エピソード4(脚本)
〇学校の屋上
〇学校の屋上
悪魔さん「え?」
なんで?
私悪魔の姿に戻れてなくない?
「うぅ・・・」
熊子さんが立ち上がった。
その姿は──
悪魔さん「嘘ッ、熊子さん悪魔だったの!?」
悪魔の姿に戻れなかった理由が分かった。
私達は同族から力を奪えない
赤坂熊子(あかさかくまこ)「てめぇ! 悪魔だったのか!?」
偶にいるのよね・・・変身前と後で180℃性格が豹変するタイプの悪魔
悪魔さん(私より強そ・・・そんなことないわ!!)
赤坂熊子(あかさかくまこ)「ワサビなんて入れやがって――ケーキは甘くなくちゃいけないんだよ!!」
悪魔さん「怒るとこそこ?」
悪魔さん「うひゃぁあ!? あ、危ないじゃない!! 殺す気なの!?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「ああ、コロス」
悪魔さん「ちょ、同族でしょ? 私と友達になりたいんじゃないの!?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「同族だろうと、ケーキを冒とくする奴とは友達になれねぇ」
こいつ、ケーキ過激派だわ!
悪魔さん「あ、悪魔ならこれくらいの悪事は日常茶飯事でしょ! みみっちいこと言わないで!!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「馬鹿か! もっと上履きに画鋲入れるとか、事故を装って机の角に頭ぶつけさせるとか、やりようはあるだろ!」
なんて非道な悪魔なの
赤坂熊子(あかさかくまこ)「とにかく、てめぇとは仲良くなれねえ! ここで、死ねッ!!」
悪魔さん「ひっ!!」
瞬間、真っ白な光が
「ぐわああああ!?」
え? なになになに!?
目を開けると熊子さんが倒れていた
・・・もしや死んでる? 私、助かったの??
悪魔さん「わ、私を殺そうとするから天罰が下ったのよ! くっくっくっ!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「く、っそ・・・が」
足蹴にしていると
天使さん「いいえ、殺してはいません。 気絶させました」
キトン姿の天使が現れた
悪魔さん「て、天使? なんで・・・気絶させたってどういうこと?」
天使さん「言葉の通りです。あなたが消されそうになっていたので熊子さん。いえ、悪魔を気絶させたのです。浄化の光でね」
余裕の笑顔がむかつくわ
悪魔さん「あんた、もしかしてこの子が悪魔って最初からわかってた?」
だからひきとめなかったんじゃ──
天使さん「それはもちろん、天使ですから。力が弱まっていてもわかりますよ。だからまあ、悪魔さんの好きにさせてもいいかと」
悪魔さん「あんたよっぽど悪魔側の思考してない?」
でも、よく見たら、天使の翼はボロボロになっていた。
まさか、それは私を助けたせいで
悪魔さん「その翼。よくなってたんじゃないの?」
天使さん「ああ、これですか? 力を使ったせいですね。いいんです。だって悪魔さんは私の大事なお友達ですから」
こ、こいつ! こっ恥ずかしいことを堂々と!!
悪魔さん「わ、私はそんなこと微塵も思ってないんだからね! ほら、包帯、使いなさいよ!!」
天使さん「なんで持ち歩いているんです? ありがたく使わせていただきますけど」
翼に包帯を巻いた天使は腕を組む
赤坂熊子(あかさかくまこ)「きゅう・・・」
天使さん「さて、この子はどうしましょうか? 今の私の力で消滅させることは――できますかね?」
いや、消滅させないで?
悪魔さん「放置でいいでしょ。それよりもう少しで昼休みが終わるわ。教室戻りましょ」
天使さん「それもそうですね。話を聞いた限り友達が作りたいだけみたいですし、悪魔さんよりも良い子そうですし」
悪魔さん「悪魔に良い子って侮辱よ?」
〇学校の校舎
キーンコーンカーンコーン
男子B「お昼の雷すごかったな」
男子A「だな」
〇川に架かる橋
悪魔さん「決めた。 私、もうワサビ入りケーキは作らない」
天使さん「突然どうしたのですか」
私はよく味見をしているし、天使は笑顔で食べるからわからなかったけど、熊子さんのあの様子を思い返すと・・・
〇学校の屋上
赤坂熊子(あかさかくまこ)「――どうじで」
〇川に架かる橋
悪魔さん「わかったのよ。 ワサビ入りケーキは人に食べさせていけないものだって」
一歩間違えれば殺していたのかもしれない
人殺しにはなりたくないもの
天使さん「なにを今更」
悪魔さん「うっさい! もっとちゃんと引き留めない天使にも罪があるんだからね!! だからスーパー行くわよ!」
天使さん「何か買うものありましたっけ?」
悪魔さん「決まってるじゃない! ワサビ入りケーキに代わる新しい人間苦しめケーキの材料を探すのよ!」
〇スーパーの店内
悪魔さん「納豆入りケーキとか斬新じゃない? ねばねばとクリームの相乗効果で不快な気分に・・・」
天使さん「あの、ケーキから離れませんか?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「じー・・・」
悪魔さん「ところでさっきからアレ、なんなのかしら?」
学校を出てから声を掛けてくるでもなく、一定の距離をずっとつけてきてる
天使さん「わかりません。ですが私たちを観察しているのは確かです」
悪魔さん「ふ、復讐かしら? 昼休み放置したのに腹を立てて」
天使さん「悪魔さんだったらどうしますか?」
悪魔さん「私だったら?」
悪魔として天使に負けたと想像する
悪魔さん「あんたにリベンジを申し込むわ」
天使さん「では、そういうことですかね。 あ、こっちきましたよ?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「あ、あの!」
悪魔さん「な、なによ! やる気!? 相手になるわよ!!」
熊子さんは頭を下げてきた
赤坂熊子(あかさかくまこ)「お昼はすみませんでした!」
へ?
