エピソード17〜孤独に満ちた記憶 希望を繋いだ10年〜(脚本)
〇豪華な部屋
学長バルバロッコ「・・・お、おい、モルダート。今何と言った?」
学長バルバロッコ「セリーナ様は・・・死んでおらん、のか?」
学長モルダーナ「一応、ね。でも、いっそ死んでいた方が良かったかもしれないわねェ・・・」
学長モルダーナ「その方が、変な執着を生まずに済んだかもしれないし」
学長モルダーナ「・・・セリーナは、心臓は動いている。でも、目を覚さないのよォ」
学長モルダーナ「その心臓も、たくさんのチューブや機械によってかろうじて動かしている状態なの」
学長モルダーナ「・・・デパートの崩壊があった後。目を覚さないセリーナに、私は「自分が何とかしよう」と思ったわァ」
学長モルダーナ「私の魔法は、15秒しか時を戻せない。私は魔力がそんなに高くなかったからねェ。でも・・・」
学長モルダーナ「極限まで集中力を高めれば、丸1日、時を戻すことが可能なのよォ」
学長バルバロッコ「・・・な・・・なんと・・・」
学長モルダーナ「誰にも話していなかった、私の魔法の秘密よ。まあ、集中するのに1時間も要するから、あんまり実用的ではないんだけどォ・・・」
学長モルダーナ「それに、私の魔法は1回時を戻すごとに、戻した時間分のインターバルが発生するし」
学長モルダーナ「でも、私がその魔法をセリーナにかけたのが、あまりにも遅かったようね。時を戻しても、孫は眠ったままだった・・・」
学長モルダーナ「今の医療技術では、孫を治すことはできない。でも、私は魔法を使って、思ったのよ」
学長モルダーナ「魔法があれば、この子はいつか目を開けることができるんじゃないか、とねェ。愚かにも私はこの時、「魔法」に希望を持ったのよ」
学長モルダーナ「・・・私が聖裁大学を作った理由は、2つ。一つは、蔵杏大学に復讐するため。そして、もう一つは・・・」
学長モルダーナ「セリーナを目覚めさせる魔法使いを誕生させるため、だったのよ」
学長モルダーナ「・・・だけど・・・。そんな都合の良い魔法使いなんて、誕生しなくてねェ・・・」
学長モルダーナ「段々私も焦ってきて。もう、セリーナは助からないんじゃないかと思って・・・。だから、レイや魔法使いたちを酷使し始めたのよ」
学長モルダーナ「こうなったら、全ての元凶である蔵杏大学を潰す方に力を注いでやる・・・と」
学長モルダーナ「・・・今思うと。セリーナが目を覚さない現実から、目を逸らしたかっただけかもしれないわねェ」
学長バルバロッコ「・・・・・・・・・・・・」
学長モルダーナ「セリーナが生きていることは、誰にも話さないでおこうと思った。話したところで・・・っていうところもあったし」
学長モルダーナ「だから、私と一緒にこの国に来たレイにも、秘密にしていた。セリーナは「荷物」として、飛行機に乗せたからねェ」
レイ「・・・そ・・・そうだったのですね。全然知りませんでした・・・」
レイ「でも、せめて私にだけは、話してくれても良かったんじゃないですか!?私は、セリーナ様の友達ですし、それに・・・」
レイ「私はデパートが崩壊したあの日、セリーナ様に助けられたのですから!!」
学長モルダーナ「・・・もし私が話したら。あなたはどう思ったかしら?そしてどう行動していたかしら?」
レイ「・・・え?」
学長モルダーナ「一向に目を覚さない、自分を助けてくれた友達。その子を見て、あなたは平常心でいられたかしら?」
レイ「・・・・・・!!」
学長モルダーナ「・・・だから話さなかったのよ。セリーナに危害を加えられても困るからねェ」
学長モルダーナ「正直、セリーナを飛行機で運ぶのは、彼女の体調を鑑みても良くないとは思ったけど・・・。でも、何としてもこの国へ来たかった」
学長モルダーナ「あっちの国は、もう破滅したから。私の居場所なんて、どこにも無くなってたからねェ・・・」
学長バルバロッコ「・・・何じゃ。自分で自らの国を滅ぼしておいて」
学長モルダーナ「あの国に、もう価値なんて無いと思ったのよ」
学長モルダーナ「・・・だから言ったでしょ。変な執着を生んだ・・・って」
学長モルダーナ「そうして私は、初めてセリーナに時を戻す魔法をかけた後も、毎日ずーっと彼女に魔法をかけ続けたわァ」
