候があった訳でもなく、あっさり旅立っていった」
明石朝刻「もっと話をしておいた方が良かったのかも知れなかったのだけど、ね」
明石朝刻「俺も参っていたこともあって、支えることはできなかったんだ」
白城百合香「・・・・・・」
白城百合香「(なんで、私、こんな話、聞いてるの?)」
白城百合香「(話なんか聞かないで、さっさと毒を煽れば良いのに・・・・・・)」
白城百合香「(でも、この人とは私は1つだけ、似ているのかも)」

〇黒
  母とあまり話ができなかったこと・・・・・・

〇けもの道
明石朝刻「生きてたってどうせ死ぬのでは? だったかな?」
白城百合香「えぇ・・・・・・」
明石朝刻「死ぬのが今日か50年先かくらいしか違わない、とも?」
白城百合香「えぇ・・・・・・少なくとも、私の人生はね」
明石朝刻「そう・・・・・・じゃあ、とりあえず、今日はうちに来ない?」
白城百合香「はぁ!?」
明石朝刻「だって、いつ死んでも同じなら、今じゃなくても良いんじゃない?」
白城百合香「そんな理屈は・・・・・・」
明石朝刻「え、なんで?」
明石朝刻「まぁ、死ぬ前くらいさ。何か、特別な思い出があっても良いんじゃない?」
白城百合香「変な男性に声をかけられた思い出が死ぬ前に必要?」
明石朝刻「うん、変な男・・・・・・っていうのは気になるけど、冥土の土産ってヤツだね」
白城百合香「冥土の土産・・・・・・」
  この時は思いもしなかった。

〇黒
  まさか、彼のメイドになるなんて・・・・・・

〇屋敷の門

〇車内

〇レンガ造りの家

〇可愛らしいホテルの一室
明石朝刻「改めまして、明石家へようこそ。えーと・・・・・・」
白城百合香「夕梨花です。夕暮れの夕に、フルーツの梨に、花はくさかんむりに化ける」
明石朝刻「あ、そうだ。そうだ。夕梨花さんだった」
明石朝刻「あ、気を悪くしないでくれると。ちょっと人の名前を覚えるの、苦手でさ。俺」
白城百合香「いえ・・・・・・別に」
  そう、これは彼の名前から作った偽名なのだから。
明石朝刻「でも、朝刻に夕梨花なんてちょっと縁を感じるよね」
明石朝刻「朝と夕方なんてさ」
白城百合香「えぇ、まぁ、ほぼ偶然でしょうけど」
明石朝刻「まぁ、偶然だって良いじゃないか。運命や必然も否定しないけど、偶然だって美しい」
明石朝刻「仮にそれが真実であっても、偽りであっても」
白城百合香「・・・・・・」
明石朝刻「この世界に決まり切ったことなんかあまりないんだよ・・・・・・多分ね」
白城百合香「そう・・・・・・でしょうか?」
明石朝刻「ん?」
白城百合香「確かに劣悪な環境下にいる者が自身の持っているもの、あるいは努力でその環境下に離れ」
白城百合香「幸福を手にすることもあるかも知れません」
白城百合香「ただ、それはやはり限られた者の話に過ぎないのではないでしょうか?」
白城百合香「例えば、貴方みたいな・・・・・・」
明石朝刻「俺?」
白城百合香「えぇ、いや、環境だけの話だけで言えば、貴方は私とは比べ物にならないかも知れない」
白城百合香「貴方にも側から見れば、そうでなくとも不幸な日はあるのでしょう」
白城百合香「ただ、私がもし、貴方ならば、死など選ばなかったのかも知れません」
明石朝刻「・・・・・・そう。まぁ、これが何かの舞台なら君に俺の何が分かるんだ、」
明石朝刻「俺の方が君の何倍も不幸なんだと激高するところなんだろうけど」
明石朝刻「不幸自慢なんて意味はない。あとは幸福自慢も・・・・・・」
明石朝刻「そんなことに費やす時間はやはり人生にはない。人なんてそう長くは生きれないのだから」
白城百合香「・・・・・・」
明石朝刻「・・・・・・」
白城百合香「貴方は不思議な人ですね。のらりくらりと話して、」
白城百合香「いつの間にか、話が終わっている」
明石朝刻「まぁ、のらりくらりと言ってる訳じゃないけどね。それ、東刻にも言われたことあるかも」
白城百合香「東刻さん?」
明石朝刻「うん、俺の・・・・・・一応、年の近い弟かな? 他の弟達はのらりくらり族かも」
白城百合香「弟さんが沢山いらっしゃるんですね」
明石朝刻「あぁ、あまり次期当主候補同士だからあまり会わないけどね」
白城百合香「次期当主候補?」
明石朝刻「ああ、元々、明石家は過去に干渉できる力を持つ和蝋燭を作れる一族でね」
白城百合香「過去に干渉できる?」
明石朝刻「ああ、映画やドラマの話じゃないよ」
明石朝刻「本当に望めば、ある過去はなかったことになり、」
明石朝刻「本来、訪れる筈のなかった未来を手にすることもできる」
白城百合香「・・・・・・夢みたいなお話ですね、小説や舞台のような・・・・・・」
明石朝刻「・・・・・・」
明石朝刻「本当は母のように女性の方がその作成には向いているんだけど、俺には姉も妹もいなくて」
明石朝刻「俺達の兄弟の誰か、それか、分家筋で精製に適した誰かが当主として選ばれる」
白城百合香「・・・・・・貴方は当主になりたいんですか?」
明石朝刻「・・・・・・」
明石朝刻「あぁ、そりゃあね」
白城百合香「意外ですね・・・・・・貴方とは出会ったばかりですが、」
白城百合香「そういったものに興味があるようには見えなかったので」
明石朝刻「そう・・・・・・見える?」
白城百合香「えぇ・・・・・・」
明石朝刻「ふふふ・・・・・・」
明石朝刻「そうだな・・・・・・でも、力は欲しいと思うよ」
明石朝刻「だって、あれだってあれだってなかったことになるんだ」
明石朝刻「まぁ、」
明石朝刻「代価は安くないけどね」

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