赤坂熊子(あかさかくまこ)「いつもは抑えているのですが、刺激を受けると私の中の悪魔が暴走してしまうことがあるんです。ごめんなさい!!」
ざわざわ
悪魔さん「こ、声がでかいのよ! 泣かれるとなんか悪いことした気分になるじゃない!!」
天使さん「えっと・・・つまり、ワサビ入りケーキを食べさせなければ熊子さん暴走しなくてすんだんじゃないですか?」
え、それって私が悪い――ってこと!?
悪魔さん「そんなの言いがかりじゃない! わ、私は悪くないわよ!!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「いえ、いいんです。でもまさかアクマさんが悪魔だったなんて・・・」
そうよね。思わないわよね
赤坂熊子(あかさかくまこ)「だって悪魔の気配を感じませんでしたし。 名前を教えてもらった時アクマって呼べって。からかわれているのかと・・・」
悪魔さん「あ? 喧嘩売ってんのあんた?」
あるでしょ私すっごく悪魔っぽいでしょがオーラが!! なめてんの!?
赤坂熊子(あかさかくまこ)「ひっ! そ、そんなことは」
天使さん「悪魔さん睨まないであげてください怖がってますよ?」
悪魔さん「言っとくけど、私が力を取り戻したらあんたなんてボコボコなんだからね!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「あ、あまつかさんは天使だったんですね?」
天使さん「ええ、そうですよ」
悪魔さん「聞きなさいよ!! 興味持ちなさいよ私に!」
なめられてる。
私熊子さんと、ついでに天使になめられてるわ
天使はもうしょうがないけど、同族になめられたままじゃ悪魔が廃る
悪魔さん「熊子!」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「あ、呼び捨て嬉しいです! なんですか?」
んなこたぁどうでもいいのよ!
悪魔さん「悪いけど友達止めさせてもらうわ」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え? そ、それは困ります! せっかくなれたお友達なのに」
天使さん「なら、私がなりましょうか?」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え?」
悪魔さん「あんたはだまってなさい天使!!」
悪魔さん「熊子! 条件をのむなら友達のままでいてあげるわよ!」
天使さん((何を企んでいるのですか?))
悪魔さん((ふふ、効率的なことよ))
赤坂熊子(あかさかくまこ)「条件ですか? どうすればお友達のままでいてくれるんですか」
悪魔さん「くくく、簡単じゃないわよ? それは──」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「そ、それは?」
天使さん((・・・まさかとは思いますがケーキのことですか?))
なんか頭の中に聞こえたけど、あえて無視
私は熊子をびしりと指さした
悪魔さん「私に悪魔の力を取り戻す知恵を貸しなさい。とりあえず人間を苦しめる新作ケーキの材料を考えるのよ! ワサビ以外の」
天使さん((やっぱりケーキのことじゃないですか))
悪魔さん((黙りなさい! これで材料に迷わなくて済むんだから効率的でしょが!))
赤坂熊子(あかさかくまこ)「・・・え? そんな簡単なことでいいんですか?」
・・・今こいつ簡単って言った?
赤坂熊子(あかさかくまこ)「そうですね、全部消費期限が切れた材料で作るとか? これならエコですし、人間を苦しめられますよ?」
天使さん((悪魔らしい発想ですね熊子さん。悪魔さんより賢いのでは?))
悪魔さん((だ、黙れ天使!))
悪魔さん「や、やるじゃない? でもまだパンチが足りな」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「あとは、カチカチに凍らせたアイスケーキにして歯を砕くとか、相手の嫌いな果物をふんだんに使ったケーキにするとか」
・・・
赤坂熊子(あかさかくまこ)「砂糖を通常の何倍も入れて食べさせ続け太らせるとか」
・・・めて
赤坂熊子(あかさかくまこ)「というか、ケーキに限定しなくていいんじゃないですか?」
もうやめて!
悪魔さん「あんたは友達じゃないわ! 悪魔よ!! 失せなさい熊子! 帰るわよ天使! うわああああん!!」
こ、こんな優等生悪魔に頼ったりなんかしないんだからばかああ!
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え? ちょ、アクマさん!!」
天使さん「すみません追わなきゃいけないので。 失礼しますね」
赤坂熊子(あかさかくまこ)「え・・・・・・えぇ?」
悪魔さん、安定の暴走もとい珍走っぷりですね!熊子さんとの争いで学んだことが、人にワサビ入りケーキは食べさせてはいけない、ということのみとは・・・