学長モルダーナ「もし魔法をかけずに、セリーナを死なせてしまったら?そう思うと、怖くてね」
学長モルダーナ「だから、1日も欠かさず、私は彼女の時を戻し続けた」
学長モルダーナ「・・・それもあって、セリーナは、身体も臓器も全て・・・当時の小さいまま、なの。成長が止まっているのよォ」
学長モルダーナ「それもこれも、いつかセリーナを助ける魔法使いが現れることを願ってやったこと・・・。私の、無駄な足掻き、なのよ」
学長モルダーナ「「いつか」なんて、来る訳ないのに。私はこの10年間、その幻に一人ですがり続けていたって訳」
学長バルバロッコ「・・・どうして・・・わしに相談してくれなかったんじゃ」
学長バルバロッコ「わしはかつて、お前に仕えていた。なのに、どうして肝心な時に、頼ってくれなかったのじゃ・・・」
学長モルダーナ「・・・あのデパートの一件があってから、人を信用できなくなった。それだけよ」
学長バルバロッコ「・・・・・・そう・・・か」
「・・・あの・・・ちょっと良いですか」
「要は、セリーナ様を目覚めさせれば、全て解決、ってことですよね?」
学長モルダーナ「・・・まあねェ。口で言うのは簡単だけど・・・」
学長モルダーナ「でも無理なのよ。セリーナを助ける魔法は、今この世には存在しない!!」
「でも、あなたは、自分の時を戻す魔法を使った後、「もしかしたら助けられるかも」って希望を持ったんですよね?」
学長モルダーナ「・・・そうね。時を戻したことで、いくらか彼女の身体が良くなったからねェ」
学長モルダーナ「でも、私の魔力は弱いの。セリーナを治せるほど、時を戻すことは出来ないのよ」
学長モルダーナ「頑張っても丸1日・・・。私には、それ以上は戻せないの。もっと戻さなければ、彼女は目覚めないのよ!」
「それなら、いるじゃないですか」
「あなたよりも魔力が強くて、時をさらに戻せる魔法使いが・・・」
学長モルダーナ「・・・な・・・何ですって・・・」
学長モルダーナ「そんな都合の良い人物なんている訳・・・」
学長バルバロッコ「・・・なるほど。そういうことか」
学長バルバロッコ「モルダート、おるぞい。そういう都合の良い魔法を使う人物が、の」
学長モルダーナ「だ、誰よ!一体!?」
上子「・・・俺のことですよ、もちろん」
上子「魔力が高い俺なら・・・。あなたの魔法をコピーすれば、時を1日以上戻せるはず」
上子「モルダート学長は、毎日欠かさずずっと、セリーナ様の身体の時を戻していた。だから、俺が戻せば・・・」
学長モルダーナ「・・・デパートの崩壊前の時まで・・・セリーナが元気だった時まで・・・時を戻せる・・・!!」
上子「・・・正直俺は、あなたのことが許せません。あなたのことをあまり好ましく思っていないです」
学長モルダーナ「!!」
上子「・・・でも。セリーナ様を救うことで、あなたが二度と蔵杏大学に危害を加えないと言うのなら。・・・治しますよ、彼女を」
学長モルダーナ「・・・・・・。逆に、良いのかしらァ?」
学長モルダーナ「私がその約束を反故する可能性も、無くはないわよォ。第一、あなたには私の事情なんて関係ないでしょ。だから・・・」
上子「関係なくはないですよ。俺、蔵杏大学の魔法使いですから」
上子「それに、俺がここに来たのは・・・。聖裁大学も、蔵杏大学も、救うため。・・・あなたも、俺は救いたいんです」
学長モルダーナ「・・・!!私を、救う・・・ですって?」
学長モルダーナ「今まで、たくさんの人たちを傷つけ、泣かせてきた、この私を?」
上子「・・・そうです」
学長モルダーナ「どうして、あなたはそこまでするのよォ。バルバロッサに何か弱みでも握られてるのかしら?」
上子「・・・まあ、それもちょっとありますけど・・・」
学長バルバロッコ「・・・おい」
上子「・・・でも・・・特に理由はないです。助けを求めているから助ける。ただ、それだけです」
学長モルダーナ「・・・・・・!!」
学長モルダーナ(この若造・・・。まるで、若いバルバロッサを見ているようだわ・・・)
学長モルダーナ「・・・フン。どいつもこいつも、お人好しね。私にトドメを刺さなかったのも、頷けるわァ・・・」
学長モルダーナ「・・・流石は、バルバロッサが見込んだだけのことはある・・・か」
