こころクリーニング

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3話【辛かった】(脚本)

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〇荒れたホテルの一室
  燈は再びドアを開き、こころ部屋の中へ入った。
間宮燈「やっぱり酷い臭いですね・・・」
暮内亜紋「それは”負臭”のせいですね」
間宮燈「ふ、ふしゅう?」
間宮燈(また新しい用語が出てきた・・・)
暮内亜紋「負の感情から放たれる、独特な刺激臭の事を、我々はそう呼んでいるんです」
間宮燈「は、はぁ・・・」
暮内亜紋「どうしても我慢ができないようでしたら、こちらをお使いください」
  暮内はそう言うと、燈に白い布マスクを手渡してきた。
間宮燈「マスク?」
暮内亜紋「こちらのマスクは、特殊な繊維で造られているマスクでして」
暮内亜紋「負臭を完全にシャットダウン出来るわけではありませんが、かなり軽減できます」
間宮燈(そんな便利なものがあるなら、先に言ってよ!)
  心の中で愚痴をこぼしながらも、燈は手渡されたマスクをつける。
間宮燈「あっ!だいぶ楽になりました」
暮内亜紋「そうですかぁ。それは良かったです」
間宮燈「あの・・・暮内さんは、この臭いは平気なんですか?」
間宮燈「このマスクが無かったら私、とてもじゃないけど・・・」
暮内亜紋「私は慣れているだけです」
間宮燈「はぁ・・・」
間宮燈(慣れって凄いなぁ・・・)
暮内亜紋「では、間宮様」
間宮燈「は、はい!」
暮内亜紋「これより、こころクリーニングを本格的に始めさせていただきますが、よろしいですか?」
間宮燈「は、はい!お願いします!」

〇荒れたホテルの一室
暮内亜紋「では、間宮様・・・こちらの感情はどうなさいますか?」
間宮燈「こ、これは・・・」
  暮内が指差したのは、タンスだった。
  いや、正確には、魂である燈にはタンスに見えていると言った方が正しいだろう。
  タンスのドアには所々ビビが入っており、服も乱雑に投げ捨てられており、ビリビリに破れている。
暮内亜紋「こちらは【辛かった】という感情でこざいます」
間宮燈「辛かった・・・」
  次の瞬間──

〇白
  眩い光が、燈の全身を包んだ──
間宮燈「これは・・・」
間宮燈「私の記憶?」

〇大きな木のある校舎
  燈の通う、紅葉学園女子高校は、個性を重んじるという理念のもと、校則が設定されており
  髪型や髪色が自由であるのはもちろん、制服の着用すらも任意となっていた。
  そのため、通う生徒の髪型や服装は多種多様。
  そんな高校に燈は、以前から興味のあった、いわゆる「原宿系ファッション」として部類されている
  蛍光色の明るい服装で登校していた。
  明るい服装を身につけていると、不思議と気持ちが明るくなったような気持ちになり
  何故だか自信がみなぎるような感覚を覚えるため
  燈にとっては「自分を出せる」お気に入りのファッションだった。
  しかし、それは同級生や先輩には「悪目立ち」と認識されていた。
  そのため、燈は日常的にいじめを受けていた。

〇女子トイレ
  女子トイレでは、複数名の女子生徒が燈に、頭からバケツの水をぶちまけていた。
間宮燈「う・・・」
いじめっ子A「お前さぁ・・・何度言ったら分かんの?」
いじめっ子B「ウチらより目立つ格好すんなって忠告しといたよね?」
いじめっ子C「そうよ!そうよ!」
  複数名の女子生徒は、トイレのタイル張りの床の上で蹲る燈を見下ろしながら、罵声を浴びせる。
間宮燈「で、でも、悪い事してるわけじゃ・・・」
いじめっ子A「口答えすんなっ!」
間宮燈「うぐぅ!」
  燈は腹を思いっきり蹴られ、お腹を抑えて悶え苦しむ。
いじめっ子A「そんなに忠告が守れないならさ、死ねよ!」
いじめっ子C「そうよ!そうよ!」
いじめっ子B「アンタみたいなヤツ、居るだけで邪魔なんだよね」
間宮燈「な、なんで私が死なないと・・・」
いじめっ子A「だから黙れっつってんの!!」
  女子生徒は、燈の顔目掛けて、思いっきり空になったバケツを投げつける。
間宮燈「痛っ・・・」
いじめっ子A「わかった?もう二度とそんな服で来んなよ!」
いじめっ子B「なんで普通の格好できないかなぁ?」
いじめっ子C「まぁ、これだけ痛めつければ、さすがにコイツも懲りたんじゃない?」
いじめっ子A「そういう事だから!大人しく制服で登校するか自殺するか!さっさと決めろよ?じゃあな」
  女子生徒は捨て台詞を吐くと、満足したようにトイレから消えていく。
間宮燈「な、何で・・・みんな・・・ひどいよ・・・」

〇荒れたホテルの一室
暮内亜紋「間宮様?」
間宮燈「・・・・・・」
暮内亜紋「間宮様!大丈夫ですか?」
間宮燈「はっ!」
間宮燈「す、すいません・・・ぼーっとしてました・・・」
間宮燈「・・・・・・」
暮内亜紋「おそらく、記憶が蘇ったのではないですか?」
間宮燈「え?何でそれを?」
暮内亜紋「感情を認識すると、その感情を抱いた時の記憶が蘇るんですよ・・・」
間宮燈「は、はぁ・・・」
間宮燈(ずっとこれが続くのかな?なんか嫌だなぁ・・・)
暮内亜紋「お辛いかもしれませんが、私も一緒です。頑張りましょう!間宮様!」
間宮燈(いや、大丈夫・・・今の私はひとりじゃないんだし・・・)
間宮燈「は、はい・・・」
暮内亜紋「では、間宮様」
間宮燈「は、はい・・・」
暮内亜紋「こちらの感情はどうなさいますか?処分されますか?」
間宮燈「・・・・・・」
間宮燈「こんなの・・・要りません」
暮内亜紋「かしこまりました」
暮内亜紋「では間宮様の了解のもと【辛かった】を処分いたします」
  暮内がそう口にした瞬間、燈は不思議と心が少し軽くなったような感覚をおぼえた。
  同時に、先ほどまでひどい有様だったタンスは、新品同様に綺麗になっていた。
間宮燈「あ・・・」
  燈は自分の胸を押さえる
暮内亜紋「この部屋は、間宮様のこころですから。今の間宮様のこころと完全にリンクしております」
間宮燈「あっ!だから、今ちょっとだけ楽になったんですね」
暮内亜紋「左様でございます」
間宮燈「あ、ありがとうございます・・・」
暮内亜紋「お礼を仰るには、まだ早いですよ」
間宮燈「えっ?」
暮内亜紋「まだ処分しなければならない、負の感情は沢山ございます!」
暮内亜紋「どんどん処分して参りましょう!」
間宮燈「はいっ!よろしくお願いします!」

次のエピソード:4話【屈辱を味わった】

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