学長モルダーナ「・・・良いでしょう。約束は必ず守るわ。もう、蔵杏大学も、聖裁大学の魔法使いも、誰も傷つけたりはしないわ」
学長モルダーナ「・・・だから・・・」
学長モルダーナ「・・・お願い。セリーナを・・・私を・・・どうか、救って・・・」
上子「・・・わかりました。必ず俺が、救ってみせます」
上子「・・・あ・・・でも」
上子「流石に今からだと、ちょっと疲れが溜まってるのでできないです・・・。なので、日を改めても良いでしょうか?」
学長モルダーナ「ええ、もちろん良いわァ。あなたにお任せします」
学長モルダーナ「では、2日後の朝10時。・・・ここの学長室に集合でどうかしらァ」
上子「・・・わかりました。ありがとうございます」
学長モルダーナ「・・・それと・・・。今のセリーナを多くの人に見せるのは、ちょっと気がひけるのよねェ・・・」
学長モルダーナ「だから、2日後、ここに来るのは、新入りとバルバロッサだけにしてもらえないかしらァ?」
学長バルバロッコ「・・・まあ、良いじゃろう」
学長バルバロッコ「それなら、わしからも貴様に頼みがあるぞ、モルダート」
学長バルバロッコ「2日後は、女装しないで、いつもの姿でいてくれんかの?」
学長バルバロッコ「・・・やはり、貴様の女装は、何度見ても胃がむかむかする感じがしてしまうのでのう・・・」
学長モルダーナ「なッ!何よそれェ!私のこと馬鹿にしてるでしょォ!?元王様に向かってェ・・・」
学長バルバロッコ「はっはっは、だって事実じゃし」
上子(・・・何だかんだでこの2人、仲良しなのかもしれないな・・・)
学長モルダーナ「・・・まあ良いわ。では2日後、よろしくねェ。待ってるわ」
学長バルバロッコ「ああ。・・・みんなに良い知らせができると良いの」
上子「そうですね。ではまた!」
〇豪華な部屋
〜2日後
10:00 聖裁大学 学長室〜
学長モルダート「・・・時間どおり来たな。ようこそ、聖裁大学学長室へ。歓迎するぞ」
学長バルバロッサ「うむ。それでは早速、セリーナ様のいる場所まで案内してくれ」
学長モルダート「了承した。セリーナはこの学長室の隠し部屋にいる。本棚の裏に部屋があるんだ。・・・ちょっと待っててくれ」
「・・・かしいだろ・・・」
上子「いや絶対おかしいだろこれェーーーーーーーーーーー!!」
学長バルバロッサ「何じゃ上田。いきなり大声出しおって」
上子「そりゃ出しますよ!だって、あの高身長仮面イケメンが、あの宝石ジャラジャラババアと同一人物だって?し、信じられない・・・」
上子「何をどう間違えたら、あんな残念な女装になっちゃうんですか!!」
学長バルバロッサ「・・・ああ、なんだ、そんなことか」
学長バルバロッサ「ただ単に、こいつの女装のセンスが無いだけじゃよ」
学長モルダート「・・・おい、俺を馬鹿にしているのか?」
学長バルバロッサ「だってのう・・・。流石にあの女装は、ちときついからのう・・・」
学長モルダート「なっ!何を言ってるんだ!!」
学長モルダート「女性は、少しぽっちゃりしていた方がかわいいと言うではないか!しかも、俺は熟女好きだし・・・。だからあれがベストなんだぞ!」
上子「ぽっちゃり・・・って、ぽっちゃりし過ぎな気もしますけど・・・」
学長バルバロッサ「熟女・・・って言っても、流石にあれは熟しすぎだと思うがのう・・・」
学長モルダート「・・・くっ!バルバロッサはロリコンだからあの女装の良さがわからんのだ!若造、貴様も女装歴が浅いしな!」
学長バルバロッサ「わ、わしはロリコンじゃないわい!!失礼な!!」
上子(ロリコンか・・・。ちょっと納得というか・・・しっくりくるな・・・)
学長バルバロッサ「納得するな!!」
上子「いやいやいや、人の気持ち読まないでくださいよ!」
学長モルダート「・・・ごほん。とにかく、本題に移って良いだろうか?」
学長モルダート「隠し部屋の入り口はこちらだ。入れ」
学長バルバロッサ「・・・ふむう。仕方あるまい。この論争はまた後日するとしようかの」
上子「・・・そうですね。5時間くらいじっくり話し合いたいです」
学長モルダート(それは流石に話しすぎだろう・・・)
モルダートのビジュアル……(前話に引き続いての所感)
ラストバトル後の皆が光明を求めるシーンで、またもややられましたw 折角の感動展開が……